札幌の知人と久しぶりに飲みました。
彼は海外での勤務経験も豊富で、いろいろな場面に出くわして人生経験が豊かな方です。
特に空港で出迎えや見送りの際に、その人の持つ人間性が顕著に出ることがあって興味深かったと言います。
「たとえばどんな方がいましたか?」
「そうですね、アメリカにいた時に日本でも超一流と言われる某家電メーカーの社長さんを出迎えるということがありました。迎えに行ってみると、何やら入管のところでその方がもめているのが見えました」
「ははあ」
「そこで、『どうしました?』と訊ねてみると、入国管理官が『出入国カードが読めない』と言っていました。見ると、出入国カードの名前を書く欄に漢字でご本人の名前を書き込んでいるんです。アメリカの入国管理官ですから、そこはローマ字で書かないと読めるわけがありませんよね」
「それは無理でしょう」
「で、『そこはローマ字で書かれた方が良いでしょう』と言うと、その方は、『カードには漢字で氏名と書いてあるじゃないか。だから漢字で書いたんだ』と言うんです。心の中では(え?何を言っているの?)という状態でしたが、なんとかなだめてその場は事なきを得ましたが、そこを離れて車へ向かう途中でもまだなにやらご不満のようでした。こういう方がトップの企業ってどうなるんだろう?と思いました。案の定、その後から今に至っても業績は芳しくないようですがね」
◆ ◆ ◆
「また、それと対照的な場面にも遭遇しましたよ」
「はあ、それはどんな方ですか?」
「2001年から4年間、アメリカの駐日大使として日本で活躍されたハワード・ベーカーさんです。彼は駐日大使を終えてアメリカへ戻ってからも各方面で活躍されましたが、その彼をアメリカの空港から日本へ行くときに見送りに行ったのです」
「はい」
「すると、税関でなにやら言葉を交わしていたのですが、どうやら『税関で持ち出すものを申告するように』と言われたらしいのです。後から聞いたら、たかだか数百ドルくらいのものが引っかかったようなのです。そしてそのせいで40分くらいも列に並んでおられました」
「なるほど」
「こちらからすれば政治的な大物だという印象があるので、『なんだかひどいですね』と言ったのですが、彼がそのときに言ったのは、"He did a good job(かれは良い仕事をした)"という一言でした。政治的な大物だったら、『何とかしろ』というかと思いきや、こちらが恥じ入る思いでしたよ」
マスコミなどいない、誰も見ていないと思うようなところでの発言や態度こそが、その人の人格や人間力を顕著に表します。
人が見ていなくても、お天道様が見ているのです。
「志は高く腰低く」これこそが、目指すべき人間像。人間、こうありたいものですね。
今日は良い話が聴けました。