付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「私を月まで連れてって!(4)」 竹宮恵子

2009-08-18 | 超能力・超人・サイボーグ
「男にとっては、宇宙もゲームもさして変わらない。もちろん人生もね。命を大事にすることと、命を賭けることとが、さして変わらないのと同じにね……」
 お八重さんの言葉。スーパー・ハウスキーパーお八重さんがこの巻より次第に正体を現し始めます。

【私を月まで連れてって!】【竹宮恵子】【無重力ファッション】【牡丹灯籠】【ビスクドール】【ハッカー】【時間旅行者】
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「さよならの次にくる(卒業式編)」 似鳥鶏

2009-08-18 | 学園小説(ミステリ)
『恋愛の相談ができる友人を持つべきであるが、恋愛の相談など友人にするものではない』 

「文芸部部長、伊神恒。葉山君、君の話はそこまでだ。それ以上は僕が許さん」
 伊神部長は葉山君が説明しようというのをカッコ良く制止した。だって謎は真相を知っている人から単に説明されるより自分で解明する方が楽しいからだ。
 葉山君はたった1人の美術部員だけれど、謎解き大好きな文芸部の伊神先輩や演劇部の柳瀬先輩らに囲まれてけっこうにぎやかな日々を送っている。けれど、小学生時代に渡しそびれたラブレターをきっかけに、新たな謎の待つ場所へと誘われていく……。

 無人のビルに取り残された小学生がどうやって脱出したのか、吹奏楽部の部室に怪文書を張り出したのは誰かなど、3編の断章を挿みつつ展開される4つの謎。警察が乗り出すような事件なら、科学捜査と人海戦術であっさり露顕してしまいそうな謎ばかりですが、そこを一介の高校生が調べるという形にすることで、近代捜査黎明期の名探偵物的なシチュエーションに持っていくわけですね。
 『理由あって冬に出る』に続くコミカルな学園ミステリの前編……って、すいません。『理由あって冬に出る』なんて本が創元推理文庫から出ているなんて知りませんでした。今度買います。後編もちゃんと買います。

【さよならの次にくる】【卒業式編】【似鳥鶏】【toi8】【Google】【卒業生】【日常系】
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「時をかける少女」 筒井康隆

2009-08-17 | 時間SF・次元・平行宇宙
「科学というものは、不確かなものを確実なものにしていかなければならないためのその過程の学問なんだ。だから、科学が発展していくためには、その前の段階として、つねに不確実な、ふしぎな現象がなければならない」
 自分が時間移動しているのかも知れないという芳山和子の言葉を冷静に受け止める福島先生。立派な先生だと思う反面、単なるビリーバーだろ、こいつ?と突っ込みたくなる自分もいるのです。

 他に誰もいないはずの土曜日の放課後の理科実験室で、中学3年の芳山和子は確かに誰かがいると確信した。そしてガラスの実験機器の割れる音とラベンダーの香り。
 そのときから芳山和子は時をかけるようになった……。

 筒井康隆の傑作ジュヴナイルSFが帰ってきました。「中学三年コース」に連載していた作品ですから、角川つばさ文庫というのも順当なところ。表紙イラスト(と折り返し)はいとうのいぢ。挿絵の清原紘も違和感なく収まっています。
 他にやはりタイムトラベルものの『時の女神』、シュールな『姉弟』、どう転がるか分からない不思議な『きつね』の3短編を収録。こうやってみると、『時をかける少女』は思っているより短い話ですね。
 自分としては『時の女神』が好きですね。せつなくて不思議で少し不気味なところが……まあ、あのラストを不気味というとエマノンはホラーということになりかねませんが、でも親としては心穏やかではいられません。

【時をかける少女】【筒井康隆】【いとうのいぢ】【清原紘】【タイム・リープ】【ラベンダーの香り】【フランク・エドワーズ】
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『第32回日本SF大会 DAICON6』 1993.8/21-22

