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水木陽さんという元日経の記者の方が書いた中国の近未来小説を読んだ。
今の中国ができて、もう60年近くになるのだが、特にこの10年大きく変貌を遂げている。
世界のルールにだんだん従ってきているという向きもあるが、中国国内の格差は、広がる一方で、北京オリンピック、上海万博後、大きな転機を迎えるのではないかと見る向きも多い。
この小説は、その時、こんなことが起こりうるよという具体的イメージを描いているという意味で、面白い小説だ。
ドラマチックにするために、男女のあやや、報道の世界の裏側を見せたりする小道具は使われているが、基本的には、貧富の差の急拡大により求心力の衰えた共産党政府を、天安門事件の生き残り組が反政府活動を展開し、民主的な政府を立ち上げるべく、共産党政府を、崩壊させるというストーリー。反政府活動家の中の、内ゲバ、裏切り、ダブルスパイは、1970年代の日本赤軍の事件を彷彿とさせる。
改めて思い起こされるのは、現在の中国政府は、軍事展開により樹立された中国共産党による政府であり、共産主義の理念は崩壊しているにもかかわらず、共産党王朝とも呼べる政権委譲により、既に、60年近くの中国を支配し続けているという事実である。
これまで、中国の王朝が入れ替わってきた歴史を考えると、政権が変わる可能性はあるといえる。その際、キーとなるのが、現在の中国が建国された時主導的役割を果たした、中国人民軍だが(その意味で、中国は、軍閥国家である)、この小説では、この軍隊をも、反政府活動家が巻き込んでいく。
この小説のラストでは、紫禁城を中心として北京が炎上し、2017年に初の民主的な選挙が行われる。そして、天安門に掲げられる肖像画は、毛沢東から、孫文に代えられる。
中華街に行くと、中国の貧民の窮状を訴えるビラがよく配られているが、まさに飢餓状態である。2017年は、意外と早まるかもしれない。
写真は、天安門広場にたなびく中国の国旗。