4日(木)は当日になっても、LPSA麹町サロンin DIS・上川香織女流二段の回に空きがあったので、申し込んだ。といっても現在は先方へ電話連絡はできないので、メールで行った。
だが即返信が来るはずもなく、私はそれを待たずに麹町へ向かった。
四ツ谷駅近くの小諸そばで、二枚もりをたぐる。美味かったが、麺がやや伸びていたか。
定刻に麹町サロンに入ると、Tod氏と常連氏がいた。
「あらあ久し振り!」
と上川女流二段。上川女流二段との指導対局は昨年11月19日以来で、ほぼ1年振り。その間私はハゲが進行したが、上川女流二段は変わっていなかった。47歳とは思えぬ若さだ。
「きょうはお客様がふたりしかいなかったから、大沢さんに連絡しようと思ったのよ。でもメアドとか知らないし」
「ああ、どうも」
「あとで教えてください。あ、LINEとかやってます?」
「やってますよ。今年の就職活動のとき、必要があって作りました。
それより上川先生、この前の順位戦は勝ちました?」
私は急所の質問をする。
「負けました」
「え? 誰と対局でした?」
「長沢さん(千和子女流四段)」
「ああ、長沢さんには勝ってもらわないと」
「でも長沢さん強いのよ。よく研究されてるし。
……大沢さん、大野教室は最近行ってるんですか?」
「あまり行ってませんね」
なんだか昨年もこんな会話をした気がする。
「私も行こうかな」
大野教室には多くの女流棋士の卵が集まり、いまや隠れた聖地と化している。
早速指導対局となるが、Tod氏は飛車落ちで、常連氏は平手で挑む。「ゴキゲン中飛車でお願いします」
これはほっといても中飛車に振りそうだから、上川女流二段と私が苦笑した。
私も平手戦だが、上川女流二段に促され、私が振駒をした。と金が3枚出て、私の後手。畏れ多いことになった。
初手からの指し手。▲7六歩△8四歩▲7八飛△6二銀▲7五歩△8五歩▲7六飛△3四歩▲6六歩△4二玉▲5八金左△3二玉▲4八玉△6四歩▲3八玉△6三銀▲2八玉△4二銀▲3八銀(第1図)
きょうは当初、Tod氏しか予約が入っていなかったらしい。下手をすると1対1の夢の指導対局になっていたかもしれないのだが、私と常連氏がTod氏の野望を許さなかった。
「最近三間飛車も指すのよ」と語っていた上川女流二段は三間飛車に振る。私は石田くずしが好きなので、△6二銀と上がった。
「お、やってこいと。じゃあ石田流に」と上川女流二段は▲7五歩。以下石田流となった。
私はオーソドックスな構えだが、次の手が一公流。
第1図以下の指し手。△4四歩▲4六歩△4三銀▲9六歩△5四銀左▲9七角△4二金▲7七桂△4五歩▲同歩△同銀▲6八銀(第2図)
△4四歩が私流で、▲4六歩と受けなければ△4五歩と伸ばし、美濃囲いの発展を阻止する。▲4六歩ならのちに銀を繰り出し△4五歩から1歩を手にする狙いだ。
上川女流二段は▲4六歩と受けたので、私は予定通り△5四銀左。ここ、右としないのがミソで、右銀は▲6五歩に備えている。
そして△4五歩。
「そうですよね。この辺から戦いになりますよね」
と上川女流二段がつぶやいた。
第2図以下の指し手。△5四銀引▲5六歩△7二金▲1六歩△1四歩▲5七銀△9四歩▲6五歩△同歩▲6四歩(途中図)
△5二銀▲7四歩△同歩▲同飛△7三金(第3図)
私は△5四銀と引いて当初の目的は達成したが、冷静に見ると玉のコビンが空いて、あまりいい形ではない。先手の角は9七に上がっているから△6五歩も甘い。結果、後手はそれほどでかしていないことに気付き、大局観の悪さに呆れた。
▲5七銀にじっと△9四歩。「なんでこんな難しい局面に……」と上川女流二段がつぶやき、長考に沈む。そして▲6五歩と突っかけた。
