hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

バームクーヘンのホレンディッシェ・カカオシュトゥーベ

2018年01月16日 | 食べ物

 

ドイツ・ハノーファーで約100年の伝統があるというホレンディッシェ・カカオシュトゥーベ HOLLANDISCHE KAKAO-STUBEを食べた。

 

ドイツのバウムクーヘンは、「油脂には必ずバターを使うこと、ベーキングパウダー(膨張剤)を使ってはいけない」などの厳格な基準があるという。

学芸大学駅近くに1店舗しかない「MATTERHORN マッターホーン」風に切ってみました。

 

パサパサ感がなく、しっとりとしていて、周りの溶かした砂糖の食感がさわやか。

そこらで売っているバウムクーヘンはもう食べられれなくなります。

東京では、伊勢丹新宿店と三越銀座店でしか売っていません。

 

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島田雅彦『深読み日本文学』を読む

2018年01月15日 | 読書2

 

 島田雅彦著『深読み日本文学』(インターナショナル新書016、2017年12月12日集英社インターナショナル発行)を読んだ。

 

 裏表紙にはこうある。

「色好みの伝統」「サブカルのルーツは江戸文化」「一葉の作品はフリーター小説」など、古典から漱石・一葉らの近代文学、太宰・安吾らの戦後作品、さらにAI小説までを、独自の切り口で分析。 創造的誤読、ユーモアの持つ効能、権威を疑う視線といった、作家ならではのオリジナリティあふれる解釈で、日本文学の深奥に誘う。

 

 以下、私が引っ掛かったところだけ紹介。

 

序章 文学とはどのような営みなのか

「あの世」は言語によって生まれた

 75000年前より古い地層からは狩りのためなど用途がわかるものしか出土していない。一方、75000年前に現生人類が住んでいた洞窟からは何に使っていたかわからない模様が刻まれた土片(オーカー)が発見された。一口に言えば「アート」である、物事を象徴化・抽象化する能力があり、現実にはないものを記号に置き換えるという言語を使っていたことになる。

 

第3章 恐るべき漱石

「ヨーロッパの三人称客観描写の語り手」は、神のような固定した視点でもって、あまねく事象を俯瞰する。

「漱石の写生文の語り手」の視点は、対象と距離を取っているものの、時には大きく離れ、また時には相手に接近し、浮遊した感覚となる。

 

第5章 エロス全開――スケベの栄光

 谷崎作品の特徴は、女性の肉体を博物学者のごとく観察し、徹底的に描写していることです。・・・その筆致は、ほとんど視姦レベルです。

 

 ・・・『猫と庄造と二人のをんな』・・・には「こうはなりたくないよね」と思わせるような人間ばかりが出てきます。・・・猫を愛しすぎるがあまりおかしくなっていく主人公と、猫に嫉妬する妻、そして猫を引き取って男の心をつなぎとめたいと思う前妻を描いた作品です。この小説を読むと、「ああ、人間はここまでくだらなくなれるのか」と脱力します。

 

第7章 ボロ負けのあとで――戦中、戦後はどのように描かれたか

「無頼派」(太宰治、坂口安吾、織田作之助、石川淳)第二次大戦直後の混乱期、反俗・反権威・反道徳的な作風。自分の弱さに開き直り、自ら積極的に社会の顰蹙を買いにいく。

 安吾が『堕落論』を通して行ったアジテーションは七〇年後の現在も有効です。私たちは戦争や震災という非常事態を経験し、多少は悟りました。食うに困ったり、親は子を亡くしたり、生き延びるためにエゴイズムを発揮したりしながらも、人を助けたりする。やるせない世の中に絶望し、堕ちるとこまで堕ちてもなお、やけっぱちの善意を発揮してしまう。だからこそ私たちは幾多の災厄を生き延びてこられたのです。政府や国家に救われたわけではありません。

 

第10章 テクノロジーと文学――人工知能に負けない小説

ストーリーデリング

 例えばハリウッド映画では、100分の作品では50分で折り返すのが基本構造。前半はふんだんに伏線をちりばめ、後半は伏線を回収する。75分くらいの終盤で主人公を最大の危機に陥れる。ヒーローや敵役には必ず弱点を与える。起承転結のどこかに一つサプライズを入れる。このようなエンタテインメントには人工知能が入りやすい。

 

 

私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

 

 日本文学史としては初心者ならお勧めできる。いかにも「サヨク」を名乗る著者らしい小気味よい皮肉が混じるが、大半はいろいろなところで既に語られている範囲にとどまる。

 

 各作家の文体を分析しているところは、さすが優れた作家だと感心した。

 

 

島田雅彦

1961年東京都生まれ。小説家。法政大学国際文化学部教授。東京外国語大学ロシア語学科卒。

1983年大学在学中に発表した『優しいサヨクのための嬉遊曲』が芥川賞候補。

1984年『夢遊王国のための音楽』で野間文芸新人賞受賞

1992年『彼岸先生』泉鏡花文学賞受賞

2006年『退廃姉妹』伊藤整文学賞受賞

2008年『カオスの娘』で芸術選奨文部科学大臣賞受賞

2010年下期から芥川賞選考委員

2016年『虚人の星』で毎日出版文化賞受賞

その他、『小説作法ABC』 など著書多数。

 

 

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EPEEでランチ

2018年01月14日 | 食べ物


一昨年の初詣の帰り道、ドン・キホーテ裏通りをぶらぶらし、初めて「ブーランジェリー・ビストロ・エペ Boulangerie Bistro EPEE」に入った。

EPEEエペとはフェンシングの剣のことで、ベーカリーEPEEでもある。

さらに、11月、ビストロ・エペが満員で、同じ建物の2階のイタリアの郷土料理の店、ヴィッラ・マニョーリアでランチした。

今年1月11日、13時近くなら空いているだろうと、EPEEに再挑戦。

調子が悪かった入口のドアが引き戸に変わっていた。
ちょっとだけ中で待ってようやく二人分の席が空いた。
その後も次々と人が入ってくる。店内は女性たちのエネルギッシュな賑やかな話し声で一杯。

私は、メインランチ(1,550円)で、サラダ、スープ、骨付き鳥胸肉の赤ワイン煮込み、デザート(デセール)、コーヒー

相方は、ブイヤベースランチ(1,860円)で、サラダ、スープ、新潟港直送鮮魚のブイヤベース、デザート、コーヒー


サラダ

塩辛くない生ハムが美味しい。

 

スープ

濃厚で複雑なおいしさ。

パンは次々と新しく焼き上がったものを持って来てくれる。
このシステムはいくつかのパン屋さんのレストランであるが、ここのが一番おいしい。


鳥胸肉

ソースが多少辛かったが鶏肉はホークで崩れるほど柔らかい。


ブイヤベース

ムール貝は2つほど回ってきたが、鯛は一切れも来なかった。


デザートに、コーヒー

 

キビキビとサーブしてくれる女性が小気味よくて美人。

年に2回来たくなる店だ(どういう意味??)。

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東野圭吾『マスカレード・ナイト』を読む

2018年01月13日 | 読書2

 

 東野圭吾著『マスカレード・ナイト』(2017年9月20日集英社発行)を読んだ。

 

 『マスカレード・ホテル』『マスカレード・イブ』に続く第3弾。

 舞台のホテルと主な登場人物は同じだが、話は独立。「マスカレード」とは仮面舞踏会。

 

 匿名通報ダイヤルで謎の通報者の言う通り、警官がマンションの一室に入ると、若く美しい女性が殺されていた。睡眠薬を飲ませたうえ、感電死させたのだ。さらに、「犯人が12月31日午後11時、ホテル・コルテシア東京のカウントダウン・パーティ会場に現れる」という密告状が届く。

 

 警察はこのホテルに潜入捜査することとし、経験のある新田刑事はじめ多くの刑事を潜入させた。ホテルには前回の潜入捜査で協力、活躍した山岸尚美がコンシェルジュになっていた。

 

 そして、ホテルにはいかにも怪しい人たちが宿泊し、多くの出来事が起こる。なにしろカウントダウンパーティ『マスカレード・ナイト』には仮面を付けた数百人が集まるのだ。

 

 伏線をひとつだけご披露。

「ここ数十年で、時計は飛躍的に正確に時を刻むようになりました。・・・でもその結果、約束の時間に遅れる人が増えた、という説があるのを御存じですか」
「いや、知らないな。そうなんですか」
「下手に正確な時間がわかるものだから、ぎりぎりまで時間を自分のために使おうとしてしまうんです。結果、遅刻をする。そういう人には、あまり信頼の置けない時計を持たせるといいそうです。遅れているかもしれないと思うから、常に余裕を持って行動しなければなりません。」(p223)

 

 事件後、山岸がロサンゼルスに行くことになり、次回作はロサンゼルス?

