19日(日)は、LPSA主催の「Minerva交流将棋大会」があった。これはLPSAが芝浦時代に時折開催していたもので、ファンクラブ会員のみが参加できる、将棋大会である。
私はこの類の大会には参加したことはないが、ちょいとLPSAの女流棋士に癒されたくなって、申し込みをしたのだった。
場所は東京・田町の「みなとパーク芝浦・リーブラ2階」。スケジュールは午前10時半から指導対局、午後1時から将棋大会となっている。
当日朝。前日は夜中の3時まで起きていたので朝が辛く、指導対局はパスしちゃおうかと思ったが、とりあえず田町に向かった。
10時20分ごろ、リーブラの対局室に入ると、会員が受付をしていた。LPSAからは、中倉宏美女流二段、藤森奈津子女流四段、島井咲緒里女流二段、大庭美樹女流初段、中倉彰子女流初段、渡部愛女流初段の参加だ。が、島井女流二段(ら)の私を見る目が、困惑気味である。招かれざる客、のごとき雰囲気だ。
それで私は察知した。これは…予約が必要だったのでは!? そう、私は指導対局の予約はしていなかったのだ。何たる勘違い、失態か。
「ごめんねー。今LPSAは、全部予約なのよー」
藤森女流四段がダメ押しする。私は一時帰宅も考えたが、LPSAはそんな非情なことはしない。ちゃんと渡部女流初段を充ててくれた。
「愛ちゃんと当たってよかったね」
と、女流棋士の誰かが言った。とてもありがたかったが、渡部女流初段との対局を所望して空振りに終わった会員もいると思えば、手放しで喜べない。
渡部女流初段は4面指しになったが、ほかの女流棋士は、整然と3面指しである。すなわち、私だけが完全なお邪魔虫だったのだ。
しかも渡部女流初段は、立って指す羽目になった。撮影係氏も撮影スペースを侵され撮影しづらそうで、私は踵を返して帰りたくなった。でも帰らなかったが。
定刻になり、島井女流二段がみなに挨拶をする。
「LPSA芝浦サロンが閉鎖になって、皆様とはお会いする機会がなくなり…本日は楽しみましょう」
かくして指導対局の開始となった。
上手 △女流初段 渡部 愛
下手 ▲一公
▲2六歩△3四歩▲7六歩△4二飛▲4八銀△6二玉▲6八玉△7二玉▲7八玉△3五歩▲2五歩△3二飛▲6六歩△3四飛▲6八銀△8二玉▲4六歩△9四歩▲9六歩△7二銀
▲4七銀△4二銀▲6七銀△6四歩▲5六銀左△3三桂▲6五歩△同歩▲同銀△1四歩▲1六歩△1三角▲6八金△5二金左▲3八金△6三金▲6六角△6四金▲同銀△同飛
▲7五角△3四飛▲7七桂△8四歩▲2四歩△同角▲5六歩△5四飛▲6七金△5一銀▲6五金(第1図)
渡部女流初段に教えていただくのは、1月17日の将棋ペンクラブ新年会以来。その前は昨年9月の将棋ペンクラブ大賞贈呈式となる。将棋ペンクラブさまさまだ。
私の居飛車明示に、渡部女流初段は△4二飛。居飛車党の渡部女流初段にしては珍しい作戦だが、渡部女流初段はもともと振り飛車党だった。アマチュア時代の渡部女流初段と初めて手合わせしたときも、彼女は飛車を振った。そしてそのときの彼女も、いまと同じくらい強かった。
先の女流名人リーグでも、渡部女流初段は中飛車に振っている。彼女の棋風は振り飛車が合っていると思うので、原点回帰を私は支持する。
渡部女流初段は三間に振り直し、私は▲6六歩。△6四歩なら▲5六銀左(右)~▲6五歩から1歩を手にする狙いで、私の得意戦法である。本譜も実際、そうなった。
スーツ姿の渡部女流初段は短考で静かに指し、プロの雰囲気が板についてきた。
私は▲7七桂と上がる前に、▲6六角と上がる。渡部女流初段は△6四金とぶつけてきた。私はもちろん▲同銀だが、この交換は下手もまずまずのはずだ。
渡部女流初段は△5一銀。飛車が5筋からいなくなれば角が成れる。やや抵抗はあったが、▲6五金と打ってみた。
△3六歩▲5四金△3七歩成▲同金△5四歩(第2図)
飛車取りに構わず、渡部女流初段は平然と△3六歩。ここは△7四銀を読んでいて、▲5四金△7五銀の取り合いは、金の処置に困る下手が悪い。よって▲7四同金となるが、△同歩は下手の手損で面白くない。△3六歩は意外だった。
もし上手が植山悦行七段だったら私も▲3六同歩と取り、「くわっ、落ち着いてますねえ」と軽口の一言も頂戴しただろうが、相手が変われば指し手も変わる。▲3六同歩として飛車を逃げられたら後悔すると思い、先に飛車を取った。
