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企業富て、民貧する・・・労働分配率2年連続低下

2023-09-29 19:19:55 | アラカルト

日経新聞のWebサイトに、企業の利益は働く人に還元されないのだろうか?と、心配になるような記事があった。
日経新聞Webサイト:日本企業、たまる賃上げ力 労働分配率は49年ぶり低水準  

日経新聞の記事は、有料会員向けなので全文を読むコトができないのだが、同様の記事がBloombergのWeb版に掲載されていた。
Bloomberg Web版:日本の労働分配率が2年連続低下、過去最高益でも従業員に恩恵薄く

Bloombergは、日本の報道会社ではないので、記事の内容がやや厳しい書かれ方をされているように感じる。
対して日経新聞は、企業経営者も多く読む一般紙なので、「忖度」が働いたような印象の見出しだ。

Bloombergの記事では、2年連続低下とあるが、今年の春闘では賃金そのものは上がっているはずだ。
しかし「労働分配率が低下している」ということは、企業には賃上げ以上の利益があった、ということになる。
このような状況は、2年前からではなく「アベノミクス」によって、「バブルが崩壊した時のような、金融不安が起きた時の為に」という理由で、多くの企業が「内部留保」を増やし続けてきたことから始まっている、と考えている。

「アベノミクス」そのものの目的は、企業に対して手厚い政策を行うことで、賃金等を引き上げ、生活者の可処分所得を増やし経済を動かす、という「つもり」だったはずだ。
しかし、その思惑は当初から崩れ、企業の内部留保だけが増え続け、実質賃金は下がる一方、当然生活者の可処分所得は増えることが無い、というマイナスのスパイラルが起きていた。
それが表面化したのが、今回の「労働配分率の低水準」ということになるのでは?と、考えている。

日経の記事にある49年前と言えば、日本は「オイルショック」にあえいでいた頃だと思う。
石油が高騰し、街中からトイレットペーパーや洗剤等が消え去るような、パニックが起きていた。
そのような状況でありながらも、生活実感としては今よりも「明るさ」があったような、気がするのだ。
確かに、テレビの放送時間は夜11時半くらいで終了し、街中のネオンも早々に消えてしまう、という状況だった。
そのような、国民全体のエネルギー消費の切りつめ(というべきか?)何とかしようとしていた。
そんな状況の時に登場したのが、田中角栄という人物だったのだ。
田中氏の「日本列島改造論」はインパクトがあり、余剰となるお金のある人達や企業は、不動産投資に走ったのも事実だろう。
結果として、日本経済は持ち直す切っ掛けとなったのでは?という、印象を持っている。
(その後の、バブル経済を引き起こすコトになった不動産投資は、この時の経験も要因の一つなのでは?と考えている。勿論、「プラザ合意」後の急激な円高も大きく影響しているはずだ。)

今現在の岸田総理を見ていると、田中角栄氏のような力を感じることは無く、「これ」と言った経済政策のテコ入れもされているとは言い難い。
そのような状況の中で「労働分配率が下がり続けている」という状況は、日本経済にとってマイナスというだけではなく、「企業富て、民貧する」状況を打開しない限り、「失われた30年」の年数が伸びていき、日本経済そのものの地盤沈下となってしまうような気がする。