将棋ペンクラブは、社団戦のないオフシーズン、神保町の海鮮居酒屋「魚百」で月に1回、交流会を行っている。魚百は幹事の星野氏が懇意にしていて、夕方まで、無償で場所を提供してくれるのだ。そして夕方から同所で、飲み会となるわけだ。
私も幹事のA氏に誘われて何度かお邪魔しているが、今回は、先日の社団戦の打ち上げでKan氏に誘われたので、ありがたく参加することにした。
17日(土)午後、神保町に行く。魚百に入る手前のうどん屋はいつも盛況で、今日も40人以上が列を作っていた。私もうどんは好きだが、うどんごときで並んでまで入りたいとは思わない。
午後1時31分、魚百の2階に入る。実に1年ぶりである。中には木村晋介会長、星野氏、Ohh氏がいた。星野氏とOhh氏は対局中で、相居飛車の乱戦になっていた。
また、交流会名物の渡部愛女流王位による指導対局は、今回はスケジュールが合わず、なし。もっとも渡部女流王位はビッグになりすぎて、気軽に招べなくなってしまった、という裏事情もある。
すぐにKan氏が入店。「将棋ペン倶楽部」の新年座談会は、フジイさんを招ぶことになったという。フジイさんって、あのフジイさんだろうか。
また、魚百は土曜日の営業をなしにしたそうだが、となると飲み会はどうなるのだろう。
Kan氏はまだ将棋は指さないようで、私が木村会長と指すことになった。会長とは初手合いである。
改めて木村会長は、本業が弁護士で、テレビ出演も多数。むかしフジテレビの土曜昼に「7人のHotめだま」という情報番組をやっていたが、会長はそのパネラーのひとりだった。いわゆるタレント弁護士の先駆けで、ミーハーな私はひれ伏すところなのだが、そこは将棋を介しているので、緊張感も薄れている。
木村会長の先手で、三間飛車に振った。私はいつものように居飛車急戦で行く。木村会長は▲6八銀型のまま高美濃に組み、堂々とした布陣だ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/68/2a/5d58cedeebe20180ca1644ec0512346e.png)
第1図以下の指し手。△8六歩▲同歩△6五歩▲同歩△7七角成▲同銀△6五桂▲6六銀△8六飛▲8八歩△6七角▲6八飛△8九角成▲6五銀△6七歩▲7七角(第2図)
Kan氏がお茶を淹れてくれて、恐縮する。Kan氏は気配りの人である。
三上氏とOhno氏も見えた。三上氏に礼を言われる。将棋ペンクラブ大賞は、選考システムの変更という話もあったが、来年は現行で行くとの結論になったらしい。それに伴い私の二次選考委員も継続になったので、三上氏の言葉はその意味である。しかし三上氏も幹事を勇退したので、私こそ労いの言葉を掛けなければいけないのだが、そういう配慮が私にはまったくないのである。
局面。現在NHKEテレでは、深浦康市九段の「振り飛車なんてこわくない」を放映している。私も基礎から勉強する意味で、毎回拝見している。本局は、そこで教わった仕掛けを敢行した。すなわち△8六歩▲同歩と突き捨てを入れてから△6五歩である。木村会長は素直に応じたので、私は飛車を走り、角で桂を取ってまずまずの戦果を挙げた。
木村会長も▲6五銀と桂を取り、△6七歩には返し技の▲7七角。ここでどうする?
