大須の古本屋で五木寛之の『大河の一滴』が目に
止まった。50円。すぐ買い求めた。
五木寛之という人、私とそっくりだ。冒頭いきなり
「私はこれまでに二度、自殺を考えたことがある」で
始まる。その当時は真剣だったが、今思い返して
みるとどうしてあれほどまでに自分を追いつめて
いたのか不思議な気がしないでもない。しかしあの
経験をばかげたことだなどとは考えてはいない」
から、生と死、「釈迦は究極のマイナス思考から
出発した」とか、「反常識の進め」。
「腹いっぱい食べるのは10代20代、60歳過ぎたら、
腹五分、1日一食半でいい。医者にはいかない。
検査も受けない。薬もむやみに飲まない。悪い
ところを探そうとするのが理解できない。すぐ医者
や薬に頼ろうとする安易さが気に食わない」とまで
言い切っている。
私の好きな「屈原」の話も出てくる。「濁った河の
水で冠を洗おうとするから苦しむのだ。濁った水では
沓(くつ)を洗えばいい。河の水が清くなったら冠を
洗えばいい」という漁夫の忠言にうなづきながらも、
べきらの淵に身を投じたという屈原の話だ。
五木氏は「屈原に共感しながらも、漁夫の言葉に
なにか大きなものを受け取る気がする」と。