滋賀県の湖東地方には標高は低いけれど自然の造形や古い信仰の姿が見られる山が多く、そのほとんどの山は2~3時間程度で歩けることから何度も登りにきてしまいます。
竜王町には「東の竜王山・雪野山」と「西の竜王山・鏡山」と『竜王』の名で呼ばれる山が2山あり、蒲生野に住む人々からは神力を持つ竜族の支配者が住む山として信仰されてきたといいます。
先日は「雪野山(東の竜王山)」に登りましたので、今回は「鏡山(西の竜王山」を登りました。
竜王(龍王)と名の付く山は、この一帯だけでなく各地にありますので、竜王への雨乞いの神・水の神としての信仰の篤さは全国共通のものなのでしょう。
生きていくために水が必要なのはもとより、食べていくために必要な農耕は水が無ければ成り立たず、日照りが続けば雨乞いを、川が氾濫すれば鎮めるための祈りを奉げてきたのかと思います。
「鏡山・竜王山」へ登るのは3度目になり、今回は幾つかあるルートの中から「鳴谷渓谷ルート」で登り、山の反対側にある「竜王宮・貴船神社」まで行って折り返してきます。
このルートは三井アウトレットパーク滋賀竜王からスタートすることになり、広大な駐車場と道1本隔てただけの登山口に入ると、景色はすぐに一変します。
まずはやたらと案内板の多いザレ地からです。これだけ案内板があると道を間違うことはありえませんね。
しばらくは沢沿いの道を歩くことになり、流れる水音の清々しさを感じながら、ヒンヤリとした空気の中を歩ける。
沢に下りられる所から眺める「鳴谷渓谷・鳴谷の石床」は圧巻の光景で、この日は雨降りの翌日とあって水量が多く水に勢いがあります。
この川の少し上流には戦前まで石切り場があったといい、かつての石を切り出したトンネルの一部が残っているようで、この山からは良質の石が採取できたそうです。
そういった歴史を持つ石の山であることから、この見事な岩の渓谷が出来たのだと思われ、さらには渓谷の山側も岩の壁のような姿となっています。
登山道はゆるやかな上り坂になっていますが、雨の影響もあって道が川のようになって水が流れ落ちています。
靴が浸かるほどの流れではありませんが、心配なのはこの先にある「鳴谷池」が通れるかどうかです。
鳴谷池の周囲の道は増水するとが通れなくなり、迂回路を通らざるを得ないのですが、迂回路は人が通ることが少なく草が茂って気持ち悪い道なので何とか避けたい。
と、心配しながら「鳴谷池」へ着くと、水量は多いものの道は水没はしておらず、迂回の必要はなさそうなので一安心する。
池の向こうに見えるのは鏡山・竜王山でしょうか。山頂が近くなれば木段の急勾配を登ることになります。
道は迂回しなくても行けそうではあるものの、橋に足が届かないので片足はドボンになります。
靴の防水性能を信じて片足ドボンで橋の上に乗りますが、微妙に靴下が湿ったように感じつつも浸水はありませんでした。
橋の上から降りる時は、砂地までジャンプやね。
鳴谷池から先は沢や水場から離れて登山道に入ることになり、途中に「石切り場」への分岐、争いによって焼かれた経文の灰を運んだ薬師「経塚」という小山がある。
「石の広場」と名付けられてはいるが、シダに覆われて入るのも躊躇われるようなシダの広場を越えると、聖徳太子が598年に推古天皇の勅願所として創建したとされる「雲冠寺跡」があります。
「雲冠寺」には聖徳太子自らが刻んだ観世音菩薩を本尊としたという伝承があり、817年には嵯峨天皇の綸旨によって伝教大師・最澄が再興して天台宗寺院となったという。
