アジアで行ったことのない国は残り4つ、フィリピン、ブルネイ、東ティモールに北朝鮮。
その中で一番敷居の低いブルネイに行こうと思い立ったが、せっかくなのでこれもまた乗ったことのないロイヤルブルネイ航空で行くことにした。
調べてみると「ロイヤル」と名が付く割に航空運賃は安くて、成田からブルネイ、その先のクチンまで含めてもエコノミーは43,000円弱とLCCなみ。
今年はヨーロッパ行きで贅沢をしているので今回はお安く上げようと思っていたところ、出発の1週間前になってアップグレードのお誘いが来た。
最低入札額が450BDN(約50,000円)とエコノミー運賃より高いが、こんなことでもなければ乗ることもあるまいと入札した所、2日前にあっさりと成功。
というわけでおそらくは最初で最後であろうロイヤルブルネイ航空ビジネスクラス。
成田からの飛行機はA320 neo。
ロイヤルブルネイは長距離用にB787も飛ばしていて、こちらはフルフラットになる座席だが、成田からブルネイは6時間の中距離なので
こんな昔ながらのシート。
4席x3列の12席だが、乗り込んでみたら自分ともう一人、ブルネイ人の女性しかいなくて、アップグレードを申し込むもの好きは他にいなかったらしい。
席には枕と毛布、ヘッドフォンとアメニティーポーチが置かれていて、あとからスリッパももらえた。
ポーチの中身はこんな感じ。
クリームとリップバームはタイのHarnnブランド。悪くない。
飛び立つ前にはイスラムのお祈りが流れる。
さらにフライトマップでは常にメッカの方角がわかり
女性FAさんの制服はこの通り(写真は機内誌の表紙)。
聞きしに勝る厳格なムスリム、なので飛び立って少しすると飲み物のサービスがあるが、選択肢にアルコールはない。
自分はまったくの下戸なので何の不満もないが、ビジネスでいいお酒を期待する向きには価値がないだろう。
11:45出発なのですぐに昼食。
テーブルには白いクロスが敷かれて、前菜は選択肢なしの和食。
発泡スチロールの箱に入った煮物類は少し前のJLみたい。
メインは牛、鶏、パスタの3択だがブルネイらしいものはなかったのでチキンに。
トマトソースのかかった鶏もも肉の火入れは完璧でジューシーだったが、味は塩がきつかった。
デザートのフォンダンショコラもものすごく濃厚で、半分でギブアップ。
ブルネイ人は濃い味が好きなのだろうか。
この食事をいただきながら映画を一本。
Mothers' Instinct
今年の夏にアメリカで公開された映画で、日本での上映はまだのよう。
舞台は1960年代のアメリカの中流住宅地。
アン・ハサウェイとジェシカ・チャスティンは同い年の息子を持つ専業主婦のお隣さん同士。
家族ぐるみで仲良くしていたが、アンの息子が事故死してからどちらの奥さんも精神不安定になり家庭が崩壊していく。
果たしてどちらの奥さんが本当におかしいのか、というお話。
二人の女優の演技合戦なのでどちらも十分おかしく見える。ラストはまあ、予想通りだったけれど、もうひとひねりあるかと思ったのでちょっとがっかり。
一番興味深いのは60年代ファッションで、昔は普段からこんなにきっちりしていたのね、と懐かしい。
この後は見たい映画がないのでシンガポールのグルメ番組を見ていたが、びっくりしたのは「ポーク」という言葉がすべて消音されていたこと。他の中東系航空会社はどうだっただろうか、ここまで徹底しているのは初めてのような気がする。
後はスナックなどのサービスもなく、あっさりとブルネイに到着。
「ロイヤル」という名前から期待するほどのサービスはなかったが、気持ちよく過ごせた6時間だった。
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一本映画を見に行くと予告編につられてまた映画館に足を運ぶことになる。
先日の「リトル・ダンサー」からバレエつながりの映画を見に行ってしまった。
「ネネ-エトワールに憧れて」
今回はフランス映画。パリのオペラ座バレエ学校に黒人で労働者階級の女の子が入学して苦労する、というお話。
いかにもなストーリーで、まあ予想通りの展開ではあるのだが、今回は正直大外れ。
まずダメなのが主役の女の子。実際にバレエをやっているのだろう体の動きを見せ、ヒップホップなどに合わせて即興で踊る場面はいいのだが、肝心のバレエのシーンとなると圧倒的にうまくて主席で入学したという設定なのに同級生たちの方がうまく見える。
クラシックバレエの世界では有色人種は不利とわかっている、それでもなぜクラシックを踊りたいのか、その動機も熱意も伝わらない。
