毎日暑い、と引きこもってばかりも何なので、意を決して(笑)上野へおでかけ。
いつもは前を素通りする国立西洋美術館だけれど、今回は趣味にドストライクの展覧会を見つけたのでやってきた。
「写本 いとも優雅なる中世の小宇宙」と題されたこの展覧会は医師である内藤裕史氏の個人コレクション。今はすべて国立西洋美術館に寄贈されている。
地下の展示室は9部屋に分かれていて、個人コレクションとはいえ154品と予想よりはるかに多い作品数。
しかも精密な装飾のミニアチュールばかりなので、鼻をくっつけんばかりに接近して見なければならない。老眼の人間には厳しいが、近視の眼鏡をはずしてがんばった。
こんもりと金泥を盛り上げた写本からスタートするこのコレクション、12世紀から16世紀まで、イギリス、フランス、イタリアを中心に、ネーデルランドやスペインのものもある。
ヨーロッパの写本はもちろん聖書など教会関係のものがほとんどだけれど
わずかの隙間までも埋めるかのように、必ずしも内容に関係のない鳥や動物まで描き込まれているのが面白くて仕方ない。
ものすごく細い線でイニシャルを飾る模様も超好み。
これに顔が書き加えられたものは特に人気が高く、この部分だけが切り取られてオークションにかけられることもあるとか。
聖歌の楽譜もたくさんあるけれど
中でも一番気に入ったのはこちら。
周りの絵がかわいすぎる。
法令集にまで装飾やミニアチュールが施され
これは留守中に浮気した奥さんを訴えるの図。わかりやすい。
この展覧会では思いがけず写真撮影もOKで、気に入ったものを撮りまくり。
さらに所々にコレクションの背景説明があったのに興味がわいて
ショップで内藤氏の著書まで買ってしまった。これは読むのが楽しみ。
ところで国立西洋美術館、実はこれまで記憶している限り常設展をちゃんと見たことがなかった。
そこでコルビュジエの建築を見学がてら
常設展示室を一巡りしてみると、ルネサンス時代から一通り有名画家を網羅しているのに今更ながら感心。
このフェルメールの模作とされている作品はもしかしたら真筆かも、って本当だろうか。
一番作品が多いのは日本人が大好きな印象派、特にモネが多かったが、驚いたのはそこここで聞こえるのが中国語だったこと。中国人も印象派が好きなのだろうか。
わざわざ日本で西洋美術館に来るほどの人たちなので、みなさんお行儀が良くて安心。
常設の中で自分が一番気に入ったのはこちら。
フジタはフランス人だからね。
暑い午後を涼しく過ごさせていただいた。
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5月30日
Unst島の緯度は北緯60度、昨年11月に行ったNZの亜南極の島々よりも高緯度にある。
なのでこの時期、日の入りは22時過ぎ、朝の4時前には日の出なので夜中に目を覚ましても外は真っ暗ではない。夏至の頃にはほぼ白夜になるらしい。
眼は早く覚めるが、朝食は7時45分から。
この宿のオーナーは70代の男性だが、自ら朝食を用意してくれる。
聞けば生まれも育ちのこの島、最初は昨日行った店でパンを焼いていたが、その後はこの島にあった軍基地でヘリのパイロットをしていたとか。奥さんを亡くして今は一人でこのB&Bの切り盛りをしている。
8時45分になって、お願いしてあったこの島のネイチャーガイドが車で来てくれた。
今日一日案内してくれるのはイングランド出身の中年男性。鳥好きが高じてこの島に移住したそうだが、日本にも鶴居村のタンチョウなど、鳥を見るために何度か来たことがあるとのこと。
出発して最初に車を停めたのは宿から遠くない桟橋。この辺りでカワウソが見られるかもしれないということで寄ったのだが
桟橋で日向ぼっこをしていたのはアザラシたち。
もう一か所、カワウソ・スポットはバイキングの家と船が再現されている所。残念ながらここでもカワウソの姿は見えなかったが
シェトランド人はバイキングの末裔を自任していて、冬にはこの島も含めてあちこちで「Upp-Helly-A」と呼ばれる火祭りが行われるのだそうだ。
次に向かったのは島の北端にある Harmaness自然保護区。
