一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

札沼線

2011-02-18 00:56:07 | 旅行記・北海道編
翌13日(日)。北海道冬まつり紀行の、実質的な最終日である。いよいよ今回の旅行のメインである、「さっぽろ雪まつり」の観賞に行く。
朝、マクドナルドで朝食を済ませ、08時10分旭川発の上り普通列車に乗る。といっても札幌には直行せず、深川の先の滝川で降りた。
駅前のバスターミナルから新十津川役場前方面行きに乗る。09時22分、同バス停下車。ここから数分歩いたところに、札沼線の新十津川駅がある。路線名にも「札」と入っているが、この列車が札幌に向かうのである。ちなみに札沼線の「沼」とは、留萌本線・石狩沼田の「沼」のこと。かつてはここまで路線が通じていたのだが、1972年6月に廃止となった。よって現在は、新十津川が終着駅なのである。
この部分廃止からも分かるように、札沼線(愛称:学園都市線)は、鉄道マニアなら誰もが知るローカル線である。2011年2月現在、札幌からの下り列車は51本も出ているから、一見すると幹線も凌ぐドル箱路線に見える。ところが石狩当別着の列車(平日)は31本に減り、浦臼着の列車は7本に減り、新十津川へ着く列車は、3本に減ってしまうのだ。
石狩当別のひとつ先、北海道医療大学までは通勤・通学圏なのに、そこから先は典型的なローカル線に転じるのである。この落差がたまらないのだ。
午前中にさっぽろ雪まつりに出向いても、とくにステージイベントはやっていない。それなら鄙びたローカル線を味わうのが、本筋というものである。札沼線乗車は私にとって、さっぽろ雪まつりの観賞と同等の価値なのだった。
新十津川駅に着くと、09時28分の下り列車が入線してくるところだった。キハ40。私の好きな車両である。41分の発車まで時間があるので、駅舎内に備え付けられている訪問者ノートに一筆記し、駅舎や時刻表、キハ40などを写真に収める。
ところで新十津川の「新」はちょっと珍しい響きである。1889年、いまの奈良県吉野郡十津川村で大規模な水害があり、被災民がここに入植したため、ここ一帯は新十津川(町)と名付けられたのだった。
乗客は地元民と思しきオッチャンが乗ったが、そのほかは私ひとり。感動的な人数で、気動車は09時41分に発車した。
前述のように、ここから浦臼…否、北海道医療大学までは超ローカル線だから、列車の速度も異常に遅い。大赤字区間でスピードなんか出していられないからだが、これが皮肉にも、自然の「ノロッコ列車」となって、よりいっそう旅情が増す。前日のバス深名線が廃線供養を兼ねた旅なら、札沼線は現役ローカル線の旅といえる。
空は雲がほとんどない快晴である。私は雨男だが、今回の旅は本当に天候に恵まれた。ゴトン、ゴトン…と、雪原の中を、列車はゆっくり走る。女子高生のBGMや朱鞠内付近からの景色もいいが、やはりローカル線はいい。中型バスに私ひとり、もかなりの経費がかかっているが、乗客2人で気動車を走らせたら、いったいいくらかかるのかと思う。
10時11分、晩生内(おそきない)で2人乗車した。
10時38分、月ヶ岡で男性が1人下車した。彼はこの列車にカメラを向けていた。恐らく秘境駅探訪の、鉄道マニアだろう。私も下車したいが、ここで降りたら次の上りは13時54分、つまり3時間16分後だ。とても降りられない。
札幌方面に近づくにつれ、わずかだが、乗客が乗るようになってきた。
11時03分、石狩当別着。ここで列車増結のため、26分停車する。ホームで待っていると、軽そうな気動車が3両もやってきた。新十津川の閑散ぶりからは考えられないが、ここはもう通勤圏内である。計4両でも、多すぎるということはないのだろう。
12時14分、大量の乗客を乗せた4両の列車は、1分遅れで終着札幌に着いた。

今回の旅行で、4日目にして初めて、札幌駅に降りる。
駅前はやっぱり雪が少ない。小樽の雪はなんだったのか。あれは私の錯覚だったのだろうか。
徒歩で大通会場まで向かう。そこに至る国道脇の歩道では工事の真っ最中だ。駅前から大通駅までを地下化する話は以前聞いたが、その工事だろうか。もし開通したら雪の心配をせず、地下街をぶらぶら歩きながら大通駅までたどり着ける。地上の商店にとって地下化は営業妨害だろうが、観光客の無責任な意見としては、そうである。
