中央区福祉保健部保育計画課計画調整係 御中
『中央区子ども・子育て支援事業計画』に対する意見書
住所:中央区月島3-30-3-2F
氏名:小坂 和輝(52歳、小児科医師)
電話番号:03-5547-1191
私は、「中央区子ども・子育て支援事業計画」(5カ年)に対する意見書を提出致します。ご検討の程、よろしくお願い申し上げます。
意見の内容:
第1、はじめに
『第二期中央区子ども・子育て支援事業計画』の「中間のまとめ」に対して、小児科医師の視点からパブリック・コメントを提出させていただきます。
『本計画』と同時に『中央区保健医療福祉計画』『中央区教育振興基本計画』も改定作業中です。せっかく同時期なので、それぞれに検討の成果を、お互いに反映して、計画の充実を図っていただければ幸いです。『中央区保健医療福祉計画』とは、上位下位の関係であり、反映は当然のことかもしれませんが、『教育振興基本計画』においては、その反映がなされることで、教育と福祉の壁を越えた施策の連携が行われることにつながりますので、大いに期待を致します。
記載にあたって、特に述べたい主旨の部分には下線を引いています。
第2、総論
1、『中央区保健医療福祉計画』『教育振興基本計画』への反映について
『第二期中央区子ども・子育て支援事業計画』の内容を、同時に改定作業中の『中央区保健医療福祉計画』『教育振興基本計画』へ反映がなされるようにお願いします。
『教育振興基本計画』との関係においても、障がいのある方の生涯教育、不登校・ひきこもり、幼・保・小の連携など関連する分野があるために、教育と福祉分野が強く連携できるように計画段階においても調整をすべきと考えます。
各論で、特に連携すべきところは、指摘をします。
2、今後の進め方について、2月に第6回子ども・子育て会議の開催の必要性について
2月6日第5回子ども・子育て会議でパブリックコメントの報告をし、パブリックコメントの内容を受けて中間報告の修正など議論を継続し、2月に第6回子ども・子育て会議を開催して最終報告の確定をし、3月下旬策定という流れが無理のない日程であると考えます。
2月には、中央区議会の福祉保健委員会においても、パブリックコメントへの区の考え方の報告をいただき、中間報告への最終的な修正を入れるべきであります。
3、審議経過の記載について
中間報告には、委員がどのような構成で、いつ、どのような内容を審議したかの経過の記載がありません。当然、最終報告ではなされるとは思いますが、推進委員会及び推進委員会地域福祉専門部会の委員、開催日程などの記載をお願いします。
あわせて、12月の福祉保健委員会で中間報告(案)の報告をしたこと及び2月の同委員会でパブリックコメントとそれに対する中央区の考え方について報告をしたこと(もし行った場合)の記載も落とさずお願いします。
4、コラムがあり、そこで、適切に用語解説がなされており、参照しやすくてよいと思います。
5、確保方策における、量だけではなく、質の確保について
確保方策においては、量だけではなく、質の確保をどうするかの視点も入れた記載をお願いします。
6、成育基本法の『新教育振興基本計画』など重要基本計画への反映
2018年12月小児科医待望の「成育過程にある者及びその保護者並びに妊産婦に対し必要な成育医療等を切れ目なく提供するための施策の総合的な推進に関する法律(成育基本法)」成立しました。2020年1月「成育医療等協議会」設置し、「成育医療等基本方針」2020年度中閣議決定されていくこととなっています。
成育基本法は、「健やか親子21」をさらに発展させた内容の法律です。
「(1)法的位置づけ」(4頁)において、反映させるべき法律として、その一つに成育基本法の名称の記載を、お願い致します。
第3、各論
●1、『ゆりのき』発達相談機能、『育ちのサポートカルテ』について(障害児施策の取組(137-140頁))