門を入った先には木道がずっと整備されていて
周りは秋になればヒースでピンクに染まるとのこと。ところで「ヒース Heath」とは厳密にはここのような低灌木の生える荒れ地のことで、ピンクの花が咲く植物は「Heather」なのだそうだ。知らなかった。
ワタスゲなど見ながら歩くこと1時間ほど。
高い崖の上に出た。
崖っぷちでは羊たちがのんきに海を眺めていたりするが
ここから見える岩の上の灯台、Muckle Flugga こそ英国最北端。ここは島になっていて、作家のスティーブンソンのおじさんが設計した灯台は今でこそ自動制御だが少し前までは灯台守がいて、海が荒れた時など何週間も閉じ込められることもあったとか。
ここまで天気のおかげでシェトランドに来ても思いのほか暖かかったが、さすがにここは北極からの風が直接吹いてきて寒い。
さて、この崖の上には他にも観光客がたくさんいるが、ここが有名なのは鳥、中でも Gannet の大営巣地だから。
頭が黄色く、目の青い Gannet は飛ぶ姿もカッコよく、少し先の崖の下を覗くと
白いゴマ粒はすべて Gannet。
鳴き声と糞の匂いがすごくて圧倒される。
もう一つ、ここはかわいい Puffin もたくさん見られる所、のはずだったのだが、この日はどういう具合か一羽も見られず。
「この間は草地にいっぱいいたんだけどねえ」とガイド氏。空港近くで撮った花の中の写真を見せると「こんな写真を撮りたくて何日もここに通う人もいるよ」と、初日はよほど運が良かったらしい。
来た道を戻ると草地にいたのは Skua (トウゾクカモメ)。
これもたくさんいたらしいが、最近の鳥インフルエンザの影響で今年はとても少ないとか。
緯度は高いがこの島はメキシコ暖流のおかげで冬でもほとんど雪は降らないとか、自分たちのように他から移住してくる人間もいるが若者は高等教育のために島を離れるとやっぱり帰ってこないとか、ガイドさんと歩くといろいろ聞けて面白い。
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5月29日 続き
石油基地を見ながら少し行くとフェリー乗り場が見えてきた。
この乗り場は地図の小さな円のところ、これから Yell島を通り抜け、シェトランドでも最北端の Unst島に行くのだ。
しばらく待っているとYell行きのフェリーがやって来て、用意周到な同行者が事前に予約をしておいてくれたおかげで無事乗船。
便はほぼ30分おきと頻繁に出ているが、運が悪いと満車で2,3本待つこともあるのだとか。
乗り込むと係員がやって来て運賃徴収。切符は必ず往復、車一台+一人で£19.3。所要時間は20分なので車に乗ったままで対岸へ。
Yell島は平べったい島で、人口は900人いるそうだが有名な見どころなどはない。
というわけでよく整備された道を飛ばして通り抜け、Unst島へ渡るフェリー乗り場へ直行。
こちらのフェリーは少し小さくて、所要時間もわずか10分。
で無事にUnst島上陸。
海べりに集落が散らばる中、島の中央を突っ切る道路を通って島のほぼ真ん中に位置する最大の集落、Baltasound へ。と言ってもこの島全体の人口が650人ほど。Baltasound も周りに家が見えるな、というほどの密集(?)程度だが
今夜の宿はその中の一軒、Winwick House。
部屋の窓からは庭の向こうに海が見える。
この宿に着いたのが16時、17時には店が閉まるというのですぐ近くの「スーパー」へ。
Skibhoul Storesはパン屋も併設したスーパーだが、真ん中にあるのは冷凍食品。
海に囲まれているのに売られている魚は燻製や塩漬け。ブラックプディングはたくさんあるけれど
野菜や果物の品ぞろえはこの通りでかなり厳しい。
ここから車で2,3分の所にはもう一軒店があるが
こちらの半分は電気製品や雑貨で生鮮食品はない。
そんなわけで島の住人は定期的にラーウィックにある大きなTescoに買い出しに行き、雑貨などは最近はオンラインで買うと郵便局員が配達をしてくれるのだそうだ。
そんなBaltasound だけれど
