憲法10条で、日本国民の要件は定められていました。
外国人の人権は、どう考えれば良いのか。
考え方を整理しておきます。
芦部『憲法』 「第五章 基本的人権の原理 四 人権の享有主体」に関連しています。
(かつてブログ記載 http://blog.goo.ne.jp/kodomogenki/e/c6c8ab026320954741ae74e86071f473 )
****人権の享有主体 3 外国人*********
Q君
外国人は、どのように定義されますか?
A先生
以下に大別されます。
1)一般外国人~短期滞在者など(観光その他で日本に在住している。27種のビザあり)
難民と永住者を除く外国人のことである。
2)難民~難民条約1条の定義に当てはまる人
3)永住者(永住外国人)~一般永住者と特別永住者
特別永住者とは、在日外国人の方の中でも、終戦前から日本に居住している朝鮮半島、台湾出身の方でサンフランシスコ平和条約(1952年)の発効によって日本国籍を失った後も引き続き日本に在留している外国人の方とその子孫の方々のことをいう。特別永住者は、「出入国管理及び難民認定法(入管法)」ではなく「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法(入管特例法)」によって定義されている。
4)不法滞在者(パスポートなしで入国またはビザ切れで滞在している者)ももちろん外国人のカテゴリーの一つである。
Q君
憲法では、外国人には人権の保障は、どのように規定されていますか?
A先生
外国人の人権も保障されると肯定説が通説です。
否定説は、「第3章 国民の権利及び義務」という文言にこだわってなされます。
Q君
外国人の人権が保障されるその根拠は何ですか?
A先生
以下の根拠が考えられます。
1)人権の普遍性・前国家性・前憲法性からは、人である以上外国人にも当然認められることになる。
2)人権の国際化(人権思想の進展にともない、人権を国内法的に保障するだけではなく、国際法的にも保障しようという傾向が強まっていること)。
3)憲法98条が謳う国際主義。
第九十八条 この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
○2 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。
Q君
すべての人権が保障されるのですか。
A先生
そうではありません。保障されない人権もあります。
Q君
ある人権が外国人に保障されるかどうかを決定する基準は何ですか。
A先生
文言説、性質説があって、基準が決定されます。
文言説は、憲法の記載で、「何人」と規定されているときは、外国人にも保障され、「国民」と規定されているときは、国民のみに保障されるとします。
性質説(通説・判例)は、権利の性質にしたがって、外国人に保障されるかどうかが決定されるとします。
判例もマクリーン事件(�-1-2)で「憲法第三章の諸規定による基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、わが国に在留する外国人に対しても等しく及ぶものと解すべきであり、政治活動の自由についても、わが国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位にかんがみこれを認めることが相当でないと解されるものを除き、その保障が及ぶものと解するのが、相当である。」と判示しています。
Q君
文言説の問題点は、なにですか。
A先生
22条2項の国籍離脱の自由について、「何人」もとしている点の説明が困難になります。
外国人が日本国憲法の下で、日本国政府や裁判所に対して、国籍離脱の自由を主張する事は意味がありません。
23条のように、何人もとも、国民とも書いていない条文もあります。
第二十二条 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
○2 何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。
第二十三条 学問の自由は、これを保障する。
Q君
国レベルの参政権は認められますか?
A先生
国民主権の原理から認められません。(通説・判例)
ヒッグス・アラン事件(判例集�-3-2)の「事実」における、主張�及び�に注目してください。
�国民は、国籍保持者だけではなく、社会の構成員として日本の政治社会における政治決定に従わざるを得ないものを指す。
�原告は永住許可を得ている者であり、納税義務も負担している以上、帰化している者と同様に扱わないのは差別である。
Q君
納税義務の負担は、外国人の人権を保障することの根拠となりうりますか。
A先生
なりうると考え方と、なりえないという考え方ができます。
なりうる(積極説)。近代憲法は、イギリスのマグナカルタからアメリカの独立宣言においても、「納税者」の権利の政治的権利を確保するという意味があったことから、ここの沿革を重視すると、外国人であって、かつ日本に生活の根拠を置いている以上は、納税義務を果たしていることは、外国人に人権(参政権)を保障することの根拠となりうる。
なりえない(消極説)。税金は、ある社会に生活していることで発生するコストに対して、応分の負担を支払うものであり、そのことが参政権を保障することの理由にはならない。さらに、納税負担を根拠とすると、生活保護を受けている者や貧困のために納税負担にたえられない者の参政権を否定することになり、これは、戦前の制限選挙と同じ根拠づけになってしまう。
Q君
では、地方レベルの参政権は認められますか?