さらに先生を差し置いて同級生に技術的な「アドバイス」までしてしまう。これではいくら自己主張の強いフランスでも出自や人種に関係なく嫌われるのは当たり前だろう。
バレエ学校の校長は黒人であるネネの入学に反対する。それには実は理由があって、本人が自らの出自を隠していたからなのだが、これも相当に無理があって、そこから改心することになる事件もあまりにも唐突。
結局この映画の主題はフランスにおける移民の苦労らしく、監督ラムジ・ベン・スリマンの名前からもおそらくアラブ系なのだろう。
その主題はいいが、バレエに対する思い入れがまったく感じられないのが一番の問題点。わざわざオペラ座バレエ学校を舞台にしながら、バレエの魅力がまったく描かれていない。
久しぶりにダメダメな映画にお金を払ってしまった。
と、これ1本だったら本当に無駄足になる所だったが、幸いにして続けてもう一本、同じ恵比寿ガーデンシネマで見ることにしていた。
「Dog Days 君といつまでも」
こちらは韓国映画。ある動物病院を中心に、そこに縁のある犬とその飼い主たち数組の話が同時並行で描かれていく、これもよくあると言えばよくあるわかりやすい設定。
面白かったのは主役であるユ・へジンという男優さん。この人、いかにもヤクザ役などの似合う御面相なのだが、ずいぶん前に「ラッキー」という映画で殺し屋役をやった時、女性たちが「男前だわ」という場面があってびっくりした。今回は人相が悪いからと大切なクライアントへのプレゼンからはずされる設定になっていて、やっぱり韓国でもそうよね、とほっとした(笑)次第。が、もちろん顔は悪いが純情ないい人の役。うまいのは言うまでもない。
韓国の役者さんたちは老若男女みなさんうまく、小型から大型まで登場する犬たちも芸達者。
飛行機の中で見ればちょうどいいぐらいの小品だが、気持ちよく見られてお口直し。
恵比寿ガーデンプレイスの中庭には季節柄のクリスマスツリーの他に巨大なバカラのシャンデリアが出現。
そこで写真を撮っていたのはさすが恵比寿、ペットシッターさんたちだった。
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映画ブログのすねこすりさんがあふれる愛でこの映画を語っているのに刺激されて、久しぶりに映画館に足を運んでしまった。
「リトル・ダンサー」 Billy Elliot
やって来たのは恵比寿ガーデンシネマ。
この映画館に入ったのは2度目だろうか。小さいけれど椅子がフカフカで座り心地よし。
「リトル・ダンサー」は2000年の作品。以前に見たことがあるが映画館に足を運んだ覚えはないのでおそらく機内で見たのだろう。24年も前の割に結構よく覚えているのはそれだけ印象が強かった証拠。
舞台はイギリスの炭鉱町。「フル・モンティ」とかうらぶれた炭鉱町の話は珍しくはなくて、これは階級差のあるイギリスで労働者階級を描くのに一番わかりやすいからではないだろうか。なにしろアクセント一つで出身地どころか階級までわかってしまう国、そこから抜け出すのがいかに難しいか。
主人公は12才、典型的炭鉱労働者の父からボクシングを習うことを強制されているが、ひょんなことから覗いたバレエのレッスンに興味を惹かれてこっそり習い始める。
この主人公を演じているジェイミー・ベル、ダンスの経験があるので選ばれたのだろうが、ほぼ全編出ずっぱりで踊りまくり、感情を爆発させて大活躍。
ひどく幼く見えたり、かと思うと妙に大人っぽい表情になったり、そういう年ごろなのだろう、まさに子供から大人への過渡期の一瞬。撮影中に背も伸びたのではないかと思われる節もあり、いろいろな意味でぐんぐん成長していたのだろう。
今回再見して驚いたのはこんなにダンス場面が多かったかということ。ビリーの感情が音楽に合わせてダンスで表現されるのだから、これは主人公が歌わないだけでまんまミュージカル。
監督は演劇畑の出身だそうだが、ダンス場面はカメラワークやカット割りで見事に映画の表現になっている。
役者はBBCのミステリーでよく被害者の家族(笑)など演じているお父さんをはじめ、認知症っぽいおばあちゃんもいいのだが、今回一番印象に残ったのはバレエの先生。
町でこそ中流だがぱっとしない田舎町、亭主ともおそらくうまく行っていなくて娘の将来も知れている。
教えている女の子たちもどうせものにはならないとわかっている所へ有望な男の子が転がり込んでくる。
将来のない炭鉱からなんとか抜け出させてやりたいとがんばる先生。しかしビリーが最後の挨拶に来ると過去など振り返るな、前だけ見ろ、とばかり素っ気ない対応。
大げさでない表現でこういうことをすべて伝えてしまう脚本や役者がさすがの上手さ。
20数年ぶりに見てもまったく古さを感じさせない映画、見に行ってよかった!