滋賀県では比叡山延暦寺を中心として天台宗寺院が栄え、最澄を聖徳太子の生まれ変わりとして喧伝したことから聖徳太子伝説が数多く残ります。
しかし、雲冠寺も歴史の例にもれず天台宗の寺院だったがゆえに、織田信長の兵火によって全焼して廃寺となってしまったようです。
雲冠寺跡には崩れた石垣でしょうか、跡地には加工されたような岩がゴロゴロと転がっているが、廃寺になってからの長い年月を考えると、いつの時代かに整備や発掘が行われたのでしょう。
寺院跡の片隅には、苔むして腐葉土に半分埋もれかけている地蔵石仏があり、年代は不明なものの廃寺になった古寺の佇まいを伝える。
さらに上へ登って行くと「三尊石仏」の摩崖仏が祀られている。
「三尊石仏」は中央に阿弥陀如来立像を祀り、両端に脇侍の観音菩薩・勢至菩薩が祀られていて中世以前の摩崖仏だとされています。
雲冠寺跡からは急勾配の木段が続き、風通しが悪い道で湿度も高いこともあって汗が吹き出してくる。
当方はあまり汗をかく体質ではないので、サウナへ行っても汗が出るまで時間がかかるのですが、山歩きしていると吹き出すように汗がかけてしまいます。
そして最初のピークである「竜王山(標高384.8m)」の山頂へと到着。
竜王山の山頂は周囲が木に囲まれているため展望はなく、山頂は通り抜けるだけになりますが、ここで道の駅「竜王かがみの里」からの「大谷池ルート」と合流します。
間違いやすいのですが、この山には「竜王山の山頂標識のある場所」と「二等三角点のある鏡山山頂」の2つがあり、ピークは別々です。
竜王山の山頂より鏡山の三角点山頂の方が20cm低くなっていますので最高地点は竜王山ですが、眺望があるのは鏡山三角点山頂です。
山頂付近で景色を眺めたりしてウロウロしていると、まだ登山道はその先に続いているようであり、「立石山」方面を示す看板がありました。
帰りに鳴谷池の東屋で会った方に教えてもらったのですが、この山は鏡山~立石山~タムシバ山~古城山~城山~吉祥寺山へと縦走できるコースになっているようです。
目の前に見えるのは三上山。三上山の近くまで緑に覆われた樹林が続く。
琵琶湖ははっきりと確認出来ませんが、奥に見える峰々は琵琶湖の向こうにある比叡山でしょうか。
ピストンの折り返しは鏡山の山頂となりますが、足を延ばして竜王山から下山方向とは反対側にある「貴船神社(龍王宮)」まで下って参拝します。
「貴船神社(龍王宮)」は八大竜王のひとつ摩耶斯竜神が竜王宮として祀られ、八大竜王は雨の神・水の神とされますから雨乞いの神として信仰されてきたようです。
貴船神社(龍王宮)ではかつて「雨乞い踊り」が奉納されていたそうですが、人手不足や後継者不足によって現在は神事のみが執り行われているといいます。
山の上部で樹木に囲まれながら祀られている巨大な磐座は、まさに龍神が宿る巌と言えるような壮観さと圧倒的な迫力があります。
磐座の下部には結界が張られた祠が祀られているが、龍王宮直下の祠の位置からだと磐座が聳え立ってしまって見上げても全体が見えなくなる。
直下の場所は狭いのでかつて奉納されたという「雨乞い踊り」は、下に建てられた拝殿のような建物の前のスペースで奉納されたのではないかと思う。
貴船神社(龍王宮)には龍神を祀る磐座の他、左に巨大な磐座があるのですが、ふっと思ったのは左の磐座は見方によれば舟のようにも見えます。
京都の貴船神社は御祭神に「高龗神」と「闇龗神」の2柱の水の神を祀りますが、玉依姫の御神霊が「黄色の船」に乗って現れたとの由緒からして舟=水と捉えられます。
ところで、登山道でササユリが咲いているのを発見!
