昨年4月からお世話になった東十条囲碁将棋サロンは、5月26日に最終営業を迎えることになった。
サロンはJR東十条駅北口から徒歩1分と、アクセスは最高。近くにジョナサン王子神谷店もあり、これは便利な将棋処があったものだと小躍りしたが、実際は観たいテレビを優先したりして、あまりサロンにはお邪魔できなかった。
そのサロンが経営不振により、今日(5月26日)幕を閉じる。私はいつも読んでいた棋書をいただくために、東十条に向かった。
午後6時35分ごろサロンに入ると、今生の別れとばかり、多くの人がいた。サロンは囲碁客がメインだが、その黒山の中に、大野八一雄七段、植山悦行七段の姿があった。植山七段は前回で上がりだったが、今日は特別開講だったのだろう。Tak氏ら級位者に、講座を開いていた。
Fuj氏が、24日の大野・植山教室で指されたTod―Ok戦を並べてくれる。これが奇々怪々な手順で、私には理解不能。Fuj氏、この類の将棋を見せてくれるのもいいが、私はどちらかというと、好手妙手が織り込まれた熱戦を見たい。
私は談話スペースで、小林健二九段の「新スーパー四間飛車2」を読む。
植山七段が後ろを通り、
「今日はそれを取りに来たの?」
その通りだが、もちろん指導対局を受けて帰るつもりだ。
7時になって、段位者の指導対局となった。最後の参加者は、Fuj氏、S君、私。サポーターとしてW氏、Og氏が脇を固める。講師は大野七段に代わり、植山七段はこれでお役御免だ(帰宅)。
「今日で本当に最後なんですかねえ」
Og氏が不思議そうに話す。「(客が多くて)明日以降も営業しそうじゃないですか」
本当にその通りだと思うが、サロンは間違いなく今日、閉席するのだ。
私は角落ちで教えていただく。左のS君も角落ちのようだ。右のFuj氏は平手戦だが、「来週の社団戦での将棋に出現するかもしれないので、相矢倉で▲4六銀に△4五歩と突いた形を教えてください」とのことで、その周辺からの対局となった。
その形は実戦に出ないと思うが、社団戦はアマ版順位戦のようなものであり、部外者の私が口出しできる問題ではない。
私は石田流に組む。ふだん角落ちでは居飛車だが、ここサロンでは飛車を振ることが多かった。
大野七段は棒金に構え、△8六歩。これを▲同飛では△8五金。▲同歩は△9五金~△8六金なので私は果敢に攻めたが、成算はまったくなかった。
と、ここで客の一人に促され、席主がスピーチをした。
「ここでは兄が10年、それを引き継いだ私が10年、道場を開いてきました。でもここ何年かは…まあ、お客さんも少なくなって…申し訳ないけど、閉めることにしました」
辺りがしんみりする。ネット対局が盛んになって、道場経営はどこも厳しい。東十条も例外ではなく、1日800円という破格の席料にも拘わらず、閉席を余儀なくされた。席料を高くすれば客は離れ、安くすれば利益が出ない。二進も三進も行かなかった。
我が「将棋部」も昨年から参戦したが、結局集まったのは、大野・植山教室ら、一部の固定メンバーだけだった。昨年末に行われた大野七段―和田あき女流初段の公開対局も、起爆剤にならず。売り上げに貢献できなかったことを残念に思う。
局面。私は角金交換を甘受し金2枚で迫る。が、▲2六の飛車を△3五銀で殺されては、投了級である。最後は上手・5二歩、9九馬 下手・5四金、5五金…の局面で、△5三歩と突きだされ、指す手なしの投了。ヒドかった。
感想戦。△8六歩には、とりあえず▲同歩だったようだ。△9五金を待って攻撃すれば、金がソッポに行っている分だけ、下手がトクだった。
時間があるので、すぐに2局目を始める。もちろん角落ちで、今度は中飛車に振ってみた。
しかし中央を厚くされ、私は8筋に振り直す。ここと思えばまたあちら、が振り飛車の極意だ。
大野七段は△3二飛。そのあと△3五歩▲同歩△同飛と行きたいが、私に▲3八飛の用意があるので、そうはいかない。飛車交換なら下手有利だからだ。
大野七段は△8二玉~△7三金。私の▲5八金左を待って、先の手順を敢行した。
しかしこれは、私の待ち受けるところだった。ここで▲8四歩△同歩(△同金は▲8五歩で金が死ぬ)▲8五歩と継ぎ歩したのが自慢の手順。やむない△同歩に▲同飛(王手)とし、これで飛車交換が確定した。△同飛▲同桂が金当たり。自陣も▲4九金が離れているが、ここで先手を取れるから、下手指せると思った。
右ではFuj氏の実戦がかまびすしい。というのも、実戦といいながらその実は研究会で、大野七段とのやりとりがうるさいのだ。
どうも、指導対局と研究会を同時にこなすのは無理があるようである。…もっとも、サロンは今日で閉席なのだが。
私の将棋。中盤まで優位に進めていたと思うのだが、やはり終盤に追い上げられ、もう自信のない局面になっている。
私の▲7一銀に、大野七段は△6六歩と取り込む。さあ、どちらが読み勝っているのか。