映画館だけでなく、恵比寿のガーデンプレイスに行ったのもすごく久しぶりで、もうお上りさん状態。
北海道のよつ葉乳業のショップなどできていて、思わずアイスクリームを持ち帰り。
ドライアイスと保冷バッグも無料で付けてくれるサービスの良さ。
今度はバターを買いに行こう。
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ソウルからローマへは13時間のフライト。
ご飯を食べ、ひと眠りしても時間はある。
せっかく韓国の飛行機に乗っているので韓国映画を見ることにした。
そもそもハリウッド映画のラインナップが充実していなくて、韓国映画だけが選択肢豊富なのだが、それぞれの情報は少なくて制作年度もわからず、すべて英語字幕なのもつらい。
往路でまず選択したのはこちら:
「エクストリーム・ジョブ」
2019年制作の映画でイ・ビョンホンの名前が見えたので選んだのだが、イ・ビョンホンは主演ではなく、監督の名前だった。韓国はカタカナにすると同じような名前が多くて紛らわしい。
お話は半端者を集めた麻薬捜査班が大物ディーラーを捕まえようと張り込みをするのだが、成り行きからチキン屋を始めることになってしまって、そのチキンが大ヒット、警察業務よりチキン屋稼業が忙しくなってしまうというコメディー。
韓ドラを見ていれば必ず出てくるチキン、というだけでツボ。
落ちこぼれと言われているメンバーがそれぞれ実はすごい経歴だったというオチも良く、なにげに気に入っている元ミス・コリアのイ・ハニが化粧っけもなくアクションをこなしているのも気に入った。
お気楽に見られて〇。
次に見たのは時代劇。
「私は王である!」
タイトルは王となっているが、世宗大王が王子だった頃のお話。
宮廷生活が窮屈で逃げ出したところ、そっくりな顔の奴婢と入れ替わることになってしまい、庶民の実態を見てその後立派な王様になったという、ドラマでもおなじみの設定。
主演はチュ・ジフンだが、こちらにもイ・ハニがあまり大きくない役で登場。扱いが小さいな、と思ったら2013年とかなり前の映画だった。
復路では機材が古くて往路より選択肢が少なく、やっと選んだのはこちら:
「テロ、ライブ」
テレビの人気キャスターからスキャンダルでラジオDJに降格されたアナウンサーの番組に橋の爆破予告をする電話がかかってくる。これを視聴率を上げるために警察にも連絡せず、独占スクープにしようとするアナウンサーとテレビ局幹部たちの話。
ソウルの大きな橋は爆破されて死者は出るわ、ビルは爆破されて傾くわ、韓国映画の暴力描写は容赦ない。
これも2013年と古い映画で、テロの描写はどうやらアメリカの9・11にインスパイアされたよう。
アナウンサー役のハ・ジョンウはでずっぱりでほぼ電話でのやり取りに終始する。これだけで映画をもたせてしまうのだからさすが韓国の俳優さんはうまい。
緊張感が最後まで持続するが、テロの犯人や動機、ラストなどは結構むちゃくちゃ。こういうところも韓国映画らしいかも。
最後の一本は何とか最後まで見終わることができたこれ:
「担保」
韓ドラでよく悪役を演じているソン・ドンヨルというおじさんが主演、借金取りだけれど実は人情に厚くて優しいという得意の役回り。
この借金取りと子分が朝鮮系中国人で不法滞在をしている母親から借金の担保として子供を取り上げる。が母親は中国に強制送還され、おじさん二人で子供と暮らすうちに互いに心を寄せ合うという、これもよくある設定。
とは言え韓国あるあるで子役の女の子が本当にかわいくてうまい。この子が成長してハ・ジウォンになるのだが、あまりに若いのでこれも古い映画かと思ったらこれは2020年の作品。女子大生はともかく、駆け出し通訳の役に違和感がないとは、これぞ韓国美容マジックか。
ラストは甘いが、こういうお話は定石で終わるのがいいのだ。
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アルバニアまでの直行便はない。
調べるとローマ経由が良さそうだが、アリタリア改めITA Airは高いわりにあまり快適そうではない。
そこでビジネス必須の腰痛持ちの友人のため、ソウル経由のアシアナ航空を選んでみた。
なにしろヨーロッパ行きのビジネスクラスとしては中国系の次に安く、来年には大韓航空に吸収されてなくなるはずなので最初で最後の機会だ。
始まりは羽田空港から、深夜も深夜、午前1時半の出発。
小さなA321neoの機材で、ビジネスクラスは8席のみ。
古い座席でモニターも付いていなかったと思うが、深夜のわずか2時間半の飛行なので全く問題ない。
この時間、この短いフライトの間になんと機内食が出た。
お腹が空いているはずもないが、どうせ眠れないからと好奇心でもらってみると
この五穀鶏粥が薄味ですごくおいしい。
時間を考えてなんとか半分にしておいたが、今回の機内食でたぶんこれが一番おいしかった。
ソウルからローマへは昼12:20の出発。
機材はB777-200で
ビジネスクラスは1-2-1配列。9割は座席が埋まった。
