戦後登場した「第三の新人」の吉行淳之介、小島信夫、安岡章太郎、庄野潤三や、その前後に登場した丸谷才一、長谷川四郎の短編小説を村上春樹さんが同じ作家の視点から読み解く読書案内です。アメリカのプリンストン大学の大学院で学生達と一緒に系統的にじっくりと読みこんで、それについてみんなでディスカッションした結果をもとにしています。
何もたいしたこと起こらなかったり、わけのわからないことが起こったり、不思議で単純でない小説が多くなってきた気がします。私はそんな小説もけして嫌いではありませんが、このような小説は自然に作家の身体から湧き出してきて、感覚的に書いているのではないのかと、思っていました。この短編小説案内を読むと、作家は意識的、あるいは無意識でも、かなりいろいろ工夫して構成し、比喩を使っていることがわかります。批評家とは全く違う、村上さんの面白い分析が出ています。
内容については興味ある人は文春文庫なので読んでいただくとして、以下、前書きにあたる「僕にとっての短編小説」の部分を要約します。村上さんが率直に小説創作方法を語っていて、読者としてなかなか面白い部分です。小説を作るためには、天才の方法が一般の人に参考になるとも思えませんが。
短編は、アイデアひとつ、風景ひとつ、台詞一行が頭に浮かぶと、机に座り書き始める。プロットも構成も必要なし。頭の中にある一つの断片からどんな物語が立ち上がっていくか、その成り行きを眺め、それをそのまま文章に移し替えていけばいいわけです。たいてい数日間で終わります。
「その女から電話がかかってきたとき、僕らは台所に立ってスパゲッティーをゆでているところだった」という一行から「ねじまき鳥と火曜日の女たち」という短編を作った。5年後に大きな可能性を感じ、わくわくした特別な感覚があり、2年を経て長編小説「ねじまき鳥クロニクル」になった。
どんな作家も短編小説の傑作は十に一つか、五にひとつです。短期間に集中的に数をまとめて作ることが必要です。
20代、30代にかけて外国の小説を英語で読んでいて、日本語の小説をほとんど読まなかった。
追記
一般の人が質問・意見を出し、村上春樹さんが全部読んで、そのうち幾つかに答えるという、村上朝日堂が、6年ぶりに3ヶ月間限定復活しています。ただし、5月15日がメールの締め切りです。
作家の人をこんな形で多面的に知るのも面白いものです。それにしても村上春樹さんはクールな印象なのに、サイン会どころでなく大変な労力がかかる読者サービスをよくやりますね。
http://opendoors.asahi.com/asahido/index.html
何もたいしたこと起こらなかったり、わけのわからないことが起こったり、不思議で単純でない小説が多くなってきた気がします。私はそんな小説もけして嫌いではありませんが、このような小説は自然に作家の身体から湧き出してきて、感覚的に書いているのではないのかと、思っていました。この短編小説案内を読むと、作家は意識的、あるいは無意識でも、かなりいろいろ工夫して構成し、比喩を使っていることがわかります。批評家とは全く違う、村上さんの面白い分析が出ています。
内容については興味ある人は文春文庫なので読んでいただくとして、以下、前書きにあたる「僕にとっての短編小説」の部分を要約します。村上さんが率直に小説創作方法を語っていて、読者としてなかなか面白い部分です。小説を作るためには、天才の方法が一般の人に参考になるとも思えませんが。
短編は、アイデアひとつ、風景ひとつ、台詞一行が頭に浮かぶと、机に座り書き始める。プロットも構成も必要なし。頭の中にある一つの断片からどんな物語が立ち上がっていくか、その成り行きを眺め、それをそのまま文章に移し替えていけばいいわけです。たいてい数日間で終わります。
「その女から電話がかかってきたとき、僕らは台所に立ってスパゲッティーをゆでているところだった」という一行から「ねじまき鳥と火曜日の女たち」という短編を作った。5年後に大きな可能性を感じ、わくわくした特別な感覚があり、2年を経て長編小説「ねじまき鳥クロニクル」になった。
どんな作家も短編小説の傑作は十に一つか、五にひとつです。短期間に集中的に数をまとめて作ることが必要です。
20代、30代にかけて外国の小説を英語で読んでいて、日本語の小説をほとんど読まなかった。
追記
一般の人が質問・意見を出し、村上春樹さんが全部読んで、そのうち幾つかに答えるという、村上朝日堂が、6年ぶりに3ヶ月間限定復活しています。ただし、5月15日がメールの締め切りです。
作家の人をこんな形で多面的に知るのも面白いものです。それにしても村上春樹さんはクールな印象なのに、サイン会どころでなく大変な労力がかかる読者サービスをよくやりますね。
http://opendoors.asahi.com/asahido/index.html