 

 

本書は書下ろし

 

 

私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

 

 謎解きは、意外な犯人というより、無理筋の感がある。X氏とYが同一人物というのはルール違反になりませんか?

 

 登場人物が多すぎる。ホテル従業員だけで13人、警察が9人、客が14人。以下に整理した登場人物リストを入力しながらこの本を読んだのだが、名前を覚えるのに力を使ってしまい、話を整理する余力がなくなった。明らかにその後も本筋に無関係な人は、固有名詞を付けずに話を進めて欲しい。

 

 宿泊するだけでは分からないホテルの内部の仕事がわかったのは面白かった。しかし、コンシェルジュに持ち込まれる依頼がめちゃくちゃ無理難題で、本当にここまでしなくてはいけないとは思えなかった。

 

  

東野圭吾の履歴&既読本リスト

 

 

 

気になった文

 

「下手な鉄砲を撃ちまくるのが刑事の仕事です」(p111)

 

「子供の頃によく見ませんでした? ぴょんとジャンプしたらものすごく高くまで跳び上がって、なかなか落ちないんです。手足をばたばたさせたら、そのまま鳥みたいに飛べたりもする。そういう夢」(p246)

 

 

登場人物


山岸尚美(なおみ):ホテル・コルテシア東京のコンシェルジュ。 

吉岡和孝:ホテルの若手フロントクラーク。

久我:ホテルのフロントオフィスマネージャー。 
氏原祐作:ホテルのフロントオフィス・アシスタント・マネージャー。真面目でルールに厳格。新田に敵意。

土屋麻穂:ホテルのコンシェルジュ。山岸の後輩。

杉下:ベルキャプテン

金子:料理長、調理課長

江上:宴会部宴会支配人

田倉:ホテルの宿泊部長。

浜島:ホテルのエグゼクティブ・ハウスキーパー

藤木:ホテル・コルテシア東京の総支配人

大木:フレンチレストランのマネージャー
藤沢:中華料理レストランの副調理課長

 

尾崎:管理官。ノンキャリア。
矢口:警視庁捜査一課係長。長身瘦躯。矢口班を率いる。

本宮:警視庁捜査一課。新田の先輩。ヤクザ顔負けの強面。

新田浩介:警視庁捜査一課。警部補。父親は日系企業の顧問弁護士。帰国子女。

関根: 警視庁捜査一課。新田の後輩。ベルボーイに変装。
稲垣:警視庁捜査一課係長。50代半ば。新田・本宮の上司で稲垣班を率いる。

能勢:警視庁捜査一課。矢口班。所轄で新田と一緒だった。

渡部:ベテラン刑事

上島:コンピュータやネットに強い若い刑事。

和泉春菜:ワンルームマンションで殺害。ペットのトリマー。28歳。

室瀬亜美:3年前に睡眠薬を飲まされ風呂場で感電死させられていた。

笠木美緒:2年前に被害に遭うところ危うく逃れた。

 

秋山久美子:ホテル・コルテシア東京の客。

ジョージ・ホワイト:ホテルの客。サンフランシスコ在住のビジネスマン。

日下部篤弥:ホテルの客。実は、以下、白字で、ホテルコルテシア北米の人事第二部長。

狩野妙子:日下部のことで、ホテルのコンセルジュに相談。特別支援学校教員。

仲根伸一郎:ホテルの客。

仲根緑:伸一郎と同じ部屋を予約。クレジットカード名は「まきはらみどり」

森沢光留(ひかる):モリサワ・クリニックの院長

浦辺幹夫:ホテルの客。本名は内山幹夫。以下、白字で、和泉春菜と付き合っていた。

曽野昌明:妻・万智子と息子・英太の3人で宿泊。

曽野英太:超望遠のカメラで和泉春菜の部屋を見ていた。

曽野万智子:旧姓木村。貝塚由里と高校からの知合い。

貝塚由里:ホテルの客。曽野昌明と不倫。万智子と高校からの知合い。

山下和之:バットマンの仮装

木乃伊男(キノヨシオ):ミイラの仮装

 

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山崎ナオコーラ『母ではなくて、親になる』を読む

2018年01月12日 | 読書2

 

 

山崎ナオコーラ著『母ではなくて、親になる』(2017年6月30日河出書房新社発行)を読んだ。

 

2012年に書店員男性と結婚し、2016年に37歳で第一子を出産したナオコーラさんの1年間の育児エッセイ。

本書発行時のインタビューでナオコーラさんはこう語っている。

「『素敵な母親イメージ』に向かって努力することでキラキラできる人と、そのイメージを負担に感じてしまう人と、両方いると思うんです。キラキラできる人は、母親イメージを大事にする方が絶対に良いと思うんですが、暗い気持ちになる人は、いったん『母親』という言葉を忘れて、『ただの親でいい。愛情と責任があれば十分』と考えてみるのもオススメです」(「ハピママ」)

 

 

表紙や目次などに挿入されているヨシタケシンスケ氏のイラストがカワユイ。

 

新生児:生まれてから一ヶ月までの赤ん坊

乳児:満一歳に満たない赤ん坊、 幼児:満一歳から小学校就学まで(児童福祉法)

 

「私のところにいる赤ん坊」という表現をしている。「私の赤ん坊」とか「うちの赤ん坊」とは書かない。これも赤ん坊を親の所有物としてではなく、一個の人間として見るというこの作家の表明だろう。

 

 

初出:Web河出(2016年6月~2017年3月)、その他9篇は書下ろし

 

 

私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

 

 育児エッセイだが、著者の強いこだわり故に明快な主張がある。著者は、男女平等と考え、父親と母親の役割も社会的な常識を乗り越えようと行動している。ただ、そのこだわりが強く、主張が多少キツイので、「ウ?」となるところがある。

 

 なんどもなんども「夫は経済力も判断力もないが・・・」と繰り返すのが、気になる。著者は夫を対等に見ていることははっきり理解できるのだが、もうわかっているのに、たびたび繰り返し過ぎる。

 

 

山崎ナオコーラ
1978年9月15日福岡県北九州市生まれ、埼玉県育ち、東京都在住。本名山崎直子。
國學院大學文学部日本文学科卒業後、会社員。
2004年「人のセックスを笑うな」でデビューし、文藝賞を受賞、芥川賞候補。
2006年『浮世でランチ』で野間文芸新人賞候補
2008年『カツラ美容室別室』で芥川賞候補、『論理と感性は相反しない』で野間文芸新人賞候補
2009年「手」で芥川賞候補、『男と点と線』で野間文芸新人賞候補
2010年『この世は二人組ではできあがらない』で三島由紀夫賞候補

2011年『ニキの屈辱』で芥川賞候補

2013年『昼田とハッコウ』で野間文芸新人賞候補

2016年『美しい距離』で芥川賞候補、2017年島清恋愛文学賞受賞

その他、対談集『男友達を作ろう』、エッセイ集『指先からソーダ』『かわいい夫』

目標は、「誰にでもわかる言葉で、誰にも書けない文章を書きたい」。

モットーは、「フェミニンな男性を肯定したい」。

 