ビジネススマーティウムと称するこの座席、座って足を延ばすと身長160㎝で前のオットマンになんとかかかとが届く。もちろんフルフラットになって、モニターはタッチも可能、反応もなかなか良い。
座席にはスリッパとアイグナーのアメニティ・ポーチ。薄型の造りはタブレット入れにするためだろうか。帰路にはベージュ色をもらった。
ウェルカムドリンクのサービスはなく、飛び立ってほどなく昼食の始まり。
友人は韓国食をオーダーしたが、自分の時にはもうないと言われて、しかたなく洋食選択。
そこで両方を順番にお見せすると
洋食のアミューズはカニのパイ、韓食はそば粉クレープ。
たっぷりのサラダはトロリーでやってきて
韓食はケールで牛肉や野菜を巻いたもの。
濃厚なマッシュルーム・スープに対して、韓食はスープのような牛乳粥。
そして洋食のメインは
韓国風のソースのかかったチキン。ご飯によく合って食べやすい。
韓国食は実はこれが食べてみたかったアシアナ自慢のサンパプ。
葉物野菜にご飯と肉、味噌だれを巻いて食べるものだが、きっちり巻かれた野菜は開くと驚くほど多種類が入っている。ただしこの料理、ニンニク嫌いの友人には匂いがきつく、肉も堅くて気に入らなかったらしい。
韓食のデザートは草餅とクルミであっさり。洋食の方にはチーズプレートが来たが、このチーズはすごくおいしかった。
そして最後は両方にグレープフルーツ・ムースが出てお腹いっぱい。
と食べ終わった直後に、「次の食事は何にしますか」とCAがメニューを見せながら聞いてくる。
お腹いっぱいで考えたくないが、適当に選ぶと先の食事から3時間経っていただろうか、もう次の食事サービスが始まってびっくり。
鴨の燻製のサラダに、これは醤油味のおこわのようなものだっただろうか。
最後はチョコレートケーキまでがっつり。
韓国時間では午後6時過ぎだったので夕食ということなのだろうが、二食の間が短すぎ、この後の6時間、着陸前にも何も出なかったのは異色。
食事はなかなかおいしかったが、この二食のおかげで友人ともども胃の調子をくずし、我々はこれを「アシアナの呪い」と呼んでいた。
そんな呪いにおびえつつ、帰路のローマは20:20出発。
今回もB777-200のビジネススマーティウムだが、座席は往路よりも古いタイプで、モニターが小さくリモコンの動きが悪い。
すぐに始まった夕食では今度は無事に韓国食をゲット。
きゅうりの上に牛肉などの乗った前菜に始まり、かぼちゃのお粥はほぼスープ。
そしてこれが食べたかったビビンバ。たくさんの野菜にご飯とコチュジャン、ジャコも入れて混ぜ混ぜ。キムチも辛すぎにおいしく食べられて大満足。
ただしデザートは栗ようかんと揚げ餅で、これは空港の売店でも売っていたもの。その後にフルーツも出たが、ここはもう一工夫ほしいところ。
次の食事はいつ出るかと怯えていたが、帰路はちゃんと間が空いてフルフラットのおかげでゆっくり寝ることができ、着陸2時間前の常識的な時間(笑)に二食目の提供。
前菜のサーモンはおいしかったが、メインのメニューにあった鶏粥はまた「もうなくなりました」と振られてシーフード炒め。これもまあおいしかったからいいけど。
デザートはピスタチオ・ムースだったが、アシアナのデザートはやっぱりいまいち。
ソウルで乗り換えて今度は成田行き。
今度はA330-300で座席はシェル型。また反応の悪い古いリモコンながらモニターが付いているので途中だった映画も無事に最後まで見ることができた。
2時間ちょっとの飛行時間に最後の機内食。
でやっとありついたサンパプ。お肉がローマ行きのそれに比べると薄切りだが、友人の言う通り、この方が食べやすくていいかも。野菜はエゴマなど結構くせの強いものも入っていて、これは面白い。次回韓国に行ったらお店の物も食べてみたい。
アシアナはもう20年以上も昔、ウズベキスタンからの帰りに乗って、機内に入った途端にキムチの匂いに圧倒されたことがある。
今回はもちろんそんな匂いはしなかったが、特色ある自国の食事が機内食として出るのはいい。
食事前の飲み物サービスがなかったり、食事提供時間が変だったり、座席まわりの古さも目立ったが、長時間のフライトにフルフラットはやはりありがたかった。
お安いアシアナがなくなってしまうのは残念だ。
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用事がなければとても外を出歩く気になれない今日この頃、仕方なく出かけたからには映画館で涼もうと考えた。
しかし夏休みのせいもあってやっているのはお子様映画ばかり。
そんな中、アメリカのどうやら人情コメディらしい、という情報だけで選んだのはこちら。
「ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ」 The Holdovers
やって来たのは勝手知ったる日比谷のシャンテシネマ。
平日の昼間なのに意外にも結構混んでいて、客席の6割以上は埋まっていただろう。
ただし客の年齢層はかなり高そうで、皆さん考えることは一緒だったか。
