一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第50期女流名人戦第1局

2024-01-18 17:47:29 | 女流棋戦
記念すべき第50期女流名人戦五番勝負が開幕した。対局者は西山朋佳女流名人と、新婚姿も初々しい福間香奈女流四冠で、まさに50期の節目にふさわしい。7日の第1局は、スポンサーでもある岡田美術館「開花亭」で行われた。
「女流名人」といえば福間女流四冠のイメージがあり、2009年の第36期から2020年の第47期まで12連覇。その後伊藤沙恵女流四段を経由し、いま女流名人のタイトルは西山女流四冠の掌中にある。福間女流四冠が冠争いで一歩先んじたいのはもちろん、西山女流名人だって、初めて取った女流名人位は、死守したいだろう。
その両者の思惑を示すように、先手の西山女流名人は初手▲7六歩とした。将棋の公式戦で最も多い初手だが、西山女流名人の場合はさにあらず。このところ「▲7八飛」ばかりで、▲7六歩はどうした心境の変化だろう。
ここから双方微妙な駆け引きが続き、西山女流名人の四間飛車に振り、福間女流四冠の居飛車に落ち着いた。と、西山女流名人は三間飛車に変化する。このあたり、細心の配慮をはらっているように見える。
福間女流四冠は角を換えたが、それでも西山女流名人は石田流に組み直した。升田幸三実力制第四代名人の石田流の著書などを読むと、角を換わったほうが技を掛けやすいように見える。
福間女流名人は△6九角と、早くも勝負手である。この角、下手をするとタダ取りされるが、悪くとも相手の金と交換できれば、作戦成功となる。
すると今度は西山女流名人が▲8五角と打った。この地点の角は、1965年6月3日・4日に指された第24期名人戦(主催:朝日新聞社、日本将棋連盟)第5局・大山康晴名人41手目の▲8五角(図)が有名だがそれはともかく、本局は双方の角がどこまで働くか、が焦点となった。

すると福間女流四冠は9筋から動き、金香交換の駒得に成功した。
しかし西山女流名人も、その香を5四に打ち、金香交換の駒得に成功する。こうなると、トータルで角金交換の駒損になっているが、金を2枚持ち、片美濃囲いに収まっている西山女流名人が十分に思われた。
ところが、西山女流名人がその金2枚をベタベタ自陣に打ったので、アレッ?となった。これは粘りにいっている手で、優勢な側が指す手ではない。
その後、お互いと金攻めに出たが、あとからと金を作った福間女流四冠のほうが、金得の戦果を挙げた。福間女流四冠の囲いは薄いのだが、福間女流四冠は巧妙に防波堤を築き、妙な耐久力がある。このあたり、弱い舟囲いを戦いながら強固なものにしていった、中原誠名人の指し回しを思い出した。
これでどうも、プロ的には福間女流四冠が優勢になったようである。
最後は福間女流四冠が西山玉を詰まし、挑戦者の先勝となった.
ああ余談だが、私は投了図から西山玉を詰ませることができなかった。正解は金2枚を捨てて馬を活用する手だが、これは目からウロコが落ちる好手順である。そして当たり前のことだが、福間女流四冠はもちろん、西山女流名人もこの順は織り込み済だったわけだ。
先の竜王戦七番勝負で、伊藤匠七段が投了した局面が素人には即詰みにできず、負けたプロもさすがに強い!と唸ったものだが、本局の西山女流名人にもそれが感じられた。
第2局は21日(日)、福間女流四冠のふるさと、島根県出雲市で行われる。西山女流四冠は完全なアウェーだが、さてどうなるか。
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