判例は、外国人に対する地方レベルの参政権の付与について、どう判断しているのですか?
A先生
以下の論理に立っています。
1)15条1項は外国人に適用されない。
2)93条2項の「住民」は日本国民である。
3)外国人に対する地方レベルの参政権付与は憲法上禁止されていない。
(付与しなくても違憲ではないし、付与しなければならないものでもない)
もっぱら立法政策の問題である。
その理由は、次の通りです。
「住民の日常生活に密接な関連を有する公共的事務は、その地方の住民の意思に基づきその区域の地方公共団体が処理するという政治形態を憲法上の制度として保障しようとする趣旨に出たものと解されるから、我が国に在留する外国人のうちでも永住者等であってその居住する区域の地方公共団体と特段に緊密な関係を持つに至ったと認められるものについて、その意思を日常生活に密接な関連を有する地方公共団体の公共的事務の処理に反映させるべく、法律をもって、地方公共団体の長、その議会の議員等に対する選挙権を付与する措置を講ずることは、憲法上禁止されているものではない」
Q君
判例上、外国人が就任できない公務は存在するのですか。存在するとすればその理由は何ですか?
A先生
地方公務員のうち,住民の権利義務を直接形成し,その範囲を確定するなどの公権力の行使に当たる行為を行い,若しくは普通地方公共団体の重要な施策に関する決定を行い,又はこれらに参画することを職務とする者である、「公権力行使等地方公務員」は、外国人が就任できない。と判例ではされています。(外国人管理職選考受験拒否事件上告審判決 判例集�-3-4)
その理由
1)公権力行使等地方公務員の職務の遂行は,住民の生活に直接間接に重大なかかわりを有するものであることから、国民主権の原理に基づき,国及び普通地方公共団体による統治の在り方については日本国の統治者としての国民が最終的な責任を負うべきものである(憲法1条,15条1項参照)。
2)このことから、原則として日本の国籍を有する者が公権力行使等地方公務員に就任することが想定されているとみるべきである。
3)また、我が国以外の国家に帰属し,その国家との間でその国民としての権利義務を有する外国人が公権力行使等地方公務員に就任することは,本来我が国の法体系の想定するところではないものというべきである。
Q君
この判決の論理の問題点は何ですか?
A先生
公権力行使等公務員の範囲が無限定であることです。
外国人に能力の発揮の場を与え、幸福追求の可能性を保障するためには、公権力行使の等公務員の範囲を狭くすべきであり、実際、判例の言うところの「統治のあり方」に影響を与える業務は、警察・検察・国税・入管等の権力業務に限られるのではないかと考えられます。
Q君
外国人は生活保護を受けられますか?
A先生
実務上は、生活保護の認定をしています。
適法に日本に滞在し、活動に制限を受けない永住、定住等の在留資格を有する外国人については、国際道義上、人道上の観点から、予算措置として、生活保護法を準用しています。
すなわち、
1)出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)の在留資格を有する者(永住者、定住者、永住者の配偶者等、日本人の配偶者等)
2)日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の特別永住者(在日韓国人、在日朝鮮人、在日台湾人)
3)入管法上の認定難民
が生活保護法の準用の対象となります。
したがって、これら以外の者は対象とならない。
不法滞在者は生活保護の対象となりません。これは、ある種のジレンマであります。
Q君
外国人に入国の自由は認められない理由は何ですか。
A先生
国家が国際法上、自己の安全と福祉に危害を及ぼす恐れのある外国人の入国を拒否するのは、当該国家の主権に属し、自由に裁量することができるとされています。(国際協調主義・普遍性の例外。)
Q君
不法入国者には、日本人と同じ刑事手続が保障されないか。
A先生
保障されます。
Q君
外国人に在留の権利を認めていますか。
A先生
入国の自由がない以上、在留の権利も認められないとされています。(判例)
Q君
外国人の出国の自由を認めていますか?
A先生
認めています。(判例)
Q君
外国人の政治活動の自由は大きな制限を受けるとしているが、その根拠は何ですか?