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0d/46/afe64b81056b153e4710114c3ae48cee.png)
第2図以下の指し手。△6八歩成▲8六角△6七馬▲8一飛△5八と▲3九金△5七と▲3七金△6六馬▲4五桂△4八と▲同金△同馬(第3図)
ここで△8二飛と引くのは社団戦の手。交流会だから、飛車を取り合うのが筋である。▲8六角に△6七馬と引いて、と金得を活かす展開にした。
とはいえ△5七と▲3七金に△6六馬は、やや鈍臭い気がした。
▲4五桂には△4二銀もあるが、やや利かされっぽい。といって△6五馬▲5三桂成△同銀は▲2二銀が嫌味だ。そもそも△6六馬は△4八との狙いなわけで、△6五馬は大勢に遅れる。それで△4八とと行った。
▲4八同金△同馬に、次の手がありがたかった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6d/be/c050e9053658dea9c29bb52ab32570bb.png)
第3図以下の指し手。▲4七金△同馬▲同銀△4八飛▲3八角△5七金▲5三桂不成△同銀▲同角成△同金▲3三銀△同桂▲2一銀△4二玉(投了図)
まで、一公の勝ち。
木村会長は▲4七金と寄った。若干弱気な手で、ここは何か反撃してくるかと思った。私もここで馬を逃げる手はなく、勢い△同馬と切った。
▲同銀に△4八飛。ここ△6八飛と打てればいいが、8六角が利いている。本譜△4八飛に▲3八銀なら、△4七金▲4九角△2四桂でどうか。木村会長は▲3八角と辛抱したが、私は△5七金と張り付き、確実な寄せを目指した。
木村会長は▲5三桂不成から角も切って、「初王手だけしとこう」と▲3三銀。「タダですよ」と私は言ったが、「王手だけしとく」と会長は涼しい顔だ。
△3三同桂に▲2一銀。なるほどこれが狙いで、△2一同玉は▲4一飛成で、これは逆転の可能性さえある。
私は慎重に△4二玉と寄り、ここで木村会長が投げた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3a/c0/39b383e4db3571c1d43d16dda3d46ce7.png)
感想戦。私は教える立場ではないのだが、序盤、どこかで▲8八飛と守られる手がイヤだったと述べた。三間飛車に振ったからここで頑張りたい気持ちは分かるが、「ここと思えばまたあちらと飛車を縦横に動かすのが振り飛車の極意」と大山康晴十五世名人も述べている。
この辺で感想戦は終わりかと思いきや、会長は「この先でも私の悪いところはあった?」と熱心である。
さらに私の△6五桂に▲6六銀では、▲8八銀(参考図)があった。これも深浦九段の講座に出てきた手で、壁銀になるが、そこで△6七角は▲7九飛でよい。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4d/8a/c9887dbd724e46efef2edd99a37050a8.png)
これには木村会長も、▲8八銀と▲7九飛かー、と唸る。「将棋は手が広いもんだね」。
もっとも参考図からの△6七角▲7九飛は△4九角成があり、▲同銀は△6八金、▲同飛も△5八金▲7九飛△5七桂成がある。また△8七歩▲同銀△6六角もあり難しい局面なのだがそこはそれ、▲8八銀のような手もある、と知っていただければいい。
私はかねてから会長と一局交えたかったので、今日はいい記念になった。
(つづく)
私も幹事のA氏に誘われて何度かお邪魔しているが、今回は、先日の社団戦の打ち上げでKan氏に誘われたので、ありがたく参加することにした。
17日(土)午後、神保町に行く。魚百に入る手前のうどん屋はいつも盛況で、今日も40人以上が列を作っていた。私もうどんは好きだが、うどんごときで並んでまで入りたいとは思わない。
午後1時31分、魚百の2階に入る。実に1年ぶりである。中には木村晋介会長、星野氏、Ohh氏がいた。星野氏とOhh氏は対局中で、相居飛車の乱戦になっていた。
また、交流会名物の渡部愛女流王位による指導対局は、今回はスケジュールが合わず、なし。もっとも渡部女流王位はビッグになりすぎて、気軽に招べなくなってしまった、という裏事情もある。
すぐにKan氏が入店。「将棋ペン倶楽部」の新年座談会は、フジイさんを招ぶことになったという。フジイさんって、あのフジイさんだろうか。
また、魚百は土曜日の営業をなしにしたそうだが、となると飲み会はどうなるのだろう。
Kan氏はまだ将棋は指さないようで、私が木村会長と指すことになった。会長とは初手合いである。
改めて木村会長は、本業が弁護士で、テレビ出演も多数。むかしフジテレビの土曜昼に「7人のHotめだま」という情報番組をやっていたが、会長はそのパネラーのひとりだった。いわゆるタレント弁護士の先駆けで、ミーハーな私はひれ伏すところなのだが、そこは将棋を介しているので、緊張感も薄れている。
木村会長の先手で、三間飛車に振った。私はいつものように居飛車急戦で行く。木村会長は▲6八銀型のまま高美濃に組み、堂々とした布陣だ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/68/2a/5d58cedeebe20180ca1644ec0512346e.png)
第1図以下の指し手。△8六歩▲同歩△6五歩▲同歩△7七角成▲同銀△6五桂▲6六銀△8六飛▲8八歩△6七角▲6八飛△8九角成▲6五銀△6七歩▲7七角(第2図)
Kan氏がお茶を淹れてくれて、恐縮する。Kan氏は気配りの人である。
三上氏とOhno氏も見えた。三上氏に礼を言われる。将棋ペンクラブ大賞は、選考システムの変更という話もあったが、来年は現行で行くとの結論になったらしい。それに伴い私の二次選考委員も継続になったので、三上氏の言葉はその意味である。しかし三上氏も幹事を勇退したので、私こそ労いの言葉を掛けなければいけないのだが、そういう配慮が私にはまったくないのである。
局面。現在NHKEテレでは、深浦康市九段の「振り飛車なんてこわくない」を放映している。私も基礎から勉強する意味で、毎回拝見している。本局は、そこで教わった仕掛けを敢行した。すなわち△8六歩▲同歩と突き捨てを入れてから△6五歩である。木村会長は素直に応じたので、私は飛車を走り、角で桂を取ってまずまずの戦果を挙げた。
木村会長も▲6五銀と桂を取り、△6七歩には返し技の▲7七角。ここでどうする?
