かねやんの亜細亜探訪

さすらうサラリーマンが、亜細亜のこと、ロックのこと、その他いろいろ書いてみたいと思ってますが、どうなることやら。

あの戦争と日本人

2011年03月09日 | Books


”あの戦争”を経験した世代が減少してく中で、半藤さんの著作は、ますます貴重になっている。歴史として語れる人は多いが、体験した歴史として語れる人はそうはいない。
本書にも、歴史探偵を自称する半藤さんの本領が発揮されている。実体験とともに、オリジナル資料に基づいた分析だから迫力が違う。幕末から、あの戦争まで、戦争を軸として、日本の近代史を分析。戦争を知らない我々以下の層には、是非読んでもらいたい本だ。

WWⅡの時に、濫用された統帥権。昭和初期に生まれた概念と思ったら、明治の軍体創設時からあった概念だそうだ。薩長が、江戸幕府を転覆した時(=明治維新)にその原点はあった。

WWⅡが始まった、1941年12月8日。無謀な戦争が始まった日と、今は思うが、当時は、知識人も含め、ほとんどの人が、痛快感を抱いたという。熱狂に流された。熱狂に流されないためには、歴史を正しく学んで、自制と謙虚さを持つ歴史感覚を身につけることが大切だと半藤さんは、説く。その通りだと思う。

何かと話題の日露戦争も、幸運の連続でやっとこさっとこ乗り切った戦争だったのだが、これも日本人は、学ぶことがなかった。203高地の戦いなど、ほとんど無意味だったのだが。ここで、学ばなかったことが、日本を破滅に追い込んでいったのだ。先日の半藤さんの講演でもその点を強調されていた。教訓すべきところがたくさんあったのに、勝ったという一点によって、それを全部消してしまったわけだ。
もっと言えば、日露戦争後、亜細亜の中心として、欧米と対等に交渉する力を得たのに、逆に欧米とともに、亜細亜に対立する方向に走ったのだ。日本は、ここで、大きく、道を踏み外した。
出世主義、金権主義、享楽主義、虚無主義が、日本を覆い始めた。
半藤さんの、義理の祖父である夏目漱石も、見事その点を看破し、『三四郎』にも記している。

面白い話に、日本人は、4文字7音に弱いという。今でいえば、郵政改革、政権交代。当時でいえば、大政復古、大政奉還、富国強兵、臥薪嘗胆。みんな、4文字7音じゃないか。
その中で、WWⅡの時に盛んに使われたのが、八紘一宇。そもそもは、日本書紀に出て来る言葉だそうだが、今はあまり使われない。八紘は、四方と四隅、つまり世界、一宇は、一つの家、世界を一つの家にするという意味だそうだ。この4文字7音に踊らされて、あの戦争に突き進んだのか。天才的な、キャッチコピーと言えるかもしれない。そういえば、私の尊敬している人に、紘一さんという名前の人がいた。皮肉にも、その方のお父さんは、シベリアに抑留された。

原爆の話も、詳しく書かれている。この部分は、アメリカの人に読んでもらいたい部分だ。当時、原子爆弾は、最先端の技術。日本も、研究をしていたが、途中で、中断。アメリカは、巨額の費用を継ぎこみ、極秘裏に完成し、日本に対して使用。開発目的は、日本に対して使用すると、開発段階から、明確だったという。
京都、横浜、広島、小倉、新潟が、候補だったが、広島が最初の投下地になった。
ただ、科学者の中では、150名中、127名が、警告後使用すべきと言い、無警告の原爆使用に反対していたのだそうだ。
トルーマンは、この結果を知ることもなく、原爆使用にいたったという。

戦争は、人を狂わせると言ってしまえば、それまでだが、歴史を学ぶことにより、少しは、まともな判断ができるようになるかもしれない。
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