アルバニアでお世話になったガイド氏は40代半ば。
なので共産党独裁時代も経験しているが、まだ子供だったし、両親がしっかりしていたので苦労はしなかったと言う。
そんな中、印象に残っているのはある日お母さんがとても幸せそうな顔をしていた時のこと。
その頃、食料はすべて配給制で、卵は一家族に一週間5個、それが7個になったのがうれしい、と喜んでいたのだそうだ。
アルバニアにそんな独裁体制を敷いたのはもちろん悪名高いエンヴェル・ホッジャ。
しかし晩年は病気で、実際に権力を握っていたのは奥さん、そもそもこの奥さんが旦那を支配していて、国中にバンカーを作らせたのも奥さんじゃないかと言われているのだそうだ。
そんなホッジャは普通に病死、奥さんもつい4年前に99才で死んでいるそうなので、独裁者としては平穏な最後だったと言えるだろう。
アルバニアが大変だったのはむしろその後の共産党独裁の崩壊後。
国中がねずみ講に巻き込まれて経済破綻してしまったのは有名な話。アルバニア・マフィアはいるし、汚職もひどいとのこと。
ガイド氏に言わせると政治が安定しないので有能な人材はどんどん海外に移住してしまい、「何のための民主化だったのか」と現在の政治情勢にはかなりお怒りの様子。
アルバニアに限らず、強烈な独裁崩壊後の国はなかなか安定せず、むしろ治安が悪化する国も多いように見える。
イラクしかり、イエメンやリビアもひどい状態が続いている。
そんなわけで今一番関心があり、心配しているのはシリア。
独裁者アサドがとんずらしたのはいいが、これまでばらばらに活動していた反政府勢力は仲良く国づくりをしていけるのだろうか。
イエメンもリビアもシリアも幸いにして訪れる機会があったが、どこも平和でさえあれば観光資源に恵まれた魅力的な国で大好きになった。
これらの国を再訪できるようになるのはいつだろう。
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歩行者信号
ティラナの歩行者信号はよくある人のシルエットではなく「t」の文字。
しかも信号の柱まで緑や赤に光って、夜は特に目立つ。
この「t」はティラナのtらしく、他の町では普通の人型。
ただし横断歩道が紅白に塗られているのは他の町も同じだった。
ミネラルウォーター
アルバニアはミネラルウォーターが豊富な国で、食事の度に違うメーカーの物が出てくる。
ジロカストラ周辺の山の方へ行くとこれらの瓶詰工場が見えるが、道端には湧き水を汲むところがたくさんある。
こういう所に来ると我らがガイド氏は必ず車を停めて水を汲みに行く。実際こういう所の水の方が瓶詰の水よりおいしいのだ。散々飲んだけれど、一度もお腹を壊したりしなかった。
犬と猫
アルバニアは猫天国。街を歩けばいくらでも猫がいる。
ドライブインのお猫様は当然のように撫でられているし
飲食店の椅子を占拠してもお客も店員もお構いなし。
オフリドの宿の飼い猫は美猫、ジロカストラにはかわいい子ネコもいた。
犬もテスなどでは勝手に出歩いていたけれど
大きな顔の猫に比べてなんだか卑屈な姿。
戦利品
クルヤで買ったフェルトのスリッパにマグネット、柄が気に入ったトレイはベラトで購入。形が残る物はこれだけで、あとはいつもの通り、消え物ばかり。
と言ってもアルバニアのような小国で自国産の物を探すのはなかなか大変。
イチジクのジャムとドライフルーツを固めたものはシュコダル産。水汲み場で蜂蜜の他に買ったのは乾燥したオレガノとセージ、それぞれ一袋100レク(約150円)。アルバニア産のハーブ類は輸出もされているのだとか。
北マケドニア産を探すのも大変だったけれど、繁華街にあった派手なロクム屋。
ほとんどはトルコ産の中、「これはマケドニア産よ」とお姉さんが味見させてくれたものがとてもおいしくてお買い上げ。しかし5つで7€と超高級。
スーパーで見つけたオートミールも一応マケドニア産。
最後の小銭消化のために行ったティラナのスーパー。
左は日本の成城石井のような高級店でほとんど輸入品ばかり。右は庶民的な店で24時間営業。
しかしここにもアルバニア産品はほとんどなくて、スナック菓子はトルコ製、他のパッケージ製品はセルビア産が多かった。このエリアの勢力図がよくわかる感じだが、セルビア製品は実際おいしかった。
