『宮本武蔵』『新・平家物語』など、大衆小説の大家
「吉川英治」の『親鸞』に、なんと「虚無僧」の元祖
「菰(こも)僧」が登場してくるのです。「親鸞」は
平安末期から鎌倉時代の人。「薦(こも)」を腰に
つけた「菰僧」は、室町時代 1400年頃の文献には
登場しますが、はたして平安末期にまで遡れるかは
疑問です。
吉川英治は『鳴門秘帖』など「虚無僧」が大好き
でしたから、『親鸞』にも登場させたかったのでしょう。
「親鸞」の命を狙うライバル「朱王房」の家人「七郎」が
「菰僧・孤雲」となって、主の行く方を探します。
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母も妻も子も、また家も無い自分の境遇と似ている雲を
彼(菰僧・孤雲)は、凝と見ていた。誰にとも訴へやうの
ない気持ちがやがて、尺八の歌口から 哀々と思ひのかぎり、
細い音を吹き出したのであった。その音のうちには、
人生の儚さだの、煩悩だの、愚痴だの、嘆きだのが、
纏綿(てんめん)と こぐらかっているやうに聞こえた。
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さて、「親鸞」をこよなく愛する「吉川英治」が、
本願寺に対して『折々の記』で苦言を呈しています。
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「今日の仏教全体のかたちなるものはすべて悉く
古くさく、旧態旧臭で、新しい世人の人々には
何らの魅力にはならない。江戸時代から明治以降の、
長い沈滞文化期にそうなってしまったのである。
伽藍、及び教団のごときは、いくらその大を恃みに
してみたところで潰え去るであろう。形のものは
捨て去るに惜しみはない。むしろ、捨てきってこそ、
新しいものが、きっと生れよう」と。
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虚無僧は寺も持たず、教義も無く、決まった形も
無い。そこに吉川英治は惚れていたのでしょうか。
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