△5四歩に、私が指した手は。
(24日につづく)
私はこの類の大会には参加したことはないが、ちょいとLPSAの女流棋士に癒されたくなって、申し込みをしたのだった。
場所は東京・田町の「みなとパーク芝浦・リーブラ2階」。スケジュールは午前10時半から指導対局、午後1時から将棋大会となっている。
当日朝。前日は夜中の3時まで起きていたので朝が辛く、指導対局はパスしちゃおうかと思ったが、とりあえず田町に向かった。
10時20分ごろ、リーブラの対局室に入ると、会員が受付をしていた。LPSAからは、中倉宏美女流二段、藤森奈津子女流四段、島井咲緒里女流二段、大庭美樹女流初段、中倉彰子女流初段、渡部愛女流初段の参加だ。が、島井女流二段(ら)の私を見る目が、困惑気味である。招かれざる客、のごとき雰囲気だ。
それで私は察知した。これは…予約が必要だったのでは!? そう、私は指導対局の予約はしていなかったのだ。何たる勘違い、失態か。
「ごめんねー。今LPSAは、全部予約なのよー」
藤森女流四段がダメ押しする。私は一時帰宅も考えたが、LPSAはそんな非情なことはしない。ちゃんと渡部女流初段を充ててくれた。
「愛ちゃんと当たってよかったね」
と、女流棋士の誰かが言った。とてもありがたかったが、渡部女流初段との対局を所望して空振りに終わった会員もいると思えば、手放しで喜べない。
渡部女流初段は4面指しになったが、ほかの女流棋士は、整然と3面指しである。すなわち、私だけが完全なお邪魔虫だったのだ。
しかも渡部女流初段は、立って指す羽目になった。撮影係氏も撮影スペースを侵され撮影しづらそうで、私は踵を返して帰りたくなった。でも帰らなかったが。
定刻になり、島井女流二段がみなに挨拶をする。
「LPSA芝浦サロンが閉鎖になって、皆様とはお会いする機会がなくなり…本日は楽しみましょう」
かくして指導対局の開始となった。
上手 △女流初段 渡部 愛
下手 ▲一公
▲2六歩△3四歩▲7六歩△4二飛▲4八銀△6二玉▲6八玉△7二玉▲7八玉△3五歩▲2五歩△3二飛▲6六歩△3四飛▲6八銀△8二玉▲4六歩△9四歩▲9六歩△7二銀
▲4七銀△4二銀▲6七銀△6四歩▲5六銀左△3三桂▲6五歩△同歩▲同銀△1四歩▲1六歩△1三角▲6八金△5二金左▲3八金△6三金▲6六角△6四金▲同銀△同飛
▲7五角△3四飛▲7七桂△8四歩▲2四歩△同角▲5六歩△5四飛▲6七金△5一銀▲6五金(第1図)
渡部女流初段に教えていただくのは、1月17日の将棋ペンクラブ新年会以来。その前は昨年9月の将棋ペンクラブ大賞贈呈式となる。将棋ペンクラブさまさまだ。
私の居飛車明示に、渡部女流初段は△4二飛。居飛車党の渡部女流初段にしては珍しい作戦だが、渡部女流初段はもともと振り飛車党だった。アマチュア時代の渡部女流初段と初めて手合わせしたときも、彼女は飛車を振った。そしてそのときの彼女も、いまと同じくらい強かった。
先の女流名人リーグでも、渡部女流初段は中飛車に振っている。彼女の棋風は振り飛車が合っていると思うので、原点回帰を私は支持する。
渡部女流初段は三間に振り直し、私は▲6六歩。△6四歩なら▲5六銀左(右)~▲6五歩から1歩を手にする狙いで、私の得意戦法である。本譜も実際、そうなった。
スーツ姿の渡部女流初段は短考で静かに指し、プロの雰囲気が板についてきた。
私は▲7七桂と上がる前に、▲6六角と上がる。渡部女流初段は△6四金とぶつけてきた。私はもちろん▲同銀だが、この交換は下手もまずまずのはずだ。
渡部女流初段は△5一銀。飛車が5筋からいなくなれば角が成れる。やや抵抗はあったが、▲6五金と打ってみた。
△3六歩▲5四金△3七歩成▲同金△5四歩(第2図)
飛車取りに構わず、渡部女流初段は平然と△3六歩。ここは△7四銀を読んでいて、▲5四金△7五銀の取り合いは、金の処置に困る下手が悪い。よって▲7四同金となるが、△同歩は下手の手損で面白くない。△3六歩は意外だった。
もし上手が植山悦行七段だったら私も▲3六同歩と取り、「くわっ、落ち着いてますねえ」と軽口の一言も頂戴しただろうが、相手が変われば指し手も変わる。▲3六同歩として飛車を逃げられたら後悔すると思い、先に飛車を取った。
△5四歩に、私が指した手は。
(24日につづく)