(15日のつづき)
私が先手で▲2六歩と指すと、上川香織女流初段が、
「たまには後手で指してみませんか?」
と言う。それで、私が後手番になって指し直した。
もう一局の平手戦が終わり、男性氏の勝ち。こちらも2局目が始まった。LPSA麹町サロンは飲酒可で、男性氏がビールを頼んだ。
私の将棋は、上川女流初段がまたも中飛車に振る。私が△4二銀と上がると、
「急戦が好きですね」
と上川女流初段。
「これなら早く将棋が終わるじゃないですか」
と、私は返す。まあこれは冗談だが、確かに穴熊に組めば、勝率は上がるかもしれない。しかし私はプロではないので、自分の指したい手を指す。
私は△7二飛と寄ったが、▲6八飛に△6二飛と寄らざるを得ず、一手損した。さらに5筋で金銀交換になり、銀を持った私は指しにくさを感じた。
さらに私の飛車は押さえこまれ、9三に蟄居。上川女流初段はゆうゆうと▲6二飛成とし、快調。▲5二にと金もいるし、この将棋は負けたと思った。
上川女流初段の▲6三金に、私は△6一歩。▲同となら金がソッポに行くし、▲同竜なら竜の威力が半減する。
「いい手ですねー」
と上川女流初段が唸る。▲7二竜に△7一歩。「ちょっとー。こういう手を大野教室で教わってるんですかー」
上川女流初段の困惑は激しくなるばかりだ。底歩二連発は確かに大野八一雄七段に指されたことがあるが、今回のひらめきは、5日のNHK杯で観た藤井猛九段の▲6九歩にヒントを得た。やはりプロの将棋を鑑賞するのは勉強になるのだ。
上川女流初段はやっと▲6一竜だが、それでも私の苦戦は変わらない。△4五桂と跳ねた手に▲4四歩とされ、ここで投了しようと思った。
時間はまだ30分ほど残っている。しかしいまから3局目を始めても中途半端だし、おカネに換算すれば1,000円になるので、もう少し女流棋士との将棋を楽しもうと思った。
Hak氏の将棋は残念な結果に終わったが、続く2局目は平手戦になったようだ。
ビールの男性氏の将棋が終わり、またも男性氏の勝ち。簡単な感想戦をやった後、用事があるので…と、男性氏が退席した。
私の将棋は、上川女流初段に疑問手が出て、私が持ち直した。
それでも私が劣勢と見ていたのだが、中段に逃げ越した玉に、意外に耐久力がある。気が付けば私が良くなったようである。
「大沢さん、強くなりましたねー」
と上川女流初段が感心する。私にその実感はないが、上川女流初段が弱くなったのではなかろうか。実戦不足を補いたいなら、上川女流初段も大野・植山教室に行けばよい。
形勢は完全にこちらに傾いた。△3八とと銀を取るのを忘れて△4六歩と垂らしたため▲4八角とと金を取られてしまったが、大勢に影響はない。△2二に打った桂も妙に働いてきて、ハッキリ私の勝ちである。
ここから、△3八金▲同銀△3九角▲同玉△4八とまで、私の勝ち。ほかにも詰まし方があるかもしれないが、本譜がいちばん紛れが少ない。
まさかこの将棋を勝てるとは思わなかった。繰り返すが上川女流初段、この将棋を緩むようでは、重症と言わざるを得ない。
「またマッカラン勝負をやりましょう」
と上川女流初段。次の上川女流初段の回は5月21日で、まだ1席空きがある。その週まで待ち、まだ入れるようなら、お願いしようと思う。
Hak氏、もうひとりの男性氏の将棋も相次いで終わり、時刻はちょうど8時半。初めての麹町サロンは居心地もよく、濃密な2時間だった。
エレベーターで、Hak氏と下まで降りることにした。私は地下鉄で帰るつもりだったが、降りたのは1階だったようだ。Hak氏はJRで四ッ谷から帰る。じゃあお茶しましょうかということで、ふたりで四ッ谷駅方面に歩いた。
道すがら話すと、Hak氏は上川女流初段のファンだという。将棋ペンクラブではA氏が彼女のファンなのだが、せまいエリアで3人もファンがいるとは珍しい。あのぼんやりした雰囲気をどう形容したらいいものか、文芸好きの血が騒ぐのだろうか。
駅への途中に、元の会社がある。すこぶる緊張が走るが、夜ということと、辺りの建物が微妙に変わり、会社を見つけられない。
路上で元同僚にそっくりの人を見かけたが、14年前と同じ風貌のわけがなく、人違いだろう。
いつの間にか会社を通り越したようで、そのまま駅に着いてしまった。私たちは、駅に隣接するアトレ内のスターバックスに入った。実は私、スタバに入るのは人生初である。
中に入り、コーヒーはレギュラーサイズを頼んだが、かなり大きいのでビックリした。
席は壁際の、「9七」と「8七」の簡易的な席だったが、9六と8六にお嬢さんがおり、若干居心地がわるい。そのうち9九にいた男性が帰ったので、私たちは9八と8九のあたり(壁際)に移動した。6九のあたりにもふたりお嬢さんがいたが、これで三方が快適な環境になった。
室谷由紀女流初段の話になる。Hak氏は室谷女流初段にそれほど魅力を感じないらしい。
これは妙なことをいうものである。私などは、美人こそ最強、美人こそ正義と信じて疑わないのだが、Hak氏に「美人だからって、だからどうなの? という感じです」と開き直られると確かにその通りで、目からウロコが落ちる思いであった。
午後10時の閉店を待って散会。「今度、Aさんと3人で会いましょう」と別れたが、こういう口約束は実現しないものである。さて、どうなるだろう。
