営業所前ターミナルで数名の乗車があり、あとは発車時刻になるのを待つばかり… で、1分前になった時、バスの右後方から近付いてくる運転士さんの姿が右ミラーに映った。私が大きく窓を開けると、その運転士さんは「まだ時間ある?」と言った。
私が「何事かいな?」と思いながら「あと1分ですけど…」と答えると、その運転士さんは「車椅子の人がいるんだけど…」と言った。私が「へっ!? 乗車を手伝ってほしいってこと?」と思いながら「はぁ…」と返事をすると、その運転士さんは「このバスに乗るって言うもんで…」と言ったのである。
勘違いをしていた私は「えっ!? そうなんですか!」と言いながら、すぐに中扉を開けて席を立った。そして、2人で車椅子の人(付き添い人あり)の乗車扱いをして… その時、手伝ってくれている運転士さんが「どちらまで行かれるの?」と尋ねているのが聞こえたのだが… 「終点(某駅)まで」という返事が…
某駅行きは2通りの路線があって、私のバスは遠回りして行く路線だったのである。しかし「人それぞれ… 何か理由があるのかもしれないし… 10分くらい前に“遠回りしない某駅行き”が出たばかりだから、このバスでいいのかも… まぁ、それを調べている時間もないし…」などとゴチャゴチャ考えながら「まぁ、このバスに乗るって言うんだから!」ということで自分を納得させた。
約30分後… 終点某駅の4つ手前のバス停がある交差点に来たところ… 前方に見慣れた行き先のバスが1台… そう、遠回りしない路線のバスが、右から出てきたのである。「う~む… ま、でも… 到着順が逆になってしまったけれど、到着時刻はそんなに変わらないから良しとしよう!」と、またもや自分を納得させた。
私が終点の某駅で車椅子の人の降車扱いをやっていたら、☆☆駅から来たバスがいつの間にか後ろに止まっていて、その運転士さんが降りてきてくれた。が、ちょうど降車完了したところだったので、私は「ありがとうございます」とお礼を言って待機場所へ移動… ☆☆駅から来たバスは、すぐに☆☆駅行きとして発車なので乗り場へ移動…
私が「さて、約20分のコーヒータイムだぁ~」と、カバンを持ってバスを降りた… その時! 私の耳に「カタン!」と聞き慣れた音が… そう、さっきの車椅子の人が、ここから☆☆駅行きのバスに乗ろうとしていて、運転士さんが乗降用スロープを出したところだったのである。
私はすぐに駆け付け、2人で車椅子の人の乗車扱いをし、今度は私が「ありがとうございました」と言われる側になってしまったという… その間、私はずっと笑いを堪えていた。それは、営業所前ターミナルからココまでの流れが、何となく“みんなでコントをやっている”ように思えたからである。そう、こういう予想外の展開&ドタバタ感も… 嫌いではない。