2009-08-17 | イベント・コンベンション
 このあたりのイベントになると、記憶に残っている企画がほとんどありません。
 プログラムブックをみつけて、その参加者一覧に自分と妻と妹の名前をみつけるまでは参加したことも忘れていたくらいです。こんなメンツで参加してたら忘れるはずもなさそうですけどね……。
 横にいた嫁に聞いてみたら「あそこの黒いカバンで参加して床に置いたのは覚えてる」と答えてくれました。プログラムブックによれば会場は国際交流センターと吉野旅館だったらしいけれど、確か合宿船を用意してたよね……ああ「まや丸」だ。確かにDAICON6の企画ですね。難民船みたいだったという記憶があります。公式の記録としては好評ということになっているようですが、途中での上下船が制限され、狭い船内を右往左往したあげくに早々に夜の街に追い出されて難民化した記憶しかありません。最初は一晩中自由に上下船できるということだったのに、法令の関係で乗船口を閉鎖しなければいけないということが急遽明らかになり、夜間の他の企画に参加したい人は泣く泣く下船したんだと思います……。
 あとは企画一覧を見ていると、「潮健児インタビュー」とか「宮内タカユキ・コンサート」とか「ファーストコンタクト・シミュレーション」などがあったようですが、記憶に残ってません。何をしてたんだろう。かすかに記憶が残っていても、それが他の大会の企画ではなかったかという疑念がぬぐえません。ああ、地獄大使とすれ違った記憶はあるぞ!
 唯一、まとまった記憶が残っているのは「NETWORK-GLの部屋」の部屋です。けれども、これもパソコン通信媒体でおこなわれていたPBMのプロモーション企画でして「こういうことやってますよ」というプリントアウトをもらって雑談しただけなので、自分としては盛り上がりにかけていたようです。つまり、他力本願で「愉しませてもらおう」という気持ちに陥っていたんでしょうね。

 写真は残ってました。5枚のうち、3枚はまや丸の時間待ちで待合室に座ってカップうどんをすすりあっているもの、1枚はまや丸の中の和室でふらふらしているもの、1枚は最終日のメイン会場前で友人知人で撮った記念写真でした。うん。確かに参加していました。

【第32回日本SF大会】【DAICON6】【1993.8/21-22】【弘司】【コスプレ写真販売禁止令】
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「ひとめあなたに」 新井素子

2009-08-16 | 破滅SF・侵略・新世界
「なんでも始まったものはおわるのよ。おわらないと次の始まりはこないの」 
 だからひとめあなたに会いに来たという山村圭子。

 1週間後に巨大な隕石が衝突して地球が滅びるという。
 パニックに陥り、すべての社会機能がマヒした街を圭子は歩く。江古田から鎌倉まで、地球が滅びる前に一目あなたに会いたくて……。

 避けられない滅亡に直面させられた平凡な人々の喜怒哀楽に彩られた人間模様を描いた終末小説の代表作で、新井素子が二十歳の時の作品だと思います。いつもと変わらぬ日々を送る人もあればすべてを放り出す人もいるし、精神がねじ曲がってしまう人もいる。そんな人たちの様子をかいま見ながら歩き続ける女子大生の旅のお話です。
 デビュー直後は軽妙な語り口のロマンチックSFと呼ばれる作品をジュニア小説として発表することの多かった新井素子のターニングポイントとなるべき作品なんだけれど、本質的な部分、「空から岩が落ちてきて何もかも押しつぶしてしまえば」という感覚はジュニア小説として書いていたものとぜんぜん変わってないですよね。
 しかし、このシュールな表紙はいかがなものかと思います。買うなら創元SF文庫版か角川文庫版の方が良いですねえ……。

【ひとめあなたに】【新井素子】【双葉ノベルズ】【角川文庫】【創元推理文庫SF】【人肉食】
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「マリア様がみてる/未来の白地図」 今野緒雪 22

2009-08-16 | 学園小説(不思議や超科学なし)
「何となくの中には、意外と大切なことが隠れていることがあるものだから」
 藤堂志摩子のつぶやき。

 祐麒が瞳子を連れて帰宅した。
 柏木さんからの電話では、両親と口論して家を飛び出したらしいのだが、祐巳の家族と談笑する瞳子の様子は平静そのものだった。
 そして終業式となり、菜々を誘うという由乃のために、祐巳も瞳子と可南子を山百合会のクリスマス会に招待するのだが……。

