一日一条の日本国憲法の解説。あわせて、自民党改憲案の問題点の考察。
8月16日は、第16条。
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日本国憲法
第十六条 何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。
自民党案
(請願をする権利)
第十六条 何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願をする権利を有する。
2 請願をした者は、そのためにいかなる差別待遇も受けない。
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憲法16条は、請願について規定しています。
この条文は、いまのところ、ほぼ同じとみてよいということですね。
日本国憲法で一項だったものが、二項に分けたということだけの違いでしょうか。
皆様のほうで、なにか問題があれば、教えてください。
自民案では、21条の表現の自由に対しての大幅な制限強化をしていることからしても、この16条の制限強化も考えているはずです。
今後、制限強化の文言が入らないか要注意です。
ところで、私達は、もっと「請願」を有効に使うべきと考えます。
声を、国、自治体、政治に反映させる重要な手段です!
政治家に頼んで、届けてもらうだけでなく、自らが届けることができます。
なお、憲法16条で、請願した者に差別的待遇をしてはならないと現行憲法で規定しているにもかかわらず、ある自治体が、署名者や署名活動者に対し、限度を超えて戸別訪問調査をして、不当に圧力を加えたという事件が実際に発生していることは、驚きです(岐阜地判平成22.11.10、名古屋高判平成22.4.27、最三小決平成24.10.9)。
憲法一条一条を侮ってはなりません。
権力機関は、容易に不当な圧力を住民に対して加えることがありえます。
憲法16条を受けて、請願を規定する法律は、
〇請願法
〇国会法(79~82条)
〇衆規(171~180条)
〇参規(162~172条)
〇自治法(124~125条)
で、請願権行使の手続きについて規定が設けられています。
参考までに、掲載します。
******各法律、該当部分の掲載******
〇請願法 全文
請願法
(昭和二十二年三月十三日法律第十三号)
第一条 請願については、別に法律の定める場合を除いては、この法律の定めるところによる。
第二条 請願は、請願者の氏名(法人の場合はその名称)及び住所(住所のない場合は居所)を記載し、文書でこれをしなければならない。
第三条 請願書は、請願の事項を所管する官公署にこれを提出しなければならない。天皇に対する請願書は、内閣にこれを提出しなければならない。
○2 請願の事項を所管する官公署が明らかでないときは、請願書は、これを内閣に提出することができる。
第四条 請願書が誤つて前条に規定する官公署以外の官公署に提出されたときは、その官公署は、請願者に正当な官公署を指示し、又は正当な官公署にその請願書を送付しなければならない。
第五条 この法律に適合する請願は、官公署において、これを受理し誠実に処理しなければならない。
第六条 何人も、請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。
附 則
この法律は、日本国憲法施行の日から、これを施行する。
〇国会法(79~82条)
第七十九条 各議院に請願しようとする者は、議員の紹介により請願書を提出しなければならない。
第八十条 請願は、各議院において委員会の審査を経た後これを議決する。
○2 委員会において、議院の会議に付するを要しないと決定した請願は、これを会議に付さない。但し、議員二十人以上の要求があるものは、これを会議に付さなければならない。
第八十一条 各議院において採択した請願で、内閣において措置するを適当と認めたものは、これを内閣に送付する。
○2 内閣は、前項の請願の処理の経過を毎年議院に報告しなければならない。
第八十二条 各議院は、各別に請願を受け互に干預しない。
〇衆規(171~180条)
第十一章 請願
第百七十一条 請願書には、請願者の住所氏名(法人の場合はその名称及び代表者の氏名)を記載しなければならない。
第百七十二条 請願書には、普通の邦文を用いなければならない。やむを得ず外国語を用いるときは、これに訳文を附けなければならない。
第百七十三条 請願を紹介する議員は、請願書の表紙に署名又は記名押印しなければならない。
第百七十四条 議長は、請願文書表を作成しこれを印刷して各議員に配付する。
•会期末に請願の文書表を作成するいとまがないときは、本書により審査する。(衆先390)
第百七十五条 請願文書表には、請願者の住所氏名、請願の要旨、紹介議員の氏名及び受理の年月日を記載しなければならない。
数人の連署による請願は、請願者某外何名と記載する。
同一議員の紹介による同一内容の請願が数件あるときは、請願者某外何名と記載する外その件数を記載する。
第百七十六条 請願は、文書表の配付と同時に議長がこれを適当の委員会に付託する。
第百七十七条 裁判官の罷免を求める請願については、議長は、これを委員会に付託しないで裁判官訴追委員会に送付する。
第百七十八条 委員会は、請願についてその審査の結果に従い左の区別をなし、議院に報告する。
一 議院の会議に付するを要するもの
二 議院の会議に付するを要しないもの
議院の会議に付するを要する請願については、なお、左の区別をして報告する。
一 採択すべきもの
二 不採択とすべきもの
採択すべきものの中、内閣に送付するを適当と認めるものについては、その旨を附記する。
第百七十九条 委員会において、議院の会議に付するを要しないと決定した請願について、議員二十人以上から休会中の期間を除いて委員会の報告の日から七日以内に会議に付する要求がないときは、委員会の決定が確定する。
第百八十条 陳情書その他のもので、議長が必要と認めたものは、これを適当の委員会に参考のため送付する。
〇参規(162~172条)
第11章 請願
第162条 請願書は、請願者の氏名(法人の場合はその名称)及び住所(住所のない場合は居所)を記載したものでなければならない。
第163条 法人を除いては、総代の名義による請願は、これを受理しない。
第164条 請願書の用語は平穏なものでなければならない。また、その提出は平穏になされなければならない。
第165条 議長は、請願文書表を作り印刷して、毎週一回、これを各議員に配付する。
請願文書表には、請願の趣旨、請願者の住所氏名、紹介議員の氏名及び受理の年月日を記載する。
第166条 請願は、請願文書表の配付と同時に、議長が、これを適当の委員会に付託する。
第167条 裁判官の罷免を求める請願については、議長は、これを委員会に付託しないで裁判官訴追委員会に送付する。
第168条 請願を紹介した議員は、委員会から要求があつたときは、請願の趣旨を説明しなければならない。
第169条 請願書は、議院の議決がなければ、これを印刷配付しない。
第170条 委員会は、審査の結果に従い、次の区別をして、議長に報告書を提出しなければならない。
1.採択すべきもの
2.不採択とすべきもの
採択すべきものについては、なお、次の区別をしなければならない。
1.内閣に送付するを要するもの
2.内閣に送付するを要しないもの
第171条 委員会において採択すべきものと決定した請願については、委員会は、前条第1項の報告書に付して意見書案を提出することができる。
第172条 委員会において議院の会議に付するを要しないと決定した請願については、委員会は、議長にその旨の報告書を提出しなければならない。
前項の場合において、報告書が提出された日から休会中の期間を除いて七日以内に、議員二十人以上から会議に付する要求がないときは、同項の決定が確定する。
第173条 削除
〇自治法(124~125条)
第百二十四条 普通地方公共団体の議会に請願しようとする者は、議員の紹介により請願書を提出しなければならない。
第百二十五条 普通地方公共団体の議会は、その採択した請願で当該普通地方公共団体の長、教育委員会、選挙管理委員会、人事委員会若しくは公平委員会、公安委員会、労働委員会、農業委員会又は監査委員その他法律に基づく委員会又は委員において措置することが適当と認めるものは、これらの者にこれを送付し、かつ、その請願の処理の経過及び結果の報告を請求することができる。
以上