 

 

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東野圭吾『さまよう刃』を読む

2018年01月11日 | 読書2

 

東野圭吾著『さまよう刃』(角川文庫 ひ16-6、2008年5月25日発行)を読んだ。

 

裏表紙にはこうある。

長峰の一人娘・絵摩の死体が荒川から発見された。花火大会の帰りに、未成年の少年グループによって蹂躪(じゅうりん)された末の遺棄だった。謎の密告電話によって犯人を知った長峰は、突き動かされるように娘の復讐に乗り出した。犯人の一人を殺害し、さらに逃走する父親を、警察とマスコミが追う。正義とは何か。誰が犯人を裁くのか。世論を巻き込み、事件は予想外の結末を迎える――。重く哀しいテーマに挑んだ、心を揺さぶる傑作長編。

 

 10年前に妻を亡くした会社員・長峰重樹の一人娘、高校生の絵摩が死体で発見された。長峰に犯人の名と居場所を告げる密告電話がかかってくる。長峰はアパートへ向かい、告げられたところに鍵を見つけて、留守宅へ侵入する。多くのビデオテープがあったが、長峰は絵摩が犯人2人に犯される映像を見てしまい、激しい怒り、悲しみに襲われる。そこに偶然帰宅した犯人の一人・伴崎敦也を、思わず長峰は何回も何回も刺してしまう。虫の息の伴崎からもう一人の犯人・菅野快児の潜伏場所を聞き出し、長峰自身も警察に追われながらの快児追跡劇が始まる。

 どんなに残酷な犯罪を犯しても、厳しい刑を受けることがない少年たちの中には、そのことを見越して反省もせず、再犯に至る者がいる。少年犯罪の被害者は悲痛の叫び声を上げ、犯人を追う刑事も本音は正義とは一体何なのかと疑問を持つ。

 

 本書は、2004年12月に朝日新聞社より単行本として刊行された。

 

 

私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

 

 少女を薬などで無抵抗にしてから凛褥する場面が描かれるなどエグイ表現が登場する。犯罪を犯した少年というとまず更生という話になるが、そう簡単に話を終わらせないために、残酷な犯罪を詳しく描いているのだろう。しかし、男である私が読んでいても、酷い場面はきちんと読む気になれない。

 

 長峰の復讐心は伴崎敦也をめった刺しにした時点である程度醒めているのではと思った。困難を乗り越えてさらに復讐に燃える長峰の気持ちについていけない。菅野快児のさらなる悪辣ぶりや、身勝手な考えが描かれると、読む方の怒りも煮えたぎるのだが。

 

 

 

東野圭吾の履歴&既読本リスト

 

 

登場人物

 

長峰重樹:5年前に妻を亡くし娘の絵摩と二人暮らし。半導体メーカー勤務。熱中していた射撃を、ドライアイと老眼で止めた。娘の復讐のため、銃を持って菅野快児の行方を追う。変装し「吉川武雄」の名でペンション『クレセント』に泊まる。

長峰絵摩:長峰重樹の一人娘。10歳で母親を亡くす。高校1年生。花火大会の帰路、少年グループに襲われ、死亡。

 

中井誠:敦也・快児と、中学の同級、同時に高校中退で、不良仲間に引込まれている。リンチを恐れ、車を持ち出し事件に協力する。快児と敦也が犯人だと密告電話をする。

伴崎敦也(ともざき・あつや):通称アツヤ。快児と共に女性を襲っていた。長峰重樹に惨殺される。

菅野快児(すがの・かいじ):通称カイジ。主犯格。何人も女性を襲ってその様子を撮影し、脅迫していた。敦也が殺された事と未成年である事を利用して国家権力に取り入って間接的に重樹を追い詰める。

中井泰造:誠の父親。

菅野路子:快児の母親。飲み屋を経営。

 

伴崎幸代(ともざき・さちよ):敦也の母親。父親は郁雄。

 

丹沢和佳子:一人息子大志を亡くし、夫・祐二と離婚し、父親・隆明のペンション『クレセント』を経営。

木島隆明:蓼科牧場手前のペンション『クレセント』を経営。和佳子の父親。

多田野:ペンション『クレセント』のアルバイト。

 

小田切和夫:『週刊アイズ』の記者。

岩田忠弘:青少年更生研究会の弁護士。

 

鮎村:自殺した千晶の父親。警察へ赴き、原因は快児らの暴行と判る。妻は一恵。タクシー運転手。

村越優佳:快児と逃亡している少女。

 

織部孝史(おりべ・たかし):警視庁捜査一課の刑事。久塚班。28歳。

久塚:警視庁捜査一課の刑事。久塚班班長。

真野:警視庁捜査一課のベテラン刑事。通称・マーさん。

川崎:警視庁捜査一課の刑事。久塚班。織部の後輩。

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香山リカ・北原みのり『フェミニストとオタクはなぜ相性が悪いのか』を読む

2018年01月10日 | 読書2

 

 香山リカ・北原みのり著『フェミニストとオタクはなぜ相性が悪いのか 「性の商品化」と「表現の自由」を再考する』(2017年11月20日イースト・プレス発行)を読んだ。

 

 

 北原さんが大学院を止めてポルノ雑誌で編集のアルバイトを始めたとき、「エロ」業界が大きな利益を生む巨大業界であるとわかり、サブカルチャーやエロに「反体制」的なことを期待しても無理と知った。

 

「性の商品化」では、女性に自己決定権があれば良いとされるのかが議論される。

 

 JKビジネスについて「自分がやりたくてやっていることは、こっちが口出す必要はないんじゃないの」と女学生なども言う。いかに酷い状況に追い込まれて、手をつかまれてしまって、女の子が嫌だと逃げられるかどうか、想像して欲しい。

 私が診察室で会ってきた性売買をしている女性たちの多くは虐待を受けたり、崩壊過程で育ったりしているが、中には優秀な頭脳を持っていて、ナンバーワンになっても、病んで病院に来たり、なかには死んでしまう女性もいた。

 

 女性はいくら性と人格を切り離そうとしても人格の欠片みたいな、性的行為をしている時に付随している人格的なものが絶対あるわけです。

 日本の男の人は、国家からも社会からも「欲望をコントロールできないのは、自然なことだ」とか言って自分を動物化しておきながら、「女の体は利用できるんだ。男とはそういう生き物なんだ」とさんざん教育で刷り込まれている。そこに女の体が巻き込まれてしまう。

 

 主婦が英会話を習っていても夫に言わない。夫から「お前なんかが英語の勉強をして何になるんだ」とか、お金のことを言われ、これまでの経験から夫との会話の2,3フレーズ先まで読めるから用件以外の会話はしない。

 

 

「性の商品化」を防ごうとすると、「表現の自由」を制約するのはいけないとの声に阻まれる。

 

 少女への暴力表現が「ある種の権力に対する挑戦」だとした時の、ある種の権力って、何なのでしょう。正直、少女への暴力が溢れている社会で、どういう文脈で反権力になるのかわからないです。

 

 

モノを言う女はモテない悩み

 

 社会に関してモノを言う女を煙たがらずに魅力を感じて、「一緒にいきて行こうよ」と言える男が極めて少ないんじゃないか。

だから、この国の男にモテるということが不名誉なことだって切り替えればいいじゃないですか。男の人が変わることを求めなければいけないけど、今の段階でモテるのは、結構です、みたいな。

 

 

 

1章 「性の商品化」で論じられてきたこと
2章 「性差別」と認知できなくなっている「問題」
3章 日本のセックスレス
4章 性売買と愛国
5章 なぜ「性の売買」は問題なのか

 

 

私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

 

 確かに香山さんはオタク的ではあるが、オタク代表ではないので、タイトルには違和感がある。サブカル・オタクの精神科医とラジカルなフェミニストの対談集であるが、二人とも女性なので、男性社会・文化への反感では一致していて、その話が多い。オタク対フェミニストの対決議論はほとんどなく、副題にあるように『「性の商品化」と「表現の自由」を再考する』が対談の主なテーマになっている。