 学園祭以来、しっかり空気を読むようになった可南子が頼もしい。もっとも、蔦子さんはさらに頼りになるというか、意識してかしないでか期待された以上の仕事をしてくれるあたりが大人です。柏木さんも大人です。すべてを解った上で見守り続ける大人というスタンスが固まっているのですが、祐巳にとっては最初の出会いの時のギンナン王子のままというのも面白いというか気の毒に。女の子ってそんなものだよね、と元・男の子は思いました。
 まあ、人間関係は思うようにいかないものだけれど、そのあたり彼女たちも納得した上で立ち向かおうとしているようなので、読む方もあせらず追いかけるしかありません。

「なるようにしかならない、ってば。人間関係ってやつは。言い換えれば、なるようになるってことだよ」
 いつも「行け行け、GoGO!」な島津由乃の言葉。
 
【マリア様がみてる】【未来の白地図】【今野緒雪】【家出】【カレーライス】【百面相】【クリスマス会】【ツイスターゲーム】【集合写真】
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「地底世界のターザン」 エドガー・ライス・バロ-ズ

2009-08-16 | 冒険小説・旅行記・秘境探検
 『仮面ライダーディケイド』の24話と25話と『侍戦隊シンケンジャー』の第20幕と第21幕が見事にクロスオーバーしていまして、それぞれの個性を活かしながら同時進行で同じ瞬間に立ち会った2組のヒーローの相剋を描いておりました。
 それぞれの役割や個性が活きていなかったりオリジナルの設定を無視していると「なんでも一緒に出せば良いと思っているだろ!?」と言いたくなりますが、やはり物語の枠を超越したクロスオーバーというのはエンターテイメントの醍醐味です。デルザー軍団に対抗するため世界各地から集結してくる仮面ライダーたちとか、スーパーロボット大戦とか。
 真正面からがっぷり四つに組まなくても、ちらりと匂わすだけでも燃えたり笑えたりします。魔夜峰央の『パタリロ!』と『ラシャーヌ!』の作品を超えたかけ合いとか、和田慎二の『スケバン刑事』と美内すずえの『ガラスの仮面』とか……。

 地底世界ペルシダーの皇帝となった快男児デヴィッド・イネスだったが、『海賊の世界ペルシダー』のエピソードにおいてコルサールの海賊に捕らえられたままであった。この知らせをカリフォルニアの無電技師ジェイスン・グリドリーがたまたま無線装置で受信したことから、地上世界ではただちに皇帝イネス救出部隊が編成されることとなるが、その隊長として招聘されたのはグレイストーク卿、すなわちジャングルの王者ターザンであった!

 さあ、自作品同士のコラボが大好きなバロウズですよ?
 書店では創元版とハヤカワ版が競い合うようにバロウズの作品を平積みしていた時代でした。迷ったあげくペルシダーもターザンも読めるとハヤカワ版『地底世界のターザン』を買っちまいましたが、創元版の『ターザンの世界ペルシダー』でも良かったんだよなあ。あとは柳柊二と武部本一郎のどちらが好きかという踏み絵みたいなもんです。細かな訳の違いまでは店頭の立ち読みでは分かりませんから。
 
 そもそもバローズは『地底世界のターザン』に限らず自作品のクロスオーバーを派手にやってます。月世界シリーズの地球は火星のバルスームとの交流があるし、金星シリーズもバルスーム行きのロケットが金星に不時着したところから始まるし、どうもバローズ作品は基本的にどれもこれも同じ世界の話のようです。

【地底世界のターザン】【エドガー・ライス・バローズ】【柳柊二】【恐竜】【北極】【飛行船】【ゾラムの赤い花】
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「寿司屋のかみさんのちょっと箸休め」 佐川芳枝

2009-08-15 | 食・料理
 おつまみの簡単な作り方から素材についてのうんちくやそれにまつわるお店のエピソードまで、おかみさんの語る寿司屋の四季の味の数々。茶碗蒸しとかあぶりハモとか美味しそうじゃないですか。
 おつまみについてぎっしり書かれた本だけれども料理本ではなく、あくまで「おつまみにまつわる話」なので普通にエッセーとして読んでいて面白いです。

 ところで、「アオヤギは通称バカ貝」と書いてあるけれど、これだけは逆だと思います。「アオヤギ」はマルスダレガイ目バカガイ科の別名。バカガイが標準和名なんですね。

【寿司屋のかみさんのちょっと箸休め】【佐川芳枝】【ノレソレ】【アワビの肝】【月見イワシ】【ヅケ丼】
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「艦長の子」 カリン・ロワチー