本屋があるので、入る。女性誌売り場を見ると、「an an」の2月9日売り・16日号が置いてあった。今号の表紙はグラビアアイドルの優木まおみで、セミヌードを披露している。「2週間ダイエット」「マシュマロボディのつくり方」は、ちょっとそそられるコピーである。
この号を東京で見たとき、「an an」は隔週刊だから、北海道からの帰京後に買っても大丈夫だろうと思った。ところが旭川のネットカフェでそれを見ると、「an an」 は週刊誌と分かり、焦った。私は優木まおみの熱狂的なファンというわけではないが、彼女はとなりのお姉さん的な雰囲気があって、まあ、やっぱり、ファンである。よってこのショットは、永久保存版だと思った。
店のレジ係は若い女性である。どうも買うのを躊躇するが、ここで買わないと後悔する。やるべきか、やらざるべきか。やらないで後悔するより、やって後悔したほうが、後でサッパリする。私はこのブログで書きたいことを書いているので、いつもスッキリしている。さらさら流れる清流のごとき心境である。
「オレは全然興味がないんだけど、嫁さんに買っていってやろうと思って」
というような顔で、私は堂々と「an an」 をレジの前に出す。顔から火が出るかと思った。
いよいよ「さっぽろ雪まつり・大通会場」に着く。事前にネットで調べた限りでは、各丁目のイベント情報は載っていなかった。とりあえずは4丁目から、時計と反対回りに歩く。
5丁目は劇団四季のミュージカル「ライオンキング」の大雪像。3月から北海道でも開幕するらしい。私が小学生のとき、学校で劇団四季のミュージカルを観に行ったことがある。あのときは「ふたりのロッテ」だった。
ロッテといえば、6丁目に、北海道日本ハムファイターズ・斎藤佑樹投手の雪像があった。斎藤投手は美男子すぎて特徴が取りにくいかと思ったが、これはよく似ている。撮影する観光客も多かった。
観光案内所で、パンフレットをいただく。何度も書くが、雪まつりはイベントを観るのも楽しみのひとつだ。しかし私が楽しみにしていた「さっぽろ雪まつりフィナーレ」のイベントがない。8丁目のHTBひろばで、午後6時から「雪のHTB広場フィナーレ」というのがあるが、これは怪しい。ミスさっぽろが出るイベントではないような気がする。しかし足を運ぶしかない。
午後2時からは5丁目東で、陸上自衛隊第11音楽隊のコンサートがある。これは私も毎年楽しみにしていて、必見だ。2時に5丁目東、と照準を合わせる。
そのままそろそろ歩き、10丁目に出た。
大通公園を出た左手に、牛丼の「吉野家」があるのは知っている。そろそろ腹が減ったので、昼食といきたいところだが、北海道で吉野家か…。しかし6丁目の食の広場は、あまりにも値段が高い。
私は初志貫徹で、吉野家に入った。しかし注文は280円の牛鍋丼ではなく、ちょっと豪華に500円の牛鮭定食とした。最終日だから、張り込んだのである。
腹もくちて吉野家を出ると、雪が舞っていた。何か、いや~な予感がした。
(つづく)
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なよろ雪質日本一フェスティバル

2011-02-17 00:51:07 | 旅行記・北海道編
バス深名線沿線は豪雪地帯である。しかし道路に雪はない。除雪車が一掃したのか、雪が少ないのか、たぶん両方だろうが、運転手さんのドライブテクニックを期待していた私は拍子抜けした。
あれほど人が乗っていたバスも、ひとり、またひとりと下車し、幌加内バスターミナルに着いたときは4人に減っていた。ここで15分の休憩となる。
ターミナル内には美味い幌加内そばを食べさせる蕎麦屋があるが、この日は臨時休業だった。2階にはJR深名線の鉄道記念館があるが、土・休日は休みである。
しかし記念館を興味深く見るのは旅行者だろう。それならば平日を休みにするべきだと思うが、どうか。
名寄行きのバスは13時17分に発車した。スーツ姿のおじさんが乗車しているが、ほかの乗客は私だけ。この閑散ぶりが深名線本来の姿である。
「この辺は昔、鉄道が走ってたんですってね」
最前列に座り直したおじさんが、運転手さんに話しかける。
