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石牟礼道子さんが伝えたこと

2018-02-10 22:11:58 | 徒然

「苦海浄土」の作者である、石牟礼道子さんが亡くなられた。
実は私にとって、読み進めることができていない作品でもある。
昨年、NHKのE-テレ「100分で名著」で「苦海浄土」が取り上げられた時も、テキストの半分くらいで力尽きた(という感じ)。
それくらい、私にとって「苦海浄土」という本を読むことは、とてつもなくエネルギーを必要とするだけではなく、読みこなすだけの感性と想像力が無い、ということを思い知った作品でもある。

「苦海浄土」という作品は、「水俣病」患者さんたちの言葉を集めた作品だと石牟礼さんは、言っていたようだ。
そのため、第1回大宅壮一ノンフィクション賞を辞退している。
「私が書いたのではなく、水俣病の人たちが書かせた」という、思いが強かったのでは?とも言われている。

NHKのE-テレ「100分で名著」の解説を担当された批評家で随筆家でもある若松英輔さんは、「苦海浄土は未完のままなのでは」という内容のことをテキストの中で、書かれていた。
それほど、石牟礼さんにとって「水俣病」という病気で苦しむ人達の姿から感じ取る様々なコトは、終わりのないモノだったのかもしれない。

「苦海浄土」のテーマとなった「水俣病」は、戦後の3大公害病の一つとしてだけではなく、日本の公害病の象徴として、社会に大きな影響を与えた。
「水俣病」があったからこそ、新潟の「イタイタイ病」、三重県の「四日市ぜんそく」などが、公害病として認定され、企業だけではなく国策としての国の責任を問うことができたのだと思う。
「苦海浄土」という作品もまた、少なからず影響を与えたのでは?という気がしている。

と同時に、思い出した作品がある。
レイチェル・カーソンの「沈黙の春」という作品だ。
ご存じの方も多いと思う。
殺虫剤「DDT」が散布されることによって起きる、環境破壊を訴えた作品だ。
この2つの作品は、環境破壊によって引き起こされる悲劇を訴えている、という点において共通するテーマの作品だと思っている。
それだけではなく、この2つの作品はほぼ同じ時代に出版され、今でも社会に大きな影響を与え続けている。

1960年代、日本だけではなく先進国と呼ばれた国々が経済成長を目指していた時代の影に、寄り添い続けた女性たちの思いを今の私たちは、引き継いでいるだろうか?
石牟礼さんの訃報を聞き、昨今の「環境問題」という言葉が表層的になっているのでは?という気がしたのだった。