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一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

注目局2題・その2

2015-04-13 01:44:30 | 将棋雑考
11日に行われた第4回電王戦FINAL第5局、阿久津主税八段とAWAKE(開発者・巨瀬亮一氏)の件で、私も触れてみよう。
棋士対コンピューターの勝負づけは済んでいると私は見ていたので、今回2勝2敗で最終局を迎えたことは、私には予想もしない展開だった。それで当日は楽しみにしていたのだが、外出先でスマホを繰ってみると、まだ午前11時すぎだというのに終局したという情報が載り、呆気にとられた。ただ、ふつうの終わり方でないことは分かった。
帰宅して推移を調べると、阿久津八段の「△2八角」に、巨瀬氏が後の展開を悲観して、投了を告げてしまったのだった。
いやはやこれは、とんでもない結果になったものである。これではネット上で大波乱になることは必至、日本将棋連盟もドワンゴも、どこに落としどころを求めるのだろうと思った。
戻って「△2八角」は、この前に行われた100万円企画で、すでに現れた局面である。それをプロの八段が再びやった(恥ずかしながら、そのときのソフトがAWAKEだったことを、今回初めて知った)。
私の知る限り、阿久津八段は居飛車党である。それが本局では3手目に飛車を振り、▲2七銀とスキを作って、▲9六歩の手待ちまでして、△2八角を誘った。明らかな確信犯といえる。AWAKEはそれにまんまと引っ掛かったわけだった。
巨瀬氏の気持ちは分かるのである。元奨励会員として、おのがソフトで棋士にリベンジしたい。勝ち越しを決めたい。対局前の意気込みは相当だった。それが開始早々、肩透かしを食らった恰好になったのだ。
プログラマーにとって我がソフトは、子供のようなものだろう。△2八角はAWAKEの思惑に反して、早晩取られる運命にある。やがてAWAKEが蹂躙され、惨殺される様を見たくはない。その前に、すべてを破壊して無理心中しまおう…。巨瀬氏がそう思ったとしても、私には責められない。
私も前途を悲観して早投げするタイプだから、本当に巨瀬氏の気持ちが分かるのである。
しかし待ってくれ、とも思う。今回もどこかの会場に、大勢の観客が来ていたのだ。彼らの存在を無視して一局を終わらせてしまうのは、早計ではないか?
またAWAKEがとんでもない豪腕で、大きな駒損を甘受しても、その後驚異の追い上げを見せたかもしれない。もはや阿久津八段の指し手に興味はないが、AWAKEの指し手には興味を抱かせるものがあった。それを個人の判断で打ち切りにしてしまったのが残念でならない。もう少し「我が子」を信用してもよかったのではないか?
まあ、ここまではよしとしよう。
問題なのは、午後6時からの記者会見だった。ここでの暴言が、すべてを台無しにした。
対局終了から7時間以上も経っていたから少しは冷静になったと思ったのに、巨瀬氏は何を血迷ったのだ? まったく、あれは私だって言わないぞ。周りのブレーンは何をやってたのだ? 彼の自爆テロの気配に、気が付かなかったのだろうか。
この会見が始まる前までは、少なくとも巨瀬氏に同情票があったはずだ。せっかくアドバンテージがあったのに、それをみすみす逃すどころか、すべての泥をかぶるハメになるとは…。
だいたいがこういうケースは、ギャースカ騒ぐ方がバカを見ることになっているのだ。ここで巨瀬氏が「先ほどは申し訳ありませんでした」と頭を下げれば、世間が巨瀬氏の代わりにいくらでも擁護をしてくれたのだ。巨瀬氏、盤外での指し方をもう少し勉強してくれよ。
今回の暴言と、LPSAの石橋幸緒さんの最後っ屁を重ね合わせた将棋ファンも少なくなかったのではないか。しかし石橋さんも巨瀬氏も、自分の言動に悔いはないだろうから、これはこれでいいのかもしれない。
かくして電王戦FINALは、棋士の勝ち越し。やはりプロは強い、と唸らざるを得なかった。ただ、プロに対する畏敬の念が相当薄れたことも付記しておく。
そうそう、阿久津八段がNHK杯で対局するとき、どんなコメントを述べるか、大いに楽しみになった。
コメント (3)
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