舞台は1970年、ニューイングランドの寄宿学校。クリスマス休暇でみんないなくなる中、金持ちの問題児が一人に教師一人、料理人だけがそれぞれわけあって取り残される。
アメリカの寄宿学校の生徒と先生の話というとロビン・ウィリアムズの「いまを生きる」を思い出すが、裕福な坊ちゃんの苦悩や教師と心を通わせるところなど共通点はありながら、こちらは全体のトーンがずっと軽い。
軽さの元は教師を演じるポール・ジアマッティで、偏屈で厳格な教師と言う設定の割にどこかコミカルで愛嬌がある。斜視を生徒にからかわれるのだが、ジアマッティ本人は斜視ではない。どうやって斜視にしているのだろう。
上手いのはコック役のダバイン・ジョイ・ランドルフという女優さん。ふてぶてしくて不愛想だが実は親切と言うのを実に自然に演じていて、これでアカデミー助演女優賞を取ったとは帰ってから知った。
この映画、他にも作品賞を始め5部門にノミネート、ジアマッティも主演賞候補だったとはまったく知らなかった。地味で助演の印象の方が強い人なので、この作品は代表作になるだろう。
コメディというよりは人情話、ちょっと昔のアメリカ映画と言う感じで、先日機内で見た「ボーイズ・イン・ザ・ボート」もそうだったが、ハリウッドはいささか懐古趣味になっているのだろうか。
ただしこの映画の設定である1970年は、コックの息子がベトナム戦争で死んだという以外にはまったく必然性がなく、時代背景が生かされているとは言い難い。現代の話であってもまったく問題なく、黒人スタッフとの交流もその方がずっと自然だっただろう。
ストーリーに意外性はないがラストまで気持ちよく見られて、こういう素直なアメリカ映画はいい。
しかし何よりよかったのはこれがまったく時季外れのクリスマスの話だったところ。
ニューイングランドの冬は雪景色でなにもかも凍っているが、寒そうというより涼しそうと思ってしまった。
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毎日暑い、と引きこもってばかりも何なので、意を決して(笑)上野へおでかけ。
いつもは前を素通りする国立西洋美術館だけれど、今回は趣味にドストライクの展覧会を見つけたのでやってきた。
「写本 いとも優雅なる中世の小宇宙」と題されたこの展覧会は医師である内藤裕史氏の個人コレクション。今はすべて国立西洋美術館に寄贈されている。
地下の展示室は9部屋に分かれていて、個人コレクションとはいえ154品と予想よりはるかに多い作品数。
しかも精密な装飾のミニアチュールばかりなので、鼻をくっつけんばかりに接近して見なければならない。老眼の人間には厳しいが、近視の眼鏡をはずしてがんばった。
こんもりと金泥を盛り上げた写本からスタートするこのコレクション、12世紀から16世紀まで、イギリス、フランス、イタリアを中心に、ネーデルランドやスペインのものもある。
ヨーロッパの写本はもちろん聖書など教会関係のものがほとんどだけれど
わずかの隙間までも埋めるかのように、必ずしも内容に関係のない鳥や動物まで描き込まれているのが面白くて仕方ない。
ものすごく細い線でイニシャルを飾る模様も超好み。
これに顔が書き加えられたものは特に人気が高く、この部分だけが切り取られてオークションにかけられることもあるとか。
聖歌の楽譜もたくさんあるけれど
中でも一番気に入ったのはこちら。
周りの絵がかわいすぎる。
法令集にまで装飾やミニアチュールが施され
これは留守中に浮気した奥さんを訴えるの図。わかりやすい。
この展覧会では思いがけず写真撮影もOKで、気に入ったものを撮りまくり。
さらに所々にコレクションの背景説明があったのに興味がわいて
ショップで内藤氏の著書まで買ってしまった。これは読むのが楽しみ。
ところで国立西洋美術館、実はこれまで記憶している限り常設展をちゃんと見たことがなかった。
そこでコルビュジエの建築を見学がてら
常設展示室を一巡りしてみると、ルネサンス時代から一通り有名画家を網羅しているのに今更ながら感心。
このフェルメールの模作とされている作品はもしかしたら真筆かも、って本当だろうか。
一番作品が多いのは日本人が大好きな印象派、特にモネが多かったが、驚いたのはそこここで聞こえるのが中国語だったこと。中国人も印象派が好きなのだろうか。
わざわざ日本で西洋美術館に来るほどの人たちなので、みなさんお行儀が良くて安心。
常設の中で自分が一番気に入ったのはこちら。
フジタはフランス人だからね。
暑い午後を涼しく過ごさせていただいた。
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今回成田を出発して乗り込んだのはエミレーツ航空のA380。
同行の友人は腰痛とお金をダブルで持っている(笑)のでビジネスクラス。
こちらはスコットランド行きで散財したばかりなのでまたビジネスはきつい。
と、昨年の12月から成田便にはプレミアムエコノミーが新設されたというではないか。片道の追加が7万円とのことなのでエコノミーからアップグレード。