やがて、JR深名線最大の遺構である、第3雨竜川橋梁が見えてきた。おおー、とおじさんが驚く。
「これは撤去できなかったんですか」
「わざと残したみたいですね」
若い運転手さんが散文的に答えた。
そんな会話があった1分後の13時36分、バスは「ルオント前」に停車し、私は下車した。ここに隣接する温泉施設「せいわ温泉ルオント」で一浴するのが私の定跡である。「ルオント」は、フィンランド語で「自然」を意味する。
温泉に入る前に、第3雨竜川橋梁に挨拶に行く。何しろ次のバスは16時16分。まだ2時間半もある。
路肩には、例年より低い位置に雪があった。やはり今年の雪は少ないようだ。今年は内地各地で大雪が降ったが、それは内地だけだったということか。
以前は撤去の話もあったが、保存が決まった第3雨竜川橋梁を目に焼き付けて、私はいま来た道を引き返した。
せいわ温泉ルオントの施設に入る。入浴料は500円。脱衣所に入ると、若い男性が数人いたので、驚いた。この時間帯は閑散としているはずだが、三連休の中日だから、遠出するグループでもあったのだろうか。今回の旅行では、どこも人が多く、ちょっと調子が狂う。
中に入ると、洗い場もほぼ満員である。ホント、どうなっているのかと思う。
きょうの変わり温泉は「玉露カテキン茶風呂」である。昨年の同時期は「赤ワイン風呂」だった。ワインといえば船戸陽子女流二段である。昨年は船戸女流二段の入浴姿を想像し、湯船でカタくしてしまったことを思い出す。
カテキン風呂は鮮やかな緑色で、ほんのりとお茶の香りがして、体の内外から健康になるような気がした。
茶褐色に変色していた露天風呂にもつかり、1時間近く、温泉を満喫する。しかし繰り返すが、名寄行きのバスは16時16分なので、まだ時間はたっぷりある。
温泉内にあるレストランで、おろしそばを食した。幌加内のそばは香り高く、コクがある。私は旅に出ると、にぎり寿司、ラーメン、日本そばを食すことにしているが、これで早くも3食コンプリートとなった。
待合室でボーッと待っていると、定刻にバスが来た。今度は44人乗りの中型バスである。先客は若い男女が2人。それでも幌加内よりひとり多い、3人の乗客で発車した。
しかしその2人も、朱鞠内バス停で下車してしまった。迎えに来た人と男性が、ガッチリ抱き合っている。今夜はここ朱鞠内で、何かのイベントがあるのだ。ちょっと興味をそそられるが、ここで下車するわけにはいかない。何しろこれが、名寄行きの「最終バス」なのだ。
とにかくこれで、乗客は私だけとなった。大きなバスに私ひとり。女子高生の歌声をBGMに車窓を眺めるのもよかったが、黄昏時に中型バスを借り切って、車窓を楽しむのもオツなものである。
日本最大の人造湖・朱鞠内湖は雪に覆われて、どこにあるか見当もつかない。バスは右折し、坂道を登る。やがて大きな橋を渡るが、ここが深名線沿線の白眉だと思う。水墨画のような景色が一面に拡がり、思わず息を飲む。この絶景を見るだけでも、バス代を払う価値はある。
定刻より1分遅れの17時54分、終点より1つ前の西3条南6丁目で私は下車した。外はもう真っ暗である。ここから徒歩4分で、「なよろ雪質日本一フェスティバル」会場に着いた。
これは別名「なよろ国際雪像彫刻大会ジャパンカップ」ともいい、広大な敷地の中に、大雪像と、各国の腕自慢が造った雪像が並んでいる。札幌や旭川もいいが、名寄の雪像はデザインが凝っていて、それがライトアップされると、雪の芸術品に昇華する。むろん「雪質日本一」の名寄の雪が、精緻な雪像に一役買っているのは、いうまでもない。
今年の出展は、日本の企業や学生が多かったようである。「優勝」も、日本人のグループだった。
また今年は、敷地内中央に、焼肉パーティー用のスペースが設けられていた。こんなものは昨年まではなく―いやあったのかもしれぬが、私は目にしたことがなかった―、ちょっと食指を動かされたが、「ひとり焼肉」はさすがに虚しく、入場はやめにした。
さらに今年は、例年より出店が多かった。しかも例年なら店を閉めている時間なのに、まだ開いている。値段を見ると、ほかの雪まつり会場と比べて、かなり良心的だった。
肉まん120円、フライドポテト100円、たい焼き120円、うどん300円…と、たて続けに食べる。中でもうどんは絶品だった。これ、ほかの雪まつりだったら、500円はするだろう。