① 『子ども発達支援センター ゆりのき』において、「発達障害」の診断名の有無に関わらず、ちょっとした親御さんのご不安を解消するにあたって相談対応がなされることをお願いします。
②相談までの待つ期間は、初めての相談の待ち時間は、極力短くなるようにお願いします(二回目以降はともかく)。以前、初めての相談の場合、長くて1ヶ月とお伺いしていますが、それ以上はお待ちにならないように、早期の対応をお願いします。
③『育ちのサポートカルテ』が、発行が、80名になされていると伺っています。ご希望されるかた全てに発行の対応をお願いします。その発行に当たっては、「幼稚園・保育園から小学校に上がる際に、用いることを承諾の上発行する」などという条件を付さずに作りたいと言う親御さんの意思に寄り添った作成をお願いします。小学校に上がる際にもちろん用いることが有効だとは医学的に考えますが、就学の際に、小学校への情報提供として用いるかどうかをその際に確認すれば済むことであり、先入観なく判断してほしいという親御さんの希望も組む必要もあると考えます。切れ目のない支援という趣旨がかなわないかもしれませんが、それでも、作らないよりは作成をして、関係機関の横の連携強化を図っていくべきと考えます。
④『育ちのサポートカルテ』が、関係機関の横の連携のために有効活用されるようにお願いいたします。その際に、原本の保管は、ゆりのきで行うにしても、親御さんに複製をお持ちいただき、かかりつけ小児科医の受診の際にご提示いただき、その子の育ちを医療面からもアドバイスを入れていければよいと考えます。医師会等を通じて、『育ちのサポートカルテ』の活用について横の連携に携わる医師などへの更なる啓蒙をお願いします。
⑤教育や保育現場において子ども達の苦手な能力を伸ばすためのプログラムを、児童精神科医と連携し積極的な導入に期待を致します。例えば、読み書き障害(ディスレクシア)に対する「T式ひらがな音読支援」など。こちらに関しては、同時改定作業中の『教育振興基本計画』と連携をとれるような記載をお願いします。
●2、医療的ケア児就学コーディネーター配置と保育・就学ニーズへの対応について
①「医療的ケア児者の支援」を障害児支援事業において記載(78頁、137頁)を下さっていることに感謝申し上げます。「医療的ケア児就学コーディネーター」も配置されました。今後は、最終年度の目標として、「保育・就学ニーズへの対応」を入れていただけますようにお願いします。その際、看護師の配置についても、ケアの内容・頻度、主治医等の意見を踏まえ適切に判断がなされることをお願い致します。こちらに関しては、同時改定作業中の『教育振興基本計画』と連携をとれるような記載をお願いします。
②医療的ケア児29人おられます(2019.10月段階)。今後も、医療的ケア児者の全員のかたを把握し、ニーズへの対応をお願い致します。
③『医療的ケア児も含めた重症心身障害児放課後等デイサービス』も再スタートし今後の展開に期待します。放課後までの時間における、医療的ケア児を含めた重症心身障害児の児童発達支援ができるのであれば、その対応もお願いします。
④医療的ケア児の兄弟が、優先して保育園に入れるようにすべきと考えます。そのことにより、医療的ケア児への日々のケアの親御さんの負担が減り、ケアの内容も充実につながると考えます。
⑤医療的ケア児が、「居宅訪問型保育事業」を受けていた際にも、区立保育園などと提携し、集団保育に参加が出来る機会も作れるようにお願いします。
●3、「ICTの活用による業務の効率化」追記、AI導入で保育園選考の時短について
主な取組・事業に、「ICTの活用による業務の効率化」を付け加えることをお願いします。
すなわち、保育園の申込者を各保育園に割り振る選考に現況延べ400時間(2018年)要しているとのことでした。人口知能(AI)で時短し、結果通知の早期化、労力・人件費の節減をお願いします。
●4、キャンセル待ちをせず全てのひとが利用可能な病児保育、断らない病児保育
