文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

書評:新薬に挑んだ日本人科学者たち

2014-04-13 08:45:30 | 書評:学術教養(科学・工学)
新薬に挑んだ日本人科学者たち (ブルーバックス)
クリエーター情報なし
講談社


 本書は、「メディカル朝日」(朝日新聞社)に、2011年9月号から2012年3月号にかけて連載した記事を纏めたものだそうだ。タイトルの通り、15種類の薬を例に、日本人研究者が、創薬にいかに貢献してきたかが描かれている。

 新薬の開発というのは、当たるも八卦の世界だ。山師の仕事に似ているところもある。何しろ、どこに創薬の種があるかも分からない。しかしそれでけではない。とてつもない忍耐も必要なのだ。

 例えば、コレステロールを下げるスタチンの開発には、6000種類のカビやキノコを調べたというし、細菌の増殖を抑える抗菌薬のクラビットを創り出すために、1000単位で化合物を合成したというのだから。そんな仕事を、黙々と続けて来た、研究者たちの努力には頭が下がる。彼らの地道な仕事があってこそ、医学の発達があったのだ。本書には、この他、難病、生活習慣病、がん、事故免疫性疾患などの創薬のために、日本人研究者がいかにの努力してきたが語られている。

 しかし、この世界は綺麗事ばかりではないようだ。本書に紹介されているのは、エイズウイルスの増殖を抑えるレトロビルの特許権を巡る応酬の話。共同研究先だった製薬会社は、特許を独占して、薬に高額な価格をつけるという暴挙にでたという。事前の契約がどうだったかは分からないが、欧米式の契約文化には、充分に注意を払わないといけないという教訓だろう。欧米の企業を相手にする場合には、日本式のいい加減な契約書では、絶対にだめなのである。

 ともあれ、どの創薬物語を読んでも、そこには、一遍のドラマになりそうな「物語」がある。本書を読んで、自分もこの道に進みたい若者が増えてほしいものだ。

☆☆☆☆

※本記事は、姉妹ブログと同時掲載です。
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