一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

羽生九段の危機&山崎流変態将棋Ⅱ

2021-11-08 00:19:29 | 男性棋戦
10月29日に第80期A級順位戦・広瀬章人八段VS糸谷哲郎八段の一戦が行われ、糸谷八段が勝った。
これで4回戦が終了したが、順位1位の斎藤慎太郎八段が4勝0敗、2位の豊島将之竜王が3勝1敗、3位から7位までが2勝2敗、8位の羽生善治九段が1勝3敗、9位の永瀬拓矢王座が2勝2敗、そして10位の山崎隆之八段が0勝4敗と、羽生九段を除いて順位と対戦成績が比例するという、異例の事態となった。
とりわけ深刻なのが羽生九段である。山崎八段の降級は確定として(失礼)、順位下位の羽生九段は残り2勝3敗の合計3勝6敗は残留に相当危ない。
といって残り5局を見ると、勝ちを計算できるのは山崎八段くらいで(本当に失礼)、あとは全敗してもおかしくないイメージなのだ。
羽生九段の全盛時代、私は羽生九段の50代は、ただの通過点になると思っていた。A級在位はもちろん、タイトルの1つや2つは持っているかと思った。これは大山康晴十五世名人がそうだったからである。
だが現実はというと、年度成績はここ数年5割台、順位戦もA級維持がやっとという有様で、中原・谷川型の衰えに私は愕然としたのである。
晩年の大山十五世名人は降級の危機に陥るたび、芸術的な将棋を魅せた。羽生九段にもそれが起こることを祈る。

上でさんざんこき下ろしてしまった山崎八段だが、この4日に菅井竜也八段とのA級順位戦5回戦があった。順位最下位の山崎八段は、残り5局を3勝2敗では落ちる。すなわち4勝1敗が残留の最低条件だ。
山崎八段の先手で、初手から▲9六歩△9四歩▲7八銀!△3四歩▲6六歩!と進行した。
▲9六歩が変態流の片鱗。△9四歩に▲7八銀が継続手で、△3四歩に▲6六歩が核心の一手である。これが将棋界では山崎八段しか指さない「パックマン戦法」だ。
これに△同角なら▲6八飛△5七角成▲6三飛成で大乱戦に持ち込もう、の狙い。
対して菅井八段は大人の対応で△3二飛。昨年の棋聖戦で山崎八段は久保利明九段にパックマン戦法を採用したが、▲6六歩に久保九段は△4二銀と応じ、やはり三間飛車に振ったものだ。やはり振り飛車党は、自分のスタイルを崩したくないのだろう。
本譜もここからがすごかった。山崎八段は雁木から金銀4枚を三段目に繰り出し、向かい飛車に振ったあと、右玉に構える(図)。

まさに変態流全開だが、よく見れば角落ちの上手にも見えて、私はこんな形の将棋を大野八一雄七段に指されたことがある。
となれば、この形に角が加わっている先手も指せる、ということになる。
将棋はここから激しい攻め合いになったが、山崎八段が相手の攻めを見切り、菅井八段は攻めが切れたところで投了となった。
まさに山崎八段会心の一局で、これぞゼニの取れる将棋である。読者もこの棋譜を入手して、堪能したほうがよい。
というわけで山崎八段、まずは降級の危機を1回回避した。そして次の羽生九段戦に勝つと、これはもう降級大混戦となる。対羽生戦は5勝23敗だが、直近は3連勝している。この対局も楽しみである。
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