成田のチェックインではプレエコ専用のカウンターがあり、セキュリティーもワンワールドのサファイア・カードを見せたら優先ラインが使えて楽々。
A380はファースト、ビジネスが2階席なので1階の前方がプレミアムエコノミー。
座席の白い革張りと窓の周りの木目調がちょっと豪華な感じ。
座席配列は2-4-2で足元もさすがにエコノミーより広く、レッグレストとフットレストが付いている。腰が包み込まれるような座り心地が良く、リクライニング角度もエコノミーよりも深く倒せるが、フルフラットになるわけではなく、前の席が倒れてくると席を立つのはかなり大変。
大昔、ビジネスクラスと言うものができた頃の座席がこんな感じだった。
離陸前にグラスで飲み物のサービス。レモンミントをもらったが、これはかなり甘い。
アメニティーも配られるが、これはエコノミーと共通。以前は5元素柄だったものが今年は動物柄に変わった。
扉が閉まってみると周りはガラガラ。プレエコの搭乗率は2割か3割だっただろう。
ビジネスはいっぱいだったそうで、プレエコは存在をまだ知られていないのかもしれない。
成田便の出発は22:30で、機内食が出たのは真夜中頃。
プレエコでは食器が陶器なのが気分良く、チキンにカレーのようなソースがかかったものはかなりおいしかった。
フライトインフォメーションにメッカの方角とお祈りの時間が出るのがアラブの航空会社らしいが、エミレーツがいいのはエンタメシステム。映画の選択肢がトルコやカタールに比べても段違いに多いのだ。
とは言え夜中のフライトなので往路は一本だけ。
The Boys in the Boat 「ボーイズ・イン・ザ・ボート 若者たちが託した夢」
日本語タイトルが思い切りベタだが、大恐慌時代、学費にも困った学生たちが寮に入れ、給料も出るというのでボート部に入り、弱小チームだったワシントン大学が裕福な名門大学に勝ってベルリン・オリンピックに出場、ヒトラーが見守る中、強豪ドイツ・チームに勝てるか、という実に分かりやすいお話。
なじみのない俳優たちはいかにも30年代という顔を集めたかのよう。
監督はジョージ・クルーニーだが単純な作りは50年代のハリウッド映画のようでひねりはなし。内容が内容なのでそれでいいが、チームメイト間のやり取りにはもうちょっと工夫があっても良かった気がする。
オリンピック直前に見るにはぴったりの映画、ボート競技も見てみようという気になる。
フルフラットではないとやっぱり寝られず、2度目の機内食。
メインを和食にしてみたら煮物が意外においしかった。
ドバイからはミュンヘン行きに搭乗。
これもA380なので2階へ伸びるブリッジが見える。
こちらにはプレエコはないので普通のエコノミー座席。
8:50に出るので朝食が出るかと思ったら1食目はリンゴかチーズのパイの二択。
6時間ちょっとの飛行中、大好きな The Great British Bake Offの最新シーズンを途中まで見て
2食目はランチでビーフのトマト煮。デザートはまたリンゴだった。
帰路はベネチア空港からの出発。
ドバイまではB777‐200。
15:35の出発で今度は1食目にきちんとした食事。
チキンを切るのに苦労したが味は悪くなく、付け合わせの麦のお粥も食べやすい。デザートはイギリスっぽい Sticky Toffee Pudding。
このフライトでは珍しく日本映画を選択。
「パーフェクトデイズ」
役所広司がカンヌで主演男優賞を取った映画で、監督はヴィム・ヴェンダーズ。
主人公の職業が公衆トイレの掃除人なのだが、次々に登場するのがおしゃれな渋谷の公衆トイレ。17か所あるというこのデザイン公衆トイレ、一度見に行こうと思っていたが、この映画、そもそもこのトイレ・プロジェクトのPRとして企画されたと知って深く納得。
ヴィム・ヴェンダーズは小津安二郎のファンだそうで、なるほど全体のトーンがそっくり。
主人公のバックグラウンドなど匂わせるだけで説明することなく、淡々と過ぎる日常を「パーフェクト」と呼ぶ感覚はわかる気もする。
が淡々としすぎていささか環境ビデオっぽい所もあり、途中で眠りそうになった。
2食目にはアイスクリームが出て、これはバニラ一択。
ドバイからはまたA380のプレエコで、午前2:40発予定が1時間遅れの出発。
1食目が出されたのがドバイ時間の5時頃なので朝食。
フルーツとヨーグルトがたっぷり。
また10時間と長い道中、どうせ眠れないなら長い映画を見ようと選んだのは
Oppenheimer 「オッペンハイマー」
今年のアカデミー賞を大量受賞したこの映画、なぜか他の航空会社ではなかなかやっていなくてやっと見られた。
が、同じような顔をした登場人物が同じようなドイツ系の名前で大量に出て来て誰が誰やら混乱し、なにより理論物理学の話なんて英語で付いて行けない。
原爆の開発に尽力したオッペンハイマーだが、共産党員たちと親しかったということで赤狩りの時代にソ連のスパイ容疑を受けた、ということまではわかったが映画の3分の2まで見た所で力尽きた。
