8日・9日は、羽生善治名人と行方尚史八段による、名人戦第1局が行われた。
私が懇意にさせていただいている棋士や熊坂学五段の戦いを見ていると、タイトル戦のように地位と名誉だけしか懸かっていない将棋、言い換えれば、生活が懸かっていない将棋は、それほど興味が持てなくなった。エキサイトできなくなった。
しかしまあそこはそれ、名人戦は歴史も伝統もあるし、一応は注目したのである。
挑戦者の行方八段には「叩き上げ」のイメージがあり、名人戦挑戦者としては、1984年の森安秀光八段以来と思うがどうだろうか。
私はケータイ中継に入会していないし、名人戦の棋譜はリアルタイム公開されないので、情報収集は専らネットからとなる。
2日目夕方、すなわち9日、上川香織女流初段の待つ麹町へ向かう電車内でスマホのネット情報を見ると、すでに第1局が終わっていたので怪訝に思った。
帰宅してネット上から棋譜を確認すると、先手の行方八段が早投げしていた。その手数60手で、これは名人戦史上最短らしい。
投了局面を見ると、行方八段の銀損で、確かに劣勢ではある。
しかし5四に先手の歩が垂れているし、6四角も取れる状態にある。羽生名人の玉も4一だし、行方八段がシャニムニ暴れれば、何かパンチも入りそうな気がするのだ。
具体的には▲6二角成△同飛▲5三銀が考えられる。まあこれは角損の攻めだから名人が切らすだろうが、逆を持ったら生きた心地がしないところである。
しかし行方八段は投了してしまった。まあこの気持ち、私も劣勢にイヤになって投了すること数多だから、よく分かるのである。しかも本局の相手はタイトル90期以上の史上最強の棋士だし、それまでの対戦成績も3勝13敗と分が悪い。もう羽生先生と名人戦の大舞台で盤を挟めるだけで十分、勝てるとは思っていません、と行方八段が悲観したのも無理はないのである。
とはいうもののこの局面、羽生名人はどう思っていたのだろうか。本音は言わないだろうが、まだまだ難しい、というところではなかったか。
羽生名人は、相手の無責任(失礼)な投了による勝利をよしとしない人である。もっと将棋を指したかったと、不機嫌になる人である。本局、行方八段が先を見切ったような形でさっさと投了したが、「アナタ、そこまで読めるんですか」と羽生名人は皮肉の一言も言いたかったのではあるまいか。
行方八段は前回のNHK杯で決勝に進出したが、その決勝戦は終始うつむき気味で、とても決勝戦を争っている棋士とは思えなかった。なんでそこまで項垂れているのか。
順位戦のA級で最高の成績を取り、名人戦の大舞台に上がることは、タイトル1期に相当する偉業である。もう少しその矜持を持ってもいいのではないか。
第1局がこの有様では、行方八段が残り6局を4勝2敗で乗り切れるとは思えない。すなわち今期名人戦は、羽生名人防衛でキマリである。
ではあるのだが、行方八段には、叩き上げの意地を見せてもらいたい。以前紹介した丸田祐三九段ではないが、1局だけでもよい。キラッと光る会心譜を紡いでもらいたい。
私が懇意にさせていただいている棋士や熊坂学五段の戦いを見ていると、タイトル戦のように地位と名誉だけしか懸かっていない将棋、言い換えれば、生活が懸かっていない将棋は、それほど興味が持てなくなった。エキサイトできなくなった。
しかしまあそこはそれ、名人戦は歴史も伝統もあるし、一応は注目したのである。
挑戦者の行方八段には「叩き上げ」のイメージがあり、名人戦挑戦者としては、1984年の森安秀光八段以来と思うがどうだろうか。
私はケータイ中継に入会していないし、名人戦の棋譜はリアルタイム公開されないので、情報収集は専らネットからとなる。
2日目夕方、すなわち9日、上川香織女流初段の待つ麹町へ向かう電車内でスマホのネット情報を見ると、すでに第1局が終わっていたので怪訝に思った。
帰宅してネット上から棋譜を確認すると、先手の行方八段が早投げしていた。その手数60手で、これは名人戦史上最短らしい。
投了局面を見ると、行方八段の銀損で、確かに劣勢ではある。
しかし5四に先手の歩が垂れているし、6四角も取れる状態にある。羽生名人の玉も4一だし、行方八段がシャニムニ暴れれば、何かパンチも入りそうな気がするのだ。
具体的には▲6二角成△同飛▲5三銀が考えられる。まあこれは角損の攻めだから名人が切らすだろうが、逆を持ったら生きた心地がしないところである。
しかし行方八段は投了してしまった。まあこの気持ち、私も劣勢にイヤになって投了すること数多だから、よく分かるのである。しかも本局の相手はタイトル90期以上の史上最強の棋士だし、それまでの対戦成績も3勝13敗と分が悪い。もう羽生先生と名人戦の大舞台で盤を挟めるだけで十分、勝てるとは思っていません、と行方八段が悲観したのも無理はないのである。
とはいうもののこの局面、羽生名人はどう思っていたのだろうか。本音は言わないだろうが、まだまだ難しい、というところではなかったか。
羽生名人は、相手の無責任(失礼)な投了による勝利をよしとしない人である。もっと将棋を指したかったと、不機嫌になる人である。本局、行方八段が先を見切ったような形でさっさと投了したが、「アナタ、そこまで読めるんですか」と羽生名人は皮肉の一言も言いたかったのではあるまいか。
行方八段は前回のNHK杯で決勝に進出したが、その決勝戦は終始うつむき気味で、とても決勝戦を争っている棋士とは思えなかった。なんでそこまで項垂れているのか。
順位戦のA級で最高の成績を取り、名人戦の大舞台に上がることは、タイトル1期に相当する偉業である。もう少しその矜持を持ってもいいのではないか。
第1局がこの有様では、行方八段が残り6局を4勝2敗で乗り切れるとは思えない。すなわち今期名人戦は、羽生名人防衛でキマリである。
ではあるのだが、行方八段には、叩き上げの意地を見せてもらいたい。以前紹介した丸田祐三九段ではないが、1局だけでもよい。キラッと光る会心譜を紡いでもらいたい。