 

 

 

香山リカ(かやま・りか)

1960年北海道生まれ。東京医科大学卒。精神科医。立教大学現代心理学科教授。専門は精神病理学。
学生時代から雑誌などに寄稿。その後も、臨床経験を生かして、新聞、雑誌などの各メディアで、社会批評、文化批評、書評など幅広く活躍。

おとなの男の心理学』『<雅子さま>はあなたと一緒に泣いている』『雅子さまと新型うつ』『女はみんな『うつ』になる』『精神科医ですがわりと人間が苦手です』『親子という病』『弱い自分を好きになる本』『いまどきの常識』『しがみつかない生き方』『だましだまし生きるのも悪くない』『人生の法則』『できることを少しずつ』『若者のホンネ』『新型出生前診断と「命の選択」』『がちナショナリズム』『半知性主義でいこう 戦争ができる国の新しい生き方』『リベラルですが、何か?』『ノンママという生き方 ~子のない女はダメですか?~

 

北原みのり(きたはら・みのり)
1970年神奈川県生まれ。作家。津田塾大学卒。

1996年フェミニズムの視点で女性のためのセックストーイショップ「ラブピースクラブ」を設立。時事問題から普遍的テーマまでをジェンダーの観点から考察する。

著書『アンアンのセックスできれいになれた?』、『毒婦。 木嶋佳苗100日裁判傍聴記』、『さよなら、韓流』、『性と国家』。共著『奥さまは愛国』。

 

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東野圭吾『恋のゴンドラ』を読む

2018年01月09日 | 読書2

 

 東野圭吾著『恋のゴンドラ』(2016年11月5日実業之日本社発行)を読んだ。

 

 里沢温泉スキー場(野沢温泉スキー場がモデルらしい)を舞台に、男女の恋の物語。7つの連作短編集。

 

「ゴンドラ」

 広太は、同じ職場の契約社員の美雪と3年同棲し、迫られて結婚することになった。結婚前にもう一度だけと、合コンでであった桃実と里沢温泉スキー場に行った。桃実とゴンドラに乗った広太は、中に友達3人と一緒の婚約者の美雪を発見する。隠れて新しく買った服装にミラーレンズのゴーグルとフェイスマスクなので見つかる恐れはないと思うが、話しかけてくる桃実にハラハラする。ゴンドラを降りた瞬間、美雪は叫んだ。「あー! ももみ!」

 

「リフト」

 都内のホテルで働く男女、日田栄介、水城直也、月村春紀、木元秋菜が里沢スキー場にやってきた。日田は、遅れてやってきた土屋麻穂にひそかに好意を抱いていた。しかし、親友のプレーボーイの水城も、木元秋菜という彼女がいながら麻穂を狙っている。日田は麻穂に水城が秋菜が付き合っていることを教えて警戒するように注意する。

以下白字で、日田がはぐれていない時に、月村は麻穂と結婚することになったと皆に告げる。

 

「プロポーズ大作戦」

 日田は、新しくできた彼女の橋本さんにプロポーズを決意。水城のアイデアを受けて、サプライズのプロポーズを計画する。計画通りに物事は進行していくが、いざプロポーズを決行するというときに、とんでもない人物が現れる。

以下白字で、橋下さんの名前は美雪で、横から来てさらっていった男は、頭を丸めた広太だった。

 

「ゲレコン」

 自分が浮気相手だったことを知り失意に暮れる火野桃実は、広太と入籍した美雪に里沢スキー場でのコンパ(通称「ゲレコン」)のパンフレットを渡される。山本弥生と共に参加したが、何人目かで出会ったのが水城と日田だった。桃実は日田に告白をされるが、「ごめんなさい」と断った。ランチ無料チケットをもらった桃実は、でかけたホテルで颯爽と働く日田を見かけて驚く。

 

「スキー一家」

 月村が結婚した麻穂の父・土屋徹朗はスキー派で、スノーボードを毛嫌いしていた。彼女の家族とスキーに行った月村は自分がスノーボーダーであることを隠さなければならなかった。見事なスキー技術を見せる根津があらわれて・・・。

 

「プロポーズ大作戦 リベンジ」

 頼りない友人日田の桃実に対するプロポーズを後押ししようと、水城は弥生の協力を得て、里沢温泉スキー場での計画を立てる。しかし、土壇場で追い詰められたのは水城だった。

 

「ゴンドラ リプレイ」

 日田と付き合うことを迷っている桃実は、日田との可能性を見極めるために、水城、秋菜、月村、麻美、弥生、日田と再度里沢温泉スキー場に行った。日田は女性をリードするよりリードされる方が持ち味を発揮できるタイプだと桃実は気がつき好感を持った。そんな時に、桃実を浮気相手にした広太と、結婚した美雪がその彼女が同じゴンドラに乗り込んでくる。気付かれないようにしていた桃実だが、広太は、相手の方が誘ってきたとか、泊まりたいと言ったとか、胸の谷間を見せたとか、彼女がいるのを知ってアタックしてきたとか、とんでもないことを話し出す。桃実の頭の中で何かがスパークした。そして、・・・

 

初出:” Snow Boarder” 2016 vol.1~vol.3、POWDER SNOWBOARD SPECIAL、Skiカタログ2017

 

 

私の評価としては、★★(二つ星:読めば)(最大は五つ星)

 

 ミステリー的要素がないわけではないが、この作品はどうみても恋愛小説だ。

 

「東野さん! いろいろなタイプの小説にチャレンジするのは素晴らしいことだと思いますが、恋愛小説はやめた方がいいですよ。御自分でも女心がわからないとおっしゃってたじゃないですか」

 

 それにしても、気になるのは、私に似た所のある日田さんに幸せが訪れたのかどうかが心配です。

 

 

東野圭吾の履歴&既読本リスト

 本書の裏表紙には「スノーボードをこよなく愛し、ゲレンデを舞台としてミステリーに『白銀ジャック』『疾風ロンド』がある。」とある。

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和田秀樹『「高齢者差別」この愚かな社会』を読む

2018年01月08日 | 読書2

 

 和田秀樹『「高齢者差別」この愚かな社会』(詩想社新書18、2017年7月28日発行)を読んだ。

 

 表紙裏にはこうある。

老人に冷たい「嫌老社会」の到来

社会のお荷物として扱われ、肩をすぼめて生きることが強いられつつある日本の高齢者。

財政のひっ迫から、高齢ドライバーの事故まで、さまざまな社会問題の責任を負わされ、特養の不足は放置され、認知症や寝たきりに対する偏見は蔓延し、医療現場ではその命さえも軽視されつつある高齢者受難時代の到来に警鐘を鳴らす。

 

 

 保育園の待機児童は4万~5万人と推定されているのに、特別養護老人ホームの入居者待ちは50万人以上います。

・・・

 親の介護のため仕事が続けられなくなる人が年間10万人にも上り、その多くが五十代の女性だという現実があります。

 

 サザエさんのマンガの波平さんの奥さんであるフネさんは48歳で、有働由美子さんと同い年。

 

相続税100%論

 今は親も長生きになり、子どもが定年退職を迎えた六十歳くらいか、それ以降の、それほどお金が必要ではない時に、遺産が相続されるケースが多くなった。貧しい若者に比べ、豊かな高齢者はさらに豊かになる時代だ。遺産がすべて税金に取られてしまうとなると、高齢者がどんどん金を使うという利点もある。

 

 

 一例を挙げれば、お年寄りの物忘れがひどくなったり、着替えをあまりしなくなったりした場合、これらは認知症の可能性もありますが、うつ病の症状でもあるので、本来、医者は治療すればよくなるうつ病を疑っても良いはずなのです。

 

 

私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

 

