一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

金曜サロン・松尾香織女流初段②+α

2009-05-19 00:13:32 | LPSA金曜サロン
15日の金曜サロン、夕方は松尾香織女流初段の担当だった。
既報のとおり、私は先日、松尾女流初段の実家がある広島県呉市の下蒲刈島(しもかまがりじま)へお邪魔している。松尾女流初段の出身地を訪れ、それだけで精神的に有利な気持ちになっていたのだが、いざ4時すぎに松尾女流初段がいらっしゃると、ソワソワしてきた。
藤田麻衣子女流1級がこのブログを読んでいることは、以前本人から聞いた。ということは、私の行動は松尾初段に筒抜けであろう。
別に私はイケナイことをしたわけではないのだが、松尾初段の反応を想像すると、呆れられるか叱られるかされそうで、恐ろしくなってきた。
松尾初段と目が合う。思わず目を逸らしてしまう。何をビビっているのだ。
私の対局の番がやってきた。しかしこういうときに限って、対局者は私ひとり。ほかの会員も外へ煙草を喫いにいったりして、ガランとしている。妙にドキドキしてくる。
「下蒲刈島へいらしたそうですね」
駒を並べながら松尾女流初段が言う。
ひっ…いきなり本題が飛んできた。私は「あ、はい…」とビビリながら答えるしかない。しかしこのあと松尾女流初段の口から出た言葉は、私の予想とは大きくかけ離れた、意外なものだった。
「私の家へは寄られましたか?」
「はああ!? いえ、行きませんよ! じゅ、住所も知らないし」
「その日はどちらへ泊られたんですか?」
「はあ、く、呉へ泊りました」
「そうですか。家へ来てくれれば母が歓迎してくれたと思いますよ」
「はあ? は、はあ…いやしかしそんな、行けませんよ! 住所を知ってたとしても!」
どうも話がうまく噛み合わないが、要するに松尾初段は、私の下蒲刈島訪問を、悪くは思っていなかった。まあそこまでは分かる。
しかし家を訪ねても構わなかったのに、という意味の言葉にはひっくり返った。
現在は個人情報保護法で、住所等の情報は厳しく管理されている。当然私も上川家(松尾初段の旧姓)の住所は知らない。しかし仮に知り得たとしても、さすがに訪ねていく度胸はない。またご両親も松尾女流初段本人も、いくら田舎の実家とはいえ、不気味なファンに突然訪ねられるのは、気持ちのいいものではないだろう。それなのに、「訪ねてくれればよかったのに」と松尾女流初段は言ったのだ。
いやいや、なんと心の広い女性だろう。ここが島育ちの大らかさなのだろうか。
私は免罪符を得た気分で、会話を繋げる。
「でも私はあの島が気に入りました。今回は三之瀬地区の石畳周辺しか観光をしなかったから、今度行く機会があったら、島を一周します」
すると松尾女流初段は笑って、
「ええー、でも島のウラのほうとか何もないですよ」
と言う。
「それがいいんです」
最後は私もやや冷静さを取り戻し、指導対局が始まった。しかしこんな状況で勝てるわけがない。ましてや前述のとおり、1対1の対局である。思えば松尾女流初段との初対局も、1対1だった。こういう状況は贅沢なのだろうが、別の意味で緊張する。
将棋は松尾女流初段のゴキゲン中飛車に、私は▲3六銀と出る作戦を採った。だが▲4五銀とガッチャン銀に出る手を逸し、▲6六歩と消極的な手を指したため、△4四歩と銀出を消され、以下は一方的に敗れてしまった。
お互い早指しで、淡々と指して、淡々と負けた感じだった。実はここが、今回私が大いに反省しなければならないところであった。
せっかくサシの指導対局という絶好の機会を得たのに、私は大した読みを入れず、思いついた手をポンポン指した。これは女流棋士との対局を軽んじたことにならないか。
たとえばこれが、私がサロンへ通い始めたばかりの頃だったら、どうだったろう。同じ緊張するにしても、もっと真剣に、じっくり指し手を考えていたはずだ。
女流棋士との対局に妙に慣れてしまい、惰性で指した自分が恥ずかしく、情けなかった。
これは感想戦のときも同様のことが言えた。私はその将棋の感想戦を早々と終えると、なんと前局の藤田女流1級戦との、悔しい悔しい将棋を並べ始めたのだ。
指導対局なのに他人の将棋を並べるなど、松尾初段に対して、たいへん失礼な行為である。にもかかわらず、松尾女流初段は親切にもそれに付き合ってくださり、そればかりか、この将棋における中盤の変化を熱心に教えてくださった。
植山悦行七段が「何の将棋を並べてるんですか」と苦笑しつつ注意し、私に新たな対局をつけてくださらなかったら、なおも私の暴走は続いているところだった。本当に松尾女流初段には、たいへんな迷惑をかけてしまったと思う。
金曜サロンに通って1年余、ちょっと緊張のタガが緩んできたか。こんなことではいけない。昨年のいま頃を思い出し、初心に帰って、もっと将棋に真摯に向きあわわなければいけないと、大いに自戒した1日だった。
コメント (2)
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