CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】京都東山美術館と夜のアート

2024-09-14 21:05:35 | 読書感想文とか読み物レビウー
京都東山美術館と夜のアート  作:高井忍

以前に、柳生十兵衛ものの小説で面白かったので
別作品をと読んだ本作であります
現代劇ながら、美術館の警備員というややマニアックな職種が主人公で、
美術館あるあるを交えながらのミステリ小説になってて
楽しく読むことができたのでありました
キャラクタが華やかといったらいいか、警備員の物語だけど
女性の登場人物が多くて、それでいてアートや、美術館の話しもあるから、
なんとも素敵で、明るい気分というか、ハレな気持ちで読める作品でありました

メインは美術史なぞなぞというでもないが、
贋作仕掛けやら、美術館を悪質利用したお話やらと
ややきな臭いものがあるけど、実被害が出るというわけでなく、
その事前に、あるいは、以前にこんなことがあったという感じを
さて、どうしてでしょうとみんなで謎解きするみたいな感じで
いい気分で読み終えることができたのであります

蘊蓄が日本刀と浮世絵に絞られていたけども、
こんな感じで、茶道具、日本画とかでも、何かしらやってくれそうだなと思うのだが
美術に関わりあいたいけど、という色々な選択のなかで、
美術館の警備員という、近いのかそうでもないのかという仕事についたという
主人公の行く末が、この一冊では特に見いだされないまでも、
その選択が間違いとはいえないという気持ちよさで〆られているので
続編あったら読みたいかもと思いつつも
余韻よろしく読み終える小説で大変よかった

刀について、昭和の刀狩りの時に焼かれてしまった名刀の数々というのに
結構衝撃を受けてしまったのだが、
てっきり接収されて、ずさんに扱われただけかと思ってたら、
それくらいなら焼くみたいな決断だったり、ただ武器だからという理由でざっくり焼きだされたりしたようで
なんとも悲しいことだなと思い知ったりでありました
どれだけの名刀がこの時に消えたのかと思うと
本当、憤懣やるかたない、刀の年齢100歳じゃきかないんだぞと思うのである
メリケン建国より前からあるものだったろうにな
さておき、そういう怪しい素性を利用しての詐欺みたいなことも
本当にあるんだろうなというリアリティが楽しく、美術品の怖いところ、そういう世界だよなと思わされたのである

また、同じようにして浮世絵でも色々と怪しいことはできてしまうようで、
ことに、写楽についての蘊蓄が面白く、
ここですでに否定されているといわれている、写楽謎の名人説というのが
未だ、自分のようなにわかものには通じるところがあるんだなというのに
結構衝撃を受けたわけである
結局好きな人しか知らない世界で、それをうまく利用するとか
昨今、そういう嘘歴史めいたものが、色々騒がれているからこそ
結構危ないものだなと改めて思い知るのでありました

そんな骨董詐欺めいたお話で、美術館からちょっと離れてしまっても
なかなか楽しい短編になりそうじゃないかしらと思うのだが
それは別の話しとして、華やかなキャラクタの楽し気なやりとりとともに
日本美術蘊蓄が楽しめる一冊でありました


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