先週の23日(土)に将棋ペンクラブ関東交流会が行われた。
会にはいままで3回参加したが、開会の10時から入ったことはない。今年は仕事も休みだし、たっぷり将棋を指すつもりだったので、早めに家を出た。
前日に続いて東京・将棋会館へ行くのは、初めての経験である。しかし将棋を指す階が違うので、別の建物へ訪れた気がする。
服装も前日に続いてスーツ。昨年は夕方からの日本女子プロ将棋協会(LPSA)のパーティーに参加するためにスーツを着たが、ペンクラブの親睦対局に思いのほか気合が入ったので、縁起を担いで今年もスーツを着用した。ただし今年は、女流棋士会35周年パーティーのほうへは行かない。
4階の大広間に10時20分ごろ入室すると、「おっ、エース登場!」と声がかかる。
4年前は無名だったことを考えると大した出世だが、私がマイナビ女子オープン挑戦者決定戦の懸賞スポンサーになり、「週刊将棋」に私の写真が載ったことで、冷やかされたにすぎない。
今年は湯川博士統括幹事も、「よっ、一公君!」と声を掛けてくれた。ようやく顔を覚えてもらえたようだ。
そのほかの幹事の皆さんにも挨拶をして、早速対局をつけてもらう。この1年、LPSAの女流棋士にお稽古をつけてもらった、その成果が問われるのだ。
1局目は相手の△ゴキゲン中飛車に一進一退の攻防となった。やや苦戦気味だったが、終盤になり、駒が揃ったので、一気に詰ましにいく。簡単な部分図をあげると、
先手(私):3二竜、9三歩、9九香 持駒:角、金2、桂
後手:4三歩、5二歩、7一桂、7二銀、7四銀、8二王、8三歩、9一香 持駒:角など
後手王は上部に逃げられない形だった。
ここから、▲9二金△同香▲同歩成△7三王▲8二角△6三王▲4三竜△5三角▲5五桂△6二王▲7一角成△同王▲8二金△6二王、と進んだ。
ここで平凡に▲7二金と銀を取り、△同王に▲5二竜で、後手玉は即詰みだった。それが分かっていながら、少しでも盤上に自分の駒を置いておこうと▲5四桂と打ったのが大悪手。駒音高く△5一王と引かれて愕然とした。
詰みがないのだ。先の▲5四桂がなければ、▲7二金に△5一王でも、▲6三桂打で詰んでいた。
呆然としつつ、私は▲6二金と銀を取って後手王に必死をかける。
ここで後手からの王手ラッシュがきたが、なんとか玉を逃げて、緒戦は冷や汗ものの勝利となった。
2局目、これがひどかった。相手の▲筋違い角に指し手が分からず、角金交換の駒得になったものの、2枚の角をヘンなところに打って、こちらの飛車は蟄居する始末。完全な必敗形だったが、ここから相手の緩手連発で大逆転となってしまった。
この将棋は詰将棋作家の岡本真一郎氏に似た方が序盤から観戦していたらしいのだが、いつの間にか「ふたりがかりの将棋」になって、最後は3人で「先手は100回勝ちを逃した!!」と叫んだものだった。
3局目は、「近代将棋」元編集長の中野隆義氏との一戦。△中野氏のゴキゲン中飛車で始まった将棋だが、中野氏が1筋を攻めて、私に香を先に渡したのがやや無理筋だった。こちらがその香で飛車を取っては優勢となった。
以下、こちらも角を詰まされ、最後はかなり追い上げられたが、中野氏に諦めの気持ちがあったみたいで、最後は△7七歩成に▲同金ではなく、スッと▲6九玉と引いて、中野氏の投了。これで望外の3連勝となった。
4局目は、相手の3手目▲3六歩戦法から意外な相振り飛車となり、これもまったく指し方が分からなかった。
ポンポンと桂を跳ばれ端攻めをされ、手にした香で▲3五香と打たれた。△1四飛に▲3三香成と無条件に桂損をしては、私の不利が明白となった。以下、その成香で飛車もただで取られ敗勢となったが、私はなんだかんだと先手陣にイヤ味をつけ、最後は逆転勝ちとなってしまった。なんだか今日は妙に、勝利の女神に微笑まれている。
この前後に石橋幸緒女流王位(LPSA)が見え、3面指しの指導対局が用意された。しかし皆さん対局中で空きがあり、私が指導していただくことになった。
タイトルホルダー相手に、私は畏れ多くも平手で挑む。
私の▲7六歩に石橋女流王位△3四歩。3手目▲2六歩と指したところで、石橋女流王位から、「何か戦法のリクエストはありますか?」と訊かれる。
将棋はどんな手を指してもいい、自由なゲームだ。たとえ指導対局とはいえ、上手の作戦を限定させるわけにはいかない。だから生意気にも
「いえいえ、それは先生のお考えになった手をお指しください」
と言うと、石橋女流王位は△3二金。以下▲2五歩に△8八角成!ときた。
プロで大流行の1手損角換わりである。これは本気だな、と思った。
