文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
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書評:超ディープな深海生物学

2016-06-12 12:21:52 | 書評:学術教養(科学・工学)
超ディープな深海生物学(祥伝社新書)
クリエーター情報なし
祥伝社

・長沼毅/倉持卓司

 本書は、辺境生物学者の長沼毅広島大学大学院教授(執筆当時は准教授)が、葉山しおさい博物館の倉持卓司学芸員と組んで書いた深海生物案内だ。

 深海には、地上では想像がつかないような、奇妙な生物がいっぱいである。例えば、クラーケンのモデルとされるダイオウイカ!。500m以深の深海に生息し、腕を伸ばすと18mにもなるというからすごい。しかし、このダイオウイカより大きなイカが存在するという。南極海に住むダイオウホウズキイカである。

 マリアナ海溝の最深部に住むカイコウオオソコエビは、多様な動物や植物を分解できる消化酵素を持っている。つまりなんでも好き嫌いなく食べられるのだ。

 更に、ゴエモンコシオリエビは、腹部の剛毛で、餌になるバクテリアを養殖しているし、チョウチンアンコウ類の中には、雄が雌と完全に一体化して寄生するものがいる。

 極めつけはこれだろう。海底の熱水噴出孔の周りには、シロウリガイとチューブワームが群生している。バクテリアや古細菌には、湧水に含まれるメタンや硫化水素をエネルギー源にしているものがいる。シロウリガイは、これを食べ、チューブワームは、これを体内に共生させることで、餌の少ない深海で生存できるのである。

 深海は、光が届かない、餌が少ない、雄と雌の出会いが少ないとないものだらけだ。これが、深海の生物たちに独自の進化を促してきたようである。深海は、決して死の世界ではない。これらの奇妙な深海生物たちにより、意外に豊かな生態系が作られていることが、本書を読むとよくわかる。まさにタイトルの通り「ディープな」深海生物の世界に浸りたい人には必読の一冊だろう。

☆☆☆☆

※本記事は、書評専門の拙ブログ「風竜胆の書評」に掲載したものです。

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