大雪像のステージでは、スノーボードの大会が始まった。この寒空の下、多くの中・高校生が見守っている。これも初めて見る光景で、まったく今年の深名線沿線は、どこもかしこも人、人、人だ。
風が一段と強くなってきた。手や顔に冷気があたり、痛みすら覚える。もう少し雪まつりを楽しみたいが、さすがに寒さが堪えてきた。
午後7時すぎ、私は会場を後にした。
次に乗るべき普通列車には、まだ時間がある。私は名寄に来ると必ず寄る軽食喫茶に向かったが、1階の客間スペースがお菓子売り場になっており、ズッコケた。2階に客間はあるが、ちょっと入りづらい感じである。これはパスだ。
今夜(12日)の宿は、前日と同じ旭川を予定している。「宿」とか書いたが、実際はネットカフェである。ネットカフェも住み慣れれば利便性がよく、立派な都だ。
私は名寄駅の待合室に入ると、20時11分発の上り普通列車を、じっと待った。
(つづく)
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旭川冬まつり

2011-02-16 20:01:38 | 旅行記・北海道編
頻繁に特急列車が行来きする札幌-旭川間で、普通列車は誰が利用するのだろうと訝しく思ったが、高校生が通学列車として利用するのだった。そして不思議なことに、休日でも、制服姿の女子高生は列車に乗ってくるのである。
車両の前後から乗ってきた女子高生は10人前後におよび、車内がにぎやかになった。普通列車のもうひとつの楽しみは、地元の女子高生の会話が聞けることだ。キャピキャピした会話の中に方言が混じり、旅に出たことを実感させてくれる。
「ホントに!? いいよねー」
「千円札がいいって言ったんだよ。フフッ」
「○○に住んでるって言っても信じてくれないんだよ」
とかいう他愛もない話が飛び交う。
そのうち彼女らは、何かの歌を歌い始めた。オリジナル曲だろうか。女子高生のコーラスを聴きながら、車窓の景色を楽しむ。世の中にこれ以上の贅沢があろうか。
「いろんなことがあったなー」
と、ひとりの女子高生がしんみりと言う。彼女は今年卒業なのだろうか。「女子高生」のイノチは短い。室谷由紀女流1級、渡部愛ツアー女子プロは、残された高校生活を思う存分満喫してほしい。
17時11分、列車は定刻に旭川へ到着した。しかしどこか様子が変だ。プラットホームのエスカレーターを下ると、構内の様子も違っていた。木をふんだんに使った和風の造りになっており、まるで違う駅に来たようである。…あれ? そもそも旭川駅は、高架だったろうか…。
旭川駅は大々的な改装を行っていたのだ。旧改札口のあたりに出ると、店舗はすべて撤去され、廃線跡の駅舎を見るようだった。
私が降りたのは7番ホームだったが、7番線はかつて富良野線の専用ホームだった。函館本線、宗谷本線のホームとは大きく離れ、その間には広大な空き地があったから、そのスペースに線路を集約し、全線高架としたのだろう。
いずれにせよ来年には、新装旭川駅が拝めるに違いない。これで来年も旭川を訪れる楽しみが、またひとつ増えた。
駅前からまっすぐに伸びる平和通り買物公園が、氷彫刻世界大会の会場である。今年もさまざまな氷像が並んでいる。ただの氷から、よくこれだけ芸術的な作品が作れるものだと感心する。これも一種の才能であろう。
もう陽は暮れているので、氷像はライトアップされ、存在感を増している。雪像や氷像はライトアップされたものを見るのがよい。立体感と存在感が倍加する。
それにしても旭川は雪が少ない。買物公園のメインストリートも、路面が剥き出しになっている。小樽の雪が異常だっただけに、これは意外な感じがした。
常盤公園には、午後5時45分ごろに着いた。公園内には大氷像と「あさひかわ雪あかり」の小ドームがあったはずだが、今年は見当たらない。この先にある旭橋河畔会場に移動したのだろうか。
常盤公園を抜け、河畔会場に出る。正面に見える大雪像は、「北の花鳥風月」。旭川冬まつりの大雪像は文字通り大きく、かつてギネスブックに載ったこともある。今年もスケールが大きい。
その下のステージでは、地元民と思しき人たちが、何かのコーラスを始めていた。冬まつりでは雪像観賞のほかに、イベント観戦も大事な要素である。私が17時11分旭川着にこだわったのは、その次の18時37分着だと河畔公園のステージ企画が終わってしまい、味がわるいからだった。