2009-08-15 | 宇宙海賊・宇宙商人
「政治家は、何をすべきかを教えられないと何もなし遂げられない。少なくとも、意味のあることは」
 アザーコン艦長の言葉。
 マスコミは近視眼的な大衆を煽るだけ煽って放り投げ、政治家はその大衆の反応に右往左往させられるだけという身も蓋もない世界観が満載です。

 異星人や宇宙海賊との戦いが続く時代。勇猛で知られる戦闘輸送艦<マケドニア>の艦長アザーコンを父に、名門出身の政治家を母に持つライアンは、その家柄や財産、容姿から「もっともホットな独身貴族」としてマスコミや社交界の注目を浴びていたが、その実態は時としてドラッグに手を出してしまう孤独な青年だった。
 だが、アザーコン艦長による異星種族ストリヴィイルク=ナとの停戦、海賊ファルコンの暗殺と衝撃的なニュースが入ってくるのと前後して、ライアンの周囲は一気にきな臭くなっていく……。

 戦争SF巨編として紹介されることが多いけれど、読んでみると「戦時下での少年の成長物語」という方が正確なのではないかと思わされる3部作の2冊目。完全に『戦争の子』の続きで、続刊『海賊の子』に続いてます。
 今回は、前回の主人公ジョスたちを追いつめたカイロ・アザーコン艦長の息子が主人公です。父親は戦場、祖父母と母は政治と社交に忙しく、傍にいるのは母親とできているボディガードのみという、甘えて歪んだ性格を作るにはもってこいの環境で育ったライアンです。
 600頁ちょいの物語で、400頁を過ぎてもライアンはあいかわらず甘やかされたボンボンで、周囲に敵しか作らないような言動を繰り返しています。ライアンはそう思ってないかも知れないけれど、やっぱり艦長は息子には甘いよ。早く成長してくれ。というか、話をここ(400頁目)から始めてもいいんじゃないか……?
 主人公にまったく共感できず、ただ文句をつけながらも黙々と読んでしまうのはやっぱり面白いからだよなあ。作者と訳者の筆力でしょうね。前作の主人公ジョスの屈折具合も良い感じです。

 前作に引き続き、アニメの設定資料に色をつけただけのようにも見える表紙が趣味ではありませんが面白く読めました。枝葉を切り落として、この2/3くらいにすればなお良かったのにとは思いました。『ノパルガース』の薄さが引き立ちますね……。

【艦長の子】【カリン・ロワチー】【ハートマン軍曹】【テロ】
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「寿司屋のかみさんお客さま控帳」 佐川芳枝

2009-08-14 | 食・料理
「でも中学三年じゃ、あと十年は待ってもらわないと」

 町なかの小さな寿司屋にはサラリーマンもやってくれば総理大臣もやってくる。 
 訪れるお客さんたちがかいま見せてくれる出会いや別れなどの人生模様を、寿司屋のかみさんの視点から綴った1冊。

 このうち、ハシモトさんに関するエピソードは『寿司屋のかみさんと総理大臣 内緒の話』にまとめてあります。他には若い男女が結婚に至るまでのエピソードな小粋な先生の思い出話、極道の会長と二号さんの顛末、ドイツから来たお客さんと小さいお嬢さんの話などなど。
 読んでいて、自分も寿司屋のカウンターの角に腰をかけていて、他のお客とのやりとりに耳を傾けているような気分になれる本ですね。

【寿司屋のかみさんお客さま控帳】【佐川芳枝】【寿司屋】【ガラスを食べる】
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「マリア様がみてる/薔薇のミルフィーユ」 今野緒雪 21

2009-08-13 | 学園小説(不思議や超科学なし)
「やっと二人きりになれた」

 自分の中では妹候補にしてしまった有馬菜々のことで頭がいっぱいの由乃だったが、気がつかないうちに令にお見合い話が持ち上がっていて頭の中はパニックに!という「黄薔薇パニック」。
正体不明の菜々の性分が明らかになり、このコンビは相性が良さそうだなと思いました。
 下校途中の志摩子を連れ去った怪しい男は何者か!? 戸惑う乃梨子の前に佐藤聖が姿を現す「白薔薇の物思い」。抱きつき魔で言動が中年オヤジの佐藤聖しか知らない乃梨子には、聖さまはステキでしょ?という志摩子の気持ちが理解できないのでした……(笑)
 先延ばしになっていた約束がついに果たされる時が! 遊園地にデートに出かけた祥子と祐巳はそこで予想外のメンバーと合流してしまう……という「紅薔薇のため息」。祐巳が嫌う柏木さんだけれど、祐麒にいわせると「強引に誘われたときも結果的に乗って良かったということが多い」んだそうで、そのあたり色眼鏡をかけずに見てあげて欲しいな。