 極論に近いが、老人を実質的に邪魔扱いしているマスコミ、政治家への反論が並ぶ。老人は差別されているという論で、いわゆる社会の常識を覆す話が並び、傾聴に値する。

 

ただし、論旨は通っているが、多少強引だ。

 例えば、「高齢者の交通事故率は20代、30代より少ないし、認知症になっていたら、運転自体が出来ないはずなので、高齢者の免許を取り上げるのはおかしい」との論は乱暴だ。

「高齢者の医療費のため、国の財政が破たんするというが、現在の国の借金は、過去の公共事業による赤字が積み上がって来たもので、高齢者福祉にかかる金はそんなに多くない」との論も強引だ。

 

 小気味よいのだが、「なぜ、ここまで言うの?」という部分も多い。

たしかに、森喜朗氏が死んだあと彼をよく言うひとはいない(安倍氏もひどい人だったと言われると私は信じています)と思いますが、・・・

 

 

 

和田秀樹(わだ・ひでき)
1960年大阪生まれ。東京大学医学部卒。精神科医、和田秀樹こころと体のクリニック院長。緑鐵受験指導ゼミナール代表、国際医療福祉大学大学院教授。
東京大学精神神経科助手、アメリカ・カール・メニンガー精神医学校国際フェロー、浴風会病院精神科勤務。2007年には劇映画の初監督作品『受験のシンデレラ』でモナコ国際映画祭最優秀作品賞を受賞

著書:『震災トラウマ』、『「「がまん」するから老化する』、『こころの強い男の子の育て方』。

その他、『心と向き合う臨床心理学』『富裕層が日本をだめにした!』『精神科医は信用できるか-心のかかりつけ医の見つけ方- 』『困った老人と上手につきあう方法』『医者よ老人を殺すな!

 

中川恵一、養老孟司、和田秀樹著『命と向き合う - 老いと日本人とがんの壁 - 』

 

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東野圭吾『私が彼を殺した』を読む

2018年01月07日 | 読書2

 

 東野圭吾著『私が彼を殺した』(講談社文庫ひ17-23、2002年3月15日発行)を読んだ。

 

 裏表紙にはこうある。

婚約中の男性の自宅に突然現れた一人の女性。男に裏切られたことを知った彼女は服毒自殺をはかった。男は自分との関わりを隠そうとする。醜い愛憎の果て、殺人は起こった。容疑者は3人。事件の鍵は女が残した毒入りカプセルの数とその行方。加賀刑事が探りあてた真相に、読者のあなたはどこまで迫れるか。

 

 容疑者である神林貴弘、駿河直之、雪笹香織の3人が交替で各7回語りながら話が進んでいく本格推理小説。

 

 最後の最後に「犯人はあなたです」という加賀刑事のひとことで終わるが、誰かは示されない。

 一番後ろの袋とじ解説のヒントを読んで、読者が推理するという趣向。

 

 3人ともに穂高誠を殺す動機は十分持っている。

 たとえば、何回目かの雪笹香織の章の最後は、

あたしは蘇った。穂高誠によって、心を殺された雪笹香織が、今日生き返ったのだ。あたしはやったのだ。あたしが彼を殺したのだ・・・。

と終わる。

 そして、次の駿河直之の章の最後は、

準子、仇をとってやったぞ。

俺が穂高誠を殺してやったぞ――。

と終わる。

 

 穂高誠と無理心中したかった浪岡準子は毒入りカプセルを11個用意した。穂高誠の、前妻とおそろいのピルケースには2個のカプセルが入る。このカプセル、ピルケースが、神林貴弘、駿河直之、雪笹香織などと人の手を渡っていく流れの解明が犯人特定につながる。

 

初出:小説現代増刊号「メフィスト」1997年9月号、12月号、1998年5月号、10月号

本書は1999年2月講談社ノベルスとして刊行。

 

 

私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

 

 各登場人物のいわくつきの過去は語られるが、人物の掘り下げはなく、私の嫌いな謎解きだけの推理小説だ。

 

 しかも11個もあるカプセルの行方を探るなど面倒で集中できない。はっきり言えば、私には犯人が分からなかった。袋とじ解説のヒントを読んでも判然としない。

 

 そんな私でも、結局、スイスイ読んでしまうのは、何故? 肝心の謎は解明できなくとも一気に読めてしまう、東野マジックか?

 

 

東野圭吾の履歴&既読本リスト



登場人物

 

穂高誠(ほだか・まこと):脚本家。美和子と婚約。「穂高企画」のオーナー。鼻炎アレルギー。37歳。

神林美和子:穂高の婚約者。詩人。小学生の時に両親を亡くし、兄とは別の親戚に預けられた。26歳

神林貴弘:美和子の兄。美和子に対して恋愛感情を持つ。美青年。大学で量子力学研究室の助手。

駿河直之:穂高のマネージャー。

雪笹香織(ゆきざさ・かおり):美和子の才能を見出し、開花させた編集者。以前、穂高の恋人だった。

浪岡準子:動物看護士。穂高と結婚と思っていて、美和子との婚約を知り自殺。

西口絵里:香織の後輩の編集者。

穂高道彦:誠の兄。茨城の実家に両親と住む。

 

加賀恭一郎:練馬警察署の刑事

土井、中川、山崎、菅原:警視庁捜査一課の刑事

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東野圭吾『容疑者Xの献身』を読む

2018年01月06日 | 読書2

 

 

 東野圭吾著『容疑者Xの献身』(文春文庫ひ13-7、2008年8月10日文藝春秋発行)を読んだ。

 

 裏表紙にはこうある。

天才数学者でありながら不遇な日日を送っていた高校教師の石神は、一人娘と暮らす隣人の靖子に秘かな想いを寄せていた。彼女たちが前夫を殺害したことを知った彼は、二人を救うため完全犯罪を企てる。だが皮肉にも、石神のかつての親友である物理学者の湯川学が、その謎に挑むことになる。ガリレオシリーズ初の長篇、直木賞受賞作。

 

  東野圭吾作品読者人気ランキング第1位。累計220万部突破、ガリレオシリーズ初の長編。直木賞・本格ミステリ大賞受賞。2005年度「本格ミステリ・ベスト10」「このミステリーがすごい! 」で1位、エドガー賞(MWA主催)候補作。

 福山雅治主演で映画化、韓国、中国でも映画化。舞台化もされた。

 

 天才数学者でありながら不遇な日々を送っていた高校教師の石神は、一人娘の美里と暮らすアパートの隣人・花岡靖子に秘かな想いを寄せていた。 ある日、靖子の前夫・富樫慎二が母娘の居場所を突き止めて訪ねてきた。どこに引っ越しても疫病神のように現れ、金を無心し、暴力をふるう富樫を、美里が花瓶で殴りつけ、靖子がコタツのコードで絞めて殺してしまう。 呆然とする二人に代わり、石神は死体を処置し、二人のアリバイ工作をして、自らの論理的思考によって二人に指示を出し、完全犯罪を企てる。

 

 警察は旧江戸川で死体が発見された遺体を富樫と断定し、花岡母子を追及する。しかし、アリバイに僅かな差があり、捜査は進展しない。困った草薙刑事は、友人の天才物理学者、湯川学に相談を持ちかける。だが湯川は石神と帝都大学の同期で、親友であった。

 

 以下、見当違いの捜査に導くための、石神の、いかにも疑わしく、調べれば何か出そうなアリバイ工作と、わなを見破り逆襲する湯川との丁々発止の頭脳戦が続いていく。

 

 

初出:「オール読物」2003年6月号~2004年6月号、2004年8月号~2005年1月号(「容疑者X」を改題)

単行本:2005年8月 文藝春秋刊

 

 

私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

 

 筋立てがよく練られていて、見事。

 

 孤独で不遇な数学者像がよく描かれている。感情をなくしたような冷静で合理的な応答の一方で、最後に爆発し露見する真に相手のためを思う熱い恋心。対して、後にシリーズとなる湯川ガリレオ先生のキャラが目立たない。

 

 この本は、大分前に読んだのだが、ブログを書いていなかったので、そのためだけに再読した。肝心な最後のどんでん返しはすっかり忘れていて、また感心してしまった。無念!

