北大路公子著『生きていてもいいかしら日記』(PHP文芸文庫2012年6月1日PHP研究所発行)を読んだ。
裏表紙にはこうある。
40代、独身。好きなもの、昼酒。座右の銘は「好奇心は身を滅ぼす」。“いいとこなし"に見えるけれど、なぜかおかしいキミコの日々。「結婚しないの?」と聞かれた時の答え方、圧力鍋との15年戦争、父のゴミ分別の不可解なルール、朝はなぜ眠いのかについての考察など、日常の出来事に無駄な妄想で切り込んでいく。読んでも何の役にも立たないけれど、思わず笑いがこみあげて、不思議と元気が出てくるエッセイ集。
北大路さんの嫌味がなく、明るい自虐ネタがさく裂する。行動範囲もほぼ家の中で、たまに居酒屋くらいなのにオモロイ話がゾロゾロ続く。
偉人伝が好きな北大路さん、
「世の中には努力して頑張っている人がこんなにたくさんいるのだから、私はそれほど頑張らなくてもいいや」という人生観を確立できた。
「光回線いかがっすかー」と電話をかけてくる長浜ノリコ(仮名)はしつこい。
最初に「奥様ですね」と決めつけたノリコに、キミコは言う。「私はわからない。わかる夫は留守だ」
ところが最近、その長浜ノリコの態度が微妙に変化してきたのである。電話の曜日と時間帯をずらし、そのすべてにおいて「夫」の不在を確認すると、「ではいつならご在宅でしょうか」と畳みかける
・・・
かくして、世界中どこにも実在しない私の夫(推定氏名・北大路浩一)を巡り、長浜ノリコと私の闘いは本格的に火蓋を切った。
{もう一言}
ノリコとの勝負より北大路浩一の獲得に力を注ぐべきだったのでは、とも思います。
私は常に「佐藤浩市がとなりに越してきた場合」を考えて生きている。
解説―疑惑と告白 恩田陸
「この人に一生ついていこうと決めました。」と絶賛。「任せなさい、佐藤浩市は!」と悪乗りしている。
本書は、(「サンデー毎日」連載のエッセイをもとに、)2008年1月毎日新聞社より刊行された作品に、微妙に加筆・修正し、文庫化したものです。(「微妙に」って書いてあったが、何??)
私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)
ともかく笑える。この時代、本読んでこれ以上深刻になってもしかたない。笑えるのが一番だ。自虐ネタ満載だが、すべてが明るく楽しい。
北王路公子(きたおうじ・きみこ)
1963年札幌市生まれ。札幌市在住。大学卒業後、帰郷して祖母の介護をしながら暮らす。その後、フリーライターとして新開の書評欄や文芸誌などに寄稿。
20代の頃に書いた小説が文芸誌の新人賞を。
2001年頃からインターネットで「モヘジ」の名で日記を綴り始める。
2005年に『枕もとに靴』、2006年に『最後のおでん』を寿郎社から出版。
「公子」は北海道に移転してきた日本ハムファイターズから「ハム子」ってことでつけられた。
2006年から「サンデー毎日」でエッセイの連載を開始。
座右の銘は、覇気のなさから「好奇心は身を滅ぼす」。
著書に、『枕もとに靴――ああ無情の泥酔日記』『最後のおでん――続・ああ無情の泥酔日記』『ぐうたら旅日記――恐山・知床をゆく』『石の裏にも三年 キミコのダンゴ虫的日常』