会場内にあったパンフレットを手に取り、イベントスケジュールを確認すると、きょう11日(金・祝)は午後1時30分から、香田晋と柳ジュンのライブがあった。
柳ジュンは旭川出身の歌手で、同市の観光大使を務めている(余談だが、中井広恵女流六段は稚内の観光大使である)。ちょっと妖艶で、私もファンである。彼女の歌を聞き逃したのは失敗したが、さりとて余市行きを後回しにするわけにはいかず、これは仕方なかった。
きょうは朝ににぎりを食べただけで、かなりお腹がすいた。会場内にある出店で、味噌ラーメンを食べる。500円。麺が少なく、ハーフサイズかと思った。味はまずまずだが、ちょっと消化不良だった。
午後7時から、ステージで「音と光のファンタジックショー」が始まった。闇夜の中を、緑色のレーザー光線が場内を鮮やかに射る。辺りにはあらかじめスモークがかけられており、それだけで十分幻想的だ。
そこに久石譲を彷彿とさせる雄大なBGMが流れ、私は大いに感動した。私は音楽はあまり聴かないが、音楽の力は偉大だと思った。島井咲緒里女流初段の趣味は音楽鑑賞だというが、さすがにいいところをついている。

明けて12日(土)。午前8時20分に宿を出た私は、朝の平和通り買物公園を再び歩き、ブルー一色となった氷像を再び観賞した。その足で旭橋河畔会場へも向かう。しかし朝が早いので、人もあまりいない。澄んだ空気が気持ちいい。
会場内でスケジュール表を再び見ると、11日は12時から、「アニソンライブ」と称して、水木一郎、堀江美都子、ドリーミングのステージがあったらしい。旭川冬まつりは毎年ビッグゲストが登場するが、今年はこの3組だったか。いやこれは私も観たかったが、ここで悔やんでも仕方ない。ご縁がなかった、と割り切るしかない。
会場の一隅から、旭川駅前まで無料のシャトルバスが出ていたので、それに乗る。09時50分のバスで駅に向かうのは、私ひとりだった。どうも私は、ほかの観光客とは違う行動をとってしまうようである。
函館本線上り・10時24分旭川発。56分、深川に着いた。きょうはここからジェイアールバス深名線に乗り、名寄へ向かう。途中のルオント前で降り、温泉に入って、夜は名寄駅近くで行われる「なよろ雪質日本一フェスティバル」を楽しむ予定である。
深川駅前で、以前も入ったことがある軽食喫茶に入る。11時を過ぎたため、モーニングタイムからランチタイムに切り替わったので、しょうが焼き定食+コーヒーのセットをオーダーする。しかしこれが疑問手だった。
深川発のバスは11時45分だから、自分では余裕を持たせたつもりだったが、ランチがなかなか出てこないのだ。ここを乗り遅れたら、次のバスは14時25分である。これはもう、予定変更とかいう以前の問題だ。絶対に、11時45分のバスに乗らなければならない。
時は11時25分。かなりイライラしたころ、ようやくランチが出てきて、私はそれをかっ食らった。出されたコーヒーもふうふう言いながら飲み干す。店のおばちゃんには申し訳ないが、こっちにだって事情があるのだ。
駅前に戻ると、バスが入ってきたところだった。しかしバス停に高齢の客がかなりいる。バス深名線はかつてのJR深名線だが、これは日本を代表する超ローカル線だった。鉄道は1995年に廃止されたが、バス転換後も乗客減は止まらず、名寄着のバスは休日だと3本しかない。
だからこそ私は、鉄道で名寄には向かわず、わざわざ遠回りをしてでも、この超ローカルバスを利用したのだ。それにしても、この人数はなんだろう。私が最後に乗ると、2×2の座席は、どこかに人が座っていた。まあ、人が多いのはいいことである。
露骨に嫌悪感を見せるおじいさんの横に私は座り、28人乗りの小型バスに18人が乗って、バス深名線は発車した。
(つづく)
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トラベルミステリー

2011-02-15 21:19:11 | 旅行記・北海道編
旅、ことに手作りのスケジュールにハプニングはつきものだ。危機に直面したときこそ、冷静な判断が求められる。
