一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

31歳差のカード

2021-11-10 23:23:01 | 将棋雑記
9日は第71期王将戦挑戦者決定リーグ・藤井聡太王位・叡王・棋聖VS羽生善治九段の一戦が行われた。結果は藤井三冠の勝ちと、翌日の読売新聞社会面に載った。主催紙以外の新聞が他社棋戦の、それも一リーグ戦の結果を載せる。羽生七冠の時代でも考えられなかったことで、感慨深い。
さて藤井三冠のゴールデンカードで、相手は誰かと問われたとき、私は豊島将之竜王でもなく渡辺明名人でもなく、羽生九段と答える。タイトル99期の実績は、現在の竜王や名人を凌駕する。
その羽生九段と藤井三冠の年齢差は「31歳9ヶ月」。この数字は過去の世代間対決と照らして、どのカードにいちばん近いのだろう。
まずは現在・過去のレジェンドの生年月日を記してみる。

升田幸三実力制第四代名人 1918年3月21日
大山康晴十五世名人 1923年3月13日
中原誠十六世名人 1947年9月2日
谷川浩司九段 1962年4月6日
羽生善治九段 1970年9月27日

まず大山十五世名人と中原十六世名人の年齢差だが「24歳5ヶ月」で、これは有名である。けっこうな年齢差だが、大山十五世名人の「余韻」が長かったため、中原十六世名人とは長期の戦いとなった。
これが谷川九段に変わると、大山十五世名人との年齢差は「39歳」となる。
ふつうなら多くの対局は望めないが、大山十五世名人58歳・谷川九段19歳の初対局を皮切りに、A級順位戦6局を含め、21局に上った。
大山十五世名人―羽生九段は、驚異の「47歳6ヶ月」。公式戦の対局は8局あったが、これも多いほうだろう。羽生九段が大山十五世名人との対局にこぎつけたのが、あらためてすごい。
中原十六世名人と羽生九段の年齢差は「23歳」。大山―中原より短いのは意外だが、中原―羽生のタイトル戦が一度もなかったのも意外だ。史上最強棋士を論じるとき、中原十六世名人の名がほとんど上がらないのは、中原十六世名人の50代以降の活躍がほとんどなかったことによる。
ここまでの検討では大山―中原の「24歳5ヶ月」が羽生―藤井の「31歳9ヶ月」に最も近いが、升田実力制第四代名人―中原十六世名人を調べると、「29歳5ヶ月」となる。
升田実力制第四代名人は文字通りレジェンドであり、中原十六世名人は20歳でタイトルを獲り、年度最高勝率(.855)の保持者でもある。何となく、羽生―藤井と構図が似ている気がするのである。
では升田実力制第四代名人の、対中原十六世名人戦での名手を紹介する。

図は1970年7月24日に指された、第25期A級順位戦。升田九段はひねり飛車から▲7七飛とひとつ引いた。これが名手で、中原八段が△4五歩なら、▲7六銀△6六角▲6七飛と捌く狙いだ。
実戦は△7四歩だったが、▲同歩△同金▲7六銀から升田九段の指し手が冴え、升田九段の快勝となった。
両者の対戦成績は升田実力制第四代名人3勝、中原十六世名人9勝だが、勝敗云々より、12局の実戦譜が残っていることが棋界の財産である。

羽生九段と藤井三冠が今後何局まみえるか分からないが、後世に残る名局を楽しみにしている。
コメント (2)
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