一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第65期王座戦五番勝負第3局

2017-10-04 12:13:07 | 男性棋戦
3日は、羽生善治王座VS中村太地六段の第65期王座戦五番勝負第3局だった。
羽生王座は1日制五番勝負に滅法強く、タイトル98期中53期を占める。しかし本シリーズ、羽生王座は第1局での負けが痛く、もうカド番。いままで王座戦と棋王戦で渡辺明竜王にストレート負けを喫したことはあるが、B級2組の六段にいきなりの連敗は初めてで、本局は羽生王座、背水の陣の一戦だった。
戦型は角換わり。お互い▲4八金~▲2九飛型で、いまやこの形は角換わりの主流になった。
10時29分、後手番羽生王座が△6五歩と先攻した。対局開始1時間半での開戦だから、早い。もっとも2人の対戦は、ここからごちゃごちゃとした戦いになるのだ。
ただ、ここ数ヶ月で私の羽生王座における「信用」は少し薄らいでいて、本局も最後は中村六段が勝つんだろうなと思った。
63手目▲8六香で、後手の飛車が死んだ。私なら戦意喪失して半分投了を考えるが、羽生王座はもとより承知の上。△5六桂と銀を取り、△4七銀。もし▲4七同金なら△3八角だ。▲4八金・▲2九飛型は優秀だが、▲5六銀がいなくなった時、唯一の弱点がこの筋である。
中村六段は▲5七金と躱し、お互い銀と飛車を取った後、羽生王座は△3八銀不成と飛車取りに滑る。しかし▲8九飛と逃げられて、これも指しにくい手だ。
ただ、これは控室で指摘されていた手。やはりプロは考えることが同じなのだ。
77手目▲2四歩に手を抜いて△3七馬も驚いた。▲2三歩成で後手陣が崩れるからだ。が、△同玉で上部が拓けた。
▲6一飛に△6四馬も渋い。私ならビビッて△3一銀と受けているところ。もっともそう受けるくらいなら最初から▲2四歩を手抜きはしないが、とにかくもう、私のようなヘボとは思考のレベルが全く違うのである。
98手目、羽生王座はじっと△7五馬と出る。▲6八玉の早逃げなら△7六桂▲5八玉△5七馬▲同玉△4七金まで詰み! 先の△3八銀不成が詰みに一役買っていて、この駒は遊んでいるわけではなかったのだ。
中村六段は▲8七玉と寄り、▲7九飛の縦利きで馬取り。△5七馬と金を取るなら取れ! と催促したわけだ。
ここ、▲2六竜~▲3七竜と引いて受けに回る手も有力とされたが、本五番勝負は中村六段が強気の指し手を貫いてきた。だからいまの2勝があるともいえるわけで、ここで▲2六竜は中村六段の手ではない。
羽生王座は金を取り、中村六段は▲1四銀~▲7二飛成と肉薄する。これも相当厳しいが、羽生王座は△6二桂。これでどうやら凌いでいるようだ。
以下も羽生王座は△1三歩と攻め駒を責め、最後は中村六段の王手ラッシュを躱し、1勝を返した。
戻って、先手は63手目▲8六香で▲8七香とひとつ下から打つ手があったらしい。
香の1マスの違いが明暗を分けるケースは意外にあり、古いところでは1974年10月29・30日に指された第13期十段戦七番勝負第1局で、終盤大山康晴十段が▲7八香と打てば勝ちだったのを▲7七香と誤ったため、後手の中原誠名人に逆襲を食らって逆転負けをしたことがある。香の1マスさえあだやおろそかにはできないのだ。
ただ本局の▲8六香も、飛車にガツンとぶつける手で、中村六段の気迫が感じられるではないか。▲8七香は、こう指せばまた別の展開になっていたという結果論で、それだけ将棋は奥深いということだ。
本局、私はテレビを観ながら、記譜速報やAbemaTVでの観戦だったが、それでも最後は疲れた。むろん対局者はこの何十倍も疲労しているわけで、将棋に勝つのは大変なことだと思った。塚田正夫名誉十段の至言「勝つことはえらいことだ」が想起されるが、この「えらい」は「大変」という意味も込められている気がした。
さて3局終わって、挑戦者2-1のスコアは最高の展開だ。戦型予想は立てられても、どちらが勝つかはまったく分からない。第4局は11日(水)に行われる。
コメント (2)
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