(つづく)
サロンはJR東十条駅北口から徒歩1分と、アクセスは最高。近くにジョナサン王子神谷店もあり、これは便利な将棋処があったものだと小躍りしたが、実際は観たいテレビを優先したりして、あまりサロンにはお邪魔できなかった。
そのサロンが経営不振により、今日(5月26日)幕を閉じる。私はいつも読んでいた棋書をいただくために、東十条に向かった。
午後6時35分ごろサロンに入ると、今生の別れとばかり、多くの人がいた。サロンは囲碁客がメインだが、その黒山の中に、大野八一雄七段、植山悦行七段の姿があった。植山七段は前回で上がりだったが、今日は特別開講だったのだろう。Tak氏ら級位者に、講座を開いていた。
Fuj氏が、24日の大野・植山教室で指されたTod―Ok戦を並べてくれる。これが奇々怪々な手順で、私には理解不能。Fuj氏、この類の将棋を見せてくれるのもいいが、私はどちらかというと、好手妙手が織り込まれた熱戦を見たい。
私は談話スペースで、小林健二九段の「新スーパー四間飛車2」を読む。
植山七段が後ろを通り、
「今日はそれを取りに来たの?」
その通りだが、もちろん指導対局を受けて帰るつもりだ。
7時になって、段位者の指導対局となった。最後の参加者は、Fuj氏、S君、私。サポーターとしてW氏、Og氏が脇を固める。講師は大野七段に代わり、植山七段はこれでお役御免だ(帰宅)。
「今日で本当に最後なんですかねえ」
Og氏が不思議そうに話す。「(客が多くて)明日以降も営業しそうじゃないですか」
本当にその通りだと思うが、サロンは間違いなく今日、閉席するのだ。
私は角落ちで教えていただく。左のS君も角落ちのようだ。右のFuj氏は平手戦だが、「来週の社団戦での将棋に出現するかもしれないので、相矢倉で▲4六銀に△4五歩と突いた形を教えてください」とのことで、その周辺からの対局となった。
その形は実戦に出ないと思うが、社団戦はアマ版順位戦のようなものであり、部外者の私が口出しできる問題ではない。
私は石田流に組む。ふだん角落ちでは居飛車だが、ここサロンでは飛車を振ることが多かった。
大野七段は棒金に構え、△8六歩。これを▲同飛では△8五金。▲同歩は△9五金~△8六金なので私は果敢に攻めたが、成算はまったくなかった。
と、ここで客の一人に促され、席主がスピーチをした。
「ここでは兄が10年、それを引き継いだ私が10年、道場を開いてきました。でもここ何年かは…まあ、お客さんも少なくなって…申し訳ないけど、閉めることにしました」
辺りがしんみりする。ネット対局が盛んになって、道場経営はどこも厳しい。東十条も例外ではなく、1日800円という破格の席料にも拘わらず、閉席を余儀なくされた。席料を高くすれば客は離れ、安くすれば利益が出ない。二進も三進も行かなかった。
我が「将棋部」も昨年から参戦したが、結局集まったのは、大野・植山教室ら、一部の固定メンバーだけだった。昨年末に行われた大野七段―和田あき女流初段の公開対局も、起爆剤にならず。売り上げに貢献できなかったことを残念に思う。
局面。私は角金交換を甘受し金2枚で迫る。が、▲2六の飛車を△3五銀で殺されては、投了級である。最後は上手・5二歩、9九馬 下手・5四金、5五金…の局面で、△5三歩と突きだされ、指す手なしの投了。ヒドかった。
感想戦。△8六歩には、とりあえず▲同歩だったようだ。△9五金を待って攻撃すれば、金がソッポに行っている分だけ、下手がトクだった。
時間があるので、すぐに2局目を始める。もちろん角落ちで、今度は中飛車に振ってみた。
しかし中央を厚くされ、私は8筋に振り直す。ここと思えばまたあちら、が振り飛車の極意だ。
大野七段は△3二飛。そのあと△3五歩▲同歩△同飛と行きたいが、私に▲3八飛の用意があるので、そうはいかない。飛車交換なら下手有利だからだ。
大野七段は△8二玉~△7三金。私の▲5八金左を待って、先の手順を敢行した。
しかしこれは、私の待ち受けるところだった。ここで▲8四歩△同歩(△同金は▲8五歩で金が死ぬ)▲8五歩と継ぎ歩したのが自慢の手順。やむない△同歩に▲同飛(王手)とし、これで飛車交換が確定した。△同飛▲同桂が金当たり。自陣も▲4九金が離れているが、ここで先手を取れるから、下手指せると思った。
右ではFuj氏の実戦がかまびすしい。というのも、実戦といいながらその実は研究会で、大野七段とのやりとりがうるさいのだ。
どうも、指導対局と研究会を同時にこなすのは無理があるようである。…もっとも、サロンは今日で閉席なのだが。
私の将棋。中盤まで優位に進めていたと思うのだが、やはり終盤に追い上げられ、もう自信のない局面になっている。
私の▲7一銀に、大野七段は△6六歩と取り込む。さあ、どちらが読み勝っているのか。
(つづく)