「助けて」が言えないまま、行政につながることなく一人で抱え込んでしまっているかたへ、どのようにアプローチをしていくことができるのか。
医療においても、区政においても、大きな大きな課題です。
実際にたいへん難しかったケースが、報道されています。
きっかけとなった事件は、2020年11月自宅で一人で双子を死産した女性が、地域の病院を訪れたところ、病院側が通報して死体遺棄罪が問われたというもの。
遺体をタオルに包んで部屋にあった段ボール箱に入れ、お詫びの言葉などを書いた手紙を添えた。封をした箱はさらに別の段ボール箱に入れ、自室の棚に置いた。翌日に死産を医師に伝えたという。
死者を悼む思いなど、「社会の敬虔感情や国民の宗教感情」を害する行為を罰する「死体遺棄罪」が、一審熊本地裁、二審福岡高裁において成立を認める判決が出されました。
最高裁の判断は、24日に出されるとのこと。(無罪の可能性もあるとの報道)
「病院以外で孤立出産し、死産や流産した後の対応が罪の問われるケースが相次いでいる」との記事の記載は、まさにその通りだと思います。
児童虐待死亡件数の数として、最も多いのは、「0カ月0日」のものであり、妊婦健診のための受診もないため産婦人科にかかっていないし、小児科にもこの段階ではかかるためのきっかけに乏しく、産婦人科、小児科両者ともにアプローチが難しいと議論されるています。
でもこの段階で、いつもの、あるいは、かつて子どもの頃かかっていたかかりつけの小児科医を思い出して、受診されて相談してみることは、ありだと思っています!その相談さえあれば、相談をうけた小児科医のネットワークにより、理解のある産婦人科と連携体制は構築できると考えます。
背景を、当該記事は分析されています。
子どものときにひどい虐待や親からの過干渉を受けていたり、何らかの障害を抱えていたりするひとが少なくない。
一番頼れるはずの自分の母親と関係が築けず、妊娠相手の男性にも見捨てられるなどしているがために、孤立出産に至っています。
自分で育てられない子を親が匿名で預ける「こうのとりのゆりかご」を国内で初めて開設した熊本市の慈恵病院の蓮田健院長のインタビューが掲載されていました。
誰にも相談できず、追い詰められてしまう妊婦に対する支援の強化の必要性について、蓮田氏は、「女性の気持ちを理解し、匿名での相談や健診、出産、預け入れに対応するといった支援の仕組みを広げることが大事」と話されています。
①そばにいる誰かの気づきとサポート、②なんかふとしたきっかけでSNS相談につながる、③子どもの頃の健康教育を思い出して相談してみようという気持ちが湧いた、など、なんとかできないかと思いながら、「誰一人取り残さない中央区へ」(同箇所のみ抜粋)という課題として、ちょうど先日発行致した区政報告2023年春号にも記載をしました。
特に、子どもの頃からの健康教育(プレコンセプション教育、包括的性教育はじめ)の必要性を強く感じます。小児科医としてその一端を担うべきだと考えています。
********区政報告 2023年春号 抜粋******
https://blog.goo.ne.jp/kodomogenki/e/b94b260358d787a30c1efe3b813d1780
4、誰一人取り残さない中央区へ
児童虐待相談は、コロナ前から1.5倍約100件増の300件近くあります。一時保護所で保護されている児童・生徒が「在籍学校に通いたい」と言っていると児童相談所から学校が相談を受けた場合の対応について、教育委員会から本人に寄り添った個別具体的な対応を行っていただける旨のご答弁がなされ、保護された児童・生徒の意見表明の内容が実現されることを確認しました。
児童虐待死が一番多いのは「0ヶ月0日」であり、それは、本予算で取り組みが強化される伴走型支援につながっていない妊婦です。そのような「助けて」が言えない区民にいかに支援の手をさしのべていけるのか。伴走型支援のメニューの多様化とともに、「男女平等センターブーケ21」(本年4月1日から新名称、旧「女性センター」)で取り組むSNS相談がひとつの手段として届くことを期待するところです。ヤングケアラー、ひきこもり、自死などの問題でもSNS相談も手段の一つとして届きますように。
教育費で確認致しましたが、クラスの騒がしさやいじめなどかかりつけ医が相談を受けた場合、スクールソーシャルワーカー(令和5年度1名増員し3名体制へ)を介し学校と解決に向けた連携体制の構築ができるとのことであり、対応をどうかよろしくお願い致します。
また、『個別避難計画』を作成すべき避難行動要支援者7632名のうち同計画を立案できているのは昨年11月段階で17名でした。発災時に、避難ができているかをICT技術を用いて全員の要支援者の避難状況の把握をすることも早急に進めることが必要です。
***********朝日新聞2023.3.23*******