今年のササユリはどこに見に行こうかと迷っていた中、想像をしていなかった場所での発見は嬉しい限りです。
花が数個咲いている小さな群生では、少し見頃を過ぎた花もあったものの、充分に鑑賞できるササユリも3つくらい咲いていました。
雄しべの色が紅色の花と黄味を帯びた花がありましたが、種類の差なのか開花時期の微妙な違いなのか。
鏡山・竜王山は峡谷あり、池あり、古寺の廃寺跡や摩崖仏あり、巨大な磐座ありと低いながらも盛りだくさんに楽しめる山です。
鳴谷池の東屋で近隣の山のことを教えてもらった方は“この辺りの山は全て制覇した”とおっしゃっておられました。
湖東・湖南地方の周辺には数多くの低山があり、登り切れないほどの数の山のピークがあるようですね。
竜王町には「東の竜王山・雪野山」と「西の竜王山・鏡山」と『竜王』の名で呼ばれる山が2山あり、蒲生野に住む人々からは神力を持つ竜族の支配者が住む山として信仰されてきたといいます。
先日は「雪野山(東の竜王山)」に登りましたので、今回は「鏡山(西の竜王山」を登りました。
竜王(龍王)と名の付く山は、この一帯だけでなく各地にありますので、竜王への雨乞いの神・水の神としての信仰の篤さは全国共通のものなのでしょう。
生きていくために水が必要なのはもとより、食べていくために必要な農耕は水が無ければ成り立たず、日照りが続けば雨乞いを、川が氾濫すれば鎮めるための祈りを奉げてきたのかと思います。
「鏡山・竜王山」へ登るのは3度目になり、今回は幾つかあるルートの中から「鳴谷渓谷ルート」で登り、山の反対側にある「竜王宮・貴船神社」まで行って折り返してきます。
このルートは三井アウトレットパーク滋賀竜王からスタートすることになり、広大な駐車場と道1本隔てただけの登山口に入ると、景色はすぐに一変します。
まずはやたらと案内板の多いザレ地からです。これだけ案内板があると道を間違うことはありえませんね。
しばらくは沢沿いの道を歩くことになり、流れる水音の清々しさを感じながら、ヒンヤリとした空気の中を歩ける。
沢に下りられる所から眺める「鳴谷渓谷・鳴谷の石床」は圧巻の光景で、この日は雨降りの翌日とあって水量が多く水に勢いがあります。
この川の少し上流には戦前まで石切り場があったといい、かつての石を切り出したトンネルの一部が残っているようで、この山からは良質の石が採取できたそうです。
そういった歴史を持つ石の山であることから、この見事な岩の渓谷が出来たのだと思われ、さらには渓谷の山側も岩の壁のような姿となっています。
登山道はゆるやかな上り坂になっていますが、雨の影響もあって道が川のようになって水が流れ落ちています。
靴が浸かるほどの流れではありませんが、心配なのはこの先にある「鳴谷池」が通れるかどうかです。
鳴谷池の周囲の道は増水するとが通れなくなり、迂回路を通らざるを得ないのですが、迂回路は人が通ることが少なく草が茂って気持ち悪い道なので何とか避けたい。
と、心配しながら「鳴谷池」へ着くと、水量は多いものの道は水没はしておらず、迂回の必要はなさそうなので一安心する。
池の向こうに見えるのは鏡山・竜王山でしょうか。山頂が近くなれば木段の急勾配を登ることになります。
道は迂回しなくても行けそうではあるものの、橋に足が届かないので片足はドボンになります。
靴の防水性能を信じて片足ドボンで橋の上に乗りますが、微妙に靴下が湿ったように感じつつも浸水はありませんでした。
橋の上から降りる時は、砂地までジャンプやね。
鳴谷池から先は沢や水場から離れて登山道に入ることになり、途中に「石切り場」への分岐、争いによって焼かれた経文の灰を運んだ薬師「経塚」という小山がある。
「石の広場」と名付けられてはいるが、シダに覆われて入るのも躊躇われるようなシダの広場を越えると、聖徳太子が598年に推古天皇の勅願所として創建したとされる「雲冠寺跡」があります。
「雲冠寺」には聖徳太子自らが刻んだ観世音菩薩を本尊としたという伝承があり、817年には嵯峨天皇の綸旨によって伝教大師・最澄が再興して天台宗寺院となったという。
滋賀県では比叡山延暦寺を中心として天台宗寺院が栄え、最澄を聖徳太子の生まれ変わりとして喧伝したことから聖徳太子伝説が数多く残ります。