店の前にあった掲示板によると、ここは19世紀末から1920年頃まではヨーロッパ最大のニシンの水揚げ港で、年間36,000トンも収量のあった最盛期には人口も1万人もいたのだとか。
さて、買い物は済ませたがまだまだ日は高い。
そこで車で少し北の Norwick へ。
途中「イギリス最北端の教会」など見つつ
やって来た砂浜のきれいなこと。
さらに北へ、高い丘に上ると眼下に面白いものが見える。
ここはなんと Saxavord という民間ロケット打ち上げ基地。まだ候補地の一つだそうだがすでに発射台ができて、打ち上げテストも実施中とか。
好奇心の強い羊たちに見守られつつ看板を読んでみると、「エイリアンは宇宙警察に通報されて火星に送られます」とのこと。
丘を降りた所には宿舎などもできているが
やっぱりしゃれ好きなようだ。
それにしてもなぜこれほど辺鄙な所に作るのか、環境問題や雇用のチャンスなど、地元民の間でも賛否両論らしい。
宿に戻ったのは18時半。夕食の時間だがこれが大問題。
村に食堂などはなく、ホテルが一軒あるがレストランの予約をしようと行ってみると「うちはツアー客でいっぱいだから」とけんもほろろの対応だった、と同行者。宿のオーナーなどによるとホテルの経営者は島外の人間だが変わり者と悪評だらけ。それでよくホテルが経営できる、となんとも不思議。
というわけで今夜の食事は部屋で
こうなった。
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5月29日
かわいらしい食堂で今日もしっかり朝食をいただいて
ラーウィックを出発。
地図で一番下の赤丸が空港のあるサンバーグ、真ん中がラーウィック、今日の午前は左上部のエリアを目指す。
なだらかな丘や湖が続く景色の中を行くと、風力発電の風車がたくさん並んでいるのが見える。
地形からいって風の良く通るシェトランド、化石燃料に代わるエネルギー源として期待されているらしい。
本島と狭い地峡でかろうじてつながっている Northmavine 地区に入り、西海岸を少し行くと Hillswick という集落があった。
海に面して立派な木造のホテルが建ち、その隣は石造りの教会。
小さな砂浜が見えるので降りてみると
小さな村のよろず屋などあって
便器の花壇が並ぶ公衆トイレもとてもきれいに保たれている。
集落のはずれの墓地からは赤い断崖が見え
周りには羊がいっぱい。かわいい仔羊たちの向こうの海に浮かぶのはムール貝養殖のブイだろう。
こちらは毛のフサフサとした小さなシェトランド・ポニー。大人の腰ぐらいの高さしかないので昔は炭鉱の中で運搬用として働いていたそうだが、今は子供の乗馬用に人気があるとか。
同行者は一緒に自撮りして大喜び。
しかしこの集落で一番面白かったのは公民館の掲示板。
Sunday Tea というのは週末に近所の人がケーキなど持ち寄る行事だそうで、これはアン・クリーブスの小説にも出てきた。
中華の出前はよほどの大イベントなのか、道路上にもあちこち看板が出ていて、島の生活の一端を垣間見た気分。
ここからさらに羊も横断する道で半島の端を目指すと
遠くに灯台が見えてきた。この Eshaness 灯台もスティーブンソン家の一員が設計したもの。
周りは高い断崖になっているが、案内板には誰が置いたか、おじさんとアヒルの人形が。
途中の草原にはまたシェトランド・ポニーたち。
穴の開いた岩を見晴らす丘にいた羊たちはみんな子連れだ。
地峡のそばまで戻った所に Braewick 村営のカフェがあったのでお昼を食べに寄ってみた。
外見は地味だが、中に入ってみると海側に大きな窓があって明るいカフェ。
地元産のミルクに、ハンバーガーをシェアしたいと言ったらきっちり2皿にしてポテトやフライドオニオンをたくさん付けてくれた。どちらもおいしい
地峡を渡ると深く入り込んだ湾に大きな石油基地が見える。
Sullom Voe 石油基地は北海やシェトランド周辺の石油やガスを取り扱う、ヨーロッパでも有数の基地なのだそうだ。
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5月28日 続き
本当の中央あたりまで来るとやっと町らしい町が見えてきた。