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9月29日
アルバニアのパイの朝食もとうとう最後。
ティラナのKotoni Hotelは家庭的で実に気持ちのいいホテルだった。
到着した時に出迎えてくれた運転手さんに送られて空港へ。
大きな空港ではないが、チェックイン・ロビーはたくさんの旅行客でいっぱい。
まだ残っていた現地通貨はイタリア系コンビニでなんとか使い切った。
出発ロビーはワンフロアーで窓が大きく明るい。
旅の初めの方で行ったクルヤの町が滑走路の向こうに見える。
周りには飲食店やデューティーフリー、お土産屋さんなど意外なほどの充実ぶり。しかし土産物屋の値段は「まじか」と言うほど高くて、売る気があるとは思えない。
そこですぐにプライオリティパスで入れるラウンジへ。
入口は本当にここでいいのかと疑うような地味さだが、入ってみればおしゃれな内装で人も少なく静か。
食べるものも結構豊富で、マウンテンティーがあるのもいい。
機内ではスナックしか出ないとわかっているので豆のスープとチョコレートケーキをいただいておいた。
11:30予定のITA Airwaysは15分遅れで出発。
アドリア海を一跨ぎすればすぐにイタリア、1時間25分でローマに到着。
さて、次のソウル行きまでには7時間もある。どうせ乗り継ぎのために一度入国しなければならないので、荷物を預けて近場に遊びに行くことにした。
ところがローマの空港、荷物預けの場所がわかりにくい。ネットで事前に見ていたのでわかったが、一度外に出て別の入り口から入りなおさないとたどり着けないなんて、どうしてこんな作りになっているのだろう。
が、どうにか荷物一つを10€で預けて、次は空港鉄道の駅へ。
ここからすぐ隣の駅にあるショッピングセンターへ行こうと思うのだが、券売機の前には長い列、しかもみんなうまく行かなくて戸惑っている。こういう機械には慣れているはずの我が同胞でさえ使えないのだからこれは無理、と判断してこれまた列の出来ている有人窓口へ。
こちらではすぐに切符を買えたが、たった一駅の乗車がなんと8€(約1200円)!どうやらゾーン制のようで、おそらくローマ中心部まで行っても同じ値段なのだろうが高~い!
すぐに出発する列車に乗って、10分ほどで最初の駅、Parco Leonardoで下車。
こちら、まわりはがらんとした中に駅前にはビジネスホテルやショッピングモール、マンションなどが立ち並ぶ新興住宅地らしい。
すぐ駅に繋がるモールに入って
ジェラートを食べて一息。
周りには日曜のためか中学生ぐらいの子供たちがいっぱい。日本の地方都市のイオンモールみたいだ。
ショッピングモールとは言え、円安日本人ではスーパーぐらいでしか買い物はできない。
大きいわりにあまり品揃えの良くない安売りスーパーだったけれど、お目当てのチーズは買えて、これがさすがにおいしくて安かった。
それでは早めに空港へ帰ろうと駅に戻ると、ここは当然のように無人で券売機しかない。
と、この券売機がまたダメで現金もカードも使えない。無賃乗車にはやたらに罰金の高いヨーロッパだけれど、カードも使えなかったというレシートがあるからなんとかなるだろうと空港に戻ると、こちらの改札は素通りだった。結局片道運賃で往復したことになるが、それでもこの運賃は高すぎる。そして機械類がすべてポンコツのイタリア、この国は大丈夫なのだろうか。
空港ではすごい数の中国人をかき分けてチェックイン、広いけれどわさわさして食べるものもあまりないプラザプレミアム・ラウンジでまた2時間ほど過ごし、暗くなってから無事にアシアナ航空に搭乗。
仁川空港ではおなじみの王様の行列を眺めながら
ラウンジで友人と辛ラーメンを味見。周り中でズルズルやられるとやっぱり食べたくなっちゃう。
羽田空港には21時過ぎに到着。家には真夜中に着いた。
乗り継ぎは面倒だけれど、時間がたっぷりあればこれもまた楽しい。
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9月28日 続き
ナウム修道院を出るとすぐにアルバニアとの国境。
小さな検問所で、北マケドニアに入国した時以上に簡単に国境通過。
