なぜ、お客様は「そっち」を買いたくなるのか? | |
クリエーター情報なし | |
実務教育出版 |
・理央周
同じような商品を扱っていても、売れている店とそうでない店がある。いったい何が違うのだろう。どうすればお客様が買ってくれるようになるのか。本書はそんな悩みを持つ人のために売れる仕組みをつくるためのヒントを与えてくれるものだ。
本書は、流行る店になるためには、どちらの売り方が良いのかを二択方式で読者に考えさせるというのが大きな特徴である。一応の答はあるのだが、急いで答えを見るのではなく、自分の頭でまずは考えてみるということが大切だろう。ただし、どちらも正解だったり、不正解だったりというひっかけ問題もあるのでご用心。
本書を読むと、売れるためのいくつかの定石が見えてくる。絶対に行ってはならないのは、安易な値引きに走ってはいけないということ。競合との値引き合戦は、際限がなくなり、互いに疲弊してしまうだけだ。
「困ったときは、お客様に聞け」というのも定石の一つだが、本書では決してアンケートは進めていない。お客様が気付いていないような潜在的ニーズはアンケートでは分からないからだ。だから自分で観察してニーズを見つける必要がある。
「売ろう」とするから「売れない」のである。客が買いたくなるような工夫をしなくてはならない。売らんかなを前面に出したプッシュ型のプロモーションではだめで、どうやって向こうから欲しいとやってくるようなプル型の商品にするかということが大切なのである。そのためには、いかにお客様にとって有用な情報を提供するかということにも知恵を絞らなくてはならないのだ。
すぐ値引きに走ったり、顧客にアンケートをとったりというのはよくやりがちだが、これしかできないようではダメな経営者の見本と言われてもしかたがない。そんなことより経営者にはほかに考えなければならないことがたくさんあるのだ。そんなことを教えてくれる一冊である。
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※本記事は、書評専門の拙ブログ「風竜胆の書評」に掲載したものです。