シェトランド最大、というかほぼ唯一の町、ラーウィックだ。
適当な所に車を停めて、まずはお昼を食べようと「Showa Cafe」なる店にやって来た。
来る前、シェトランドのHPでここに日本人がいると知って来てみたのだが、カウンターにいるのは中国系の男性だけ。こんにちわ、と声をかけ、「奥さんは日本人だそうですね」と聞くと「そうです、キッチンにいます」と答えるが呼んでくれる風もない。
ホットサンドを注文しても奥さんは姿を見せず、おそらくはシェトランドで唯一であろう日本人の話を聞いてみたかったのだが、何か事情でもあるのか、残念だった。
このカフェのすぐ近くには博物館があるということなので行ってみることにする。
大きくて立派な建物、だが入ってみるとどうも様子が違う。聞いてみるとここは島唯一の映画館。
1階には海に面して窓の大きなカフェがあって、少し離れた所には大型クルーズ船が何隻も停泊している。
この隣にあったのが博物館。
大きくはないし貴重品があるわけでもないが、先史時代から現代まで、シェトランドに関する様々な展示があって、自分的にはアン・クリーブスの本で知ったシェトランド・バス(第二次大戦中、シェトランドの漁師たちがノルウェイのレジスタンスを支援していた)のことや、南氷洋の捕鯨にシェトランドから大勢がでかけていたこと、南極探検家シャクルトンの棺を担いだのもシェトランド出身者たちだったことなど、とても興味深かった。
貧しかった昔の生活の展示もあるが、現在は北海油田のおかげでこんな立派な博物館や映画館もできたとか。
細かい編み込みで有名なフェアアイル・セーターはシェトランドでも一番の離島、フェア島の特産だ。
博物館を見ているうちにいい時間になったので、今夜の宿へ。
街の中心からそれほど離れていない Alder Lodge。角部屋は明るくてなかなかいい部屋だ。
荷物を置いたら改めて町の散策へ。
石造りの家が並ぶ中、海に向かって坂を下ると
狭い道の両側に店が並ぶ、その名もコマーシャル・ロード。
毛糸屋さんの棚には有名なシェトランド・ウールが300色も揃えられていて、フェアアイル・セーターももちろんあるが、お高いので見るのは帽子ぐらい。
お店を冷やかしているうちにうれしいことに青空が見えてきた。
もう1本先の道は港に面していて、ここにも大型クルーズ船。街にはガイドに先導されたクルーズ客もいっぱい。
こちらの通りにはデパートもあって
通りには看板山羊やら犬やらいるし、小さいがなんとも楽しい町。
そして港沿いの道を端の方まで歩くと
おお、これぞTVでぺレス警部の住まいとされていた家。小さな砂浜の前の海がとてもきれい。
さらに「シェトランド」の聖地巡礼、と坂を上がると
番組によく登場する検察官事務所とその奥の警察署。
検察事務所の門の前には主演俳優の銘板まである。
この前で喜んで写真を撮っていると同じように写真を撮りに来たのはアメリカ人の番組ファン。
お店の人と話をしても「この前の通りで撮影をしていたのよ。ぺレス警部とトッシュ役はちがうけれど、サンディー役の俳優さんは本当にシェトランド出身」などいろいろ聞けてめちゃくちゃ楽しい。ここまで来て良かった!
うろうろしているうちに夕方になったが、この町で夕食をとるのは大変。
というのも夜に食事ができる店が極端に少なく、客を回転させることなどはなから考えていないのだ。
なんとか席を確保できたのはこちらのフランス料理店。
ネットの評判では不愛想とのことだったが、「日本にぜひ行ってみたいわ」というフランス人マダム、フランスでお茶の専門店もやっていると非常にフレンドリー。
いただいたブイヤベースには地元産のムール貝やサーモンが使われ、デザートのプラム・クラフティもおいしかった。
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5月28日
この日は朝4時起床、4時40分に予約してあったタクシーに乗り、5時にはエジンバラ空港へ。
早朝なのに空港内はたくさんの旅行者でごった返していて、そんな中ブラウニーとコーヒーを頼んだら
これだけで£9.2(約1840円)って、どんだけぼったくり!