余市までの交通手段は断たれたかに見えたが、路線バスがあった。これは北海道に限らないが、バス路線網は鉄道より充実しているのだ。
小樽駅前にバスターミナルがあり、中央バスやニセコバスが余市に通じている。ターミナル内の時刻表を見ると、次の余市駅前行きは11時30分発があった。
案内嬢に聞くと、所要時間は約40分だという。余市から札幌への列車は13時07分発なので、恒例の工場見学は無理かもしれぬが、お土産を買う時間は十分にある。バス代の420円は痛いが、背に腹は代えられない。
それでもまだ若干の不安はあったが、私は余市行きのバスに乗った。予定到着時刻から3分遅れの12時12分、バスは余市駅前十字街に着く。このすぐ前が、ニッカウヰスキー北海道工場余市蒸留所である。
なぜ私がニッカウヰスキー余市にこだわっているか。ここは2,000円の買い物ごとに1ポイントをくれるポイントサービスがあり、それが規定のポイントに達すると、「竹鶴12年660ml」をプレゼントしてくれるのだ。端数の金額(2,000円未満)も次回に繰り越してくれ、良心的である。ただし有効期間は2年間である。
私が一昨年の秋にここで買い物をしてから、今回のお土産購入で、計算上では「竹鶴12年」がいただける。限定品ではないが、ここまでポイントをためたのだから、これは意地でももらいたいところである。船戸陽子女流二段がニッカウヰスキーを歓んでくれた、という背景はあるが、私が半日時間をつぶしてまで余市に来たのは、そうした理由があったのだ。
入口の受付で名前を記入すると、駒込ジョナサン・Tさん似の受付嬢が
「バスで来られたんですか?」
と私に聞く。なかなか鋭いところを衝いている。JR函館本線が正常に走っていれば、小樽発11時21分の列車は、余市に11時50分に着いていた。工場案内は12時ちょうどがあるから、この列車で来た客は、12時直前に蒸留所を訪れる計算になる。
ところがきょうはそうした客が皆無で、不審に思った受付嬢が私に聞いた、ということなのだろう。
「はい、11時21分小樽発の列車が運休になっちゃいまして…」
私は多少の不満を、受付嬢にぶちまけた。
次の蒸留所見学は午後1時だという。……。これで今回の見学は見送りが確定した。案内嬢は素敵な方ばかりで、今回も楽しみにしていたが、自然の力には勝てない。
私はまっすぐに土産物売り場へ行く。ここでしか買えない白ワインが売られていたので、それを買う。中倉宏美女流二段の喜ぶ顔が浮かんだ。
買うべきモノを買って「竹鶴12年」をもらい、余市駅に入り、構内の土産売り場で、これも恒例のコカコーラ(190mlビン)を買って、飲んだ。まったく、私がやることは毎年同じだ。しかし私を取り巻く環境は、毎年違う。これを再認識するのも、ひとり旅の醍醐味といえようか。
そろそろいい時間なので、隣接している改札口に向かうと、駅員さんが
「12時07分の列車は1時間遅れになっています」
という。
…!! それなら、私が構内に入ったときに教えてくれよ。と同時に私は、やっぱりな…と思った。上り列車が運休なら、下り列車もアブナイ、と考えるのが自然である。上で「若干の不安」と書いたのは、このことだった。
函館本線の長万部-倶知安(くっちゃん)-余市-札幌間は、室蘭本線の長万部-東室蘭-苫小牧-札幌間の「海線」に対して「山線」と呼ばれる。それだけ起伏が激しいわけだが、降雪量も多いのだ。
空は快晴だからピンとこないが、ともかく私の抱いた危惧が現実のものになり、私はまた窮地に陥った。仕方ない、またバス利用だ。
「トクトクきっぷを買ったのに、全然使えませんよ」
私は駅員さんにイヤミをいい、バス停に向かった。ANAのイチャモンおっさんのようだ。しかしこちらは、いらん出費をしているのだ。実際、また420円の出費は痛い。
余市駅前十字街バス停に着くと、次の小樽行きは13時14分があった。
先に待っていたおばちゃんが、ほかのおばさんに
「さっきニセコバスが出たばかりですよ」
と話している。
チッ…。私はクサって、道内時刻表を繰る。きょうの最終目的地は旭川、17時11分着である。しかしこの普通列車には乗れるのだろうか。
私は「1711着」から遡る。するとどうにか間に合うことがわかった。すなわち、

中央バス 余市駅前十字街13時14分→小樽駅前13時54分前後?