少し行くとポグラデツと言う町があるが、その手前のビーチで少し駐車。
人の姿もほとんどない静かなビーチだが、この裏には大きな公園がある。
オフリド湖につながる大きな池があり、ボートに乗る人やピクニックを楽しむ家族連れでなかなかの賑わい。
ここはドリロンといって国立公園だそう。ガイド氏が子供の頃から来ていた所ということで紹介してくれたかったらしい。
ポグラデツの町では友人がカバンのロックを買いたいということで少し街歩き。
この町はオフリド湖のアルバニア側リゾートということで湖畔には大きなホテルやカフェがあるが
ちょっと中に入ればごく庶民的な商店街があって
たくさんのチーズやナッツ類、敷物屋が普段の生活を垣間見られるようで楽しい。
湖畔には薔薇でいっぱいの公園があって、ベンチには詩が書かれている。帽子をかぶり湖を眺めているのがこの町自慢のポラデシという詩人。アルバニア人は詩が好きらしい。
プロムナードや噴水もある湖畔だけれど、マケドニア側に比べると外人観光客の姿もなく、実に静かなリゾート。
オフリドの町は見どころ満載だったけれど、こちら側でのんびりするのもいいかもしれない。
湖畔に点在する町を眺めながら北上してオフリド湖を完全に一周した。
湖を離れたらエルバサンの町へ向かい、その郊外のレストランでお昼ご飯。
ここもガイド氏行きつけらしく、小川沿いのテラスが気持ちいい。
本日いただいたのは羊の肉やレバーをリコッタチーズで煮込んだ料理。タフコーシと似ているがあちらはヨーグルトで煮込んでいるのでちょっと違う。赤いソースがかかっているが辛くはない。焼いたチーズはガイド氏のおすすめ、キュキュッとした歯触りはギリシャのチーズに似ている。
これまで2度ほど通り過ぎたエルバサンの町中を今日はちょっとだけ観光。
町の中心にはオスマントルコ時代の城壁が残り、中を歩くと石畳の道。
王のモスクと呼ばれるこちらは1492年に建てられたアルバニアでは一番古いモスクなのだそうだ。
この町では行きたい所があったので観光はこれだけで切りあげ、すぐに郊外へ。
町を出て15分ほど、周りには何もない田舎道を走ってやって来たのはHotel Iliria。ネットでアルバニアの温泉を探していた所こちらを見つけ、HPを見ると立派なスパらしかったので来てみたのだが、駐車場に入ってもそれらしい建物は見えない。ただし強烈な硫黄の匂いがして、管理人らしきおじさんが来たので5€を払うと、物置小屋のような中で着替えるよう言われた。
そしてその先には確かにプールがあって、ここが匂いの元。
ワクワクと入ってみれば温泉はエメラルドグリーンで日本の国見温泉にそっくり。
湯面に膜が張っている所もそっくりながら、こちらは36℃の長湯仕様。大人気だったぺルメット温泉よりずっと温泉らしくて、わざわざここまで来た甲斐があった!
プールに入っているのは地元の年配者ばかり。
ガイド氏はこの温泉を知らなかったが、ここで偶然お母さんの知り合いを見つけ、ここは療養にいいとお勧めされたので次回は両親を連れてきたいとか。
ここでラッコちゃんとはしゃいでいた自分、変な犬の形のカメラで写真を撮っている、と話題になっていたそうな(笑)。みなさんの退屈しのぎに一役買えたかも。
強烈な温泉臭をプール脇のシャワーで流したら、ティラナまでは50分。
3たび舞い戻ったホテルに到着して、ずっとお世話になったガイド氏とお別れ。この方、ツーと言えばカーとこちらの意図を察してくれ、細かく気配りしてくれる本当にいいガイドさんだった。アルバニアのこともいろいろ教えてもらえて、初めての国でガイドはありがたい。
さて、アルバニアもとうとう最後の夜。
グーグルマップにある郷土料理屋を目指すも、あるはずの所に店はなく、仕方ないので近くにあった魚料理屋に入ってみた。
地下に降りるのでちょっと不安だったが、入ってみればこじんまりといい感じで、ローカルの親父さんたちが酒盛りをしている。
あまり英語が得意ではないウェイター氏から「うちの看板メニュー」と勧められた一皿と魚のミックスグリルを頼むと
陶器に入って来たのは濃厚なクリーム。中にはとても小さなエビがいっぱいで、ちょっと不思議な食感と味だけれど確かに慣れると癖になりそうな料理。
