本書は、明治大学人文学研究所が2012年11月に行った公開文化講座の内容を一冊の本にしたものである。高山宏明治大学教授の総合司会により、松岡正剛編集工学研究所所長・イシス編集学校校長、鹿島茂明治大学教授、安藤礼二多摩美術大学准教授の3名が講演を行っている。私が読んで感じたことと共に、概略を簡単に紹介してみよう。
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「ブックウェアの仮説」(松岡正剛 編集工学研究所所長・イシス編集学校校長)
ハードウェア、ソフトウェア、ヒューマンウェアというものがあるように、松岡氏は「ブックウェア」という、システムや系としての本があると考えているようだ。
松岡さんの講演では、まず「松丸本舗主義」という本が紹介されている。これは丸善が松岡氏に「書店」を頼んできた経緯、なぜ3年で終わり延長できなかったのかといったことを記した、いわば敗戦の記録だそうだ。
本を読むいろいろなスタイルを、「起読」、「観読」などといった二字熟語で表したり、松丸本舗店内のマップが示されたりとなかなか興味深い。店内の各コーナーは、通常の並べ方ではなく独特の感性で作られたレイアウトされている。こういったことも編集の領域なんだなと実感する。
そして松岡氏がこれまでに取り組んできたことが(講演会では映像で)紹介される。タイトルの「ブックウェア」について明確に示されているとは言えないが、何となく言いたいことは分かるような気がする。実際に講演を聞けないのが残念だ。
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「コレクション論」(鹿島茂 明治大学教授)
鹿島氏によると、コレクションとは「この世に存在するものを集めて存在しないものをつくりだす」ことだという。「無価値」なものを集めてすごいものにするのがコレクションの王道。本はこれからどんどん無価値になっていくので、今が自分の思想を投影したすごいコレクションをつくるチャンスらしい。
振り返って自分の本棚を見ると、なんとも統一性がない。移り気で、次から次へと興味が変化してきたためだ。これではどう考えても、すごいコレクションにはなりそうにもない。コレクターになるということは、ある方面のオタクになるということだ。自分には無理そうである。
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「祝祭の書物・書物の祝祭」(安藤礼二 多摩美術大学准教授)
安藤氏は、編集を長い間やって来て編集=批評という考えに行き着いたそうだ。そこには、「読む」ということが根底にあり、その前では、学問間の区別など無意味になるという。
氏は言う。
「世界という巨大な書物を読む。それが編集であり、批評です。」(p122)
こうなると、壮大過ぎてなんだかよく分からない。いわゆる文系知識人が好みそうな言い回しだろう。結局私には、何が言いたいのかよく分からなかった。分かったのは、昔マラルメとかフーリエと言った人物がなんだか訳の分からないことを言ってたということだけ。正直これをいくら読んでも、自分には得るところがなさそうなので適当に切り上げた。
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※本記事は、書評専門の拙ブログ
「風竜胆の書評」に掲載したものです。