昭和32年(1957)に発表されたフランク永井の代表曲
「有楽町で逢いましょう」は、知る人ぞ知る「そごうデパート」の
CMソング。
大阪に本店を置く「十合(そごう)百貨店」が東京進出するに
あたり、大々的にキャンペーンを行った。「有楽町で逢いましょう」という
タイトルで単独テレビの歌番組を持ち、映画も制作。
映画の中でフランク永井が甘い低音でこの歌を歌い、一躍ヒット。
有楽町の「そごうデパート」はデートスポットとなった。
建築設計は村野藤吾。大坂心斎橋店も村野藤吾。
千代田生命の本社ビルも村野藤吾。
それぞれ、村野ならではの独創的な趣向がなされている。
心斎橋店は大丸デパートと隣接し、競合していた。
そこで、大丸のビルが横断的デザインであったのに対し、
村野は、縦線を強調するデザインにした。それまでビルと云えば
1階2階3階・・・と各層に積み上げられていくのが常識だった。
それを縦線のデザインにしたのは村野の斬新的なアイデアだった。
有楽町の読売会館は、逆に横断的デザインだが、その横線に
ガラスのブロックが初めて使われた。これも村野のアイデア。
この最上階にある読売ホールが村野の真骨頂。
村野藤吾は日生劇場も造っている。その日生劇場に似ている。
ゆるやかな曲線で独特の世界を醸し出す。
奇抜なデザインに驚かされるが、私が驚くのは このホールの
音響のすばらしさだ。何回かここで演奏させてもらったが、
舞台の音はマイク無しでも客席の奥まで届く。
逆に客席からの声や騒音は聞こえない。
リハーサルで客席からスタッフが意見を言っても
舞台にはよく聞こえなかったのだ。
最近造られる箱物のホールは ほんとにひどい。
舞台の音はマイクが無ければ聞こえないし、逆に
客席のちょっとした物音は聞こえてくる。
全く、現代の建築設計者は、もっと村野藤吾を研究してもらいたいと
思うのは私だけか。