特定秘密保護法が制定されるまでもなく、人々の個人情報は警察に集められている。その情報がどのように使われるか。長野県の事例が記されている。某警官が私的に関心を抱いた女性の個人情報を覗く、ということは普通の市民の個人情報も集められているということだ。
以下は『信濃毎日新聞』の社説。
個人情報閲覧 警察の信頼回復は遠い 01月17日(金)
連続強制わいせつ、女性の盗撮行為、車両使用者の個人情報の売り渡し…。警察官の不祥事が相次いだ長野県警は「信頼回復のため県民の立場に立った警察活動を積極的に進め」(当時の本部長訓示)ているはずだ。
交際女性の個人情報を調べるため、県警のシステムを不正に使った―。先日発覚した新たな警察官の不祥事だ。個人情報の保護を揺るがす重大な問題なのに、県警は昨年、4段階で最も軽い懲戒処分「戒告」(文書による注意)で済ませ、公表もしていなかった。これが「信頼回復」の方法なのだろうか。
50代の男性巡査長が、民家などを訪問する巡回連絡で知り合った女性と「不適切な交際」(県警)を続けた。この間、犯歴などが確認できる県警の個人総合照会システムを不正利用し、女性の個人情報を複数回閲覧したという。
問題なのは、処分の甘さもさることながら、不祥事を公表しないこと、再発防止策も明らかにされないことだ。
全国で相次いだ警察不祥事を受けて、警察庁は「情報公開の推進」を掲げ、懲戒処分の発表の指針を2004年に改正。(1)職務に関係する行為についての処分は全件を発表する―とした。ただ、(2)私的な行為に関する処分は停職以上を発表する―ともしている。
県警監察課は今回、(2)に沿って、公表しなかったとする。県警のシステムを職務権限を使って不正利用することは、職務に関係しているのではないか。これ以上不祥事が発覚するのを恐れて、無理やり(2)にあてはめたのではないか。強い疑問がある。
警察の持つ個人情報の保護は昨年、強行採決で成立した特定秘密保護法にも通じる問題だ。
特定秘密を扱える人かどうかを判断する「適性評価」は、本人の精神疾患の有無や飲酒の節度、経済的状況のほか家族・同居人の氏名、現・旧国籍などを調べる。公務員、民間人合わせて10万人規模になる個人情報の収集は主に警察が担うとされる。
今回の問題は、これらの情報が不正利用され、そのことが市民に知らされない可能性があることも浮き彫りにした。
不祥事が起きたら矮小(わいしょう)化せず、速やかに公表する。その都度、再発防止策を丁寧に説明する。それが県民の信頼回復への道だ。
きょうも私たちの個人情報がのぞかれているかもしれない。その不安を残したままでは、警察への県民の協力は得られない。
以下は『信濃毎日新聞』の社説。
個人情報閲覧 警察の信頼回復は遠い 01月17日(金)
連続強制わいせつ、女性の盗撮行為、車両使用者の個人情報の売り渡し…。警察官の不祥事が相次いだ長野県警は「信頼回復のため県民の立場に立った警察活動を積極的に進め」(当時の本部長訓示)ているはずだ。
交際女性の個人情報を調べるため、県警のシステムを不正に使った―。先日発覚した新たな警察官の不祥事だ。個人情報の保護を揺るがす重大な問題なのに、県警は昨年、4段階で最も軽い懲戒処分「戒告」(文書による注意)で済ませ、公表もしていなかった。これが「信頼回復」の方法なのだろうか。
50代の男性巡査長が、民家などを訪問する巡回連絡で知り合った女性と「不適切な交際」(県警)を続けた。この間、犯歴などが確認できる県警の個人総合照会システムを不正利用し、女性の個人情報を複数回閲覧したという。
問題なのは、処分の甘さもさることながら、不祥事を公表しないこと、再発防止策も明らかにされないことだ。
全国で相次いだ警察不祥事を受けて、警察庁は「情報公開の推進」を掲げ、懲戒処分の発表の指針を2004年に改正。(1)職務に関係する行為についての処分は全件を発表する―とした。ただ、(2)私的な行為に関する処分は停職以上を発表する―ともしている。
県警監察課は今回、(2)に沿って、公表しなかったとする。県警のシステムを職務権限を使って不正利用することは、職務に関係しているのではないか。これ以上不祥事が発覚するのを恐れて、無理やり(2)にあてはめたのではないか。強い疑問がある。
警察の持つ個人情報の保護は昨年、強行採決で成立した特定秘密保護法にも通じる問題だ。
特定秘密を扱える人かどうかを判断する「適性評価」は、本人の精神疾患の有無や飲酒の節度、経済的状況のほか家族・同居人の氏名、現・旧国籍などを調べる。公務員、民間人合わせて10万人規模になる個人情報の収集は主に警察が担うとされる。
今回の問題は、これらの情報が不正利用され、そのことが市民に知らされない可能性があることも浮き彫りにした。
不祥事が起きたら矮小(わいしょう)化せず、速やかに公表する。その都度、再発防止策を丁寧に説明する。それが県民の信頼回復への道だ。
きょうも私たちの個人情報がのぞかれているかもしれない。その不安を残したままでは、警察への県民の協力は得られない。