函館本線 快速エアポート144号 小樽14時04分→札幌14時36分
同 区間快速いしかりライナー 札幌14時40分→岩見沢15時17分
同 岩見沢15時27分→旭川17時11分

である。まるで計算されたような乗り継ぎだ。しかしこの時間、大抵の観光客は観光地を回っているというのに、私はトラベルミステリーのアリバイトリックを解明するようなことをやっている。若干、自己嫌悪に陥る。
定刻、小樽方面行きの中央バスがくる。しかし余市からの乗客が多く、大型バスは満員になった。
その後も、停留所に止まるたび、客が乗ってくる。ついには補助席まで使う有様になった。まあJR利用の客がそのままバスに移ったのだから、当然だ。
しかしここで、新たな不安が生じた。あまりにも客が多いので、下車時の精算に時間がかかりそうである。バスだって定刻に着くとは限らず、あまり安閑とできなくなった。
しかしそれも杞憂で、バスは予想到着時刻よりはるかに早い、14時46分に到着した。ここまでくれば大丈夫。何しろ日本の鉄道は世界一なのだ。天候などのトラブルを除けば、列車は正確に走る。
小樽から快速列車に乗る。札幌には1分遅れで着き、岩見沢行きに乗り換える。ここでは乗客が多く、立つことになったが、まあいい。
岩見沢にも1分遅れで着き、15時27分、最終ランナーの旭川行きに乗った。
函館本線の札幌-旭川間はJR北海道のドル箱区間で、「特急スーパーカムイ」が頻繁に走っている。普通列車は数えるほどしかなく、この列車を逃すと、次の旭川行き普通列車は、16時57分が「最終」となってしまう。
特急スーパーカムイは最高速度も130キロで車窓の流れも速いが、普通(快速)列車もゆったりと景色が移り、真の鉄道旅行を楽しめる。
財布を拡げると、なぜか1年前にニッカウヰスキー余市の土産物屋でいただいたレシートが出てきた。日付は「2010年2月13日」となっている。ここに端数の金額が書かれていて、精算時にポイントが加算されるのだ。自宅ではどこを探してもなかったのに、いったいどこから出てきたのだろう。…ん? 昨年の2月13日は土曜日である。昨年はニッカウヰスキー余市で買い物をした日に帰京した。なぜ私は14日も観光しなかったのだろう。
…あっ、昨年のバレンタインデーは、LPSAのファンクラブイベントがあったのだ。私はもちろん北海道旅行を優先するつもりだったが、船戸女流二段から、
「北海道はいつでも行けるけど、日曜日のバレンタインデーのファンクラブイベントは、もうないんですよー」
と熱い営業をされ、私はふらふらと13日に帰京したのだった。そういえば一昨年秋の北海道旅行も、船戸女流二段に金曜サロンでの指導対局を受けたくて、土日の観光を飛ばし、金曜日の午後に帰京したのだ。「女流棋士ファンランキング1位」の威光とは、そのくらいのものである。
私の車両には私のほかに2、3人の乗客がいるのみだ。滝川、16時14分着。むかし滝川真子というAV女優がいたことを思い出す。
16時42分、深川に着いた。明日(12日)はここからジェイアールバス深名線に乗る予定だ。…と、車両の前後から、多くの女子高生がどやどやと乗ってきた。こ、これは…!?
(つづく)
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ワイングラス

2011-02-14 01:06:04 | 旅行記・北海道編
10日(木)夜、飛行機を降りた私は、まずJR新千歳空港のみどりの窓口へ向かった。「三連休パス」は、前日までの購入が条件なのだ。これは事前に調べていたからよかったものの、当日(11日)になって「購入不可」と言われたら、パニックに陥るところだった。
切符の購入に時間を費やしたため、21時20分発のホテル日航千歳行き送迎バスには間に合わなかった。仕方なく21時40分発の路線バスを使う。210円の出費だが、ホテル日航千歳前に停まってくれるので、それで十分である。
22時すぎにチェックイン。翌朝も最寄り駅への無料送迎があり、フロント氏に11日(金・祝)の予定を訊かれたので、
「余市に8時半ごろに着く列車があるはず」
と答えたら、フロント氏が時刻表を調べてくれた。だが
「それには06時03分千歳発の列車に乗らなければなりません」
と言われ、ズッコケた。
千歳から札幌までは意外に距離がある。千歳宿泊は、利点ばかりではないのだった。とにかくここは計画を練り直す必要がある。私は07時10分の送迎バスに乗る旨を告げると、部屋に入った。

11日になった。今回の目的は冬まつりの雪像鑑賞だが、それにも優先順位がある。すなわち、
さっぽろ雪まつり>旭川冬まつり(世界氷像コンテスト)>名寄雪質日本一フェスティバル>小樽雪あかりの路