これは△同歩の一手だが、▲6四歩が継続の一手。私の1歩交換を逆用された形で、やはり△4五歩はよくなかった。
途中図では当然△同銀と取りたいが、以下▲7四歩△6三銀▲7三歩成△同銀▲6五桂△6四銀右▲7三歩で、攻め潰されると思った。
そこで△5二銀の辛抱だが、中原誠十六世名人だって若き日の羽生善治九段相手にそう指したので、悔しくはなかった。
本譜▲7四同飛に△7三歩では▲7五飛から▲8五飛を狙われる。よって強く△7三金と立ったが……。
第3図以下の指し手。▲7三同飛成△同桂▲7四歩△7七角成▲7三歩成△8一飛▲7二と△4一飛▲6二と△8九飛(第4図)
△7三金は一種の勝負手でもある。上川女流二段は
「うぅ、切りたい誘惑にかられる……。まあ指導対局だし、楽しくやりますか。咎めてください」
と▲同飛成と行った。△同桂に▲7四歩で、これに△7二歩は▲7三歩成△同桂▲6五桂で恐らく私が負ける。
よって私は△7七角成だが、▲7三歩成のほうが価値が高い。
以下▲6二とまで寄られて、後手が非勢になった。
第4図以下の指し手。▲6三歩成△同銀引▲同と△同銀▲5五桂△5四銀▲6四角△6六歩▲4四金(第5図)
▲6三歩成は、と金1枚で銀と交換できるから、何かの錯覚だったかもしれない。すなわち第4図から▲5二と△同金▲6三銀とする。以下A△同銀なら▲同歩成△同金▲5二銀。B△同金なら▲同歩成△同銀▲5三角成である。(25日追記:▲6三銀には△4九飛行成▲同銀△同飛成で後手が勝てそうだ)
本譜△5四銀に上川女流二段はふわっと▲6四角。この意味がよく分からないが、▲9一角成の狙いだろうか。
もっとも私も指す手が分からず、△6六歩。一応△6七歩成を見ているが、馬道が止まるので、あまり感触はよくなかった。
と、上川女流二段は▲4四金。こ、これは……。
(つづく)
だが即返信が来るはずもなく、私はそれを待たずに麹町へ向かった。
四ツ谷駅近くの小諸そばで、二枚もりをたぐる。美味かったが、麺がやや伸びていたか。
定刻に麹町サロンに入ると、Tod氏と常連氏がいた。
「あらあ久し振り!」
と上川女流二段。上川女流二段との指導対局は昨年11月19日以来で、ほぼ1年振り。その間私はハゲが進行したが、上川女流二段は変わっていなかった。47歳とは思えぬ若さだ。
「きょうはお客様がふたりしかいなかったから、大沢さんに連絡しようと思ったのよ。でもメアドとか知らないし」
「ああ、どうも」
「あとで教えてください。あ、LINEとかやってます?」
「やってますよ。今年の就職活動のとき、必要があって作りました。
それより上川先生、この前の順位戦は勝ちました?」
私は急所の質問をする。
「負けました」
「え? 誰と対局でした?」
「長沢さん(千和子女流四段)」
「ああ、長沢さんには勝ってもらわないと」
「でも長沢さん強いのよ。よく研究されてるし。
……大沢さん、大野教室は最近行ってるんですか?」
「あまり行ってませんね」
なんだか昨年もこんな会話をした気がする。
「私も行こうかな」
大野教室には多くの女流棋士の卵が集まり、いまや隠れた聖地と化している。
早速指導対局となるが、Tod氏は飛車落ちで、常連氏は平手で挑む。「ゴキゲン中飛車でお願いします」
これはほっといても中飛車に振りそうだから、上川女流二段と私が苦笑した。
私も平手戦だが、上川女流二段に促され、私が振駒をした。と金が3枚出て、私の後手。畏れ多いことになった。
