一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第33回将棋ペンクラブ大賞・オンライン贈呈式(後編)

2021-11-16 00:22:46 | 将棋ペンクラブ
画面は当然3人を映しているが、画面に比して人が小さい。もう少しカメラを前方に出せばいいのだが、そういうテストはしなかったのだろうか。ただまあ、その素人っぽい撮影が逆に好感が持てるのだが。
高野秀行六段が将棋を始めたキッカケは、小学生のとき、隣の席の子が将棋をやったから。そこから高野少年は厚木の将棋道場に行った。そこでは勝又清和、鈴木大介、北浜健介、佐藤紳哉、上野裕和と、後の棋士が集結することになる。
「ひとつの道場からこれだけの棋士が出るのは珍しいと思います」と、高野六段。
岡部敬史氏は宝島社の編集者からフリーになった。息子と将棋を指すも、すぐに抜かれる。
「将棋はお父さんの威厳が長く続かないゲームなんです」と高野六段が冷徹に言う。
それで岡部氏は将棋道場に行ったが、それが高野六段の教室だった。そこで高野六段に「このままでも泳げるけど、泳ぎ方を知ったらもっと泳げるようになりますよ」と殺し文句を言われ、息子さんはフェードアウトしたものの、高野六段と岡部氏の付き合いはそのまま続いたという。
そのうち岡部氏が「息子に勝てる本が欲しい」と思い、本を作りましょう、という話になった。最初の30分は飲まずに会合をやったが、やはり酒が入ってしまう。そのうち、ふたりだけじゃつまらないということで、岡部氏がネットで注目していたさくらはな。さんに声を掛けた。もちろんさくらさんは快諾したが、たださくらさんは、「絶対この本は出ないな」と思ったという。
だが岡部氏は扶桑社のツテを頼って、出版にこぎつけた。中身は居酒屋でのおしゃべりでと見紛うくらいワイワイ感があって楽しいが、実際一杯飲みながらやっているらしい。
だがそこからしっかりした文章にするのが、岡部氏の腕である。
そしてさくらさんが実際に初段になったオチである。そこで高野六段と岡部氏は、さくらさんに内緒で初段免状を贈ることになったのだが、これには対象者の住所が必要だという。それをさくらさんからだましだまし聞く行為が可笑しい。
3名は今後、低級者向けの本も考えているという。女性の視点からすると、「装丁がかわいいものがいい」らしい。第4弾、第5弾が楽しみである。
続いてトークショーのPART2。題して「タブーなし!文春に聞きたい5つの質問!」
出演は文春オンライン編集部・池澤龍太氏と、「Sports Graphic Number」編集部・寺島史彦氏。聞き手は高野六段。これは視聴者から事前に質問を募っており、聞き手の藤田さんによると、40くらいあったそう。私も書いたが、質問が将棋に特化していなかったから、ボツに違いない。
なおタイトルには「5つの質問」とあるが、それに拘らず質問していくとのこと。
文藝春秋の創業者は菊池寛。エピソードを聞かれ、池澤氏が答える。
菊池寛は愛棋家で、社員を呼んで将棋を指していた。だがブームになりすぎて、仕事に支障をきたすようになった。そこで夕方5時までは将棋禁止となった。「でも、それを最初に破ったのは菊池寛らしいです」。
高野六段も秘話を述べる。「将棋世界は昔、菊池寛に巻頭エッセイを書いてもらってたんですけど、当時の将棋世界は、菊池寛に払う原稿料はほとんどなかったはずなんですよ」。
菊池寛は、ボランティアで書いていたのではないか、というのが高野六段の見立てである。
文藝春秋の将棋特集は誰が言い出しっぺか。諸説あるが。担当編集者はみんな、自分だと思っているらしい。
ともれ「Number」の将棋特集がバカ売れして、第2弾は「やらなければならない」と寺島氏は決意したそうだ。
寺島氏が印象に残った棋士は松尾歩八段。外苑前集合で寒い日だったが、ボタンを2つ外す独特の格好で来た。藤田さんが「セクシーの名をほしいままにしたんですね」とウットリした目で言った。
将棋オンラインの仕掛け人は池澤氏。将棋特集は各部署が個別にやったが、時期がたまたま重なったらしい。ただ「Number」はバカ売れしたので、他の編集部はそれを横目に編集をやったらしい。
誰が取材対象棋士を選ぶか。これはライターの比重が大きいようだ。「ライターが興味を持って聞くほうが、面白い」
贔屓にしている棋士同士が対局しているときはどうするか。
池澤氏「どっちも応援します。相手に負けろ、とは思わない。これが他のスポーツとは違うところで、カルチャーではないでしょうか」
棋士の写真を撮る時に気を付けていることは。
寺島氏「棋士のポートレートを撮る時は、外で撮ります」
印象に残った棋士は。
寺島氏「写真を見てこれスゲーと思ったのは、久保先生。この号は大丈夫だと思った」
そこで藤田さんがその写真を拡げる。そこには久保九段が憂鬱そうな顔で映っていた。
「これは関西将棋会館の福島駅近くの路地ですね。この日はメチャクチャ暑くて、久保先生、ただ暑がっているだけなんですよ」
こうした裏話を聞くと、掲載された写真がまた違って見えるのが面白い。
池澤氏「私は、野澤(亘伸)先生が撮った藤井(猛)九段と行方(尚史九段)の写真」。ふたりが雪の中で傘をさしている。「これでこのムックはいけると思った」。
最後にふたりは、「年明け間もなく、Number第3弾が出ます」と、最新情報を解禁してくれた。
以上、1時間50分におよぶオンライン贈呈式は滞りなく終わった。マイクの音声が入らなかったり、画面に黒い影が横切ったりしたが、将棋ペンクラブ初の試みとしては大成功であろう。リアル贈呈式の復活は必須だが、オンライン方式も併用したら面白くなると思う。
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