一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

今日は何の日・11月21日

2021-11-21 22:47:26 | 将棋雑記
54年前の今日11月21日は、大山康晴十五世名人と中原誠十六世名人の初対局が行われた日である。
当時大山名人44歳、中原五段20歳。大山名人は十段、王将、王位を保持する四冠王。いっぽう中原五段は大型新人の呼び声も高く、大山名人の後継者とも呼ばれていた。そのふたりが第11期棋聖戦の準決勝で当たったのである。
大山名人の先手で▲7六歩△8四歩▲5六歩△5四歩。ここで大山名人は中飛車に振った。しかし△6二銀に▲5五歩△同歩▲同角としたのが動きすぎ。ここは▲6六歩だった、と大山名人の感想がある。さすがの大名人も大型新人との対局に、気が逸ってしまったようだ。
そこから数手進んで、第1図は大山名人が▲5四歩と突きだしたところ。局面は大山名人の作戦負けで、第1図は中原五段に△5七歩や△6五銀や△6五桂など、指したい手がいっぱいある。大山名人の▲5四歩は争点をズラした手だが、それでも中原五段の強烈な攻めが炸裂する。

第1図以下の指し手。△7七角成▲同桂△3三角▲6六歩△同角▲6八金△8五桂▲同桂△9九角成(第2図)

中原五段が角を換わり、再度角を据えたのが好手。これには▲6六角と合わせるのが正着だったが、大山名人は▲6六歩と突き捨てて▲6八金と上がった。
しかし中原五段の△8五桂が好手で、▲同桂に△9九角成と馬を作っては、中原五段の優勢がハッキリした。

さらに数手進んで、第3図。非勢ながらも耐えてきた大山名人だが、ここで疑問手が出る。

第3図以下の指し手。▲4六桂△6四飛▲5五銀打△6八飛成▲同飛△2四香(第4図)

▲4六桂が疑問手で、ここは▲6三成桂と歩切れを解消しつつ△6四飛を消すのがよかったようだ。
中原五段の△6四飛は当然。大山名人は行きがかり上▲5五銀打と飛車を殺したが、バッサリと△6八飛成が好手。この飛車切り、何となく、藤井聡太竜王の香りがする。
以下▲6八同飛に△2四香と据え、中原五段の勝勢となった。

第4図で▲6三飛成は△8一角がある。よって大山名人は▲8一飛としたが、△8九馬以下中原五段が的確に寄せ、殊勲の勝利となった。
中原五段は続く挑戦者決定戦にも勝ち、タイトル戦に初登場した。
いっぽう大山名人は、1957年・第16期名人戦から続けていたタイトル戦出場の記録が50回で途切れた。記録に拘る大山名人は、この敗戦を後々まで残念がったという。
そして大山十五世名人と中原十六世名人の戦いは、162局まで及ぶことになる。タイトル戦は20回を数え、最後のタイトル戦は何と、1986年の名人戦。ウソみたいな話である。
脂が乗っていた時期の中原十六世名人はともかく、全盛期を過ぎてからの大山十五世名人の余韻の長さに、私はあらためて感服するのである。
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