 

 石神の基礎数学研究は、紙と鉛筆さえあればどこでも進められるが、一方で、すでの石神の歳は最先端数学研究にはピークを過ぎてしまっていることも自分で自覚しているだろう。

 

 

東野圭吾の履歴&既読本リスト

 

 

登場人物

石神哲哉:高校数学教師。湯川・草薙とは帝都大学の同期。花岡靖子のアパートの隣室に住む。湯川は「天才」と言う。丸く大きな顔で糸のように細い目。ひそかに靖子を恋している。

花岡靖子:クラブ「まりあん」のホステスから弁当屋「べんてん亭」の従業員になった。8年前に離婚した2度目の夫の富樫に付きまとわれる。。

花岡美里:靖子の最初の夫との娘。中学生。

富樫慎二:靖子の二度目の夫。会社の金を使い込んで解雇。離婚後も靖子に付きまとう。

工藤邦明:靖子の元勤め先「まりあん」の常連客。小さな印刷会社経営。靖子に好意を持っている。

缶男:河川敷のホームレスの古株。大量の缶を潰している。

技師:河川敷のホームレス。工業系の雑誌を読む。再就職先を探している。

米沢小代子:「べんてん亭」経営者米沢の妻。飲み屋のママからの転身。

上野美香:花岡美里の親友。ミカ。

 

湯川学:帝都大学物理学助教授、理工学部物理学科第十三研究室に所属。帝都大学理工学部卒業。草薙が持ち込む難事件をすべて解決するので、捜査一課からは「ガリレオ(先生)」と呼ばれる。

草薙俊平:警視庁捜査一課所属の刑事。帝都大学社会学部卒業。湯川とは帝都大学バドミントン部での同期。

岸谷:草薙の後輩刑事。

間宮:草薙の上司。捜査一課所属係長。

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鶴我裕子『バイオリニストは弾いてない』を読む

2018年01月05日 | 読書2

 

 

 鶴我裕子著『バイオリニストは弾いてない』(2016年11月20日河出書房新社発行)を読んだ。

 

 

 鶴我裕子さんは1975年から2007年までN響の第1バイオリン奏者であった人。この本は、エッセイスト・デビュー後のバイオリニストシリーズの第3弾。

 

「オーケストラのあいうえお」

(「あ」~「を」まで45項目でオーケストラのあれこれを語る)

(カワイ音楽教育研究会の機関誌『あんさんぶる』の連載記事を加筆訂正)

 

 ドヴォルザークの新世界交響曲で、コールアングレ(イングリッシュホルン)奏者(たいていは第2オーボエ奏者が持ち替えて演奏)は第2楽章の有名なメロディだけを演奏して終わる。バイオリニストの鶴我さんは、曲の最初から最後まで演奏しっぱなしなので羨ましかった。

 

 日本人は見てくれを重視するので、客席から遠い人が譜をめくる。ガイジンは無頓着でコンマスがめくったりする。一斉に譜をめくって、一瞬音が途絶えても、観客は自動的に音を補って聴いているので、どこで譜をめくったのかわからない

 

 鶴我さん、初出勤の5月5日、初めてサバリッシュを見て憧れた。大きな声で怒鳴りまくり、完全にオーケストラを支配し、オケはどんどん良くなっていく。毎日が上等なレッスンと同じだった。鶴我さんは本気で「5月の給料は要りません」と言って、組合の委員長に怒られた。

 

「おつるの講演録 振り返れば ロハ の人生」

(竹門会(竹中工務店による竹中育英会奨学生のOB・OG組織)の講演録)

 鶴我さんが東京で姉と下宿していた高校生時代、お金がなく退学の危機に竹門会の、アルバイトをしなくても良いように高額な奨学金を受けられた。メッセージには「貴方のような優秀な人を援助するのは我が社の誇りである」とあった。恵んでもらったと思わせない配慮をして、余るほどのお金をくれる。

結果、東京芸大に入学し、N響にも就職できた。

 

N響の弁明

1. 助成金は全予算の2割に過ぎない。大幅赤字でも、遠方の地方公演を続けている。

2. 何年かに一度凄いオペラを演奏会形式でやる。一流のソリスト、合唱団を使う公演は大変な出費だが、日本文化向上に役立っている。

3. 楽員が弾いているときに無表情という批判がある。難曲を3日で完成させ、全国放映される。皆、緊張して息をつめて演奏している。100人の人間が、小さい頃から必死でやってきた事をさらに必死でやっているのだ。

 

おつるの相談室 8つのQ&A

Q:並んで弾いているベテランさんは、悪い人ではないのですが、弾き方も性格も何もかもが合いません。仕事がいやになりそうです。(女)

A:はて、自分のオケ人生を振り返ってみて、「いい人」と並んだ事なんてあったかな?・・・相手も私をガマンしていたに違いないし。なにしろ定年の日に、隣の人に「いじめてくれて有難う」とあいさつしたら、「お互いさまですよ」とあっさりかえされましたから。

 

わが心の伴侶たち

お気に入りのレコードやCDの紹介、特別編:ハンス・クナッパーツブッシュ

 

組曲「東台寮フォーエバー」

東京芸大時代の女子寮の思い出話

 

おつるとN狂仲間の「お久しぶり!」―オケマンはいつも一所懸命&一発即発

NHK交響楽団の内輪話

 

 

私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

 

 音楽家には変人、向こうっ気強い性格の人が多いというが、著者はまさに音楽家。直截的な語りも、ユーモアに包まれ、たのしく読める。「四つ星」としても良いのだが、 クラシックファンではない私には、オーケストラやマエストロの実状、裏話を知っても、「へ~」と思うだけなので「三つ星」とした。

 

 

 

鶴我裕子(つるが・ひろこ)

1947年2月27日福岡県生れ。東京芸術大学卒。

1975(昭和50)年にNHK交響楽団に入団する。第一バイオリン奏者(バイオリンはファーストとセカンドの2集団に分かれている)を32年間務めた。現在は人前ではバイオリンをまったく弾いていないという。

著書『バイオリニストは目が赤い』、『バイオリニストに花束を』、本書『バイオリニストは弾いてない』。

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東野圭吾『白夜行』を読む

2018年01月04日 | 読書2

 

 東野圭吾著『白夜行』(集英社文庫ひ15-5、2002年5月25日)を読んだ。

 

 裏表紙にはこうある。

1973年、大阪の廃墟ビルで一人の質屋が殺された。容疑者は次々に浮かぶが、結局、事件は迷宮入りする。被害者の息子・桐原亮司と、「容疑者」の娘・西本雪穂――暗い眼をした少年と、並外れて美しい少女は、その後、全く別々の道を歩んで行く。二人の周囲に見え隠れする、幾つもの恐るべき犯罪。だが、何も「証拠」はない。そして十九年…。息詰まる精緻な構成と、叙事詩的スケール。心を失った人間の悲劇を描く、傑作ミステリー長篇。

 

 

 題名の直接の由来は、来年の抱負を聞かれた桐原が、「昼間に歩きたい」と答え、「桐原さん、そんなに不規則な生活をしているの?」と聞かれ、

「俺の人生は、白夜の中を歩いているようなものやからな」

と答えたことによる。(p436)

 

 この作品は1999年8月集英社より単行本として刊行。雑誌連載時は連作短編。

 

 

私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

 

 あまりにも長く(p854)、途中で飽きがくるが、なんとか読ませてしまう東野魔術。小中高から大学、会社、結婚・同棲と、極悪人の人生行路を描き切っている。

 じゃまな人物を追い落とすための同じ悪事のパターンが繰り返すので、行動の途中で読めてしまって、しらける。

 