こんな早朝にやって来たのは6:50発のシェトランド行きの飛行機に乗るため。
以前にも書いた通り、自分は小説とTVの「シェトランド」のファンなので、スコットランドに行くことになった時、ぜひシェトランドまで足を延ばしたいと思った。
すると旅行の手配をしてくれていたシンガポール人の友人、「飛行機は£450だけど行く?」と連絡してきて、シェトランドに行くことしか考えていなかった自分、「もちろん行く!」と即答したが、冷静になって計算してみるとなんと9万円。こんなに高いのに同行に同意してくれた友人には感謝しかない。
搭乗時間が近くなり、ゲートに行ってみると長い列ができているが、これは他の島へ飛ぶ人たち。
シェトランド行きの方の乗客たちはスーツやら会社のロゴ入りジャンパー着用の男性ばかりで明らかに商用の人たち。飛行機代が高いので、普通の観光客は一晩かかるフェリーを利用するのだ。
6:50発予定が7:20の搭乗となったのはスコットランド・ローカルの航空会社、ローガン・エアのATR42。
尾翼がタータン・チェック、CAの制服もタータンで、ヘッドカバーは座席ごとに違う柄のハリスツイード。
エジンバラ空港を離陸すると、これまたタータン柄のショートブレッドと飲み物のサービスがあった。
やがて緑の島が見えてきて、1時間25分でシェトランド本島の南端にあるサンバーグ空港に到着。
カフェが一つあるだけの小さな空港だ。
空港からはまたレンタカーを借りて、まずはすぐ近くのサンバーグ・ヘッドと言う所を目指す。
駐車場からは湾の向こうに白い建物の飛行場が見える。
高い崖の上には灯台があって、周りの建物内も見学可能だが、この日はお休みで中に入れず。
しかしここからの景色は曇天でも素敵で
崖の下にはアザラシが寝ているのが見えるし、飛び回っているのは頭の黄色い Gannet (シロカツオドリ)。
海面近くの崖や海にたくさん浮かんでいるのは Guillemot (ウミガラス)。
Oyster catcher (ミヤコドリ)の姿も見えるが、この場所での一番人気はカモメの巣がたくさんある中にいたPuffin (ニシツノメドリ)。
大きなくちばしや目が特徴的で、ころっとした姿がかわいい。島に到着早々に見られてとてもラッキー(とはこの後思い知らされる)。
バードウォッチングをしばらく楽しんだら、崖を降りてすぐ近くの Jarshof へ。
入口の建物内に解説があるが、ここは紀元前2500年から17世紀までの住居跡が発掘された場所。
場内には遊歩道が伸びていて、様々な時代の生活の跡が見学できるようになっている。
Broch と呼ばれる円形の石造りの建物は青銅器時代のもの。
一番新しい17世紀の建物は上に上れるようになっているが、こういう遺跡は知識がないとなかなか興味がわきづらい。
サンバーグを離れて幹線道路を北上。
途中、小さな集落に降りてみるとちゃんとコミュニティーセンターがあって、ちょっとした土産物なども売っていたりする。
小さな湾を囲む緑は美しいが、木はほとんどない。
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今回成田を出発して乗り込んだのはエミレーツ航空のA380。
同行の友人は腰痛とお金をダブルで持っている(笑)のでビジネスクラス。
こちらはスコットランド行きで散財したばかりなのでまたビジネスはきつい。
と、昨年の12月から成田便にはプレミアムエコノミーが新設されたというではないか。片道の追加が7万円とのことなのでエコノミーからアップグレード。
成田のチェックインではプレエコ専用のカウンターがあり、セキュリティーもワンワールドのサファイア・カードを見せたら優先ラインが使えて楽々。
A380はファースト、ビジネスが2階席なので1階の前方がプレミアムエコノミー。
座席の白い革張りと窓の周りの木目調がちょっと豪華な感じ。
座席配列は2-4-2で足元もさすがにエコノミーより広く、レッグレストとフットレストが付いている。腰が包み込まれるような座り心地が良く、リクライニング角度もエコノミーよりも深く倒せるが、フルフラットになるわけではなく、前の席が倒れてくると席を立つのはかなり大変。
大昔、ビジネスクラスと言うものができた頃の座席がこんな感じだった。