の順である。雪像や氷像はライトアップされたものを見るに限るので、3夜しかない今回の旅行では、小樽雪あかりの路を断念するしかない。
さらに冬まつりのほかにも、観光その他、いろいろやるべきことがある。その優先順位は、
余市ニッカウヰスキー工場でお土産を買う(できれば工場見学もする)>小樽・北一硝子でお土産を買う>JRバス深名線に乗る(その沿線にあるルオント温泉に入る)>JR札沼線(学園都市線)に乗る>小樽運河を見る>小樽の市内文学館・美術館に入る
…等である。冬まつり観光も含め、これらを都合3日でこなさなければならぬから、大変だ。しかし自分で選んだ日程だから、割り切るしかない。
送迎バスに乗り、南千歳で降りる。折りよく07時21分発の手稲行きが来たので、とりあえず乗った。終着手稲で乗り換えとなったので、ここでいったん改札を出て、キオスクで「道内時刻表」を買った。これでじっくり検討ができる。
次の列車に乗り、09時06分、終着小樽に着いた。しかし次の余市行きは、09時44分までない。旅では遠方の予定を先に済ますのが良策だが、ここで40分近くを無駄にするわけにはいかないから、小樽・北一硝子でのお土産購入を先にする。しかし北一硝子へ行くなら、小樽のひとつ手前の南小樽で降りたほうが近かったが、まあいい。
次の余市行きは11時21分である。約2時間あるから「お土産」と「小樽運河」は大丈夫だが、市内文学館と美術館はむずかしい。昨年美術館にお邪魔した際、出展していた大学から案内状をもらっていたのに、申し訳なく思う。
小樽駅前でもらった地図を片手に歩き、北一硝子がある堺町本通りに出た。その並びには寿司屋が早くも営業していたので、ふらふらと入る。何しろ前日の夜にコンビニ弁当を食してから、ここまで何も口にしていないのだ。
「おまかせにぎり・10貫」で1,000円。朝からにぎりとは、私も偉くなったものだ。しかし近辺に「吉野家」「松屋」の類がないのだから、仕方がない。
腹もくちて、北一硝子に向かう。ここは硝子の種類ごとに分館があるから分かりにくい。今回私が求めるのはワイングラスである。といっても船戸陽子女流二段に贈るものではない。ワインの専門家にワイングラスをプレゼントするなど、棋士に将棋の駒をプレゼントするようなもので、感心しない。
任意の店舗に入り、店員さんから、ワイングラスの専門館を教えていただいた。
ヒトへのプレゼントを選ぶとき、自分が使うわけでもないのに、ウキウキしてしまうのはなぜだろう。こんなに神経を遣ってしまうのはなぜだろう。きっと、プレゼントする相手の喜ぶ笑顔を見るのが楽しみだからだろう。
ワイングラス売り場に行き、「彼女」のイメージに合ったグラスを選ぶ。
レジに持っていくと、店員さんが同じ商品を並べだした。これは手作りなので、微妙に形が違うらしい。そう言われて見てみると、並べられた4つの商品は、確かに違う。
私は熟考の末、中倉宏美女流二段の輪郭に最も似ているものを選んだ。
このあとは、行かずもがなの小樽運河へ挨拶に行く。決して綺麗とはいえないこの運河が、なぜ人気があるのか。運河というなら東京・芝浦にも運河は流れているが、そこに観光客が押し寄せたという話は聞かない。…とか文句を言っている自分も小樽運河を訪れているのだから、何をかいわんや、だ。強いて理由を挙げれば、観光地小樽にあること、運河のカーブが官能的なこと、バックの倉庫群にノスタルジーがあること、雄大な山々が見えること、などがあろうか。
それにしても今年の小樽は雪が多い。私は冬の北海道の同時期に定点調査をしているようなものだから分かるのだが、今年は運河脇の歩道の雪の盛り上がりが、尋常ではない。小樽でこの調子だと、これから訪ねる旭川や幌加内、そして札幌はどんな事態になっているのだろう、と心配になってしまう。いや、ますます楽しみになってくる。
小樽は12年前から「雪あかりの路」というイベントを始めている。年々規模が大きくなり、今年も盛大になること必至だが、前述のように、小樽の夜は断念しなければならない。私は浅草橋から中央橋までの運河沿いを歩くと、そのまま小樽駅へ向かった。
駅に着く。と、列車案内板に私が乗るべき11時21分発・余市方面行きの表示がなく、12時20分発・長万部行きの表示が出ていた。
……? 怪訝に思っていると、改札口上にあるモニターに、「小樽発11時21分発の倶知安行きは、大雪の影響で運休になりました」との断りがあり、私は唖然とした。
バ、バカな…!! こっちは普通列車の利用でギチギチの予定を組んでいるのだ。ここで列車を1本飛ばされたら、あとの予定がメチャクチャになる。私は口を開けたまま、そのまま立ちすくんだ。
(つづく)
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