ただ最近欧米で男前として人気のキリアン・マーフィー、スチルだけ見ていると個性的な顔としか思わないが、動くと確かにセクシーな魅力があるとわかったのは収穫。
この映画、次は日本語字幕付きで見ないと。
難しい映画で疲れたので、この後はBake Offを準決勝まで見ながら到着前、2度目の食事。
バターチキンなるメニューを選択すると、タンドーリチキンにマイルドなソースがかかって、添えられたバスマティライスともどもすごくおいしい。今まで食べた機内食のチキンではベストかも。
最後はコーヒーにチョコレートをもらってヨーロッパからの長いフライトは終了。
ビジネスに乗った友人に言わせるとエミレーツのラウンジの食事はとてもいいが、機内食は全然ダメとのこと。
それに比べるとエコノミーやプレエコの機内食は他社に比べていい方、優先搭乗もできるプレエコはフルフラットにこだわりがなければいい選択かもしれない。ただしプラス7万円の価値があるかはちょっと微妙、かも。
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今回のスコットランド行きにはトルコ航空改めターキッシュエアラインズを使用。
道中長いから、とビジネスクラスを奮発してしまった。
まずは羽田から21:55出発。
機材はB777-300で、成田発は最近流行のより個室っぽいシートの機材らしいが、羽田発は残念ながら2-3-2配列の旧型座席。
隣との仕切りもないがフルフラットになって、特筆すべきはシートピッチ。足が前の座席下に潜り込む形ではないので190㎝もあって、おかげでモニターが遠すぎて見にくいほど。
乗り込むとスリッパと薄いひざ掛けが用意してあるが、食事前には座席に薄いキルティングのベッドシートを敷いてくれて、その際にはもっと厚い上掛け布団ももらえる。
出発前にはターキッシュ自慢のレモネードなどの飲み物が回ってくるが、以前くれたロクムのサービスはなくなってしまったのだろうか。残念。
そして登場するのはシェフスタイルのスタッフ。
メニューを配りながら注文を聞いて回る。
ただし配膳は普通のCAさんたちがするので、シェフの姿を見るのはこの時だけ。
食事は夜中近くになったが、楽しみにしていたターキッシュのビジネスなのでフルコースでいただく。
まずはトルコ式の前菜3種盛り。
ナスと、ちょっとピリ辛のトマト、ハーブの入ったラブネはカタールの前菜よりおいしいかも。
小さなライトと塩コショウ入れがかわいい。
メインはトルコらしいものがなかったので珍しく和食を選択。鯛の焼き物にお味噌汁が結構おいしい。
デザートにはトルコ菓子がまた3種盛り。
バクラバはおいしいけれどトルコのはやっぱり激甘。
お茶をお願いすると愛想のいい男性CA氏、「バクラバは甘すぎるよね」
こちらのメニューはお茶が充実していて、ブレンド茶もいっぱい。
ビジネスクラスではノイズキャンセリング機能付きのDENONのイヤホンが配られるので、食事中は遠いモニターで映画を一本。ただしあまりそそられるものはなくて、選んだのは
Lift
2022年のドキュメンタリー映画で、NYのホームシェルター出身のバレエダンサーが同じ境遇の子供たちにバレエを紹介して貧しい境遇からの脱出を助けようとする話。
映画は10年に渡って子供たちを追いかけるので、中には奨学生からアメリカンバレエシアターに合格する子供まで出る。ただし教室は無料でも送り迎えが無理、と途中でやめてしまう子供たちもいるし、10歳ごろには可愛かった女の子が数年たつといっぱしの不良を気取って休学させられたりする。するとメンターであるダンサーがこんこんとこの先どんな不幸が待っているかと諭して、さすがに反省してダンスに戻ってくるのでちょっとほっとする。
アメリカの下層の厳しさ、チャリティー活動の様子などがわかるいいドキュメンタリーだった。
食事の後はフルフラットで5時間ほど眠って、トルコ料理の紹介ビデオなど見ているうちに朝食。
と言ってもあまりお腹もすかないので、フルーツとパンだけもらった。
13時間のフライトでイスタンブールに到着、ここからエジンバラまでは4時間半。
機材は A321 Neo、中距離路線なので昔ながらのビジネスクラスシート。
今度はラズベリー入りの赤いレモネードをもらった。
出発が7:15だったのでまた朝ごはん。
今度はたっぷりのラブネの上にグラノラとベリーがいっぱい載って、これはとてもおいしかった。
この後さらにオムレツなどの提供があったが、もう食べられないとパス。
この機内でまた映画を一本。キャストに惹かれて
The Burial
この映画、日本では「眠りの地」というタイトルでアマゾンの配信でだけ見られたらしい。
物語はトミー・リー・ジョーンズ扮するミシシッピーの葬儀屋が大手葬儀社に乗っ取られそうになり、黒人弁護士のジェイミー・フォックスを雇うという、実話に基づいた話だそう。