離陸前にグラスで飲み物のサービス。レモンミントをもらったが、これはかなり甘い。
アメニティーも配られるが、これはエコノミーと共通。以前は5元素柄だったものが今年は動物柄に変わった。
扉が閉まってみると周りはガラガラ。プレエコの搭乗率は2割か3割だっただろう。
ビジネスはいっぱいだったそうで、プレエコは存在をまだ知られていないのかもしれない。
成田便の出発は22:30で、機内食が出たのは真夜中頃。
プレエコでは食器が陶器なのが気分良く、チキンにカレーのようなソースがかかったものはかなりおいしかった。
フライトインフォメーションにメッカの方角とお祈りの時間が出るのがアラブの航空会社らしいが、エミレーツがいいのはエンタメシステム。映画の選択肢がトルコやカタールに比べても段違いに多いのだ。
とは言え夜中のフライトなので往路は一本だけ。
The Boys in the Boat 「ボーイズ・イン・ザ・ボート 若者たちが託した夢」
日本語タイトルが思い切りベタだが、大恐慌時代、学費にも困った学生たちが寮に入れ、給料も出るというのでボート部に入り、弱小チームだったワシントン大学が裕福な名門大学に勝ってベルリン・オリンピックに出場、ヒトラーが見守る中、強豪ドイツ・チームに勝てるか、という実に分かりやすいお話。
なじみのない俳優たちはいかにも30年代という顔を集めたかのよう。
監督はジョージ・クルーニーだが単純な作りは50年代のハリウッド映画のようでひねりはなし。内容が内容なのでそれでいいが、チームメイト間のやり取りにはもうちょっと工夫があっても良かった気がする。
オリンピック直前に見るにはぴったりの映画、ボート競技も見てみようという気になる。
フルフラットではないとやっぱり寝られず、2度目の機内食。
メインを和食にしてみたら煮物が意外においしかった。
ドバイからはミュンヘン行きに搭乗。
これもA380なので2階へ伸びるブリッジが見える。
こちらにはプレエコはないので普通のエコノミー座席。
8:50に出るので朝食が出るかと思ったら1食目はリンゴかチーズのパイの二択。
6時間ちょっとの飛行中、大好きな The Great British Bake Offの最新シーズンを途中まで見て
2食目はランチでビーフのトマト煮。デザートはまたリンゴだった。
帰路はベネチア空港からの出発。
ドバイまではB777‐200。
15:35の出発で今度は1食目にきちんとした食事。
チキンを切るのに苦労したが味は悪くなく、付け合わせの麦のお粥も食べやすい。デザートはイギリスっぽい Sticky Toffee Pudding。
このフライトでは珍しく日本映画を選択。
「パーフェクトデイズ」
役所広司がカンヌで主演男優賞を取った映画で、監督はヴィム・ヴェンダーズ。
主人公の職業が公衆トイレの掃除人なのだが、次々に登場するのがおしゃれな渋谷の公衆トイレ。17か所あるというこのデザイン公衆トイレ、一度見に行こうと思っていたが、この映画、そもそもこのトイレ・プロジェクトのPRとして企画されたと知って深く納得。
ヴィム・ヴェンダーズは小津安二郎のファンだそうで、なるほど全体のトーンがそっくり。
主人公のバックグラウンドなど匂わせるだけで説明することなく、淡々と過ぎる日常を「パーフェクト」と呼ぶ感覚はわかる気もする。
が淡々としすぎていささか環境ビデオっぽい所もあり、途中で眠りそうになった。
2食目にはアイスクリームが出て、これはバニラ一択。
ドバイからはまたA380のプレエコで、午前2:40発予定が1時間遅れの出発。
1食目が出されたのがドバイ時間の5時頃なので朝食。
フルーツとヨーグルトがたっぷり。
また10時間と長い道中、どうせ眠れないなら長い映画を見ようと選んだのは
Oppenheimer 「オッペンハイマー」
今年のアカデミー賞を大量受賞したこの映画、なぜか他の航空会社ではなかなかやっていなくてやっと見られた。
が、同じような顔をした登場人物が同じようなドイツ系の名前で大量に出て来て誰が誰やら混乱し、なにより理論物理学の話なんて英語で付いて行けない。
原爆の開発に尽力したオッペンハイマーだが、共産党員たちと親しかったということで赤狩りの時代にソ連のスパイ容疑を受けた、ということまではわかったが映画の3分の2まで見た所で力尽きた。
