シェイクスピア作「タイタス・アンドロニカス」を観る
俳優の友人が出演するので、遠路はるばる彩の国さいたま芸術劇場まで行って、蜷川幸雄演出によるシェイクスピア作「タイタス・アンドロニカス」を観た。シェイクスピア全作品中最も悲惨といわれる初期の作品だ。この劇は、シェイクスピア生誕の地Stratford-upon-Avonでシェイクスピア全37作品を1年間で上演しようという世界初の「シェイクスピア・フェスティバル」に正式に招待を受けている。
久しぶりの(小学校の学芸会以来?)芝居見物だが、やはりすばらしい。TVで見る芝居とは別物で、まったく違っていて華がある。出演者はほとんどの場合、観客席の通路から登場するのも臨場感がある。俳優も女優も声が良く通り、キビキビした動きだ。服装も、持ち物もデザインが良く、少しもチャチな感じがしない。慣れない私にとっては日常会話にない翻訳口調、シェイクスピアらしい高度な言い回しが気になったが、それも最初だけだった。場内はほぼ満席で、関東地区での最終公演日であったためもあろうが、カーテンコールが数回続いた。
それにしても、悲惨な復讐劇を書いたものだ。なにしろ、冒頭から復讐の繰り返しで、途中つぎつぎに8人、最後に5人が殺され、生き残る人がほとんどいないというすさまじさ。しかし、そこはニナガワ演出、ほとばしる血を赤い糸できれいに見せ、白で統一した舞台も簡素で美しい。最後も原作にない、わずかだが希望を感じさせる演出になっている。
終演後、楽屋へ寄った(麻実れいの素顔を拝めた)。今後は富山、大阪、新潟と6月4日まで公演した後、6月16日からStratford-upon-Avonのロイヤル・シェイクスピア・シアターでの公演となるとの話で、友人もはりきっていた。
帰りは、興奮のせいかいつになく750円奮発して湘南新宿ラインのグリーンで横浜まで帰った。普通のグリーンは初めてだが、ちょっと高い2階席でいつもの町を眺めるのも良いものだ。
主な出演者は、吉田鋼太郎、麻実れい、小栗旬、真中瞳、壤晴彦、鶴見辰吾など。
タイタスのあらすじは、以下のHPで富山公演のパンフレットをご覧ください。
http://www.aubade.or.jp/titus06/titus.html
蛇足
舞台には歴史の教科書で見たローマ建国神話の狼の乳を飲む双子の大きな像が置いてある。
兄弟が争い、弟が王座についた。兄とその息子は殺され、娘も子を産まないようにと巫女にされた。しかしこの巫女が乱暴されて双子を産む。これがロムルスとレムスである。双子は川に捨てられるが、雌狼に乳をもらい、羊飼いに拾われる。二人は成長すると仲間の羊飼い達とギャング集団を形成し、ついに新都市国家を築く。しかし初代王座をめぐって争いが生じ、レムスは殺されてロムルスが王となる。ローマの名は彼にちなんだものである。建国の神話がこんな残虐なもので良いのだろうか。
俳優の友人が出演するので、遠路はるばる彩の国さいたま芸術劇場まで行って、蜷川幸雄演出によるシェイクスピア作「タイタス・アンドロニカス」を観た。シェイクスピア全作品中最も悲惨といわれる初期の作品だ。この劇は、シェイクスピア生誕の地Stratford-upon-Avonでシェイクスピア全37作品を1年間で上演しようという世界初の「シェイクスピア・フェスティバル」に正式に招待を受けている。
久しぶりの(小学校の学芸会以来?)芝居見物だが、やはりすばらしい。TVで見る芝居とは別物で、まったく違っていて華がある。出演者はほとんどの場合、観客席の通路から登場するのも臨場感がある。俳優も女優も声が良く通り、キビキビした動きだ。服装も、持ち物もデザインが良く、少しもチャチな感じがしない。慣れない私にとっては日常会話にない翻訳口調、シェイクスピアらしい高度な言い回しが気になったが、それも最初だけだった。場内はほぼ満席で、関東地区での最終公演日であったためもあろうが、カーテンコールが数回続いた。
それにしても、悲惨な復讐劇を書いたものだ。なにしろ、冒頭から復讐の繰り返しで、途中つぎつぎに8人、最後に5人が殺され、生き残る人がほとんどいないというすさまじさ。しかし、そこはニナガワ演出、ほとばしる血を赤い糸できれいに見せ、白で統一した舞台も簡素で美しい。最後も原作にない、わずかだが希望を感じさせる演出になっている。
終演後、楽屋へ寄った(麻実れいの素顔を拝めた)。今後は富山、大阪、新潟と6月4日まで公演した後、6月16日からStratford-upon-Avonのロイヤル・シェイクスピア・シアターでの公演となるとの話で、友人もはりきっていた。
帰りは、興奮のせいかいつになく750円奮発して湘南新宿ラインのグリーンで横浜まで帰った。普通のグリーンは初めてだが、ちょっと高い2階席でいつもの町を眺めるのも良いものだ。
主な出演者は、吉田鋼太郎、麻実れい、小栗旬、真中瞳、壤晴彦、鶴見辰吾など。
タイタスのあらすじは、以下のHPで富山公演のパンフレットをご覧ください。
http://www.aubade.or.jp/titus06/titus.html
蛇足
舞台には歴史の教科書で見たローマ建国神話の狼の乳を飲む双子の大きな像が置いてある。
兄弟が争い、弟が王座についた。兄とその息子は殺され、娘も子を産まないようにと巫女にされた。しかしこの巫女が乱暴されて双子を産む。これがロムルスとレムスである。双子は川に捨てられるが、雌狼に乳をもらい、羊飼いに拾われる。二人は成長すると仲間の羊飼い達とギャング集団を形成し、ついに新都市国家を築く。しかし初代王座をめぐって争いが生じ、レムスは殺されてロムルスが王となる。ローマの名は彼にちなんだものである。建国の神話がこんな残虐なもので良いのだろうか。