初手からの指し手。▲7六歩△8四歩▲7八飛△6二銀▲7五歩△8五歩▲7六飛△3四歩▲6六歩△4二玉▲5八金左△3二玉▲4八玉△6四歩▲3八玉△6三銀▲2八玉△4二銀▲3八銀(第1図)
きょうは当初、Tod氏しか予約が入っていなかったらしい。下手をすると1対1の夢の指導対局になっていたかもしれないのだが、私と常連氏がTod氏の野望を許さなかった。
「最近三間飛車も指すのよ」と語っていた上川女流二段は三間飛車に振る。私は石田くずしが好きなので、△6二銀と上がった。
「お、やってこいと。じゃあ石田流に」と上川女流二段は▲7五歩。以下石田流となった。
私はオーソドックスな構えだが、次の手が一公流。
第1図以下の指し手。△4四歩▲4六歩△4三銀▲9六歩△5四銀左▲9七角△4二金▲7七桂△4五歩▲同歩△同銀▲6八銀(第2図)
△4四歩が私流で、▲4六歩と受けなければ△4五歩と伸ばし、美濃囲いの発展を阻止する。▲4六歩ならのちに銀を繰り出し△4五歩から1歩を手にする狙いだ。
上川女流二段は▲4六歩と受けたので、私は予定通り△5四銀左。ここ、右としないのがミソで、右銀は▲6五歩に備えている。
そして△4五歩。
「そうですよね。この辺から戦いになりますよね」
と上川女流二段がつぶやいた。
第2図以下の指し手。△5四銀引▲5六歩△7二金▲1六歩△1四歩▲5七銀△9四歩▲6五歩△同歩▲6四歩(途中図)
△5二銀▲7四歩△同歩▲同飛△7三金(第3図)
私は△5四銀と引いて当初の目的は達成したが、冷静に見ると玉のコビンが空いて、あまりいい形ではない。先手の角は9七に上がっているから△6五歩も甘い。結果、後手はそれほどでかしていないことに気付き、大局観の悪さに呆れた。
▲5七銀にじっと△9四歩。「なんでこんな難しい局面に……」と上川女流二段がつぶやき、長考に沈む。そして▲6五歩と突っかけた。
これは△同歩の一手だが、▲6四歩が継続の一手。私の1歩交換を逆用された形で、やはり△4五歩はよくなかった。
途中図では当然△同銀と取りたいが、以下▲7四歩△6三銀▲7三歩成△同銀▲6五桂△6四銀右▲7三歩で、攻め潰されると思った。
そこで△5二銀の辛抱だが、中原誠十六世名人だって若き日の羽生善治九段相手にそう指したので、悔しくはなかった。
本譜▲7四同飛に△7三歩では▲7五飛から▲8五飛を狙われる。よって強く△7三金と立ったが……。
第3図以下の指し手。▲7三同飛成△同桂▲7四歩△7七角成▲7三歩成△8一飛▲7二と△4一飛▲6二と△8九飛(第4図)
△7三金は一種の勝負手でもある。上川女流二段は
「うぅ、切りたい誘惑にかられる……。まあ指導対局だし、楽しくやりますか。咎めてください」
と▲同飛成と行った。△同桂に▲7四歩で、これに△7二歩は▲7三歩成△同桂▲6五桂で恐らく私が負ける。
よって私は△7七角成だが、▲7三歩成のほうが価値が高い。
以下▲6二とまで寄られて、後手が非勢になった。
第4図以下の指し手。▲6三歩成△同銀引▲同と△同銀▲5五桂△5四銀▲6四角△6六歩▲4四金(第5図)
▲6三歩成は、と金1枚で銀と交換できるから、何かの錯覚だったかもしれない。すなわち第4図から▲5二と△同金▲6三銀とする。以下A△同銀なら▲同歩成△同金▲5二銀。B△同金なら▲同歩成△同銀▲5三角成である。(25日追記:▲6三銀には△4九飛行成▲同銀△同飛成で後手が勝てそうだ)
本譜△5四銀に上川女流二段はふわっと▲6四角。この意味がよく分からないが、▲9一角成の狙いだろうか。
もっとも私も指す手が分からず、△6六歩。一応△6七歩成を見ているが、馬道が止まるので、あまり感触はよくなかった。
と、上川女流二段は▲4四金。こ、これは……。
(つづく)