しかし、雲冠寺も歴史の例にもれず天台宗の寺院だったがゆえに、織田信長の兵火によって全焼して廃寺となってしまったようです。
雲冠寺跡には崩れた石垣でしょうか、跡地には加工されたような岩がゴロゴロと転がっているが、廃寺になってからの長い年月を考えると、いつの時代かに整備や発掘が行われたのでしょう。
寺院跡の片隅には、苔むして腐葉土に半分埋もれかけている地蔵石仏があり、年代は不明なものの廃寺になった古寺の佇まいを伝える。
さらに上へ登って行くと「三尊石仏」の摩崖仏が祀られている。
「三尊石仏」は中央に阿弥陀如来立像を祀り、両端に脇侍の観音菩薩・勢至菩薩が祀られていて中世以前の摩崖仏だとされています。
雲冠寺跡からは急勾配の木段が続き、風通しが悪い道で湿度も高いこともあって汗が吹き出してくる。
当方はあまり汗をかく体質ではないので、サウナへ行っても汗が出るまで時間がかかるのですが、山歩きしていると吹き出すように汗がかけてしまいます。
そして最初のピークである「竜王山(標高384.8m)」の山頂へと到着。
竜王山の山頂は周囲が木に囲まれているため展望はなく、山頂は通り抜けるだけになりますが、ここで道の駅「竜王かがみの里」からの「大谷池ルート」と合流します。
間違いやすいのですが、この山には「竜王山の山頂標識のある場所」と「二等三角点のある鏡山山頂」の2つがあり、ピークは別々です。
竜王山の山頂より鏡山の三角点山頂の方が20cm低くなっていますので最高地点は竜王山ですが、眺望があるのは鏡山三角点山頂です。
山頂付近で景色を眺めたりしてウロウロしていると、まだ登山道はその先に続いているようであり、「立石山」方面を示す看板がありました。
帰りに鳴谷池の東屋で会った方に教えてもらったのですが、この山は鏡山~立石山~タムシバ山~古城山~城山~吉祥寺山へと縦走できるコースになっているようです。
目の前に見えるのは三上山。三上山の近くまで緑に覆われた樹林が続く。
琵琶湖ははっきりと確認出来ませんが、奥に見える峰々は琵琶湖の向こうにある比叡山でしょうか。
ピストンの折り返しは鏡山の山頂となりますが、足を延ばして竜王山から下山方向とは反対側にある「貴船神社(龍王宮)」まで下って参拝します。
「貴船神社(龍王宮)」は八大竜王のひとつ摩耶斯竜神が竜王宮として祀られ、八大竜王は雨の神・水の神とされますから雨乞いの神として信仰されてきたようです。
貴船神社(龍王宮)ではかつて「雨乞い踊り」が奉納されていたそうですが、人手不足や後継者不足によって現在は神事のみが執り行われているといいます。
山の上部で樹木に囲まれながら祀られている巨大な磐座は、まさに龍神が宿る巌と言えるような壮観さと圧倒的な迫力があります。
磐座の下部には結界が張られた祠が祀られているが、龍王宮直下の祠の位置からだと磐座が聳え立ってしまって見上げても全体が見えなくなる。
直下の場所は狭いのでかつて奉納されたという「雨乞い踊り」は、下に建てられた拝殿のような建物の前のスペースで奉納されたのではないかと思う。
貴船神社(龍王宮)には龍神を祀る磐座の他、左に巨大な磐座があるのですが、ふっと思ったのは左の磐座は見方によれば舟のようにも見えます。
京都の貴船神社は御祭神に「高龗神」と「闇龗神」の2柱の水の神を祀りますが、玉依姫の御神霊が「黄色の船」に乗って現れたとの由緒からして舟=水と捉えられます。
ところで、登山道でササユリが咲いているのを発見!
今年のササユリはどこに見に行こうかと迷っていた中、想像をしていなかった場所での発見は嬉しい限りです。
花が数個咲いている小さな群生では、少し見頃を過ぎた花もあったものの、充分に鑑賞できるササユリも3つくらい咲いていました。
雄しべの色が紅色の花と黄味を帯びた花がありましたが、種類の差なのか開花時期の微妙な違いなのか。
鏡山・竜王山は峡谷あり、池あり、古寺の廃寺跡や摩崖仏あり、巨大な磐座ありと低いながらも盛りだくさんに楽しめる山です。
鳴谷池の東屋で近隣の山のことを教えてもらった方は“この辺りの山は全て制覇した”とおっしゃっておられました。
湖東・湖南地方の周辺には数多くの低山があり、登り切れないほどの数の山のピークがあるようですね。
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