![]() | アイヌ学入門 (講談社現代新書) |
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講談社 |
・瀬川拓郎
本書は、アイヌの歴史、文化を通じて、彼らがどのような人々であるかを知ってもらうために書かれたものだ。
アイヌとは、ユーカラを語り、自然と共生してきた人々だというイメージを持っている人もいるかもしれない。そうだとすれば、本書を読んで、そのイメージは大きく変わることだろう。かって彼らは、日本と大陸をむすぶ中継貿易者であり、異民族や中国王朝と戦ってきた北東アジアのバイキングだったのだ。
世界のどの民族とも異なった特徴を持つというアイヌの人々。彼らは縄文人の血を色濃く留めているという。かってアイヌ白人説というものがあった。アイヌの人々はモンゴロイドではなく、コーカソイドだというのだ。しかし、1960年代に行われた調査で、コーカソイドという積極的な証拠が見つからなかったため、結局はモンゴロイドであると結論された。しかし、モンゴロイドとも異なる特徴を多く持っているという。
アイヌの方で直接知っている方はいないし、たまにテレビなどで見るアイヌの方も、いわゆる和人とどのような違いがあるのかはよく分からないのだが、本書に載っているアイヌ女性の写真は、スペイン辺りの人だと言われても、それほど違和感はないだろう。もっとも、和人の中にも、顔の濃い人は見られるので、単に個体差だということなのかもしれないのだが。
アイヌと和人は古くからの交流があったようだ。マタギの言葉にはアイヌ語の影響がみられるし、アイヌ文化にも、古代や中世の日本文化の影響が見られるようだ。例えば、アイヌの呪術には、陰陽道や修験道の影響を受けていると思われるし、アイヌ社会には、蘇民将来と似た伝説が伝わっている。茅の輪くぐりと似た草の輪くぐりのという呪術も存在するのである。
もちろんこれ一冊で、豊かなアイヌ文化のすべてがわかるわけではないのだが、日本には異なる文化・風習を担ってきた人々が住んでいる。日本は決して単一文化からなる国ではないのだということを理解するための最初の一冊にはなるだろう。また、日本とは何かを考えるうえでも、多くの示唆を与えてくれるのではないだろうか。
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※本記事は、書評専門の拙ブログ「風竜胆の書評」に掲載したものです。