 キーワードに「ケーキ」を据え、黄白赤の姉妹たちの騒動を描いた短編3つ。
 自分のことを自虐ではなく自信を持って「携帯トイレ」と言い切れる男はカッコイイ。

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「第二次世界大戦紳士録」 ホリエカニコ

2009-08-13 | 戦記・戦史・軍事
 歴史は登場する人物が活き活きと描き出されれば出されるほど面白くなってきます。虚実入り混じった「物語」を「正史」と誤解されても困りますが、学校の教科書の味気なさを思えば、もう少し関心をもたせる工夫は必要です。前に中学の日本史の教科書を読んだら、北条政子を「尼将軍とも呼ばれ、鎌倉幕府をもり立てた」のひとことでスルーしていて頭を抱えました。

 第二次世界大戦紳士録といってますが226事件の青年将校たちも含まれており、日独の軍人さんや政治家たち1人1人を主人公にしたエッセイマンガが収録されています。アメリカとかイギリスとかソ連とかイタリアについては言及はほとんどなし。ムッソリーニが1頁載っている以外は、チャーチルやスターリンがちょこちょこ顔を出しては政治的に正しい行為を行っているくらいです。
 戦争とは悲惨なもの。悪人と言われている人間にも真面目なところやユーモラスな一面はあるし、立派な人と言われていても身内にとっては奇人変人というのも良くある話です。そうしたエピソードの数々を、真面目に文献から拾い集めて抜き出して再構成すると、どうしてこんなに笑えるものになるのでしょうか……?
 大和大好き有賀幸作、寝ない男・柳本柳作、ウソつきの大ホラふき・渕田美津雄、司令長官にしておくには惜しい南雲忠一、人生楽しそうなグデーリアン、「そこに山があるから」ヨードル等々、戦記物などを読んでいるだけでは部隊指揮官Aとか艦隊司令Bくらいにしか思えない人々が、わずか1ページで活き活きと蘇ります。
 こういう話を読むと、実際の歴史の中で彼らがどのような位置をしめていたのかが気になってきますが、それをフォローするかのように合間合間に仮装戦記作家らによる戦史や専門用語の解説が入り、より深く学ぶための道筋が用意されているのです。これが第二次世界大戦限定でなかったら、うちの子らにも薦めたり学校の図書館にも推薦するのに……。

 bk1で予約したら10日午前に到着。早いなあ。ここらの本屋なんかまだ店頭にも並んでないよ。しかし、同一人物についてギャグ用二頭身とシリアス用モデル頭身の2デザインがあり、それが自由自在に入れ替わるというのは、たがみよしひさを開祖とすると思うのだけれど、この手法だと話が小気味よく進みますね。

【第二次世界大戦紳士録】【ホリエカニコ】【山下英一郎】【内田弘樹】【戦艦大和】【沖縄戦】【硫黄島】
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「突撃!かぶと虫部隊」 キース・ローマー

2009-08-12 | 宇宙・スペースオペラ
「外交官ってものは、少なくとも1回に3ゲーム遊ばなくては、1日を無駄にしたと考えるものだよ」
 地球大使館二等書記官兼領事ジェイム・レティーフの言葉。

 昆虫型生物が進化の頂点に立ったクォッブ星に派遣された二等書記官レティーフ。しかし、彼は地球外交団CDDの支援による文明化がいびつな方向に動いているのではないかとの疑念を抱く。
 車輪で移動するものから回転翼で飛行するものまで、大きさも形も異なる100種類以上の種族が共存していたのに、いつしか特定の種族が支配階級にのし上がろうとしていたのだ。
 レティーフは甲虫を模した着ぐるみを手に入れ、真相解明すべくクォッブの奥深くへと潜り込むのだが……。