①『子ども・子育て支援事業計画』では、一日あたり定員が、一日平均の利用者予測を上回り、病児保育の十分なサービス量の確保ができていると結論がだされています(114頁)。しかし、子どもの病気は一斉に発症するため、平均値は現実的に意味をなしません。一日平均の考え方をあらためることをお願いします。
②区の病児・病後児保育だけではなく、民間の病児保育施設とのさらなる連携や、地域の小児科医によるバックアップ体制整備の上で、ファミリーサポートの方等により、軽い風邪の病後児をお預かりし地域で役割分担をすることで、〝断らない〟病児保育を、中央区内で構築できるのではないでしょうか。民間の病児保育施設として、『はぐみっく病児・病後児保育室』、『NPOフローレンス』『小坂こども元気クリニック・病児保育室』など病児保育事業を実施する施設・団体があり、これら地域資源も加えた検討をお願いいたします。他の項目では、区営、区委託だけではなく、民間もきちんと現状把握をされた箇所があるにもかかわらず、病児・病後児保育事業では、区の委託だけの記載は、明らかに現状把握が足りておりません。区作成の資料を添付(別添)致します。
●5、兄弟の一方が病気になり看病で仕事を休んだ場合における、病気でない児の保育園への登園について
兄弟の一方が病気になり看病で仕事を休んだ場合における、病気でない児の保育園への登園について、お預かりを拒否することは、合理的な理由のない保育の拒否ではないでしょうか(参照、②保育を必要とする事由10頁。)
●6、がん・難病治療と仕事との両立、ご家族への包括的な支援の項目の追加
「基本施策2-3特に配慮を必要とする子どもと家庭への支援」において、がん・難病治療のご家庭への支援を追加することを要望します。
その上で、
①「がん対策基本法」が2006年成立後、国は『がん対策推進基本計画(第3期)』策定、都は『東京都がん対策推進計画(第二次改定)』策定。がんや難病に親御さんがなられたご家庭を地域と専門機関が連携をして、仕事との両立やお子さんの学校・保育園の継続などをしっかりと地域で支え、ご本人は治療に専念できるように包括的な支援体制の構築をお願いします。
②区にも「両立支援コーディネーター」(独立行政法人労働者健康安全機構)配置を期待します。
③がん治療後に免疫力低下した子へのワクチン再接種費助成を、現在、中央区は検討中とのことですが、よろしくお願い致します。
④「AYA世代がん患者の生活就労支援」の記載も、用語解説含め、お願いします。
●7、なんでも相談できる総合窓口を身近な地域に開設
「1、多様な子育て支援サービスの提供」になんでも相談できる総合窓口の開設を追加願います。
『保健医療福祉計画』の基本理念は、「みんなが支えあい、自分らしく暮らせるまち・中央区」。身近な地域で相談を包括的に受け止める拠点づくりを進めるとしています(同計画33頁)。2018年4月の社会福祉法改正にいち早く呼応した取組みであり感謝申し上げます。
「8050問題」、老々介護、認知症(3171人介護認定)、自殺(31件)予防、児童虐待(130件)など難しい福祉課題へのアプローチが総合窓口を通じ迅速適切になされることに期待致します。
●8、「こどもの健康推進」おいて、「健康教育の推進」を追加及び健康教育の充実について
健康に対する情報提供、教育が重要です。「こどもの健康推進」において、主な事業に「健康教育の推進」を追加をお願いします。
その際、医療者と連携した学校におけるがん教育、健康教育の充実に期待致します。
こちらに関しては、同時改定作業中の『教育振興基本計画』と連携をとれるような記載をお願いします。
●9、妊婦の方、障害のある方全員の『個別避難計画』策定と福祉避難所整備
「災害時要配慮者への支援」の取組が挙げられており、感謝いたします(62頁)。その取り組み内容に、『個別避難計画』の策定を追加いただくようにお願いします。
その上で、