 登場人物が30名以上というのは、年寄りには辛すぎる。時々、パソコンに以下のようにメモしながら読んだが、大分進んでから、ずっと前の人物が突然登場するのには困った。

 

 雪穂と亮司という悪が主人公だが、ふたりの内面は全く描写されず、動機も記述されない。さらになんらかの共同歩調を取っているのに、二人の直接交流はまったく描かれない。それでも、二人の残忍な行為に嫌悪を覚えても、かれらの冷静な目の中に、子供のときの凄惨な環境が思い出され、哀れさが漂う。

 亮司が汚れ役を引き受け、悪事にも迷いが感じられるので、可愛そうな気持にもなるが、雪穂は、経営手腕はあるのだが、陰険でのうのうとセレブな生活を送っていて、しゃくにさわる。でも、軟弱な私など、実際にあの目で覗き込まれると、フニャフニャになりそうな気がする。

 

 

 

東野圭吾の履歴&既読本リスト

 

 

 

 

登場人物

 

桐原洋介:被害者、質屋「きりはら」の店主

桐原弥生子(やえこ)洋介の妻。洋介の死後、質屋と喫茶店経営に失敗し、スナックを開く。

桐原亮司:洋介、弥生子の息子。大江中学から集修館高校へ。「無限企画」を設立。

松浦勇:質屋「きりはら」の店長

 

西本文代:うどん屋「菊や」で働く。夫を7年前に亡くす。美人。吉田ハイツに住む。ガス中毒で死亡。

西本雪穂:文代の娘。美貌。母の死後、唐沢礼子の養女で唐沢雪穂となる。清華女子学園、清華女子大。やがて、ブティック「R&Y」を手広く経営。

寺崎忠夫:化粧品等の卸売り。西本文代と付き合う。後、交通事故で死亡。

田川敏夫:吉田ハイツを扱う不動産屋

 

唐沢礼子:雪穂を引き取り、作法を厳しく教える。

川島江利子:清華女子学園中等部3年。中学からの雪穂の友人。大学で事件に巻き込まれる。後、手塚姓に。

藤村都子:清華女子学園中等部3年。雪穂と対立する人気者だったが、事件に巻き込まれる。

 

秋吉雄一:大江中学生。清華女子学園を盗撮。後に、メモリックスの主任開発部員として登場。

菊池文彦:大江中学生。雄一の友人。母子家庭。

牟田俊之:大江中学生。

園村友彦:集修館高校から信和大学工学部。美男子。売春パーティー後のトラブルを亮司に助けられて仲間に。

中嶋弘恵:友彦と同棲。亮司の会社に昼勤め、夜は専門学校へ。

 

西口奈美江:大都銀行昭和支店勤務。亮司の偽ソフト会社「無限企画」の経理担当。やくざのエノモトに貢ぐ。

花岡夕子:売春パーティーに参加。ポニーテール。友彦の相手。

花岡郁雄:夕子の夫。

 

中道正晴:沢雪穂の数学の家庭教師。大学院生の美濃部とゲームソフト「サブマリン」を自作。

 

篠塚一成:大手製薬会社の社長の甥。永明大のソシアルダンス部長。江利子に好意を持つ。

篠塚康晴:製薬会社常務。社長の息子。前妻を事故で亡くし、雪穂に夢中になる。

篠原美佳:康晴の前妻の娘。雪穂を嫌う。優大(まさひろ)は小5の弟。

葛西妙子:篠塚康晴の家の家政婦。

 

倉橋香苗:ソシアルダンス部で一成の恋人。

高宮誠:永明大ソシアルダンス副部長で雪穂と知り合い結婚したが、後離婚。東西電装特許ライセンス部勤務。

三沢千都留:電気部品会社の派遣社員。誠にあこがれる。後に高宮誠に妻に。

 

今枝直己:探偵事務所経営。一成の依頼で雪穂の調査をする。

菅原絵里:今枝の事務所のアルバイト。専門学校生。

栗原典子:薬剤師。ソフト会社勤務の秋吉雄一と同棲。

 

金城:いかがわしい話を亮司の会社へ持ち込む。骸骨じみた風貌。

 

笹垣潤三:府警捜査一課時代から桐原亮司と雪穂を追及し続ける。元西布施警察署に勤務。

古賀:府警本部刑事からエリートコースを歩み、大阪府警捜査一課長。笹垣の妻・克子の姪・織江と結婚。

中塚:西布施警察署刑事。班長。

金村:刑事

松野秀臣(ひでおみ)近畿医科大教授。大阪府監察医。

 

 

ちょっとした言葉

 

「選ばれた人間がソシアルダンスを習うんじゃない。いざという時にダンスの一つぐらい踊れるような人間が選ばれていくんだ」

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前野ウルド浩太郎『バッタを倒しにアフリカへ』を読む

2018年01月03日 | 読書2

 

 前野ウルド浩太郎『バッタを倒しにアフリカへ』(光文社新書883、2017年5月20日発行)を読んだ。

 

 表紙裏にはこうある。

バッタの群れは海岸沿いを飛翔し続けていた。夕方、日の光に赤みが増した頃、風向きが変わり、大群が進路を変え、低空飛行で真正面から我々に向かって飛んできた。大群の渦の中に車もろとも巻き込まれる。翅音は悲鳴のように重苦しく大気を振るわせ、耳元を不気味な轟音がかすめていく。このときを待っていた。群れの暴走を食い止めるため、今こそ秘密兵器を繰り出すときだ。さっそうと作業着を脱ぎ捨て、緑色の全身タイツに着替え、大群の前に躍り出る。
「さぁ、むさぼり喰うがよい」   (本文より)

 

 バッタ研究のポスドクが、厳しい就職戦線を勝ち抜くため、優れた論文で勝負するのは無理と、アフリカの砂漠の研究現場でフィールドワークし、派手なパフォーマンスと宣伝で見事就職先を勝ち取る。

 

 著者が小学生の時、『ファーブル昆虫記』に魅せられたが、アフリカ見学のた女性観光客が大発生したバッタの大群に緑色の服を喰われてしまったとの科学雑誌に記事を読んで、「バッタに食べられたい」という夢を描いていた。

 

 バッタの研究で博士号をとったが、ポストがなくて、安定した職場がない。学問、論文で厳しいポスドク戦争を勝ち抜く自信、実績がない。バッタ研究者の著者は研究室で人工的環境での飼育実験ばかりしており、野生の姿を見たことがなかった。そこで、サバクトビバッタが数年に1度大発生し、アフリカの飢餓の一原因にもなっているモーリタニアへ飛び込んで、現場から研究成果を出せば、日本の研究機関に就職が決まり、バッタに喰ってもらえて、昆虫学者としても喰っていけると思いついた。

 

売名行為は研究者の掟に反するものだった。・・・大論文を出していない実力不足の私が大声で騒いだら、ネット上のみんなは喜んでくれるけど、学会関係者たちからは煙たがられるに決まっている。・・・しかし、一発逆転を狙う弱者には、もはやこの道しか残されていない。覚悟の上、掟破りに広報活動に手を染める決意をした。

 

 

 フランス語の勉強も怠っていた著者は、日本とは大いに異なる生活環境、食べ物、習慣に負けず、現地の人とたちまち仲よくなり、数々の困難をなんとか乗り越えて、フィールドワークを進めていく。

 

 そして、なかなか出会えなかったバッタの大群をついに捕まえ、緑の全身タイツに着替えて仁王立ちになるも、バッタにはスルーされた。このあたりの写真が笑える。

 

 

私の評価としては、★★★★★(五つ星:是非読みたい)(最大は五つ星)

 

 著者の戦略と行動力には感嘆だ。研究者でも、頭で勝負できなければ、研究室から厳しい現場へ飛び、人懐っこさ、困難をものともしない克服力、そして恥を恥と思わない心(ちょっと言い過ぎだが)で勝てる。

 

 ポスドクの就職への困難さが身に沁みるし、アフリカでの現地の人との付き合いの難しさ、環境の厳しさなどが生き生きと語られる。

 

 それにしても、研究者には、こんなとんでもない変わり者がいて、まじめ一筋だけに余計に笑わせてくれる。おっと、私もかっては研究者の端くれの端くれだった。

 

 

 

前野ウルド浩太郎(まえの・うるど・こうたろう)
1980年秋田県生まれ。昆虫学者(通称:バッタ博士)。国立研究開発法人国際農林水産業研究センター研究員。

神戸大学大学院自然科学研究科博士課程修了。博士(農学)。

京都大学白眉センター特定助教を経て、現職。
アフリカで大発生し、農作物を食い荒らすサバクトビバッタの防除技術の開発に従事。モーリタニアでの研究活動が認められ、現地のミドルネーム「ウルド(○○の子孫の意)」を授かる。

著書に、第4回いける本大賞を受賞した『孤独なバッタが群れるとき――サバクトビバッタの相変異と大
発生』(東海大学出版部)がある。

 

 

サバクトビバッタ

まばらに生息している低密度下で発育した個体は孤独相と呼ばれ、一般的な緑色をしたおとなしいバッタになり、お互いを避け合う。一方、周りにたくさんの仲間がいる高密度下で発育したものは、群れを成して活発に動き回り、幼虫は黄色や黒の目立つバッタになる。これらは、群生相と呼ばれる。成虫になると、群生相は体に対して翅が長くなり、飛翔に適した形態になる。

普段は孤独相のバッタが混み合うと群生相に変身することを「相変異」という。

 

バッタとイナゴ

 相変異するのがバッタ(Locust)、示さないのがイナゴ(Grasshopper)。日本のオンブバッタやショウリョウバッタはイナゴの仲間。Locust はラテン語の「焼野原」で、彼らが過ぎ去った後は、緑が全て消えていることから。

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昔の子どものお手伝い

2018年01月02日 | 昔の話2

 

もう60年以上昔になってしまった私の子どもの頃、昭和25年~30年頃のことなのだが、子どもたちはお小遣いをもらわなくても当然のように親のお手伝いをしていた。

 

雨戸閉め

子供のころの借家には長い廊下があって、雨戸が8枚以上あった。この雨戸の開け閉めが私の役目だった。雨戸はもちろん木製で、戸袋から引っ張り出して、木の溝の上を滑らせる。良くすべるように、溝にはローソクを塗っておくのだが、それでも8枚の雨戸を一遍には押すことはできない。最初の何枚かは、勢いをつけて遠くへ押し出す。それでも5、6枚目で押し切れなくなり、先のほうへ行って、2、3枚だけ、最後まで押していく。締め切った後、最後の雨戸が外から開けられないように、下にある棒を溝の穴に刺し、上部にある棒を上の溝に押し上げ、落ちてこないように止めの棒を横に引いておしまいになる。外が暗くなると、ヨッシャとばかり立ち上がり雨戸を閉める。ちょっとした力仕事なので、男の子の私には好きなお手伝いだった。

 

縁側の廊下の雑巾がけ

だいたいは母が廊下の雑巾がけしていたのだが、ときどきお手伝いした。端から端まで両手を雑巾の上に乗せて腰を立てて足で廊下をけって進む。突き当りまで行って、雑巾を裏返して、戻って来て、バケツで雑巾を濯ぐ。ついつい走るように進むので、これも結構きつい。ときどき、オカラを入れた袋で磨いた。この時は一か所に留まって手の届く範囲を力を込めてキュッキュッと磨く。廊下が黒光りする茶色になり、ピカピカして子供心にも気持ちよいのだが、よく滑るようになって、走って止まるときに危なかった。

 

靴磨き

命じられて、父親の靴を磨く。子供なりに何となく自分の仕事という意識があって、やる気が出る。2足磨き、なんだか物足りなくなり、棚の中の靴も取り出してくる。だんだん熱中してきて、靴がピカピカになると、じっと眺めて、なんだか満足する。気がつくと、手はもちろん、顔まで墨がついてしまっていた。「靴磨き」については、2007年1月11日のブログ「靴磨き」に書いた。

 

 

鰹節削り

大工道具のカンナをひっくり返したような箱の上で鰹節を滑らして削る。ただただ削るだけで嫌になる。もともと小さい鰹節を削るように頼まれたときは、ホクホクだ。もう削れなくなると、母親に「もう削れないよ! 食べていいでしょ」と言う。鰹節の先端の方が透き通ってピンクぽい色になったのを食べるのだ。口に入れてしばらく舐めて多少柔らかくなったのを噛むと、ジワッと味が出てくる。そのまんま噛んで、どんどん味が濃くなってきて、幸せ!

 

毛糸巻き

買ってきたままの大きなループ状の新しい毛糸をボール状に巻き取る。着古したセーターなどをほどきながら巻き取ることもあった。片方の人が両手をループに入れて、スムーズにほどけるように左右にゆっくりゆする。少し離れて座ったもう一方の人がほどけてきた毛糸をボール状に巻き取る。私はループを持つことが多かったと思う。ほどけ具合を見ながら、手を左右にゆするのだが、ときどき2つほどけてしまい、オットトトとなる。

 奥さんの話だと、今は、毛糸は楕円形に巻かれた状態で売っているという。このお手伝いは時間がかかるので、母と私で何か話しながらしたのだろう。どんな話だったか、遠すぎて覚えていない。

 

米とぎ

一升瓶に精米していない米を入れて、棒でつついて精米する。一升瓶を両足で押さえ、少し斜めにして、瓶に突っ込んだ棒で米をザクリ、ザクリと突く。これは主に父の役目で、私はときどきしかやらなかった。かすかに覚えているだけなので、まだ幼いときだったのだろう。2007年9月3日のブログ「米穀通帳」に当時の米事情を書いた。

 

 

掃き掃除

お茶ガラや濡らしてちぎった新聞紙を撒いて箒で部屋を掃くのもときどき手伝った。部屋から廊下に掃き出し、さらに廊下から庭にゴミを掃き出すのだ。奥の廊下の端には掃き出し口があって、小さな引き戸を開けて、ごみを外へ掃き出す。今思えばゴミをただ庭に出すだけでよかったのだろうかと思う。

 

柱時計のネジ巻き

柱時計のネジを巻くのも私の役目だった。踏み台を持ってきてその上で背伸びしながら留め金を跳ね上げて時計の蓋を開ける。振子を止めて、その下に置いてある真鍮の耳のような形のネジを時計のネジ穴に差し込む。ギリギリと何回も廻してゼンマイを巻きあげる。最後の方は巻くのがきつくなるが、巻き上がって止まるまで巻く。ボーンボーンと時を打つハンマーもゼンマイの力で動くのだが、これを巻きあげるネジ穴にも差し込んで巻く。次に、長針を人差し指で進めて時刻を合わせる。最後に振子を動かして、左右に均等に触れているのを確かめ、さらに下で見ている家族に「時計、真っ直ぐになってる?」と聞いて、垂直を確かめる。

そういえば、ふと時計の振子を見た家族の誰かが「あ! 時計が止まってる」などと言うのだから、時間にルーズで、いいかげんだった。それでよかった時代だったのだ。

 

 

そのほか、ポストから新聞を取ってくるなど、いくつか私のお決まりの役目があった。あの頃の子どもは、お小遣いももらわず、当然のようにお手伝いをした。子どもの世界も今よりもっと生活に密着していた。洗濯機も電気釜もなく、主婦は家事で多忙だった。そんな親を見て、当然のようにお手伝し、ちょっと誇らしくもあった。そんな生活の中で親子のコミュニケーションがとれていたのだろう。

今の一見娘さんみたいな母親と異なり、当時の母親は割烹着を着て、髪に手ぬぐいを巻いて、お母さんはいかにもお母さんとすぐ判った。「おはぐろ」はしていなかったが。

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