職場の技術士会でミニ講演をしました。
いただいたお題は、「地方自治体の中から見た公共事業と開発行政」でしたが、私からのプレゼンは、「地方自治体にとって公共事業で作られるインフラによって、地域の姿は変わる」という釧路での事例紹介です。
まずは釧路川。
原始河川だった釧路川は勾配が小さく幅もないためにしょっちゅう洪水を起こしていましたが、大正時代に起きた大洪水を契機に本格的な治水計画を整えました。
その内容は、釧路川を岩保木地区で分水し、市の西側に川幅百間の新しい水路を開削するというもので、これが今の新釧路川になっています。
当時は旧の釧路川を木材運搬など舟運として使おうと、岩保木に水門を作りましたが、その後鉄道が発達したために舟運は使われなくなりましたが、そのため川は残りました。
国はこれを北海道拓殖計画として推進し、新釧路側が完成し、治水事業としては完了しました。
私が面白いと思ったのは、この事業のおかげで洪水が防止されるというインフラが整備されましたが、残された旧の釧路川は上流で増水は新釧路川に流されるために、洪水のない川となりました。
そのために、都市の中に堤防のない川という日本では珍しい風景が誕生したのです。
あまり気付かないところで、人の力が風景を作り上げた事例だと思います。
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また、新しい耐震岸壁ができたことで、釧路はクルーズ観光のおもてなしのすばらしいマチになりました。
それまでの貧相な停泊地から、都市の中に豪華客船が滑り込むように入って来て、都会が船を迎え入れるマチです。
その他にも、高速道路や空港、国際バルク戦略港湾などができること、できたことで、地域は発展の姿を変えてきました。
作るのに時間もお金もかかる公共インフラは、社会の未来をある程度予想しながら作らなくてはいけません。
しかし、子孫によりよい社会を残すことは現代の私たちにしかできません。
過去の遺産を今の我々がむさぼるだけではなく、しっかりとした社会を後代に残していきたいものです。