昨年12月23日、大野教室の企画にて、宮嶋健太四段に指導対局をいただいた。引き続き、加藤圭女流二段との指導対局に入る。
加藤女流二段は2018年2月、26歳で女流棋士3級となる。ずいぶんな晩学だが、ブランクが12年ある。この期間を将棋に充てていれば、いまごろタイトル戦の常連だったのだが、これも運命である。
しかしデビュー後の加藤女流二段は快進撃を遂げ、女流名人と女流王位のリーグに入った。新設の白玲戦・女流順位戦ではA級を確定し、女流二段に昇段した。元から実力はあった加藤女流二段、一気に花が開いた感じだ。
私はデビュー前の加藤女流二段と何局か指しているが、鉄の塊のような力強さがあった。こう感じたのは、加藤女流二段と上田初美女流四段だけである。
さて、指導対局である。加藤女流二段に「手合いは?」と聞かれ、平手を所望した。さすがに宮嶋四段と同じ手合いというわけにはいくまい。ただ、左の男性は、宮嶋四段のときと同じ、飛車落ちを所望していた。
初手からの指し手。▲7六歩△5四歩▲5六歩△5二飛▲4八銀△3四歩▲6八玉△6二玉▲7八玉△7二玉▲2六歩△3三角▲2五歩△4二銀▲5八金右△8二玉▲5七銀△7二銀(第1図)
▲7六歩に、加藤女流二段が遅ればせながら「希望の戦型はありますか?」と言った。私は何でもよかったが、相手の得意を粉砕するのが将棋の醍醐味なので、「中飛車」を希望した。
△5四歩に▲5六歩が、ひそかな絶対手。中飛車に位を取らせると、下手は駒組が分断されてしまう。5筋の位は保つ、が持論である。
以下はふつうの駒組となったが、△3三角に▲同角成は上手の注文にハマると思い、見送った。
そんな第1図で、次の手は軽率だった。
第1図以下の指し手。▲4六銀△4四歩(第2図)
私はヒョイと▲4六銀と出たが、マズかった。この銀は▲4五銀と出ても、△8八角成▲同玉△3三銀で、立ち往生する。
よって加藤女流二段はふつうに駒組を進めればよかったのだが、△4四歩。これで通常の居飛車VS振り飛車の形になり、とりあえずホッとした。
第2図以下の指し手。▲3六歩△4三銀▲5七銀△9四歩▲6八銀上△9五歩▲4六歩△3二金▲3八飛△5一飛▲3五歩△同歩▲同飛△6四歩▲3六飛△6三銀(第3図)
私は▲3六歩と突いたが、▲3五歩としても△4五歩があるので、私は▲5七銀と出直す。結果、この2手損が△9四歩~△9五歩と換わったが、端での戦いにしなければ、後悔もしない。以下、私は加藤一二三流袖飛車を目指す。さすがの加藤女流二段も、この戦法は受けたことがないのではないか。
私は1歩を交換して▲3六飛と整え、十分。
対して加藤女流二段の△6三銀は、下手にチャンスが来たと思った。
第3図以下の指し手。▲4五歩△5五歩▲同角△7二金▲4四歩△5四銀左▲8八角△4二金▲3四歩△2二角▲2四歩(第4図)
ころはよしと、▲4五歩。これを△同歩なら▲3三角成で、△同桂は▲3四歩。△同金は▲4二角で下手指せると読んだ。
そこで加藤女流二段は△5五歩と手筋で応戦してきたが、ここは△4五同歩と取る手もあった。以下▲3三角成△同金▲4二角には、△4一飛▲3三角成△同桂▲同飛成△4四角で、上手が指せそう。私はもっと読みを掘り下げるべきだった。もっとも、本局の指導対局も1時間。加藤女流二段もさして考えず淡々と指している感じ。とにかくお互い、時間がないのだ。
▲5五同角△7二金に、▲4四歩の取り込みが大きかった。これを△同銀は▲同角△同角▲3二飛成で、さすがに下手がよい。
△5四銀左に▲8八角と引いて、2歩得は小さくないアドバンテージとなった。
加藤女流二段は飛車筋を避けて△4二金。私は▲3四歩と押さえ、△2二角に▲2四歩。バカに好調で、こんなにうまくいっていいのかと思った。
第4図以下の指し手。△3二金▲2三歩成△同金▲3七桂△7四歩▲4六銀△6五銀▲3五銀(第5図)
▲2四歩を△同歩なら、▲2三歩△3一角▲4三歩成△同金▲1一角成で下手優勢。よって△5三飛かと思ったが、さすがにそれはない。
加藤女流二段は再び△3二金と寄ったが、私は▲2三歩成△同金で、金を僻地にやった。
さらに▲3七桂と跳ね、△7四歩に▲4六銀、△6五銀に▲3五銀と、この銀まで五段目に間に合ってしまった。▲3七桂には△3一飛で、まだまだ難しい勝負だったと思う。本譜は上手の指し手に覇気がなく、下手に理想形な布陣が完成しては、これは下手、負けようがなくなってしまった。