魚の方は左右が違う魚で、どちらも塩加減よくおいしい。アルバニア人は魚の食べ方を知っている。
今回の旅、食事は7勝4敗と言った所。最後は外さなくてよかった。
食後は残った現地通貨を使い果たすべくスーパーへ。
周辺のブロク地区は東京で言えば青山や六本木のようなエリアらしく、土曜日のこの夜、カフェやレストランはおしゃれした若い子たちでいっぱいだった。
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アジアで行ったことのない国は残り4つ、フィリピン、ブルネイ、東ティモールに北朝鮮。
その中で一番敷居の低いブルネイに行こうと思い立ったが、せっかくなのでこれもまた乗ったことのないロイヤルブルネイ航空で行くことにした。
調べてみると「ロイヤル」と名が付く割に航空運賃は安くて、成田からブルネイ、その先のクチンまで含めてもエコノミーは43,000円弱とLCCなみ。
今年はヨーロッパ行きで贅沢をしているので今回はお安く上げようと思っていたところ、出発の1週間前になってアップグレードのお誘いが来た。
最低入札額が450BDN(約50,000円)とエコノミー運賃より高いが、こんなことでもなければ乗ることもあるまいと入札した所、2日前にあっさりと成功。
というわけでおそらくは最初で最後であろうロイヤルブルネイ航空ビジネスクラス。
成田からの飛行機はA320 neo。
ロイヤルブルネイは長距離用にB787も飛ばしていて、こちらはフルフラットになる座席だが、成田からブルネイは6時間の中距離なので
こんな昔ながらのシート。
4席x3列の12席だが、乗り込んでみたら自分ともう一人、ブルネイ人の女性しかいなくて、アップグレードを申し込むもの好きは他にいなかったらしい。
席には枕と毛布、ヘッドフォンとアメニティーポーチが置かれていて、あとからスリッパももらえた。
ポーチの中身はこんな感じ。
クリームとリップバームはタイのHarnnブランド。悪くない。
飛び立つ前にはイスラムのお祈りが流れる。
さらにフライトマップでは常にメッカの方角がわかり
女性FAさんの制服はこの通り(写真は機内誌の表紙)。
聞きしに勝る厳格なムスリム、なので飛び立って少しすると飲み物のサービスがあるが、選択肢にアルコールはない。
自分はまったくの下戸なので何の不満もないが、ビジネスでいいお酒を期待する向きには価値がないだろう。
11:45出発なのですぐに昼食。
テーブルには白いクロスが敷かれて、前菜は選択肢なしの和食。
発泡スチロールの箱に入った煮物類は少し前のJLみたい。
メインは牛、鶏、パスタの3択だがブルネイらしいものはなかったのでチキンに。
トマトソースのかかった鶏もも肉の火入れは完璧でジューシーだったが、味は塩がきつかった。
デザートのフォンダンショコラもものすごく濃厚で、半分でギブアップ。
ブルネイ人は濃い味が好きなのだろうか。
この食事をいただきながら映画を一本。
Mothers' Instinct
今年の夏にアメリカで公開された映画で、日本での上映はまだのよう。
舞台は1960年代のアメリカの中流住宅地。
アン・ハサウェイとジェシカ・チャスティンは同い年の息子を持つ専業主婦のお隣さん同士。
家族ぐるみで仲良くしていたが、アンの息子が事故死してからどちらの奥さんも精神不安定になり家庭が崩壊していく。
果たしてどちらの奥さんが本当におかしいのか、というお話。
二人の女優の演技合戦なのでどちらも十分おかしく見える。ラストはまあ、予想通りだったけれど、もうひとひねりあるかと思ったのでちょっとがっかり。
一番興味深いのは60年代ファッションで、昔は普段からこんなにきっちりしていたのね、と懐かしい。
この後は見たい映画がないのでシンガポールのグルメ番組を見ていたが、びっくりしたのは「ポーク」という言葉がすべて消音されていたこと。他の中東系航空会社はどうだっただろうか、ここまで徹底しているのは初めてのような気がする。
後はスナックなどのサービスもなく、あっさりとブルネイに到着。
「ロイヤル」という名前から期待するほどのサービスはなかったが、気持ちよく過ごせた6時間だった。
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