大手葬儀社の社長も大型クルーザーなど見せびらかしていやらしいが、黒人弁護士の方も大邸宅に住んで派手な暮らし。大手が貧しい黒人たちを食い物にして大儲けしたということで奮起して見事巨額の賠償金を勝ち取るが、アメリカの訴訟ってやっぱり、面白いけどなんだかなあ、と思ってしまう。
ジェイミー・フォックスは相変わらず上手い。
帰路も同じ機材で、11時過ぎの出発なので昼食が出るかと思ったが、また朝食。
メインは薄ーいパンの間にほうれん草とチーズが挟まったもの。ただしこれ、あまり温かくなかったのが残念。
イスタンブールでは長い乗り継ぎがあって、羽田行きは夜中2時の出発。
なのでこの時間に食事を頼んでいる人たちもいたが、自分はシェフに注文だけしてすぐ就寝、フルフラットのおかげで5時間以上寝ることができた。
起きたのは日本時間でお昼過ぎ。ということで昼食として
まずはスモークサーモンとエビ、カニのマヨネーズ和え。サーモンはちょっと塩辛すぎ。
メインはパスタにしようと思ったらすでに品切れとのことでまた魚。
ハドック(コダラ)のグリルは魚より付け合わせの野菜がおいしい。
デザートにはアイスクリームを頼んだらこんな工夫のない姿で登場した。
ホームベース発なのでちょっと期待していたが、選択肢にあまりトルコらしいものがなくてかなりがっかり。
24時間以上前ならメニューの事前予約も可能だったのだが、タイミングを逸してしまって残念。
この食事中にまた映画を一本。いまさらながら
「バービー」Barbie
この映画、アメリカでは大ヒットしたものの日本での受けはいまいちだったようなので見るのを躊躇していたが、見てみたら面白いじゃないの。
まずは冒頭、「2001年宇宙の旅」のパロディが自分的にツボ。
以降、登場するバービーの家やら様々な設定のバービーやら、自分はもちろんリカちゃんで育っているが、これで育ったアメリカ人に受けた理由がよくわかる。
フェミニズム・テーマもうまく茶化していて、この題材で大人向けの映画を作るとはすごい、と感心してしまった。
主役のマーゴット・ロビーは最近のお気に入り。バービーになりきっているのがすごく、途中人間界で苦労して「私、こんなに醜くなっちゃったわ」と言うとヘレン・ミレンのナレーションが「マーゴット・ロビーが言っても説得力ないけど」と入るのにも笑った。
ただしケン役のライアン・ゴスリングが自分的にはいまいち。もっとミーハー的美男だったらよかったのに。
と思っているうちに着陸2時間前になって、妙な時間だが朝食の提供。
これはもう食べられないと断って、スムージーだけ頼んだが
これはむちゃくちゃおいしい。
19:20に羽田に到着して長いフライトも終了。
食事は正直期待したほどではなかったが、しっかり眠れたおかげでかえって帰国後時差ボケしてしまった。
おまけは機内でもらったアメニティー。
ピンクは往路、赤は復路にもらったもので、ブランドはフェラガモだがビニール素材には残念ながらあまり高級感は感じられない。
アイマスクが厚みがあってなかなか良かった。
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所用ででかけたついでに上野まで。
例によって東京国立博物館の特別展へ。
「本阿弥光悦の大宇宙」
地味な内容のためか平日の午前はかなり空いていて、ゆっくり静かに見られたのは良かった。
しかし展示を見始めて自分の勘違いに気づいて愕然。
ポスターにも大きく取り上げられている通り、光悦と言えば国宝にもなっている大きく膨らんだ硯箱が有名なのでてっきり工芸の人だと思い込んでいたが、実は書の方が有名な人。
どうやら尾形光琳などとごっちゃになっていたようで、自分の不勉強に恥じ入るばかり。
本阿弥家は刀剣の鑑定では名家とのことで展示の初めは国宝の刀がずらり。
しかし刀にも書にもまるで興味も知識もないので、この辺りは猫に小判、豚に真珠。
が見ているうちに光悦という人はその出自から有力なスポンサーや職人に強力なコネがあり、自身の審美眼もあって優れたプロデューサー、コーディネーターだったのだと理解できた。
今回の展示で一番感動したのは俵屋宗達とのコラボの「鶴下絵三十六歌仙和歌巻」。
13mもの巻物の上で鶴たちがたたずんだり、羽を広げて飛び立ったり、なんて自由で洗練されているのだろうとうっとり。
これより早い時期にコラボしたらしい桜の屏風も
絵を宗達が描き、その上に光悦の書が短冊の形で散りばめられているのだが、木の表現など現代の物のようにモダンに見える。
町絵師だった宗達を見出して有名にしたのが光悦だそうで、それ以外にも謡本の贅沢な紙までその職人の名前がちゃんと残っている。
芸術ならぬ工芸にまで名前が残っている国って他にあるのだろうか。
最後は陶芸で、これなど茶の湯をたしなんだ光悦の個人的な趣味だったんじゃないかと思うが、それが国宝になってしまうすごさ。
しかし実は光悦の国宝より、陶芸の師匠だったであろう楽焼のプロ、長次郎の茶わんがいいなあ、なんて思ってしまった。
外に出ると一本だけ、紅梅がもう花を開いていた。
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