A先生
外国人の表現の自由は原則として保障されています。
ただし、国政レベルの参政権が否定されているので、日本国民よりも大きな制約を受けるとされています。
大きな制約としては日本の政治に直接介入する政治結社の組織、政府打倒運動は禁止されます。
また、マクリーン事件判決は、ある種の政治活動が、在留資格更新のための消極的要因となることを認めています。
上記には、以下の反論がなされるところです。
反論
1)表現の自由の自己統治・思想の自由市場という側面からすると、政府転覆等の反政府活動以外は、外国人に自由な言論を許し、言論を活発にして、真理に到達するための道を確保すべきではないか。
2)実際に、外国人しかできない批判もあるはずであり、デモクラシーの運営にとって、マイナスになる。
3)この論理からすると、地方レベルの参政権は否定されていないのであるから、地方レベルの批判はできることになるが、地方レベルの政治批判と国レベルの政治批判の境界があいまいなものもある。
4)以上のとおり、マクリーン判決は、表現活動を萎縮させ、政治活動が実質的に全面否認になる可能性を秘めている。
Q君
マクリーン事件(判例集�-1-2)を読んで、要旨を三点にまとめるとすると。
A先生
1)外国人には、入国の自由もない以上、在留する権利もない。
2)法務大臣の在留許可の更新は、自由裁量行為であり、その判断が事実の基礎を欠くか、事実の評価がまったく合理性を欠く場合以外は、違法とはならない。
3)外国人にも権利の性質上許される限り、人権が保障され、表現の自由も政治的意思決定に影響を与えるもの以外は認められるが、当該表現活動が合憲・合法のものであっても、当不当の面から、法務大臣は、それを理由として在留許可を与えないことができる。
判決は、「消極的な事情としてしんしゃくされないことまでの保障が与えられているものと解することはできない」としています。
以上
******小坂メモ****
積み残し課題
○18テキストP97L1~2「在留期間の更新を入国の場合とほぼ同視し、広い裁量権を認めている点に問題がある」とはどういう意味か。☆
P94~95にあるように、正規の手続で入国した外国人には、在留資格をみだりに奪われないことを保障されていることから、入国の自由のように、広い裁量にすることは不当(場合によっては違法)である、ということ。
○19テキストP97L2~3「法人の政治的行為の自由と比べ権衡を失する」とはどう意味か。☆
八幡製鉄事件では、大企業の政治献金が容易に是認されているが、社会への影響力という点では、大企業の方が極めて大きいという意味。ただし、私見では、影響力の大きい外国人もいることから、この点は、もう少し議論が必要ではないかと思われる。
8月10日は、10条の解説をします。
10条から、第三章の人権規定「国民の権利及び義務」に入ります。
日本国憲法の解説に合わせ、自民党の改憲草案の問題点も見ています。
いろいろな人権が、自民党改憲案により、侵害されているため、注意が必要な章です。
おかしな9条以上に、おかしな条文が続いているため、この第三章も、大いに議論すべきです。
10条は、幸いにして同じ内容です。
文章の品格として、自民党案が劣っているぐらいです。
*************************
〇日本国憲法
第三章 国民の権利及び義務
第十条 日本国民たる要件は、法律でこれを定める。
〇自民党改憲案
第三章 国民の権利及び義務
(日本国民)
第十条 日本国民の要件は、法律で定める。
************************
「日本国民たる要件」とは、日本国民の構成員たる資格(日本国籍)を有する要件を意味します。
日本国籍の取得と喪失に関する事項は、法律で定めることを規定しています。
その法律は、「国籍法」です。
最後に全文を掲載します。
「国籍法」の2条1号、3条1項はそれぞれ問題がありましたが、両者改正(2条1号:昭和59年改正、3条1項:平成20年改正)されました。
なお、間違ってはならないのは、日本国民にだけ、日本国憲法の人権を保障するのではなく、「権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、わが国に在留する外国人に対しても等しく及ぶ」(マクリーン事件)とされています。
判例で「権利の性質上」外国人に及ばないとされた権利:
○入国の自由、在留権(最大判昭和53・10・4マクリーン事件)
○再入国の自由(最一小判H4・11・16森川キャサリーン事件)
○国会議員の選挙権(最二小判H5・2・26ヒッグス・アラン事件)