ただ最近欧米で男前として人気のキリアン・マーフィー、スチルだけ見ていると個性的な顔としか思わないが、動くと確かにセクシーな魅力があるとわかったのは収穫。
この映画、次は日本語字幕付きで見ないと。
難しい映画で疲れたので、この後はBake Offを準決勝まで見ながら到着前、2度目の食事。
バターチキンなるメニューを選択すると、タンドーリチキンにマイルドなソースがかかって、添えられたバスマティライスともどもすごくおいしい。今まで食べた機内食のチキンではベストかも。
最後はコーヒーにチョコレートをもらってヨーロッパからの長いフライトは終了。
ビジネスに乗った友人に言わせるとエミレーツのラウンジの食事はとてもいいが、機内食は全然ダメとのこと。
それに比べるとエコノミーやプレエコの機内食は他社に比べていい方、優先搭乗もできるプレエコはフルフラットにこだわりがなければいい選択かもしれない。ただしプラス7万円の価値があるかはちょっと微妙、かも。
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5月27日
今朝もパブで朝食を摂り、荷物を預けて街歩き開始。
マーチャントシティーの建物の凝った装飾を見ながら歩いて
中でも一番凝りまくった建物、ジョージ・スクエアに面して建つ市役所へ。
この内部は平日の10時からのガイド付きツアーでのみ見学可能とのことなのでちょっと早めにやって来た。
ところが玄関を入ろうとして張り紙に気が付いた。「本日、Bank Holiday につき入館不可」。Oh, my god!
他にもやって来てがっかりしている人たちがいたが、開かないものはしかたがない。
気を取り直して予定変更、地下鉄でPartickという駅まで行き、10分ほど歩いてクライド川沿いに建つRiverside Museumへ。
こちらは交通博物館。
なので馬車が引く市電やら汽車やら所狭しと並べられ、背の低いグラスゴーの地下鉄は1896年創業との展示もある。
オートバイや自動車の展示の仕方も面白くて、子供連れの見学者が多いが、昔を知る年寄りにもなかなか楽しい。
川辺に出ると帆船が係留されていて、この内部も見学可能。
1896年にグラスゴーで建造されたこの船は貨物船だったが、帆船が時代遅れになった後も練習船として使われたので現在まで生き残ったとか。船倉をカフェにしているのも気が利いていて
船首からはクライド川沿いに新しい建物がいろいろ建っているのが見える。
ところでこの博物館まで来たのは実は展示品よりも建物を見るため。
こちらの設計者は日本ではボツになった新国立競技場のデザインで有名になったザハ・ハディッドさん。
ギザギザの屋根が特徴的だが、バクーのヘイエル・アリエフ・センターや、ソウルの東大門デザインプラザに比べるとおとなしい。
この後はグラスゴー市内でマッキントッシュ建築の落穂ひろい。
まずは Queen's Cross Church。
マッキントッシュが設計した唯一の教会で内部のステンドグラスも見事、とのことだが、この日はやはり休日で見学不可、外から眺めるだけ。
ここから歩いてグラスゴー美術学校へ。この建物はマッキントッシュの最初期の設計で、なおかつ彼の代表作ともされているのだが、2014年に火事に会い、その再建工事中の2018年にまたもや発火してしまったという不幸な建物。
現在もこのありさまで、隙間からわずかに見えた内部の状況からするとまだ10年ぐらいは再建工事にかかりそう。
市内中心部にあるのは The Lighthouse という建物。
これも初期の設計で、中にはマッキントッシュに関する情報センターがあり、タワー上部には展望台もあるとのことだったが、コロナ禍で閉鎖されていまだに再開しておらず、ここも入館不可。
もう1ヶ所、川向うに Scotland Street School というグラスゴーでは最後に設計された建物があるのだが、ここも現在リノベーション中で見学することができず。一度の訪問ですべて見ようとしてもなかなか難しい。
気を取り直して、最後は Mackintosh at the Willow へ。
2軒並んだ左側が展示室になっているので、£5を支払って中へ。
