◇ハクソー・リッジ(2016年 アメリカ、オーストラリア 139分)
原題 Hacksaw Ridge
監督 メル・ギブソン
出演 アンドリュー・ガーフィールド、サム・ワーシントン、テレサ・パルマー、ヒューゴ・ウィーヴィング
◇前田高地の戦い
良心的兵役拒否者としてはアメリカ史上初めて軍人最高位となる名誉勲章を受賞したデズモンド・T・ドスの物語だ。
中心になっているのは、かれが武器を手にしないとする理由のひとつとなった、弟のこめかみを煉瓦でぶんなぐった幼い頃の喧嘩、あるいはアル中の父親をいさめようとしつつもついつい発砲してしまった親子喧嘩、そして兵役拒否にいたる訓練と父親の応援を得て兵役拒否を認められる軍事法廷、そして沖縄戦におけるハクソー・リッジこと前田高地の戦いの模様だ。
先に中身について、ちょっと触れておくと、日本兵の描かれ方がなんだかシューティングゲームに出てくる化け物のようで、なんだかな~て気はする。ここまで人間性に乏しい戦意のかたまりだったんだろうかと。画面の迫力はたしかに凄まじい。この絵はCGによるものが大きいんだろうけど、それでも凄い。音響も効果も編集も、なるほど、たいしたものだ。主人公とそれをとりまく同期あるいは鬼軍曹的な立場となっているヴィンス・ヴォーンとの友情めいた関係もまた定番ながらわかりやすい。
まあ、それはそれでいいが、しかし、どうにも気分が良くない。
宣伝の仕方についてだ。
沖縄戦の「お」の字もないというのはどういうことだろう。厳しい訓練を茶化したような宣伝をしたり、兵役拒否について宗教上の理由とかを前面に押し出したり、もういい加減にしてくれっていう広報だった。沖縄戦の映画だったら、まずいのか。日本兵がひとからげになって無残に殺されていく映像があるなんてことがばれたら誰も観てくれないとでもおもったのか。観客をばかにしているとしかおもえないし、それをとおりこして悲しくなる。
事実、映画の中でも日本兵をふたり救い出している。まあそのふたりはまもなく死んだそうだけれども、でも、敵味方の区別なく救出した衛生兵がいたということをなぜ前面に押し出さなかったんだろう。宗教というものがあって、それで兵役拒否したというのであれば、そこからさらに発展して敵味方の区別なく人の命の尊さを知り、それを救おうとした兵士がいたという事実を正面からとらえようと、なぜ、しなかったのか。情けないな、まじで。
恥ずかしいぞ。