○地方議会議員の選挙権(最三小判H7・2・28)
○公権力行使等地方公務員(管理職)への就任権(最大判H17・1・26)
など
*****国籍法 全文*****
国籍法
昭和二十五年五月四日 法律第百四十七号
施行 昭和二十五年七月一日
改正 昭和二十七年七月三十一日 法律第二百六十八号
昭和五十九年五月二十五日 法律第四十五号
平成五年十一月十二日 法律第八十九号
平成十六年十二月一日 法律第百四十七号
平成二十年十二月十二日 法律第八十八号
(この法律の目的)
第一条 日本国民たる要件は、この法律の定めるところによる。
(出生による国籍の取得)
第二条 子は、次の場合には、日本国民とする。
一 出生の時に父又は母が日本国民であるとき。
二 出生前に死亡した父が死亡の時に日本国民であつたとき。
三 日本で生まれた場合において、父母がともに知れないとき、又は国籍を
有しないとき。
(認知された子の国籍の取得)
第三条 父又は母が認知した子で二十歳未満のもの(日本国民であつた者を除
く。)は、認知をした父又は母が子の出生の時に日本国民であつた場合において、
その父又は母が現に日本国民であるとき、又はその死亡の時に日本国民であつ
たときは、法務大臣に届け出ることによつて、日本の国籍を取得することができる。
2 前項の規定による届出をした者は、その届出の時に日本の国籍を取得する。
(帰化)
第四条 日本国民でない者(以下「外国人」という。)は、帰化によつて、日
本の国籍を取得することができる。
2 帰化をするには、法務大臣の許可を得なければならない。
第五条 法務大臣は、次の条件を備える外国人でなければ、その帰化を許可す
ることができない。
一 引き続き五年以上日本に住所を有すること。
二 二十歳以上で本国法によつて行為能力を有すること。
三 素行が善良であること。
四 自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によつて生
計を営むことができること。
五 国籍を有せず、又は日本の国籍の取得によつてその国籍を失うべきこと。
六 日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政
府を暴力で破壊することを企て、若しくは主張し、又はこれを企て、若
しくは主張する政党その他の団体を結成し、若しくはこれに加入したこ
とがないこと。
2 法務大臣は、外国人がその意思にかかわらずその国籍を失うことができな
い場合において、日本国民との親族関係又は境遇につき特別の事情があると
認めるときは、その者が前項第五号に掲げる条件を備えないときでも、帰化
を許可することができる。
第六条 次の各号の一に該当する外国人で現に日本に住所を有するものについ
ては、法務大臣は、その者が前条第一項第一号に掲げる条件を備えないとき
でも、帰化を許可することができる。
一 日本国民であつた者の子(養子を除く。)で引き続き三年以上日本に住
所又は居所を有するもの
二 日本で生まれた者で引き続き三年以上日本に住所若しくは居所を有し、
又はその父若しくは母(養父母を除く。)が日本で生まれたもの
三 引き続き十年以上日本に居所を有する者
第七条 日本国民の配偶者たる外国人で引き続き三年以上日本に住所又は居所
を有し、かつ、現に日本に住所を有するものについては、法務大臣は、その
者が第五条第一項第一号及び第二号の条件を備えないときでも、帰化を許可
することができる。日本国民の配偶者たる外国人で婚姻の日から三年を経過
し、かつ、引き続き一年以上日本に住所を有するものについても、同様とす
る。
第八条 次の各号の一に該当する外国人については、法務大臣は、その者が第
五条第一項第一号、第二号及び第四号の条件を備えないときでも、帰化を許
可することができる。
一 日本国民の子(養子を除く。)で日本に住所を有するもの
二 日本国民の養子で引き続き一年以上日本に住所を有し、かつ、縁組の時
本国法により未成年であつたもの
三 日本の国籍を失つた者(日本に帰化した後日本の国籍を失つた者を除
く。)で日本に住所を有するもの
四 日本で生まれ、かつ、出生の時から国籍を有しない者でその時から引き
続き三年以上日本に住所を有するもの
第九条 日本に特別の功労のある外国人については、法務大臣は、第五条第一
項の規定にかかわらず、国会の承認を得て、その帰化を許可することができ
る。
第十条 法務大臣は、帰化を許可したときは、官報にその旨を告示しなければ
ならない。
2 帰化は、前項の告示の日から効力を生ずる。