(つづく)
会にはいままで3回参加したが、開会の10時から入ったことはない。今年は仕事も休みだし、たっぷり将棋を指すつもりだったので、早めに家を出た。
前日に続いて東京・将棋会館へ行くのは、初めての経験である。しかし将棋を指す階が違うので、別の建物へ訪れた気がする。
服装も前日に続いてスーツ。昨年は夕方からの日本女子プロ将棋協会(LPSA)のパーティーに参加するためにスーツを着たが、ペンクラブの親睦対局に思いのほか気合が入ったので、縁起を担いで今年もスーツを着用した。ただし今年は、女流棋士会35周年パーティーのほうへは行かない。
4階の大広間に10時20分ごろ入室すると、「おっ、エース登場!」と声がかかる。
4年前は無名だったことを考えると大した出世だが、私がマイナビ女子オープン挑戦者決定戦の懸賞スポンサーになり、「週刊将棋」に私の写真が載ったことで、冷やかされたにすぎない。
今年は湯川博士統括幹事も、「よっ、一公君!」と声を掛けてくれた。ようやく顔を覚えてもらえたようだ。
そのほかの幹事の皆さんにも挨拶をして、早速対局をつけてもらう。この1年、LPSAの女流棋士にお稽古をつけてもらった、その成果が問われるのだ。
1局目は相手の△ゴキゲン中飛車に一進一退の攻防となった。やや苦戦気味だったが、終盤になり、駒が揃ったので、一気に詰ましにいく。簡単な部分図をあげると、
先手(私):3二竜、9三歩、9九香 持駒:角、金2、桂
後手:4三歩、5二歩、7一桂、7二銀、7四銀、8二王、8三歩、9一香 持駒:角など
後手王は上部に逃げられない形だった。
ここから、▲9二金△同香▲同歩成△7三王▲8二角△6三王▲4三竜△5三角▲5五桂△6二王▲7一角成△同王▲8二金△6二王、と進んだ。
ここで平凡に▲7二金と銀を取り、△同王に▲5二竜で、後手玉は即詰みだった。それが分かっていながら、少しでも盤上に自分の駒を置いておこうと▲5四桂と打ったのが大悪手。駒音高く△5一王と引かれて愕然とした。
詰みがないのだ。先の▲5四桂がなければ、▲7二金に△5一王でも、▲6三桂打で詰んでいた。
呆然としつつ、私は▲6二金と銀を取って後手王に必死をかける。
ここで後手からの王手ラッシュがきたが、なんとか玉を逃げて、緒戦は冷や汗ものの勝利となった。
2局目、これがひどかった。相手の▲筋違い角に指し手が分からず、角金交換の駒得になったものの、2枚の角をヘンなところに打って、こちらの飛車は蟄居する始末。完全な必敗形だったが、ここから相手の緩手連発で大逆転となってしまった。
この将棋は詰将棋作家の岡本真一郎氏に似た方が序盤から観戦していたらしいのだが、いつの間にか「ふたりがかりの将棋」になって、最後は3人で「先手は100回勝ちを逃した!!」と叫んだものだった。
3局目は、「近代将棋」元編集長の中野隆義氏との一戦。△中野氏のゴキゲン中飛車で始まった将棋だが、中野氏が1筋を攻めて、私に香を先に渡したのがやや無理筋だった。こちらがその香で飛車を取っては優勢となった。
以下、こちらも角を詰まされ、最後はかなり追い上げられたが、中野氏に諦めの気持ちがあったみたいで、最後は△7七歩成に▲同金ではなく、スッと▲6九玉と引いて、中野氏の投了。これで望外の3連勝となった。
4局目は、相手の3手目▲3六歩戦法から意外な相振り飛車となり、これもまったく指し方が分からなかった。
ポンポンと桂を跳ばれ端攻めをされ、手にした香で▲3五香と打たれた。△1四飛に▲3三香成と無条件に桂損をしては、私の不利が明白となった。以下、その成香で飛車もただで取られ敗勢となったが、私はなんだかんだと先手陣にイヤ味をつけ、最後は逆転勝ちとなってしまった。なんだか今日は妙に、勝利の女神に微笑まれている。
この前後に石橋幸緒女流王位(LPSA)が見え、3面指しの指導対局が用意された。しかし皆さん対局中で空きがあり、私が指導していただくことになった。
タイトルホルダー相手に、私は畏れ多くも平手で挑む。
私の▲7六歩に石橋女流王位△3四歩。3手目▲2六歩と指したところで、石橋女流王位から、「何か戦法のリクエストはありますか?」と訊かれる。
将棋はどんな手を指してもいい、自由なゲームだ。たとえ指導対局とはいえ、上手の作戦を限定させるわけにはいかない。だから生意気にも
「いえいえ、それは先生のお考えになった手をお指しください」
と言うと、石橋女流王位は△3二金。以下▲2五歩に△8八角成!ときた。
プロで大流行の1手損角換わりである。これは本気だな、と思った。
(つづく)