ところがこの将棋、私が負けるのである。まったく、ひどい悪夢だった。
(つづく)
加藤女流二段は2018年2月、26歳で女流棋士3級となる。ずいぶんな晩学だが、ブランクが12年ある。この期間を将棋に充てていれば、いまごろタイトル戦の常連だったのだが、これも運命である。
しかしデビュー後の加藤女流二段は快進撃を遂げ、女流名人と女流王位のリーグに入った。新設の白玲戦・女流順位戦ではA級を確定し、女流二段に昇段した。元から実力はあった加藤女流二段、一気に花が開いた感じだ。
私はデビュー前の加藤女流二段と何局か指しているが、鉄の塊のような力強さがあった。こう感じたのは、加藤女流二段と上田初美女流四段だけである。
さて、指導対局である。加藤女流二段に「手合いは?」と聞かれ、平手を所望した。さすがに宮嶋四段と同じ手合いというわけにはいくまい。ただ、左の男性は、宮嶋四段のときと同じ、飛車落ちを所望していた。
初手からの指し手。▲7六歩△5四歩▲5六歩△5二飛▲4八銀△3四歩▲6八玉△6二玉▲7八玉△7二玉▲2六歩△3三角▲2五歩△4二銀▲5八金右△8二玉▲5七銀△7二銀(第1図)
▲7六歩に、加藤女流二段が遅ればせながら「希望の戦型はありますか?」と言った。私は何でもよかったが、相手の得意を粉砕するのが将棋の醍醐味なので、「中飛車」を希望した。
△5四歩に▲5六歩が、ひそかな絶対手。中飛車に位を取らせると、下手は駒組が分断されてしまう。5筋の位は保つ、が持論である。
以下はふつうの駒組となったが、△3三角に▲同角成は上手の注文にハマると思い、見送った。
そんな第1図で、次の手は軽率だった。
第1図以下の指し手。▲4六銀△4四歩(第2図)
私はヒョイと▲4六銀と出たが、マズかった。この銀は▲4五銀と出ても、△8八角成▲同玉△3三銀で、立ち往生する。
よって加藤女流二段はふつうに駒組を進めればよかったのだが、△4四歩。これで通常の居飛車VS振り飛車の形になり、とりあえずホッとした。
第2図以下の指し手。▲3六歩△4三銀▲5七銀△9四歩▲6八銀上△9五歩▲4六歩△3二金▲3八飛△5一飛▲3五歩△同歩▲同飛△6四歩▲3六飛△6三銀(第3図)
私は▲3六歩と突いたが、▲3五歩としても△4五歩があるので、私は▲5七銀と出直す。結果、この2手損が△9四歩~△9五歩と換わったが、端での戦いにしなければ、後悔もしない。以下、私は加藤一二三流袖飛車を目指す。さすがの加藤女流二段も、この戦法は受けたことがないのではないか。
私は1歩を交換して▲3六飛と整え、十分。
対して加藤女流二段の△6三銀は、下手にチャンスが来たと思った。
第3図以下の指し手。▲4五歩△5五歩▲同角△7二金▲4四歩△5四銀左▲8八角△4二金▲3四歩△2二角▲2四歩(第4図)
ころはよしと、▲4五歩。これを△同歩なら▲3三角成で、△同桂は▲3四歩。△同金は▲4二角で下手指せると読んだ。
そこで加藤女流二段は△5五歩と手筋で応戦してきたが、ここは△4五同歩と取る手もあった。以下▲3三角成△同金▲4二角には、△4一飛▲3三角成△同桂▲同飛成△4四角で、上手が指せそう。私はもっと読みを掘り下げるべきだった。もっとも、本局の指導対局も1時間。加藤女流二段もさして考えず淡々と指している感じ。とにかくお互い、時間がないのだ。
▲5五同角△7二金に、▲4四歩の取り込みが大きかった。これを△同銀は▲同角△同角▲3二飛成で、さすがに下手がよい。
△5四銀左に▲8八角と引いて、2歩得は小さくないアドバンテージとなった。
加藤女流二段は飛車筋を避けて△4二金。私は▲3四歩と押さえ、△2二角に▲2四歩。バカに好調で、こんなにうまくいっていいのかと思った。
第4図以下の指し手。△3二金▲2三歩成△同金▲3七桂△7四歩▲4六銀△6五銀▲3五銀(第5図)
▲2四歩を△同歩なら、▲2三歩△3一角▲4三歩成△同金▲1一角成で下手優勢。よって△5三飛かと思ったが、さすがにそれはない。
加藤女流二段は再び△3二金と寄ったが、私は▲2三歩成△同金で、金を僻地にやった。
さらに▲3七桂と跳ね、△7四歩に▲4六銀、△6五銀に▲3五銀と、この銀まで五段目に間に合ってしまった。▲3七桂には△3一飛で、まだまだ難しい勝負だったと思う。本譜は上手の指し手に覇気がなく、下手に理想形な布陣が完成しては、これは下手、負けようがなくなってしまった。
ところがこの将棋、私が負けるのである。まったく、ひどい悪夢だった。
(つづく)