一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第30期竜王戦第1局(前編)

2017-10-24 00:47:51 | 男性棋戦
第30期竜王戦七番勝負が開幕した。今期は渡辺明竜王VS羽生善治棋聖の組み合わせで、黄金カードだ。
竜王戦七番勝負で2人の対戦は2010年の第23期以来7年ぶり。だが私たちファンにはその2年前の第21期が印象深い。これはお互いが初代永世竜王を懸けた、世紀に残るシリーズだった。
結果は渡辺竜王が3連敗4連勝の逆転防衛とし、大きな話題になったものだった。
羽生棋聖もこのシリーズの印象が強かったのか、今期挑戦者を決めた時の談話でも、「渡辺竜王とは2008年以来の対戦…」と勘違いしていたものだ。いずれにしても、「永世竜王にあと1勝」から、実に長い年月が経ってしまった。
さて羽生棋聖の棋歴はいまさら述べるまでもなくどれもが誇れるものだが、本人に心残りがあるとすれば、森内俊之九段に十八世名人、渡辺竜王に初代永世竜王の座をさらわれたことであろう。
そのやるせなさを払拭するには、もう「初代永世七冠」を達成するしかない。今年度羽生棋聖は王位、王座と立て続けに失冠し、調子は下り坂。そんな中竜王挑戦に名乗りを上げられたのは奇跡(失礼)で、それだけに並々ならぬ闘志を燃やしているのは、想像に難くなかった。
一方の渡辺竜王も、今年度の成績が9勝11敗でパッとしない。
個人的には、昨年の竜王戦の騒動がじわじわと効いてきているように思える。当事者のひとりだけに相当な心労があったはずで、それが微妙に勝敗に影響したのであろう。
だが、不調であっても目の前にライバルが着座すれば、いい将棋が指せてしまうのもまた事実。そして渡辺竜王が防衛すれば12期目の竜王となり、連続5期+通算7期で、2度目?の永世竜王に輝くことになる。
というわけで、今シリーズも熱戦が期待された。

第1局は東京都渋谷区で行われた。私は最近ヒマなので解説会(と思ったら公開対局だった)に赴く手もあったのだが、それは遊興の範疇に入るので気が引ける。結果、自宅観戦となった。
先番羽生棋聖▲2六歩。これは意外に珍しい。以下6手目△3二金までとなって、昔ならここから▲2四歩でひねり飛車に進行するのだが、ここで羽生棋聖は▲3八銀。これが今風で、いつでも交換できる飛車先の歩は後回しにするらしい。
渡辺竜王もそれにならって△7二銀。羽生棋聖▲5八玉。ここで渡辺竜王がパタリと手を止めてしまった。
私のようなヘボがいつも不思議に思うのは棋士の時間の使い方で、ここで考えることがある? という何気ない局面で、長考する。
まだ9手の局面、確かに手は広いがそれは序盤だからであって、これを考えだしたらキリがない。まるで後手は加藤一二三九段のようで、まあ本家は5手目に2時間考えたことがあるくらいだから別格だが、後で時間がなくなって悪手を指したら元も子もない。もうちょっと時間配分を考えてくれよ…といらぬ心配をしたところで、△1四歩が指された。タイム58分。まったく深すぎる手で、私には理解不能だった。
結局相掛かり模様に進み、20手まで進んだところで昼食休憩となった。先日の王座戦五番勝負第4局では、1日制とはいえ、開始1時間あまりでのっぴきならない展開になっていた。本局はこののろのろとした進行が、将棋界最高の公式戦の重みを感じさせた。
再開後、羽生棋聖はようやく飛車先の歩を切り、▲2五飛と中座した。なるほどここまで飛車の態度を遅らせられたのだから、▲2四歩保留は成功したというべきだろう。
数手後羽生棋聖は▲2四歩と合わせる。何だか塚田スペシャルみたいだ。
数手後△8二飛に▲3四飛と取り、今度は横歩取りみたいな将棋になった。
△3三角に▲1五歩。この突き捨てに私は唸った。この手は後に▲1二歩や▲1三歩の端攻め、歩切れの時の▲1五香など、もろもろの味がある。
ちなみに私には、この類の突き捨てができない。たとえば角換わりの将棋で▲4五歩△同歩▲3五歩があるが、相手に渡す1歩の大きさを考えてしまい、つい▲3五歩を保留する。結果、駒がうまく捌けず惨敗するのだ。
▲1五歩の突き捨ても然りで、私は端攻めができないばかりか、△1六歩から逆襲されて、辛酸をなめたことが何度もある。
本譜に戻り、△1五同歩に▲3七桂。これでまた1筋が薄くなってしまった。先手としては、△1六歩~△1七歩成が来る前に攻め切っちゃおう、というわけだ。
40手目△3四歩と飛車取りに打つ。これも達人の手で、私などは何かの時に△4四角と上がりたいくらいだから、それを1歩を捨てて飛車を呼ぶなぞ、理解できないところである。
ここで封じ手となった。羽生棋聖の▲3四同飛は当然として、渡辺竜王はどう指すのか。私にはその構想がまったく分からなかった。
(つづく)
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