 初めてこの本を読んだときはタイトルから、今でいうムシキングみたいな話かと思ったら大間違いでした。未知の世界を右往左往しつつ手八丁口八丁で内政に介入してしまう外交官の冒険談。外交官の仕事ってのは、潜入工作あり野戦の指揮あり恐喝ありと、たいへんなんだなあ……という話。
 シリーズものらしいですが、他に翻訳されたものを知りません。

【突撃!かぶと虫部隊】【キース・ローマー】【植民地支配】【蜂蜜】【害虫駆除雑誌】【プリンセス】
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「サマーウォーズ」 岩井恭平

2009-08-12 | VRMMO・ゲーム世界
「勝ちそうだから戦うとか、負けそうだから戦わないとかじゃないんだよ。戦うべき時だからこそ戦うんだよ、ウチはな。それも毎回」
 内科医の陣内万作の言葉。負け戦であったかどうかは関係ない。バカな一族はあくまで誇り高い。「家族を守るためなら、いくらでも頑張れる」という人々なのだ。

 平成21年夏。ハッキングAI<ラブマシーン>によって世界10億人が公私を問わず活用している電子ネットワーク上の仮想世界が暴走した。<ラブマシーン>は手をゆるめることなく現実世界のインフラさえも浸食し、世界の破滅まで残すところ2時間と迫っていた。
 だが、色気に迷ってバイトを引き受けただけのはずの平凡な高校生・健二は、それでもなお諦めてはいなかった。まだ<ラブマシーン>に負けてはいない。必要なものは、女神のキスと一杯の紅茶。タイムリミットまで2時間なんて永遠に近い時間が残っているじゃないか。まだやれることはあるはずなのだ。あとは女神のキスだけだ……。

 世界の危機に挑んだ、普通の家族たちの物語。
 細田守監督の映画『サマーウォーズ』を、『ムシウタ』の岩井恭平がノベライズしたものですが、単なるノベライズではありません。映画通りの筋立てではありますが、膨らます箇所は膨らまし、削るところは削り、必要とあればセリフも変えて、きちんとした1編の小説としています(あのエピソードが小説版には無いよね?)。そして、小説として読むと、夏希がどれだけ曾祖母を慕っていてなおかつ追い詰められていたかとか、健二が常に周囲の物事を計算していたり大家族の中の居場所に安らぎを得ているかというあたりまで丹念に書き込まれていますので、映画では唐突に感じられたようなあれやこれやの展開もすとんと納得がいくようになります。

 けれども、これだけ続々と集まってくる大家族は、映画のように顔と声がついてこないと一度に覚えるのは無理です、思わず映画パンフレットの家系図を引きずり出しました。そして、これって平成21年の話なんですね。そりゃあ、そうしないと戦時中のエピソードとかがおかしくなるから……。

【サマーウォーズ】【岩井恭平】【細田守】【貞本義行】【ボーイ・ミーツ・ガール】【上田わっしょい】【草食男子】【女神のキスと一杯の紅茶】【家族】【花札】【大森望】
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「アジア・旅の五十音」 前川健一

2009-08-11 | 冒険小説・旅行記・秘境探検
 アジアをテーマにしたミニコラム&エッセーを五十音順に並べて事典風にまとめたもの。さらに自分の生れ故郷を訪ねた話や、ビルマで出会った日本語を学んでいた女性のその後についてなども収録。

 各国の食事や文化といった話から著者自身の生き方まであれこれ詰め込んであり、いつでも気軽に好きなところから読めるお得な1冊。アジアといいつつ、アメリカ・ヨーロッパについても言及することもあり、アメリカで出会った幼い姉弟はジュースとクッキーを自分たちで売りさばいてサマーキャンプ代金を捻出していたけれど、その後見かけた日本人留学生は「これっぽっちの仕送りでは足りない」とほざいていたとか、世界各地で見聞きしたあれこれ詰め合わせです。
 特に印象的だったのはアジアの定義について考えてみた部分。
 オーストラリア人の旅行者と話をしたらその人はオーストラリアをアジアの一員と考えていたけれど、日本人は日本と「アジア」は別と思っているよね? アジアは劣っているモノと日本人は決めつけていないかというくだり。
 確かにそういう一面はあるかもしれないと思いました。「ふるさとはいちばん」というのは良いけれど、主観的評価を客観的評価と思いこむことは避けたいと思います。

【アジア・旅の五十音】【前川健一】【朝食】【カメラ】【ガイドブック】【ワイロ】【毛ジラミ】
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