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0d/46/afe64b81056b153e4710114c3ae48cee.png)
第2図以下の指し手。△6八歩成▲8六角△6七馬▲8一飛△5八と▲3九金△5七と▲3七金△6六馬▲4五桂△4八と▲同金△同馬(第3図)
ここで△8二飛と引くのは社団戦の手。交流会だから、飛車を取り合うのが筋である。▲8六角に△6七馬と引いて、と金得を活かす展開にした。
とはいえ△5七と▲3七金に△6六馬は、やや鈍臭い気がした。
▲4五桂には△4二銀もあるが、やや利かされっぽい。といって△6五馬▲5三桂成△同銀は▲2二銀が嫌味だ。そもそも△6六馬は△4八との狙いなわけで、△6五馬は大勢に遅れる。それで△4八とと行った。
▲4八同金△同馬に、次の手がありがたかった。
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第3図以下の指し手。▲4七金△同馬▲同銀△4八飛▲3八角△5七金▲5三桂不成△同銀▲同角成△同金▲3三銀△同桂▲2一銀△4二玉(投了図)
まで、一公の勝ち。
木村会長は▲4七金と寄った。若干弱気な手で、ここは何か反撃してくるかと思った。私もここで馬を逃げる手はなく、勢い△同馬と切った。
▲同銀に△4八飛。ここ△6八飛と打てればいいが、8六角が利いている。本譜△4八飛に▲3八銀なら、△4七金▲4九角△2四桂でどうか。木村会長は▲3八角と辛抱したが、私は△5七金と張り付き、確実な寄せを目指した。
木村会長は▲5三桂不成から角も切って、「初王手だけしとこう」と▲3三銀。「タダですよ」と私は言ったが、「王手だけしとく」と会長は涼しい顔だ。
△3三同桂に▲2一銀。なるほどこれが狙いで、△2一同玉は▲4一飛成で、これは逆転の可能性さえある。
私は慎重に△4二玉と寄り、ここで木村会長が投げた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3a/c0/39b383e4db3571c1d43d16dda3d46ce7.png)
感想戦。私は教える立場ではないのだが、序盤、どこかで▲8八飛と守られる手がイヤだったと述べた。三間飛車に振ったからここで頑張りたい気持ちは分かるが、「ここと思えばまたあちらと飛車を縦横に動かすのが振り飛車の極意」と大山康晴十五世名人も述べている。
この辺で感想戦は終わりかと思いきや、会長は「この先でも私の悪いところはあった?」と熱心である。
さらに私の△6五桂に▲6六銀では、▲8八銀(参考図)があった。これも深浦九段の講座に出てきた手で、壁銀になるが、そこで△6七角は▲7九飛でよい。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4d/8a/c9887dbd724e46efef2edd99a37050a8.png)
これには木村会長も、▲8八銀と▲7九飛かー、と唸る。「将棋は手が広いもんだね」。
もっとも参考図からの△6七角▲7九飛は△4九角成があり、▲同銀は△6八金、▲同飛も△5八金▲7九飛△5七桂成がある。また△8七歩▲同銀△6六角もあり難しい局面なのだがそこはそれ、▲8八銀のような手もある、と知っていただければいい。
私はかねてから会長と一局交えたかったので、今日はいい記念になった。
(つづく)