私が先手で▲2六歩と指すと、上川香織女流初段が、
「たまには後手で指してみませんか?」
と言う。それで、私が後手番になって指し直した。
もう一局の平手戦が終わり、男性氏の勝ち。こちらも2局目が始まった。LPSA麹町サロンは飲酒可で、男性氏がビールを頼んだ。
私の将棋は、上川女流初段がまたも中飛車に振る。私が△4二銀と上がると、
「急戦が好きですね」
と上川女流初段。
「これなら早く将棋が終わるじゃないですか」
と、私は返す。まあこれは冗談だが、確かに穴熊に組めば、勝率は上がるかもしれない。しかし私はプロではないので、自分の指したい手を指す。
私は△7二飛と寄ったが、▲6八飛に△6二飛と寄らざるを得ず、一手損した。さらに5筋で金銀交換になり、銀を持った私は指しにくさを感じた。
さらに私の飛車は押さえこまれ、9三に蟄居。上川女流初段はゆうゆうと▲6二飛成とし、快調。▲5二にと金もいるし、この将棋は負けたと思った。
上川女流初段の▲6三金に、私は△6一歩。▲同となら金がソッポに行くし、▲同竜なら竜の威力が半減する。
「いい手ですねー」
と上川女流初段が唸る。▲7二竜に△7一歩。「ちょっとー。こういう手を大野教室で教わってるんですかー」
上川女流初段の困惑は激しくなるばかりだ。底歩二連発は確かに大野八一雄七段に指されたことがあるが、今回のひらめきは、5日のNHK杯で観た藤井猛九段の▲6九歩にヒントを得た。やはりプロの将棋を鑑賞するのは勉強になるのだ。
上川女流初段はやっと▲6一竜だが、それでも私の苦戦は変わらない。△4五桂と跳ねた手に▲4四歩とされ、ここで投了しようと思った。
時間はまだ30分ほど残っている。しかしいまから3局目を始めても中途半端だし、おカネに換算すれば1,000円になるので、もう少し女流棋士との将棋を楽しもうと思った。
Hak氏の将棋は残念な結果に終わったが、続く2局目は平手戦になったようだ。
ビールの男性氏の将棋が終わり、またも男性氏の勝ち。簡単な感想戦をやった後、用事があるので…と、男性氏が退席した。
私の将棋は、上川女流初段に疑問手が出て、私が持ち直した。
それでも私が劣勢と見ていたのだが、中段に逃げ越した玉に、意外に耐久力がある。気が付けば私が良くなったようである。
「大沢さん、強くなりましたねー」
と上川女流初段が感心する。私にその実感はないが、上川女流初段が弱くなったのではなかろうか。実戦不足を補いたいなら、上川女流初段も大野・植山教室に行けばよい。
形勢は完全にこちらに傾いた。△3八とと銀を取るのを忘れて△4六歩と垂らしたため▲4八角とと金を取られてしまったが、大勢に影響はない。△2二に打った桂も妙に働いてきて、ハッキリ私の勝ちである。
ここから、△3八金▲同銀△3九角▲同玉△4八とまで、私の勝ち。ほかにも詰まし方があるかもしれないが、本譜がいちばん紛れが少ない。
まさかこの将棋を勝てるとは思わなかった。繰り返すが上川女流初段、この将棋を緩むようでは、重症と言わざるを得ない。
「またマッカラン勝負をやりましょう」
と上川女流初段。次の上川女流初段の回は5月21日で、まだ1席空きがある。その週まで待ち、まだ入れるようなら、お願いしようと思う。
Hak氏、もうひとりの男性氏の将棋も相次いで終わり、時刻はちょうど8時半。初めての麹町サロンは居心地もよく、濃密な2時間だった。
エレベーターで、Hak氏と下まで降りることにした。私は地下鉄で帰るつもりだったが、降りたのは1階だったようだ。Hak氏はJRで四ッ谷から帰る。じゃあお茶しましょうかということで、ふたりで四ッ谷駅方面に歩いた。
道すがら話すと、Hak氏は上川女流初段のファンだという。将棋ペンクラブではA氏が彼女のファンなのだが、せまいエリアで3人もファンがいるとは珍しい。あのぼんやりした雰囲気をどう形容したらいいものか、文芸好きの血が騒ぐのだろうか。
駅への途中に、元の会社がある。すこぶる緊張が走るが、夜ということと、辺りの建物が微妙に変わり、会社を見つけられない。
路上で元同僚にそっくりの人を見かけたが、14年前と同じ風貌のわけがなく、人違いだろう。
いつの間にか会社を通り越したようで、そのまま駅に着いてしまった。私たちは、駅に隣接するアトレ内のスターバックスに入った。実は私、スタバに入るのは人生初である。
中に入り、コーヒーはレギュラーサイズを頼んだが、かなり大きいのでビックリした。
席は壁際の、「9七」と「8七」の簡易的な席だったが、9六と8六にお嬢さんがおり、若干居心地がわるい。そのうち9九にいた男性が帰ったので、私たちは9八と8九のあたり(壁際)に移動した。6九のあたりにもふたりお嬢さんがいたが、これで三方が快適な環境になった。
室谷由紀女流初段の話になる。Hak氏は室谷女流初段にそれほど魅力を感じないらしい。
これは妙なことをいうものである。私などは、美人こそ最強、美人こそ正義と信じて疑わないのだが、Hak氏に「美人だからって、だからどうなの? という感じです」と開き直られると確かにその通りで、目からウロコが落ちる思いであった。
午後10時の閉店を待って散会。「今度、Aさんと3人で会いましょう」と別れたが、こういう口約束は実現しないものである。さて、どうなるだろう。