①『地域防災計画(平成27年修正)』改定作業が開始されます。妊婦の方や障がいのある方など災害時要配慮者の安全確保と避難の手順を示す『個別避難計画』の一人一人の個々の事情に合わせた策定が最重要課題の一つと考えます。『個別避難計画』の内容は、ⅰ発災直後の安否確認担当者名、ⅱ福祉避難所の施設名、ⅲ避難所への移動支援者名とルート、ⅳ電源が必要な場合の確保方法、ⅴ『個別避難計画』記載内容を責任を持って更新をしていく担当者など記載を(避難訓練を行う中で記載の充実を図る必要有り)すべきと考えます。具体的な『個別避難計画』のフォーマットの提示をお願いします。
②「避難行動要支援者」「災害時要援護者」全てのかたのへの実際の『個別避難計画』の作成をお願いします。
●10、幼保無償化で質を伴った量の確保を
①2019年10月より、幼保無償化が開始。これを契機に子どもの預かりの場の安全性の確保の検討をお願いします。
②幼稚園類似施設への幼児教育相当部分の無償化の拡大をお願いします。
③2021年「阪本子ども園」開設及び2023年「晴海四丁目認定こども園」開設と「幼保連携型認定こども園」が導入、区立幼稚園へも広げることで子どもの保育の場の拡大をお願い致します。特に、休園中の幼稚園である常盤幼稚園では早急な対応をお願い致します。
④預かり保育におけるあずかり時間の延長の検討をお願い致します。
●11、「教育・保育環境の整備」へ「共生ケアの実施」の追加について
「教育・保育環境の整備」に、施策の方向性として、「共生ケアの推進」を追加願います。
その上で、
①新設桜川複合施設では、高齢者施設と保育所のイベントの時だけではなく、毎日のどこかで共通プログラムを盛り込み日々の〝共生ケア〟実施に期待致します。
②学校においてもご高齢の方等がその経験を活かした子ども達との交流・学びの場を積極的に作っていけますようにお願い申し上げます。こちらに関しては、同時改定作業中の『教育振興基本計画』と連携をとれるような記載をお願いします。
●12、予防医療充実へ10月ロタワクチン無料化、子宮頸がんワクチンの情報提供
①予防接種で防げる病気は防いで行くことが基本であり、小児インフルエンザワクチンへの助成なども検討をお願いします。
②HPVワクチンには、まずは正確な情報伝達をお願いします。
●13、児童相談所の早期設置を、子ども家庭支援センターと各機関との連携協定
①区でも設置可能となり、中央区も目標年を定めた準備に期待致します。「児童虐待防止対策」(79頁)に、「児童相談所の設置」の追加をお願いします。
②区と各機関との連携協定拡大をお願いします。警察との協定は結ばれましたが、都の児相と警察と中央区の三者協定をお願い致します。協定を結んでいく旨も、記載をお願いします。
●14、病院など入院中における学習機会の保障
病室などとICTでつないだ『同時双方向型授業配信』が出席扱いとなったことに伴い、それら技術を用いた教育機会の提供拡大を、「教育・保育環境の整備」(43頁)の部分で追加記載をお願いします。こちらに関しては、同時改定作業中の『教育振興基本計画』と連携をとれるような記載をお願いします。
●15、不登校の子ども達へのアセスメント
①不登校小23人中61人合計84人(2019.10月)。『新教育振興基本計画』では、「不登校未然防止に向けた一人一人のアセスメントの推進」が新規の取組として挙げられています。どうか、不登校をされている子ども達によりそったアセスメントを実施し、一人一人がたとえ学校に行けていなくとも、充実した時間が送られているのかどうか、丁寧な分析と課題の解決をお願いします。「ひきこもり支援」の追加記載を「基本施策2-3特に配慮を必要とする子どもと家庭への支援」にお願いします。こちらに関しては、同時改定作業中の『教育振興基本計画』と連携をとれるような記載をお願いします。
②ICTを用いて自宅学習の充実が図られるならその手立ても積極的に導入をお願いします。
以上
別添: