以前も記したとおり、私が将棋ペンクラブの関東交流会に出席したのは2005年、07年、08年の3回だけである。
私は引っ込み思案で、こういう、人と人との交流は苦手だったから、会員でありながらいままであまり参加はしなかったのだ。
07年の懇親会(会員同士の将棋大会の後に開かれる)では、私の向かいに元幹事のK氏、左横に新幹事のA氏がたまたま座った。
何しろ年に1度の会だから、お互いのことをよく知らない。当然最初はよそよそしいが、酒が入ると、どちらからともなく会話が始まる。
K氏はかつて会報によく投稿をされていたので、「いつもよく読んでました」と言うと、K氏も、「一公さんの投稿も読んでますよ」と言う。社交辞令か、とも勘繰ったが、これは本当のようだった。
それからおもに3人で、会報に載った文章などを語りあったのだが、A氏が
「誰が書いたか思い出せないけど、中学生の少年が近所のおじさんと将棋を指して、だんだん中学生のほうが強くなって…っていう話がおもしろかったなあ」
と言うので、私が
「それ、最後に打ち歩詰めで事件が起こるやつじゃないですか?」
と問うてみた。
「あ、そうです」
「それ、『運命の端歩』ってタイトルじゃなかったですか?」
「ああ、そうだったかも」
「それ、ボクが書いたやつです」
私がそう言うと、A氏は
「え!? ええ!? そうだったんですかあ!!」
と叫び、感激の面持ちで手を差しのべてきたので、私たちはガッチリ握手をした。
ある作品の愛読者とその作者がたまたま隣り同士に座るとは、とんだ偶然があったものである(もっともある人に言わせると、この世に偶然はないらしいが)。A氏は当時サラリーマンだったが、著作もあるアマチュア作家で、無闇に人をヨイショしない。だから正直な感想だったのだろう。私のほうも、自分の作品が褒められて、それがこんなにも嬉しいものだとは思わなかった。ましてや握手を求められるなんて、自分が作家になったような気分であった。そして、いままで苦労しながら文章を書いてよかった、報われたと、私のほうこそ感謝したものだった。
これからはA氏も投稿するというので、じゃあお互い頑張りましょう、と再び酒を交わしたのだった。
それから私のほうは何本か投稿し、無事会報に掲載されたが、A氏は家庭の事情などから執筆の時間も取れないらしく、いまだに会報では文章を拝見していない。
さてそんな関東交流会は、今月23日にある。恐らく雨が降るだろうが、今年はどんな出会いが待っているのだろう。いまから楽しみである。
私は引っ込み思案で、こういう、人と人との交流は苦手だったから、会員でありながらいままであまり参加はしなかったのだ。
07年の懇親会(会員同士の将棋大会の後に開かれる)では、私の向かいに元幹事のK氏、左横に新幹事のA氏がたまたま座った。
何しろ年に1度の会だから、お互いのことをよく知らない。当然最初はよそよそしいが、酒が入ると、どちらからともなく会話が始まる。
K氏はかつて会報によく投稿をされていたので、「いつもよく読んでました」と言うと、K氏も、「一公さんの投稿も読んでますよ」と言う。社交辞令か、とも勘繰ったが、これは本当のようだった。
それからおもに3人で、会報に載った文章などを語りあったのだが、A氏が
「誰が書いたか思い出せないけど、中学生の少年が近所のおじさんと将棋を指して、だんだん中学生のほうが強くなって…っていう話がおもしろかったなあ」
と言うので、私が
「それ、最後に打ち歩詰めで事件が起こるやつじゃないですか?」
と問うてみた。
「あ、そうです」
「それ、『運命の端歩』ってタイトルじゃなかったですか?」
「ああ、そうだったかも」
「それ、ボクが書いたやつです」
私がそう言うと、A氏は
「え!? ええ!? そうだったんですかあ!!」
と叫び、感激の面持ちで手を差しのべてきたので、私たちはガッチリ握手をした。
ある作品の愛読者とその作者がたまたま隣り同士に座るとは、とんだ偶然があったものである(もっともある人に言わせると、この世に偶然はないらしいが)。A氏は当時サラリーマンだったが、著作もあるアマチュア作家で、無闇に人をヨイショしない。だから正直な感想だったのだろう。私のほうも、自分の作品が褒められて、それがこんなにも嬉しいものだとは思わなかった。ましてや握手を求められるなんて、自分が作家になったような気分であった。そして、いままで苦労しながら文章を書いてよかった、報われたと、私のほうこそ感謝したものだった。
これからはA氏も投稿するというので、じゃあお互い頑張りましょう、と再び酒を交わしたのだった。
それから私のほうは何本か投稿し、無事会報に掲載されたが、A氏は家庭の事情などから執筆の時間も取れないらしく、いまだに会報では文章を拝見していない。
さてそんな関東交流会は、今月23日にある。恐らく雨が降るだろうが、今年はどんな出会いが待っているのだろう。いまから楽しみである。