(国籍の喪失)
第十一条 日本国民は、自己の志望によつて外国の国籍を取得したときは、日
本の国籍を失う。
2 外国の国籍を有する日本国民は、その外国の法令によりその国の国籍を選
択したときは、日本の国籍を失う。
第十二条 出生により外国の国籍を取得した日本国民で国外で生まれたもの
は、戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)の定めるところにより日本
の国籍を留保する意思を表示しなければ、その出生の時にさかのぼつて日本
の国籍を失う。
第十三条 外国の国籍を有する日本国民は、法務大臣に届け出ることによつて、
日本の国籍を離脱することができる。
2 前項の規定による届出をした者は、その届出の時に日本の国籍を失う。
(国籍の選択)
第十四条 外国の国籍を有する日本国民は、外国及び日本の国籍を有すること
となつた時が二十歳に達する以前であるときは二十二歳に達するまでに、そ
の時が二十歳に達した後であるときはその時から二年以内に、いずれかの国
籍を選択しなければならない。
2 日本の国籍の選択は、外国の国籍を離脱することによるほかは、戸籍法の
定めるところにより、日本の国籍を選択し、かつ、外国の国籍を放棄する旨
の宣言(以下「選択の宣言」という。)をすることによつてする。
第十五条 法務大臣は、外国の国籍を有する日本国民で前条第一項に定める期
限内に日本の国籍の選択をしないものに対して、書面により、国籍の選択を
すべきことを催告することができる。
2 前項に規定する催告は、これを受けるべき者の所在を知ることができない
ときその他書面によつてすることができないやむを得ない事情があるとき
は、催告すべき事項を官報に掲載してすることができる。この場合における
催告は、官報に掲載された日の翌日に到達したものとみなす。
3 前二項の規定による催告を受けた者は、催告を受けた日から一月以内に日
本の国籍の選択をしなければ、その期間が経過した時に日本の国籍を失う。
ただし、その者が天災その他その責めに帰することができない事由によつて
その期間内に日本の国籍の選択をすることができない場合において、その選
択をすることができるに至つた時から二週間以内にこれをしたときは、この
限りでない。
第十六条 選択の宣言をした日本国民は、外国の国籍の離脱に努めなければな
らない。
2 法務大臣は、選択の宣言をした日本国民で外国の国籍を失つていないもの
が自己の志望によりその外国の公務員の職(その国の国籍を有しない者であ
つても就任することができる職を除く。)に就任した場合において、その就
任が日本の国籍を選択した趣旨に著しく反すると認めるときは、その者に対
し日本の国籍の喪失の宣告をすることができる。
3 前項の宣告に係る聴聞の期日における審理は、公開により行わなければな
らない。
4 第二項の宣告は、官報に告示してしなければならない。
5 第二項の宣告を受けた者は、前項の告示の日に日本の国籍を失う。
(国籍の再取得)
第十七条 第十二条の規定により日本の国籍を失つた者で二十歳未満のもの
は、日本に住所を有するときは、法務大臣に届け出ることによつて、日本の
国籍を取得することができる。
2 第十五条第二項の規定による催告を受けて同条第三項の規定により日本の
国籍を失つた者は、第五条第一項第五号に掲げる条件を備えるときは、日本
の国籍を失つたことを知つた時から一年以内に法務大臣に届け出ることによ
つて、日本の国籍を取得することができる。ただし、天災その他その者の責
めに帰することができない事由によつてその期間内に届け出ることができな
いときは、その期間は、これをすることができるに至つた時から一月とする。
3 前二項の規定による届出をした者は、その届出の時に日本の国籍を取得す
る。
(法定代理人がする届出等)
第十八条 第三条第一項若しくは前条第一項の規定による国籍取得の届出、帰
化の許可の申請、選択の宣言又は国籍離脱の届出は、国籍の取得、選択又は
離脱をしようとする者が十五歳未満であるときは、法定代理人が代わつてす
る。
(省令への委任)
第十九条 この法律に定めるもののほか、国籍の取得及び離脱に関する手続そ
の他この法律の施行に関し必要な事項は、法務省令で定める。
(罰則)
第二十条 第三条第一項の規定による届出をする場合において、虚偽の届出を
した者は、一年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。
2 前項の罪は、刑法(明治四十年法律第四十五号)第二条の例に従う。