しかしここは正直言って入る価値なし、解説パネルが並んでいるだけで見るべきものが何もない。
ただし解説されている Miss Cranston はかなり面白い。親兄弟がホテルやお茶を扱う商売をしていたそうだが、新進気鋭のデザイナーを採用して女性でも入りやすいおしゃれなティールームを次々に開業、その一つがマッキントッシュにデザインを任せて1903年に開いた Willow Tea Room。
展示室は隣のティールームにつながっているので、客の入っていない2階から1階へ。
ここは50年も放置されていた元のティールームを1983年に再開し、さらに2016年に再修復したということでまわりじゅういかにもマッキントッシュというディテールでいっぱい。
ここでお約束のスコーンとお茶をいただいて、マッキントッシュ探訪もこれで終了。
見られなかった所もいくつかあるとはいえ、マッキントッシュを満喫できたグラスゴー、来て良かった。
往路はバスで来たが、帰りは鉄道にしようとクイーンズストリート駅へ。
事前にネットで買った切符は£16なのでバスよりだいぶお高い。スマホのQRコードを券売機にかざして紙の切符を印刷、自動改札を通る。
エジンバラまでは最速の列車で50分。
降り立った駅が大きくて立派で、乗降客の多さに圧倒される。
友人宅に戻るバス乗り場もすごい数のバスが次々に来る。
エジンバラに降り立って10日目にして、やっとエジンバラ城を見た。
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5月26日 続き
マッキントッシュの家を出た時には雨もやみ、薄日が差したりもしてきたので次の目的地まではちょっと距離があるが歩くことにした。
大通りをしばらく歩くとポロック・カントリーパークという大きな公園に入る。
濃い緑の中を遊歩道が続き
シャクナゲなど花もいっぱいでとても気持ちのいい散歩。
40分ほど歩いて目的の建物が見えてきた。
これがバレル・コレクションという美術館。グラスゴーの海運業で財を成したウィリアム・バレル卿の個人コレクションを展示している。
こちら、通常展は入場無料だが、ちょうど開催中のドガ展は時間指定の予約で£11。
まずはカフェでブラウニーとコーヒーで一息。
ガラス天井で明るい休憩スペースの一角、16世紀の入り口を通って展示室へ。
入ると正面は一面ガラスで公園の緑が見え、その前に彫像が並ぶ。
中世の宗教彫刻が好みにどストライクなのだが
面白いのはその中に中国の陶器やらブロンズ、エジプトの石板まで混ざり合って展示されていること。
いかにも「気に入った美術品をみんな集めました」と言う感じが個人コレクションらしくていい。
これに続く部屋はバレル卿の居城の一室を再現したもの。
所々に映像パネルがあって、俳優が演じるバレル卿や夫人、執事やメイドまでが自分たちのことを語る仕掛け。面白い。
コレクションは実に多岐にわたっていて
ヨーロッパ絵画はもちろん、家具やカーペット、イスラムや中国の陶器、
レースや刺繍などの布工芸
ステンドグラスもいっぱい。
雑多なようだけれど収集には奥さんも重要な役割を果たしたという美意識には筋が通っているように見える。
やがて予約時間になったので、地階のドガ展へ。
バレル卿自身がドガの絵を20枚以上所有していたということで中心はこの美術館の収集品だが
大好きなパステル画がいっぱいあって、小規模な展示ではあったが見ごたえ十分。
広いショップも充実していて、バレル・コレクションは個人コレクションとは思えない規模だった。この美術館とドガ展のことを教えてくれた友人に感謝。
それでは帰りましょう、と外を見ると本格的に雨が降っている。
広い公園は公道に出るまでに10分以上かかる。園内を無料シャトルバスが巡回しているというのでこれを待つと、20~30分ごとに来るはずが40分も待つことになってしまって、こういうのはいつ諦めるかが難しい(笑)。
公園の出口からはバスに乗って中央駅まで20分、£2。
宿までの途中でスーパーに寄って、今夜は部屋でサラダ・ディナー。
これで£6、1200円と換算してしまうと高い。
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